連携研究プロジェクト

在宅家族介護者の仕事や家事と介護の両立とバランス維持に関わる要因の検討

2026.01.28

プロジェクト代表者:
木下 彩栄(京都大学大学院・医学研究科・教授)

連携研究員・共同研究員:
原田 真悠子(京都大学・医学研究科技術補佐員

プロジェクト紹介

就労しながら在宅で家族を介護する介護者がご自身の生活(仕事や家事等)と家族の介護を両立することができるよう、バランス維持に関わる要因を検討しました。

世界の高齢国のトップは日本、イタリア、ドイツ[1]であり、高齢化のスピードは以前より加速しています。超高齢化の進行にともない、住み慣れた家でその人らしい暮らしを支援するために在宅ケアが推進されている一方で、少子化・核家族化などにより介護者1人当たりの介護負担は大きく、また他者からのサポートを得ることが難しい介護者も少なくない状況です。

2002年には「介護保険制度」が制定され、現在国家全体で介護問題の改善を試みていますが、経済産業省(2023)によると、2030年には家族介護者833万人に対してその約4割(約318万人)がビジネスケアラーとなり、「従業員がビジネスケアラーとなることによる、介護離職や労働生産性の低下に伴う経済損失額」は約9兆円に上るとされています。

さまざまな介護保険制度のサービスが提供されていますが、さらなる高齢化の進展により、家族によるinformalケアの重要性は今後もますます増加していくと考え、政府は「介護離職ゼロ」に向けた具体策の一つに「仕事と介護の両立が可能な働き方の普及」を示しています。

これまで介護に関する研究は進められてきましたが、記憶に新しいCOVID-19パンデミックにより介護環境や就労状況が変わってきました。そこで、本助成では介護と仕事の両立に向けての研究として、介護と仕事の両立に関する要因の分析のために、COVID-19パンデミック時に収集したデータを解析し、両立を困難とする要因を同定しました。その結果を以下に示します。

まず、介護者と被介護者が同居している場合に介護頻度が増加しました。これはパンデミックにより在宅時間が増加したためだと推測します。次に、介護者の勤務形態についてです。「flexible work arrangement(FWA)-柔軟な勤務形態」という介護,家庭と仕事の両立を促進するために政府または企業が設けた制度に基づく形態のうち、特に時短勤務が介護頻度を増加させることが明らかとなりました。さらに、被介護者の介護に至った主な要因のうち、「視覚・聴覚障害」「骨折・転倒」「呼吸器疾患」などが介護頻度を増加させ、特に「視覚・聴覚障害」が顕著でした。

仕事と介護の両立のために設けられたFWAですが、必ずしも介護頻度の軽減にはつながらず、反対に時短勤務のように介護頻度が増す可能性もあることが本研究から示唆されました。また、これまであまり目を向けられてこなかった被介護者の「視覚・聴覚障害」は認知症のリスクファクターであり、今後は視覚・聴覚障害をもつ被介護者に対する支援の充実も必要だと考えられます。