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無形文化財の継承における環境認識と身体技法との関係に関する研究
2026.01.28
プロジェクト代表者:
相原 進(大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・特任助教)
連携研究員・共同研究員:
金子 守恵(京都大学大学院・アジア・アフリカ地域研究研究・准教授)
田邊 元(富山大学・芸術文化学部・講師)
高久 舞(帝京大学・文学部日本文化学科・専任講師)
中里 亮平(長野大学 他・非常勤講師)
田中 綾華(京都大学大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科・大学院生)
元木 春伽(京都大学大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科・大学院生)
プロジェクト紹介
1. 目的
本研究の目的は、無形文化財の継承における演者の環境認識と身体技法との関係に着目し、視線計測装置による環境認識に関する記録・分析と、モーションキャプチャによる身体技法に関する記録・分析とをおこなった上で、人類学・民俗学的手法によるフィールドワークで得た資料も併用して、環境認識と身体技法の継承に関する統合的考察をおこなうことである。本研究では、各研究分担者のフィールドで継承されている無形文化財の指導者と継承者を対象として、視線計測および、モーションキャプチャを用いた身体技法の3次元データ化をおこなう。そしてこれらの記録を突き合わせて環境認識と身体技法との関係と、指導者と継承者との差異や特徴について考察する。その上で継承の場に関する文化人類学的・民俗学的フィールドワークをもとに、指導者・継承者の個性の応用や各自の工夫など、継承の場における表現などの変化にも着目することで、継承における創造性を明らかにする。

2. フィールドワーク
2.1 調査対象
本報告では以下の2団体での調査について紹介する。
・東京都八王子市のお囃子の団体「八櫻会」
http://ohayashi.jpn.com/index.html
・大阪市を拠点とするちんどん屋「ちんどん通信社」
https://tozaiya.co.jp/
2.2 モーションキャプチャのための動作記録の収録
正面、右斜前、左斜前から撮影した映像を映像式モーションキャプチャソフト「Frame DIAS V」を用いて3次元動作データに加工し、各部位の速度や角度変化を分析する。
2.3 視線計測装置による演者の視線の記録
メガネ型の視線計測装置「Tobii Pro 3」を用いて、演者による視線の記録を取得し、分析用ソフト「Tobii Pro Lab」を用いて分析する。
3. 今後の展開-視覚による環境認識と動作分析との統合的考察に向けて
3.1 フィールドワークから得られた環境認識と動作との関係
・指導者(大人)と継承者(子ども)との視線の使い方と所作の違いに関する事例
八櫻会の演目「狐」の例。指導者は視線を常に一定に保ち、頭部の動作を抑制することで、視線は水平な軌跡を描く。継承者は頭部の動きがあり、視線も上下に動く。指導者によると「狐」は神楽など(狂言や歌舞伎の狐の動作なども含む)の影響を受けているため、このような動作になると指摘している。
・身体の成長にともなう所作と環境認識の変化に関する事例
八王会の演目「獅子舞」の例。指導者は獅子の胴体前部の部分から透けて見える光景を見ているが、継承者は足元を多く見る。「獅子舞」では被り物に頭の形が出ないようにすることが好ましいとされており、継承者はうつむいた状態で頭部の後方から上に大きく手を伸ばして獅子頭を使うことになるため、結果的に下を向くことになる。身体的な成長に伴い、継承者は指導者と同様の所作と視線を獲得する。
3.2 継承の場における創造に関する考察
指導者の教えをそのまま実践するのではなく、現場の状況や個々の判断で技術をアレンジする。
・「ちんどん通信社」メンバーF(女性)による上半身の動きを加えたアレンジの事例
指導者(座長)の歩き方に上下の動きを加えることで活発さを演出する。
メンバーFによるコメント:「座長のままでは元気のない女の子になってしまう」
(写真)視線計測装置を付けた「ちんどん通信社」座長・林幸治郎氏による街頭宣伝の様子
