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京都学派とジェンダーの問題――異文化的視点からジェンダーを考える
2026.01.28
プロジェクト代表者:
Wirtz Fernando(京都大学・文学研究科・日本哲学専攻・特定助教)
連携研究員・共同研究員:
竹内 彩也花(京都大学・文学研究科・宗教学専攻・博士課程)
有坂 陽子(ヒルデスハイム大学・リサーチフェロー)
CUI Tracey(京都大学・法学部・博士課程)
高瀬 めぐみ(京都大学・文学部・修士課程)
和田 マルシアーノ 光代(京都大学・文学研究科・国際連携文化越境専攻・教授)
プロジェクト紹介
本研究プロジェクトは、「京都学派とジェンダーには本質的な関係がない」という従来の前提を問い直すことを目的として始まりました。「京都学派とジェンダーの関係は何か?」という問い自体には、すでに複数の層が含まれています。まず、「ジェンダー」の問題は「女性」の問題と同一ではありません。ジェンダーとは、女性だけでなく、男性性や他の様々な性の在り方をも包含する概念です。ジュディス・バトラーの言葉を借りれば、それは「持つもの」でも「あるもの」でもなく、社会的に構築された理解可能性の枠組みに関わるものです。
とはいえ、歴史的な文脈、特に1930〜40年代の日本においては、「女性」と「ジェンダー」の問題は深く結びついていました。そのため本プロジェクトでは、この両者を厳密に区別しつつも相互に関連づけて扱うという方法を取りました。その結果、私たちは以下の三つの方法論的視点からこのテーマにアプローチすることになりました:
- 語彙論的分析京都学派の哲学者たちの著作において、「男女」「女性」「身体」「家族」など、ジェンダーに関わる語がどのように使われているのかを精査しました。特に、土田杏村や戸坂潤といった左派的立場の哲学者が、女性の社会的役割について積極的に論じている点にも注目しました。
- 伝記的・社会的アプローチ京都学派の哲学者たちが、女性やジェンダーの多様な現れとどのように関わっていたかを、伝記的および社会的観点から検討しました。たとえば、西田幾多郎の姪である高橋ふみ、三木清や戸坂潤について論じた宮本百合子、さらには三木に盗作を指摘した板垣直子など、当時の女性知識人の関与も再評価の対象としました。
- 哲学的検討京都学派の思想自体が、現代のジェンダー理論とどのように接続しうるかを探りました。たとえば、西田幾多郎の「歴史的身体」という概念は、生物学的身体を超えた歴史的構成性を重視する点で、今日のパフォーマティヴィティ概念とも共鳴します。こうした哲学的資源を用いることで、性とジェンダーの二項対立を乗り越えるための理論的基盤が構築できると考えました。
このプロジェクトの成果のひとつとして、2025年2月20日、京都大学においてワークショップ「京都学派とジェンダー」が開催されました(令和6年度「人と社会の未来研究院」連携研究プロジェクトの支援による)。発表者は、高瀬めぐみ氏、真田萌依氏、竹内彩也花氏、高谷掌子先生、有坂陽子先生の5名で、それぞれの報告内容は、本書に収録された論考と深く呼応しています。ファシリテーターは京都大学法学研究科修士課程のトレイシー・カイさんが務め、編集者の小林えみさんを交えてラウンドテーブルが実施されました。
当日は約30名の参加者を迎え、フェミニズム、クィア、トランスジェンダー、性分化疾患、反出生主義、パレスチナ問題、アフリカ・カリブの哲学など、広範なテーマが議論されました。また、哲学分野におけるジェンダー・ギャップの深刻さも指摘され、今後の研究の重要性が再確認されました。なお、本ワークショップは国際女性デーに合わせ、京都新聞にも取り上げられました (https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1433583)。
発表タイトルは以下の通りです:
- 「なぜ『京都学派とジェンダー』か」 高瀬めぐみ
- 「西田哲学から『性的な身体』はいかに導出しえるか——『繋辞的媒介としての身体』の観点から」 真田萌依
- 「歴史的自然と母なる大地——京都学派の歴史哲学におけるジェンダー問題」 高谷掌子
- 「『あなた』を忘れない——竹村和子の母娘論から西田の『私と汝』を読みなおす」 竹内彩也花
- 「西田哲学のクィア理論への可能性」 有坂陽子
本プロジェクトの成果は、一冊の書籍として結実しました。本書にはワークショップの発表内容に加え、各寄稿者による理論的考察も収録されています。初期段階で助言をくださった和田マルシアーノ光代先生に深く感謝するとともに、短期間にもかかわらず丁寧な編集作業に尽力してくださった小林えみさんに、心よりお礼申し上げます。

- 図1:書籍『京都学派とジェンダー』の表紙

- 図2:ワークショップにて発表する竹内彩也花氏(発表題目:「『あなた』を忘れない——竹村和子の母娘論から西田の『私と汝』を読みなおす」)

- 図3:ワークショップに関する新聞記事

- 図4:令和6年度「人と社会の未来研究院」連携研究プロジェクト報告会(2025年3月8日開催)に向けたポスター発表イメージ