若手出版助成事業

藤原 征生『芥川也寸志とその時代――戦後日本映画産業と音楽家たち』

2025.08.16

著書:『芥川也寸志とその時代――戦後日本映画産業と音楽家たち』
著者:藤原 征生(国立映画アーカイブ 特定研究員)
出版社:国書刊行会
発行年月日:2025年3月21日

書籍紹介

日本映画の傑作を彩った名旋律の数々――
『煙突の見える場所』『地獄門』『ぼんち』『八つ墓村』……日本の芸術文化の第一線で活躍し、数多の映画音楽も手がけた稀代の音楽家、芥川也寸志。
團伊玖磨・黛敏郎と結成した「3 人の会」での活動をはじめ、芥川が日本映画産業に残したその偉大なる足跡を辿る。

【各章概要】
◆第 1 章 芥川也寸志の音楽作品における映像音楽の量的・質的重要性
先行研究を紐解きながら、芥川也寸志の音楽作品の特徴、とりわけ映像音楽で顕著に見いだせる特徴を説き起こし、日本における映画研究・音楽研究双方のエアポケットとなっていた映像音楽研究についての重要性と、芥川の音楽を考える上での映画(映像)音楽の重要性について考える。
◆第 2 章 「3 人の会」 超スタジオ・システム的存在としての作曲家グループ
芥川が 1953 年に團伊玖磨・黛敏郎と結成した「3 人の会」について、その映画・テレビにおける活動に注目することで、従来論じられてきた作品発表会だけに依拠した音楽史的評価とは異なる角度から、この作曲家グループの再評価を試みる。
◆第 3 章 芥川映像音楽作品論(I)モティーフの流用
芥川の音楽の特徴としてしばしば指摘される「自作品からの引用や改作を頻繁に行う」という特徴は、とりわけ映像音楽で顕著に見いだせる。芥川が手がけた映像作品の中から、頻繁に流用されるモティーフについて譜例とともにできる限り詳細に紹介し、特徴的なモティーフに関するケーススタディも示す。
◆第 4 章 芥川映像音楽作品論(II)テーマ音楽の強調
1970 年代のインタビューで、芥川は自身の映画音楽の理想が「テーマ音楽」的なものへと移行していったことを告白している。このことについて、芥川が頻繁に組んだ映画監督のひとりである豊田四郎の作品に注目して、芥川の映画音楽観の変遷を辿る。
◆第 5 章 芥川映像音楽作品論(III)特徴的な楽器の使用――チェンバロを中心に
芥川が映像音楽において頻繁に取り上げた特徴的楽器のひとつに挙げられるチェンバロについて、その歴史的変遷や映像音楽における使用例を概説し、芥川映像音楽の革新性に迫る。
◆第 6 章 芥川映像音楽作品論(IV)「3 人の会」との繫がりから――『地獄門』を例に
カンヌ国際映画祭やアカデミー賞で受賞した『地獄門』(1953 年)は、日本映画の海外進出やカラーフィルム導入の先駆的事例として映画史上に一定の評価を得ている。しかし、芥川が手がけた音楽はこれまで顧みられることはなかった。その音楽について、特に「3 人の会」との繫がりを軸に再検証を試みる。

【目次】
序言
昭和、そして戦後日本の作曲家・芥川也寸志
芥川の映像音楽を通じた戦後映画/音楽史の再検討
第 1 章 芥川也寸志の音楽作品における映像音楽の量的・質的重要性
第 2 章 「3 人の会」 超スタジオ・システム的存在としての作曲家グループ
第 3 章 芥川映像音楽作品論(I)モティーフの流用
第 4 章 芥川映像音楽作品論(II)テーマ音楽の強調
第 5 章 芥川映像音楽作品論(III)特徴的な楽器の使用――チェンバロを中心に
第 6 章 芥川映像音楽作品論(IV)「3 人の会」との繫がりから――『地獄門』を例に
結語
「超スタジオ・システム的存在」としての作曲家、その代表としての「3 人の会」
芥川也寸志の映像音楽におけるモティーフの流用――超スタジオ・システム的実践として
あとがき
芥川也寸志 フィルモグラフィ
芥川也寸志 主要ラジオ作品
芥川也寸志 主要テレビ作品
芥川也寸志 略年譜
索引