お知らせ
「進化と文化とこころ」公開高座・第2回ワークショップ「文化系統学への招待」
2011.03.01
「進化と文化とこころ」公開高座・第2回ワークショップ」
『文化系統学への招待』
■企画主旨
京都大学こころの未来研究センターでは”進化”と”文化”という二つの側面から統合的に人間を理解する枠組みを、研究者同士の交流を通じて探ることを目的に、「進化と文化とこころ」連携研究プロジェクトを実施している。第2回となる本ワークショップ「文化系統学への招待」では、タイトル通り「文化系統学(Cultural Phylogeny)」について学ぶことを目的とする。
進化と文化の関連を考えるときに、文化そのものの(進化的)変化もまた重要な視点である。文化への適応論的アプローチではしばしば、ある文化を、(生態・社会)環境への人々の適応的な反応として説明しようとする。しかし文化が変化を伴いつつ継承されてゆくものならば、現状の文化は、祖先環境への適応が継承されたものに過ぎないかもしれない。「適応の結果」なのか「継承の結果」なのか知ろうとするならば、文化変化の経路を知ることが大きな手掛かりとなる。文化系統学は、こうした問題に挑戦しようとするものである。
さらに加えて「系統」という考え方それ自体もまた、興味深いものである。文化心理学の世界ではしばしば「西洋と東洋」「相互独立的文化と相互依存的文化」といった分類を行う。進化心理学でも「ヒトとヒト以外の霊長類」といった分類を行う。しかし「系統」の元では、ヒトとヒト以外の霊長類は「同じ系統」に入ることにもなる。「分類」に重きを置く世界観を揺さぶるものとして、文化の系統を考えてみることは重要だろう。
近年、発展著しい文化系統学について、勁草書房より中尾央氏・三中信宏氏の編著による「文化系統学への招待」が出版予定である。今回のワークショップは、編著の両氏および勁草書房のご厚意を得て、出版前の原稿を元に文化系統学についての学び、「進化と文化とこころ」研究との関連について議論してみたい。
本ワークショップは2部からなる。第一部は三中信宏氏による公開高座「文化系統学と系統樹思考:進化するオブジェクトの多様性と系譜」を開く(先着100名)。第二部では「文化系統学への招待」の出版前勉強会を開く。各章ごとに1名が内容を紹介するほか、1~2名の指定討論者による全体コメントをもらう。ディスカッションへの参加は事前登録制とする(下記参照のこと)。
■日時・場所
・2011年3月24日(木) 12:30-18:00
・京都大学稲盛財団記念館・3F大会議室
(荒神橋東詰・川端近衛南東角)
■第1部 公開高座
【時間】12:30-13:30
【噺役】三中信宏(農業環境技術研究所/東京大学・院・農生)
【演題】文化系統学と系統樹思考:進化するオブジェクトの多様性と系譜
【要旨】
体系学的思考(systematic thinking)とは,生物と無生物の区別を問わず,対象物の多様性をわれわれ人間が整理して理解するための思考と考えられます.生物を対象とする分類学と系統学は,体系学的思考を構成するふたつのスタイルである分類思考(group thinking)と系統樹思考(tree thinking)の代表例です.今回の講演では,この体系学的思考のもつ以下の側面に焦点を絞って議論を進めます.
論点1)「分類」に関して,われわれ人間は多様なオブジェクト(生物はその代表例)を分類してきた.しかし,分類は「分類学者」の専売特許ではなく,日常生活を送るすべての生活者すなわち「分類者」にとって身近な行為であると考えられます.みなさんにとって「分類」とはどのような意味を持っていますか?
論点2)「系統」に関して,系統樹と言えばたいていの場合,生物の進化を表す図であるという一般的認識があります.しかし,系図による表現は生物進化という考えとは独立な,もっと古くからある宗教的・文化的・社会的なルーツをもつ思考法の反映です.生物にかぎらず,写本・言語・遺物・文化・芸術・製品など思いがけないところで系統樹が用いられています.なぜこのような思考スタイルが広まったのでしょうか?
論点3)「分類思考」と「系統樹思考」はたとえ同じオブジェクトを対象としていても,相異なる視点から世界と自然と人間を体系化するまなざしであると考えられます.私たち人間はこれらふたつの思考法をどのように使い分けていけばいいでしょうか?そもそも,これらの思考法は意識的に使い分けられるものなので
■第2部 勉強会
【内容】
『文化系統学への招待(中尾央・三中信宏編著, 勁草書房)』の出版前勉強会を行う。下記の担当者による各章の内容紹介ならびに全体コメントを元に、参加者間でのディスカッションを行う。各章の内容の精読を目指すのではなく、文化系統学というアプローチの全体像を共有し、それが人間研究にたいして持つ可能性を論じる場としたい。ディスカッションへの参加者を募集中。
【参加申込み方法】
こちらから、連絡先&参加希望理由をお答え下さい。本ワークショップの基準は「(建設的な)発言せざるもの参加すべからず」です。ただのオブザーバーとしての参加はお断りします。
なお、勉強会参加者の方には、事前に原稿を配布いたします。詳しい配布方法は申込みされた方にご連絡いたします。なお、出版前の原稿ですので、取り扱いにはご注意いただく必要のある点、ご了承下さい。希望者多数の場合は、企画者側で選別させていただきますので、予めご了承下さい。
申込み期限は3月6日(日)と致します。短期間で申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願い致します。
【時間】
14:00-18:00ごろ
【担当者】
・はじめに(中尾央・三中信宏)
平石界(京都大学こころの未来研究センター)
・第1章:文化における進化プロセスとパターン(中尾央)
竹村幸祐(京都大学こころの未来研究センター)
・第2章:文化系統学の起源と普遍的系統樹思考(三中信宏)
第1部の高座で代替
・第3章:言語の文化系統学(Tom Currie/訳)
横田晋大(広島修道大学・人文学部)
・第4章:『老葉』に対する系統学的アプローチ:宗祇による連歌の系譜(矢野環)
小森政嗣(大阪電気通信大学・情報通信工学部)
※原稿未達の場合は小森さんご自身によるマンガ分析の紹介
・第5章:『百鬼夜行絵巻』写本の系統(山田奨治)
網谷祐一(UBC)
・第6章:擬洋風建築の系譜:クブラー『時の形』を通じて(中谷礼仁)
飯島和樹(東京大学・大学院総合文化研究科)
・第7章:イメージの系統(田中純)
池田功毅(東京大学・大学院総合文化研究科)
・第8章:文化系統学と心理(板倉昭二)
森本裕子(京都大学・大学院教育学研究科)
・おわりに(三中信宏・中尾央)
平石界(京都大学こころの未来研究センター)
・指定討論
内田由紀子(京都大学こころの未来研究センター)
一枠未定。
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