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松井健志 特定教授が着任しました(2026年2月1日)

2026.02.24

このたび、京都大学 人と社会の未来研究院特定教授を拝命し、2月1日に着任しました松井健志です。医師出身で、生命・医療倫理学領域における研究倫理学(research ethics)を専門として研究・教育活動を行ってきました。「研究倫理学」と一口に言っても、実は、少なくとも大きくは3つの領域-人を対象とする研究の倫理(狭義の研究倫理)、研究不正・利益相反等の問題に係るresearch integrity(研究公正)、動物実験の倫理-に分かれており、わたしが特に専門とするのは、このうちの「人を対象とする研究の倫理」です。

過去の人類史を眺めると、国や時代を問わず、人権や人の尊厳を平気で踏みにじり、時に人の生命すらも奪って恥じない、「研究」という名の下での非倫理的な行為が数多く行われてきました。ご存じの通り、その代表例が第二次大戦中のナチスドイツや日本軍による様々な人体実験ですが、非倫理的な研究行為は何もこうした戦争という社会的狂気の下でのみ起きるような特殊な性質のものではありません。程度に差はあれ、現代においても「研究の自由」や「学問の自由」の名の下で、医学系、非医学系を問わず、大学をはじめとする研究教育機関や医療機関等での日々の研究活動の中で、それもいわゆる“普通”の真面目な研究者が、誰であれ気付かないままにいつでも犯しかねない、といった類のものです。そして悲しいかな、こうした非倫理的な研究の中で害され、搾取されるのは常に被験者の側であってきた、という事実があります。われわれ研究者はこの事実を重く受け止めなければなりません。

日本の研究倫理学の先駆者で、医師・医学者でもあった砂原茂一はこう述べています:「人間における〔…〕研究は、人間の幸福のために行われるものであることはいうまでもないにしても、究極の姿において、人間が人間を手段として用いるという倫理的にきわめて危険な状況に近づくことを否定しようがない。人類の幸福、学問の進歩に寄与するというような、それ自身まことにもっともな〔…〕根拠をふりまわしてみても、そしてそれを社会的〔…〕に是認し、あるいは奨励する〔…〕精神的環境が存在するとしても、一人の人間としての〔…〕研究者の心のいたみを完全に消しさることはできない性質のものであろう。」(『臨床医学の論理と倫理』東京大学出版会, 1974)と。だからこそ、人を対象とする研究を行おうとする研究者には、自らの研究の倫理性について常に問い続ける謙虚さとともに、研究に協力してくれた被験者を不当に傷つけることのない配慮と、その方々に対する報恩感謝の心が求められます。わたしは研究倫理学の専門家として、こうした「よき研究者」の育成と、そうした研究者による「真善美なる研究」の発展に、そしてこれらを通じてのよりよい未来社会の構築に、微力ながら貢献していきたいと考えています。

…と、このような自己紹介をすると、何だか堅物人間のように思われる方も多いかもしれませんが、実態はそんなことはありませんので、ご安心ください。また私事ですが、自宅(上京区)の離れで生け花を教えています(といっても、まだ娘と姪っ子の二人しか生徒はいませんが。。。)ので、日々の暮らしの中にお花による心の潤いや癒しを欲しい方がおられましたら、ぜひ気軽にお声がけください。皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。