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早川 小百合 特定助教が着任しました(2024年9月1日)

2024.12.27

 

2024年9月1日より京都大学 人と社会の未来研究院特定助教として着任いたしました早川小百合と申します。わたしの専門は建築論、近代建築史です。植物や自然が好きだったことから、それらと建築デザインの融合が顕著であった、近代化前夜の都市デザイン論を研究し始めました。

現在のおもな関心は、近代化が進む中で自然と建築や都市の関係がどのように変化し捨象されていったのか、多角的/分野横断的に記述することです。これは簡単に絶たれることのない地域性や自然との共存関係の確立に寄与が期待されるという点で、近代建築史、建築論が現代社会に対して持ち得る意義のひとつであると考えています。

また、上に「多角的/分野横断的」と述べたとおり、学際研究も推進していきたいと考えています。現代における環境負荷増大、水不足、人口爆発といった諸問題の背後には、様々な原因が絡み合っており、これらの問題を単一観点から解決することは極めて困難です。解決のためには、歴史学者 羽田正が述べるように、「地球全体の利害を考慮」した行動を促すような、地球規模の「つながり」を認識できる歴史記述が必要であると考えます(羽田正, 『新しい世界史へ―地球市民のための構想』, 岩波書店, 2011.)。本来的に、建築や都市は人間の活動の場であり、人間と外界が密に連関しています。つまり、人類共通の営みとして人間と外界の相互連関を明確化して記すことで、その記述の読者は、建築・都市空間における自らの営みが、地球上のほかの地域・時代のそれとつながっていることを実感できます。

こうした記述のためには、学際的、分野横断的視野が不可欠です。学際研究の必要性は昨今とくに叫ばれていますが、19世紀の哲学者J. S. ミルはすでに、専門知を扱う際の全体的視野の重要性を述べています(J. S. ミル, 『大学教育について』, 竹内一誠訳, 岩波書店, 2011.)。ミルが言うところの、世界に存在する諸事実を発見し、それが真の発見であるかどうかを検証する包括的な視野、そして高度な個別の知識だけでなくその全体を考慮に入れることで、一般的事象を抽象としてではなく一事実として認識させてくれるような知的活動とは、まさに今日のわたしたちが取り組む学際研究、そして産官学連携と知の社会還元の在り方のひとつにほかならないでしょう。

専門領域―わたしの場合はとりわけ歴史や理論になりますが、人と社会の未来研究院ならびに京都大学には広範な学術領域の研究者が所属しています―における新たな知見獲得を目指すことはもちろん、その各領域からなる事象全体を考慮した協働を、人と社会の未来研究院で実践していきたいと考えています。

 

早川小百合

 

個人ページ:https://ifohs.kyoto-u.ac.jp/archives/member/sayuri-hayakawa