昨今のコミュニケーションツールは若年層を中心にソーシャルネットワーキングサービス（SNS）へ移行しており、電話・メールでの心理相談が担ってきた機能をSNSでも構築していくことが求められています。しかしながら、SNSを用いた心理相談については、試験的導入が始まったばかりであり、専門家の間でも新たな領域として認知され始めつつある状況で、相談の体制や技法と理論の整備が喫緊の課題となっています。

SNSカウンセリングの特徴は文字による記録が残ることであり、自然言語処理技術を用いたカウンセリングの支援システムや分析システムを整備することで、適切な相談体制の構築や技法や理論の構築を促進できると考えられます。

SNSカウンセリングとコミュニティ支援プロジェクトでは自然言語処理技術を用いた分析を加速するためにカウンセリングに特化した日本語のセンチメント（感情）分析用辞書を作成しました。

辞書ではSNSカウンセリングコーパスに頻出の2389単語について以下の属性を示しています。

・単語の感情価（1ネガティブ〜5ポジティブでの評定値）
・単語が感情に関する言葉かどうか（臨床心理学の専門家による評定）
・単語が身体状態・症状や身体部位に関する言葉かどうか（臨床心理学の専門家による評定）

作成した辞書については、The 9th International Conference on Human-Agent Interaction (HAI ’21)にて査読を受けポスター発表を行いました。

辞書はどなたでもご利用いただけるように以下のページで公開しています。使用方法や作成手順の詳細も同ページ及び以下の文献を参照してください。
　

辞書の公開ページ
https://osf.io/fe7z5/

文献情報
Masataka, Nakayama, Chihiro, Hatanaka, Hisae, Konakawa, Yuka, Suzuki, Alethea H. Q. Koh, Yasushi, Sugihara, and Toshio, Kawai. 2021. Japanese Dictionary for Sentiment Analysis of Counselling Text. In Proceedings of the 9th International Conference on Human-Agent Interaction (HAI ’21), November 09–11, 2021, Virtual Event, Japan. ACM, New York, NY, USA, 5 pages.
https://doi.org/10.1145/3472307.3484663

プレプリント版
https://psyarxiv.com/2g6jt/