メンバー

苅谷 剛彦

Takehiko Kariya

特定教授

専門分野:社会学 教育社会学 現代日本社会論

私の研究領域は3つに分けることができます。キャリア順に説明すると、最初に行った研究は学校から職業への移行(school to work transition)分野の比較社会学的研究です。この一連の研究では、当時の定説(市場でのジョブマッチングの効率性への信憑)に対し、日本の事例を用い、制度の介入が効率性をもたらすことを示すとともに、「疑似制度的リンケージquasi-institutional linkage」という概念を提出しました。 二つ目の研究分野は日本の教育政策に関する社会学的研究です。2000年代初頭、いわゆる「ゆとり教育」を標榜する教育改革が全面的に実施される中、学習意欲の社会階層差の拡大(「インセンティブディバイド」)を示す実証研究を行いました。その成果の一つが『階層化日本と教育危機』で、朝日新聞社より第一回大佛次郎論壇賞奨励賞をいただきました。その後、この本の英語版がRoutledgeより出版しました。 三つ目の研究分野は歴史社会学、知識社会学に連なる研究です。不平等や教育問題を含む社会問題の認識枠組みの形成過程を、過去にさかのぼり、様々な言説データから知識の構造やその特徴を取り出す研究です。最初の成果は『教育の世紀』(サントリー学芸賞受賞)で、19世紀から20世紀初頭のアメリカにおける「機会の平等」という理念がどのように登場したか、それが埋め込まれた社会的文脈を明らかにしました。二つ目に、教育財政制度の統計資料と政策文書をもとに日本の教育における平等概念の特徴を明らかにした『教育と平等』を出版し、さらにそれをもとにTeachers College PressからEducation, Equality, and Meritocracy in a Global Age(Jeremy Rappleyeと共著)を出版しました。最新の業績は、日本における近代・近代化理解を構成する諸概念を知識社会学的に分析した『追いついた近代 消えた近代』(毎日出版文化賞受賞)です。その一部を、いくつかの英文論文として発表しました。現在は、その延長線上で日本において「階級」概念が消失したこと、それとは対照的にある時代まで「大衆」概念が広く用いられたことを手がかりに、日本における平等・不平等理解の特徴を解明する知識社会学的研究を進めています。

E-Mail: tkariya1955*sophia.ac.jp, takehiko.kariya*nissan.ac.ac.uk
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略歴

1979年
東京大学 教育学部 教育学科 教育社会学コース 卒業
1981年
東京大学大学院 教育学研究科 修士課程 教育学科 教育社会学専修 修了
1986年
ノースウェスタン大学大学院 PhD (社会学) 取得
1988年
国立大学共同利用機関・放送教育開発センター 助手(〜1987年)
1988年
ノースウェスタン大学大学院 PhD (社会学) 取得
1988年
国立大学共同利用機関・放送教育開発センター 助手
1988年
国立大学共同利用機関・放送教育開発センター 助教授(〜1991年)
1991年
東京大学 教育学部 専任講師(〜1992年)
1993年
東京大学 教育学部 助教授(〜2000年)
2000年
東京大学大学院 教育学研究科 教授(〜2009年)
2008年
オックスフォード大学 社会学科および現代日本研究所 教授(〜2024年)
2024年
京都大学 人と社会の未来研究院 特任教授(〜2025年)
2024年
上智大学 特任教授(〜現在)
2025年
京都大学 人と社会の未来研究院 特定教授(〜現在)

著書・論文

受賞

2000年
労働関係図書優秀賞
2002年
大佛次郎論壇賞奨励賞
2005年
サントリー学芸賞
2020年
毎日出版文化賞
2022年
東京大学名誉教授
2023年
紫綬褒章
2024年
オックスフォード大学名誉教授