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2021年度第4回京都こころ会議研究会が開催されました

2022.02.16

202198日(水)に、2021年度第4回京都こころ会議研究会が開催され、明治大学政治経済学部・教授の石山徳子教授が「世代を超えたトラウマと希望 アメリカ核開発と先住民族」と題した発表を行いました。研究会はオンラインで開催され、10名が参加しました。
 
発表では、まず、アメリカ合衆国に内在する構造として、「セトラー・コロニアリズム」と呼ばれる概念が説明されました。「セトラー・コロニアリズム」とは、新しい土地に入って来た入植者が、その土地に先住していた人々の存在を抹消し、不可視化していくプロセスであり、そうした歴史から生まれる人々の思考と社会の構造を指すものです。現代のアメリカ社会においても「セトラー・コロニアリズム」の構造は根深いものであり、その例として、有名下着メーカーによる先住民の装束を用いた文化盗用の問題や、バイデン大統領就任式での“This Land is Your Land”の歌唱への批判が示すように、移民を中心とする多様性の称揚の一方で先住民の存在が忘却されているという事実が示されました。同時に、アメリカの先住民たちは、文化のなかで不可視化されるだけではなく、実際の暴力や社会構造の犠牲ともなってきたことが説明されました。発表の後半では、石山教授によるフィールド調査の報告として、「犠牲区域」と呼ばれる核開発地区に住む先住民の人々へのインタビューが紹介されました。インタビューを通して浮かび上がってくるのは、先祖から伝わる土地を重んじ、核開発の現状とときに矛盾した関係を結びながら、核開発地区の中で生き延びようとする先住民の姿です。最後に、石山教授は、David Shorterの議論に触れながら、先住民のこころを考えるにあたっては、ステレオタイプ的な見方に陥りがちな「スピリチュアリティ」を考えるのではなく、彼らと周囲との関係性に重きを置いた「リレーショナリティ」について考えていく必要があるのではないかと示唆しました。
 
続くディスカッションでは、土地に対する先住民の感覚の特有性や、先住民が抱く怒りや憤りの感情とアメリカ文化との関係性、また日本人と欧米人との怒りの感情への反応の違いなどに話が及び、アメリカと日本、先住民という三つの視点の比較から、それぞれの「こころ」について議論が深められました。