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NTT研究所発 「触感コンテンツ専門誌ふるえ」10月号に内田由紀子准教授のインタビューが掲載されました
NTTコミュニケーション科学基礎研究所が進める視覚・聴覚にとどまらない人間の五感伝送、五感コミュニケーション技術の研究開発成果をまとめた「触感コンテンツ専門誌ふるえ」2018年10月号に、内田由紀子准教授のインタビューが掲載されました。
インタビューのテーマは「文化と生活に根差すウェルビーイング実現のヒント」。
ウェルビーイングとは、身体的に、精神的に、社会的に良好な状態であることを指します。ただしその尺度は、文化的な背景や暮らしている環境の影響を受け、日本と外国、農村と都市などで異なります。
内田准教授は比較文化研究の視点からウェルビーイングや幸福感の研究を行っており、インタビューで「文化によってウェルビーイングのあり方は異なるのでしょうか?」「職業や生活環境でも異なりますか?」「ウェルビーイング研究は、社会に対してどのような貢献ができるのでしょうか?」などの質問に答えています。
*画像をクリックするとインタビュー記事全文をご覧いただけます。または、こちら http://furue.ilab.ntt.co.jp/book/201810/contents1.htmlからも記事がご覧いただけます。
広井良典教授のエッセイが京都新聞夕刊(10月4日付)の「現代のことば」欄に掲載されました
広井良典教授のエッセイが京都新聞夕刊(10月4日付)の「現代のことば」欄に掲載されました。
タイトルは「風土と宗教」で、地球上の各地でまったく異なる信仰や"神様〝のかたちが存在することを踏まえながら、そうした多様性がなぜ生じるのかという問いについて、それを風土との関係から考察しています。具体的には、中央アジアに住む遊牧民族であったアーリア人が、インドのガンジス河流域の森林地帯に移住する中で仏教の源流をなすウパニシャッドの哲学(自己と宇宙の一体化)を発展させる一方、乾燥した高原地帯であるイランに移住したアーリア人は、善悪二元論や最後の審判、復活等の内容を含むゾロアスター教(ユダヤ教に影響を及ぼしたとされる)を展開していったという事例にそくしながら、風土と宗教との関係、そしてグローバル化時代の展望を論じる内容となっています。
現代のことば 「風土と宗教」
広井良典 京都大学こころの未来研究センター教授
地球上には実に様々な宗教あるいは信仰の形が存在する。同じ人間でありながら、まったく異なる〝神様″を信じているわけである。では、そうした宗教の多様性はそもそもなぜ生まれるのだろうか。言い換えれば、「神のかたち」を決めるものは何なのだろうか。これがわかれば、異なる神様を信じる者どうしが互いに争うという、現在の世界で多く生じている対立も多少は緩和されるであろう。
議論を急ぐことになるが、それは究極的には「風土」であると思われる。やや単純化した例を挙げると・・・・
(2018年10月4日京都新聞 記事より)
吉岡洋特定教授の寄稿が 「KYOTO EXPERIMENT2018 京都国際舞台芸術祭」フェスティバルブックに掲載されました
吉岡洋特定教授の寄稿が「KYOTO EXPERIMENT2018 京都国際舞台芸術祭」フェスティバルブックに掲載されました。
2018年10月6日~28日、今年で9 回目を迎える「KYOTO EXPERIMENT2018 京都国際舞台芸術祭」が開催されます。フェスティバルブックには、公演やフェスティバルの情報、また各プログラムページには寄稿文が掲載されており、吉岡特定教授は美術家としてのバックグラウンドから出発し、インスタレーション・パフォーマンスという形式によって独自の領域を拓く田中奈緒子について紹介しています。
田中奈緒子 Naoko Tanaka 『STILL LIVES』 / 吉岡洋 『揺動するプラトニックな世界』
吉岡洋特定教授らの鼎談がロームシアター京都の機関紙『ASSEMBLY(アセンブリー)』に掲載されました
吉岡洋特定教授らの鼎談『劇場から町へ。ロームシアター京都が進む先』がロームシアター京都の機関紙『ASSEMBLY(アセンブリー)』に掲載されました。
『ASSEMBLY』はロームシアター京都が掲げる"新しい「劇場文化」をつくる"という劇場コンセプトを実現するために、主催事業と連動した、舞台芸術、そして劇場のさまざまな可能性を内と外の視点から思考する場としてのメディアです。
『劇場から町へ。ロームシアター京都が進む先』吉岡洋×若林朋子×橋本裕介
社会における芸術の有用性が求められ、産業や娯楽コンテンツと同じ視点で成果が語られる現在。しかし、それは、芸術本来の営みだろうか?社会との関り、子どもと大人、人類史的スケールなどの視点から再考した。誌面の内容はこちらからご覧いただけます。
機関誌『ASSEMBLY(アセンブリー)』京都に劇場文化をつくる01
読売新聞 夕刊 「語る 聞く」(8月22日付)に佐伯啓思特任教授が紹介されました
読売新聞 夕刊「語る 聞く」(8月22日付)に佐伯啓思特任教授が紹介されました。
この度、読売新聞社より転載許可を頂きましたので、記事を当ページに掲載します。画像をクリックすると、より大きくPDFページが開きます。
京都新聞(8月17日付)に河合俊雄教授の「河合隼雄、送り火と共に去り」が掲載されました
広井良典教授のエッセイが京都新聞夕刊(8月14日付)の「現代のことば」欄に掲載されました
広井良典教授のエッセイが京都新聞夕刊(8月14日付)の「現代のことば」欄に掲載されました。
タイトルは「現代版『不老不死』の夢」で、古代からの"永遠の夢"でもあった「不老不死」をめぐるテーマが「科学」の領域において具体的な現実性をもつ形で論じられつつある現状を指摘しつつ、それには再生医療など医学・生命科学系の流れと、"機械への意識の移殖"といった情報科学・工学系の流れがあるとし、それぞれの議論の構図を整理、概括しています。その上で、こうしたテーマをどのように受け止め、考えていけばよいかについて、佐野洋子氏の『100万回生きたねこ』などにも言及しながら、問題提起を行う内容となっています。
現代のことば 「現代版「不老不死」の夢」
広井良典 京都大学こころの未来研究センター教授
「不老不死」は、人間にとって古代からの〝永遠の夢"と呼べるようなテーマであった。ところが近年に至って、こうした不老不死をめぐる話題が、「科学」の分野において正面から取り上げられるに至っている。
私が見るところ、それには次のような二つの異なる流れがあるように思われる。第一は生命科学や医療の領域で、その象徴はやはり再生医療の急速な展開である。第二は、情報科学に関連する領域であり、その一つの典型は、人間の「意識」を機械やインターネット上に〝移植"し、「永遠に生きられる」ようにするという議論だ。
単純に言えば、前者は主として人間の「身体の不死」に関わるものであり、後者は主に「意識の不死」を目指すものと言うこともできるだろう。
以上のうち、メディア等を通じて近時私たちに身近になっているのは、後者の「意識の不死」に関する話題かもしれない。たとえば・・・・
(2018年8月14日京都新聞 記事より)
『日経おとなのOFF』8月号に、河合俊雄教授のインタビュー「心豊かに生きる処方箋 河合隼雄が読んだ本 & 河合隼雄の読むべき本」が掲載されました
『日経おとなのOFF』2018年8月号に、河合俊雄教授のインタビュー「心豊かに生きる処方箋 河合隼雄が読んだ本 & 河合隼雄の読むべき本」が掲載されました。
河合教授は、インタビューの中で、「物語は父・河合隼雄のキーワード」、「彼は人間の心を考える素材として『古事記』や『源氏物語』、民話から現代のファンタジーまで多彩な物語を取り上げ、そこから答えの原石を掘り起こす名手でした。それをもう一度"物語る"のが彼のスタイル」と述べています。
そうした河合隼雄先生の著書の一つ、『「老いる」とはどういうことか』では、古今東西の本、約40冊を取り上げ、老いに対する固定観念を払拭していきます。
掲載の中で、まず、「河合隼雄が読んだ本」では、"老い"という変化を受け止め、老いを豊かに生きるにはどうすればいいのか、がテーマとなっています。そして、著作『「老いる」とはどういうことか』で、河合隼雄先生が引いた本の中から、「老いを考える8冊」を紹介しています。続いて、「河合隼雄の読むべき本」では、老いを含め、心豊かに生きるにはどうすればよいか、の問いに応えてくれる著作として、「心の深層を解く河合隼雄の著作5選」が紹介されています。
(解説:粉川尚枝 特定研究員)
『日経おとなのOFF』のウェブサイト http://trendy.nikkeibp.co.jp/off/
吉岡洋特定教授の記事が新国立劇場・情報誌ジ・アトレ6月号に掲載されました
新国立劇場・情報誌ジ・アトレ『The Atre』6月号に吉岡洋特定教授の記事「ケントリッジ演出の『魔笛』を視る」が掲載されました。
同劇場で10月に開幕する新制作オペラ「魔笛」の演出を手がける南アフリカ出身の世界的美術家ウィリアム・ケントリッジに着目。
政治学やアフリカ研究を学び、さらにマイムや演劇を勉強し、演出や俳優の仕事をするなどの多彩な経歴の後、美術家としてドローイングのアニメーション作品が国際的に高く評価されたケントリッジ。彼のオペラ演出は、音楽ファンに限らず、美術家たちをも魅了してきました。今回、彼が演出する『魔笛』は、『魔笛』という作品の解釈そのものを大きく刷新するものとなっており、それが何をおいても注目すべき点であると紹介しています。
広井良典教授の文章が高等学校国語(現代文)教科書(大修館書店)に掲載されました
広井良典教授の文章が、高等学校国語(現代文)教科書(大修館書店)に掲載され、本年4月から使用されています(「現代文B改定版」「精選現代文B新訂版」)。文章は「コミュニティから見た日本」と題するもので、「孤独」に関する大学生の意見から始めつつ、現在の日本社会における社会的孤立とその背景、コミュニティの意味、集団のウチとソト、高齢化社会における地域密着人口の増加等、コミュニティをめぐる現代的課題について幅広く考察する内容となっています。
コミュニティから見た日本
広井良典
日本社会と「社会的孤立」
少し前に大学のゼミで卒業論文の構想発表を行った際、ある学生が「孤独を問いなおす」ということをテーマにしていた。通常は、「孤独」という言葉は概してネガティブな意味合いで使われることが多いが、孤独には必ずしもそうした否定的な側面ばかりでなく、もっとポジティブな面が含まれているのではないかというのがその基本的な趣旨だった。それに対して、別の学生から「『孤独』と『孤立』は違うもので、(やや単純化して言えば)『孤立』は回避すべきだが『孤独』はそうではない」といった意見が出され、さらにそれについて学生の間からいろいろな発言があり議論がひとしきり盛り上がった。‥‥
大修館書店のウェブサイト
広井良典教授のコラムが京都新聞4月10日付「現代のことば」欄に掲載されました
広井良典教授のエッセイが京都新聞夕刊(4月10日付)の「現代のことば」欄に掲載されました。
タイトルは「AIにできること・できないこと」で、最近のAI(人工知能)をめぐる議論が、時としてAIを過大評価ないし"神聖視"する傾向があることや、80年代の「第二次AIブーム」からの流れを踏まえつつ、原点に立ち返ってそもそも「AIにできること・できないこと」を根本から議論する必要があることを指摘し、脳の進化に関するマクリーンの3層構造説にも依拠しながら、AIの得意分野とその原理的な限界を論じる内容となっています。
現代のことば 「AIにできること・できないこと」
広井良典 京都大学こころの未来研究センター教授
「AI(人工知能)」という言葉が、あらゆる場面に登場している。しかし昨今の議論を聞いていると、いささかAIの能力が過大評価ないし〝神聖化″されているように思われることも多い。(中略)
ここで求められるのは、人間の脳との関係において、そもそも「AIには何かでき、何ができないのか」という基本論である。この話題については、脳に関する「マクリーンの3層構造説」と呼ばれる考えが手がかりになる。マクリーン(1913-2007)はアメリカの神経学者で、そもそも脳は、生物が生命進化の過程の中で発達させてきたもので、人間の脳はそうした進化のプロセスを反映するような三つの部分から成り立っていると論じた。‥‥
(2018年4月10日京都新聞 記事より)
内田由紀子准教授と佐伯啓思特任教授の対談記事が京都新聞に掲載されました
河合俊雄教授のインタビューが『おもしろい図書館』に掲載されました
河合隼雄財団の代表理事を務める河合俊雄教授のインタビューが『おもしろい図書館』に掲載されました。
『おもしろい図書館』は毎年、春に児童書出版社15社によって学校図書館に向けて制作されているカタログで、河合教授はインタビューで、河合隼雄と子どものこころ、絵本などについて語っています。
河合隼雄財団のウェブサイトでは、インタビューの概要をご覧いただけます。下記のリンク先にてお読みください。
『おもしろい図書館』に河合隼雄と絵本についてのインタビューが掲載されました | 河合隼雄財団ウェブサイト
広井教授のコラムが京都新聞2月16日付「現代のことば」欄に掲載されました
広井良典教授のエッセイが京都新聞2018年2月16日付の「現代のことば」欄に掲載されました。
タイトルは「生と死のグラデーション」で、認知症等の高齢者が増加する中、生と死というものが従来のように明確に峻別されるのではなく、生から死へのゆるやかな移行ともいうべき認識が生まれてきている状況を指摘しつつ、他方において、AIや情報技術等の高度化の中で"現実とは脳が見る(共同の)夢に過ぎない"といった世界観が浮上しており、これらが相まって「夢と現実」、「有と無」の境界線が揺らぎ、結果として"なつかしい未来"と呼びうる性格ももった新たな死生観が生まれつつあることを論じた内容となっています。
現代のことば 「生と死のグラデーション」
広井良典 京都大学こころの未来研究センター教授
私の実家(岡山)にいる母親は今年86歳になるが、何十年も続けてきた商店を2年ほど前に店じまいしたせいもあってか、しばらく前から現れていた認知症の症状が一層顕著になってきた。以前には、なかったことだが、10年以上前に亡くなった両親や、8年ほど前に亡くなった夫(つまり私の父)は今どこに行っているのか、なかなか帰ってこないではないか、といった趣旨のことを口にするようになった。
そのような母親の言葉を聞いていると、ある意味で半分〝夢の世界にいる″といった印象を受けることがある。そしてさらに言えば、「生」と「死」というのは通常思われているほど、明確に分かたれるものではなく、そこには、濃淡のグラデーションのようなものがあり、両者はある意味で連続的であって、母親はそうした(中間的な)状態にあるようにさえ思えることがある。(中略)
それはやや理屈っぽく言えば、「生」と「死」を明確に区分し、「生=有、死=無」とした上で、死の側を視野の外に置いてきた近代的な見方に対し、生と死をひとつづきの連続的なものとしてとらえることで、いわば死をもう一度この世界の中に取り戻し、両者をつなげるという意味をも担うのではないか。‥‥
(2018年2月16日京都新聞 記事より)
広井教授がドキュメンタリー映画『おだやかな革命』にインタビュー出演しました
広井良典教授が、自然エネルギー等を通じた地域再生に関するドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督)にインタビュー出演しました。
同映画は、福島県喜多方市や飯館村、岐阜県郡上市石徹白地区、岡山県西粟倉村などでの、若者や高齢世代による自然エネルギーを通じた地域再生の試みを描きつつ、持続可能な社会のありようや「豊かさ」の意味を問いなおす内容となっています。2018年2月より東京都東中野でロードショーのほか、全国順次公開の予定です。
ウェブで予告編が閲覧可能です(広井教授は13秒より出演)。
映画予告編(YouTube)
https://youtu.be/27kAAZEAizA
『おだやかな革命』公式ウェブサイト
http://odayaka-kakumei.com/
広井教授のエッセイ「『定常型』の豊かさや創造性を再発見する時」が京都新聞1月1日付「日本人の忘れもの」欄に掲載されました
広井良典教授のエッセイが京都新聞2018年1月1日付の「日本人の忘れもの――未来を拓く京都の集い知恵会議」欄に掲載されました。
同欄は、日本の伝統文化を踏まえた、これからの日本社会の創生に向けた有識者の提言をまとめたものです。広井教授の文章は「「定常型」の豊かさや創造性を再発見する時」と題し、経済の単純な「拡大・成長」よりも「持続可能性」「循環」「相互扶助」といった価値により大きな力点を置いた思想が今後は重要で、それは日本の総人口の長期推移が平安遷都から江戸期までほぼフラットであったことにも示されるように、京都を中心とする千年の歴史の中で培われた理念でもあることを述べる内容となっています。
「定常型」の豊かさや創造性を再発見する時
広井良典 京都大学こころの未来研究センター教授
新年のメッセージとしてはいささか辛口で無粋な内容かもしれないが、以下記してみたい。
現在、政府の借金は、1000兆円(GDPの約2倍)を超え、国際的に見ても突出した規模のものとなっている。なんとなく、"他人事"の話題のように聞こえる面があるが、要するに私たち現在の日本人は、そうした膨大な借金を若い世代、そしてこれから生まれてくる世代にツケ回しして半ば平気でいることになる。(中略)
では、そもそもなぜこのような状況に至ったのかを考えてみると、それは物事を"短期的な損得"のみで考え、かつ「すべての問題は経済成長が解決してくれる」という発想に由来していると私は思う。そして、皮肉にも近年半ば日常的な光景のようになった、企業の不祥事で上層部が深々と頭を下げるといった例も、同じ根から派生していることに気付く。
これはまさに「日本人の忘れもの」というテーマとつながるのではないだろうか。例えば江戸期に、今風に言えば"地域再生コンサルタント"として活躍した二宮尊徳にしても、日本資本主義の父と呼ばれつつ、「論語と算盤」、つまり倫理と経済が両輪となってこそ事業は永続すると論じた渋沢栄一にしても、あるいは近江商人を含むその他無数の市井の人々にしても、彼らはみな短期的な損得や利潤拡大よりも、将来世代への継承ということを重視した活動を展開した。それは経済ないし経営の規模の単純な「拡大・成長」よりも、むしろ「持続可能性」「循環」「相互扶助」といった価値により大きな力点を置いた思想だったと言える。....
(2018年1月1日京都新聞 記事より)
日本人の忘れもの――未来を拓く京都の集い知恵会議ウェブサイト
http://kyoto-np.jp/kp/kyo_np/info/nwc_wise/
広井教授のコラムが京都新聞「現代のことば」欄に掲載されました
広井良典教授のコラムが京都新聞夕刊(12月14日付)の「現代のことば」欄に掲載されました。
タイトルは「人生前半の社会保障」で、日本の社会保障給付費が国際比較の観点から見ても高齢者に偏り、教育を含めた子ども・若者向けの支援が大幅に少ない現状を指摘しながら、そのようになった背景や関連のテーマに関する議論の流れを整理しつつ、国・自治体レベルを含めて今後とられるべき方向や政策を提起する内容となっています。
現代のことば「人生前半の社会保障」
広井良典(京都大こころの未来研究センター教授・公共政策)
「人生前半の社会保障」とは聞き慣れない言葉かもしれないが、それは次のような趣旨である。
近年まで日本での社会保障をめぐる論議は、ほぼもっぱら「高齢者」関連のものだった。実際、日本の社会保障費は既に年間115兆円という規模に達しているが(2015年度)、社会保障全体の約半分(48%)は年金であり、実に55兆円に及ぶ。この額がいかに大きいかは、文部科学省の教育予算が兆円に過ぎないことや、国立大学の予算が1.1兆円という点からの対比からも明らかだろう。(中略)
なぜこれまで日本の社会保障の議論は圧倒的に高齢者中心だったのだろうか。それは高度成長期においては人生における様々な「リスク」が退職期にほぼ集中していたからであろう。....
(記事より)
◇関連する広井教授の著書
『持続可能な福祉社会 ─「もうひとつの日本」の構想』(ちくま新書/2006年)
広井教授のインタビュー記事が朝日新聞のウェブサイト『GLOBE』に掲載されました
広井良典教授のインタビュー記事が朝日新聞のウェブサイト『GLOBE』に掲載されました。
『GLOBE』は、海外の動きや出来事を深く掘り下げ、日本と世界で起きていることについて読者に考える材料を伝えるという趣旨の企画記事で、月1回の別刷り紙面と並びウェブ上のサイトを設けています。今回のインタビューは、「経済成長と幸せ」あるいは現代における経済成長の意味を問いなおす一連のシリーズ「豊かさのNew Normal」の一環をなすもので、上・中・下の3回にわけて掲載されています。
記事はすべてウェブで閲覧可能です。下記リンク先にてお読みください。
[特集・豊かさのNew Normal]
京都大学の広井良典教授に聞きました
「アメリカに住む? 考えたこともない」「移民もメキシコに帰っておいでよ」とメキシコの俳優・監督ガエル・ガルシア・ベルナル(38)は語りましたが、「個人のライフスタイルや幸せに重きを置く」という意味では、低成長が続く日本も考える時がきているようです。「定常型社会」を唱える京都大学こころの未来研究センターの広井良典教授(56)に、詳しく聞きました。3回に分けてお届けします。(GLOBE記者 宋光祐)
(上)日本もこれからは、成長より「定常」。...どういうことでしょう?
http://globe.asahi.com/feature/side/2017110900001.html
(中)GDP拡大を第一にするのはやめよう。と言われても、どうしたら?
http://globe.asahi.com/feature/side/2017110900002.html
(下)実はもともとのんびり生きていた日本人
http://globe.asahi.com/feature/side/2017111000001.html
◇関連書籍(記事で言及されている広井教授の著書)
『ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来』(2015年/岩波新書)
内田准教授のインタビュー「『豊かさ』変わる尺度」が河北新報に掲載されました
河北新報の特集記事「『豊かさ』変わる尺度 風土、絆...『幸福』地域で考える」(2017年9月17日付朝刊)に内田由紀子准教授のインタビューが掲載されました。
東日本大震災後、経済的な豊かさだけではない幸福のあり方が問われるなか、「幸福度指標」をまちづくりに導入する自治体が増えています。こうした動きについて内田准教授が紙面インタビューに答え、幸福度指標がつくられた背景や意義について解説すると共に、行政が指標を活用するためには継続的な調査分析が重要であることを強調しています。
また、岩手県の事例を紹介した部分では、同県の幸福度指標導入のために設置された研究会のアドバイザーを務めた広井良典教授のコメントも紹介されました。
記事は河北新報のニュースサイトで全文閲覧可能です。下記のリンク先にてお読みください。
◎京大こころの未来研究センター・内田由紀子准教授に聞く/指標の分析継続に意義
「幸福度指標」が地域の新しい尺度として広がる背景や意義を、内閣府の「幸福度に関する研究会」委員を務めた京大こころの未来研究センター准教授の内田由紀子氏に聞いた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「豊かさ」を示す指標はこれまで経済指標の国内総生産(GDP)が一般的に使われてきた。だが2000年代になると「GDPだけでは暮らしの豊かさを測ることができない」と限界が指摘され始め、幸福度の指標づくりが活発化した。
経済成長が見込めない時代を迎え、経済的な豊かさが人々の幸福感に結び付かなくなったことが一因。経済的に豊かでなくても、新たな生き方を模索して幸せを追求しようという意識が広がり、経済以外の側面も含め多面的に指標化していこうという動きになった。....続きをよむ
(河北新報 2017.09.17)
<東北の道しるべ>「豊かさ」変わる尺度 | 河北新報 ONLINE NEWS
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201709/20170917_73041.html
広井教授の対談記事「少子高齢化・人口減少社会と都市」が『建築雑誌』11月号に掲載されました
広井良典教授の対談記事が『建築雑誌』(日本建築学会の学会誌)2017年11月号に掲載されました。
対談は「少子高齢化・人口減少社会と都市」と題し、大方潤一郎・東京大学工学部都市工学科教授・高齢社会総合研究機構長と、小泉秀樹・東京大学教授の司会の下で行われたもので、同誌の特集企画「都市の未来を構想できるか?」の一環をなすものです。
2011年から本格的な人口減少社会に入り、かつ高齢化では世界のフロントランナーとなった日本において、どのような都市や地域の姿が求められるかについて、地方都市の空洞化、一極集中から多極集中への変容、地域密着人口の増加、社会的孤立への対応、歩いて楽しめる空間づくり、病や老い・死を包摂する都市など、幅広い角度から議論する内容となっています。
なお同号の巻頭記事は山極壽一・京都大学総長への「類人猿とヒトから考える都市」と題するインタビューとなっています。
[特集]第1部 人生・生活と都市:人が生きる場所としての都市はどうあるべきか?
少子高齢化・人口減少社会と都市
話し手:大方潤一郎 広井良典
聞き手:小泉秀樹
─ 少子高齢化と人口減少の観点から、日本の都市や政策の現状をどのようにとらえていらっしゃいますか。(小泉)
広井 まず、基本的な事実の確認をしておきます。日本の人口は2005年に初めて減少を記録し、その後数年上下していましたが、2011年からは完全に人口減少社会になりました。今の予測だと、2050年ごろには1億人を切り、さらに減り続けます。さかのぼると、明治以降の急激な増加があり、これからは急激な減少が始まるので、人口予測のグラフにしてみると、まるでジェットコースターのようなカーブになります。つまり、これまでとは真逆の時代を経験していくことになります。
高齢化については、よくも悪くも日本は世界のフロントランナーです。2060年を過ぎたころには約40%が65歳以上になります。日本が今後どうモデルをつくっていくかは世界的にも大きな問題なのです。
去年の夏に、1週間ほどかけて紀伊半島を見て回ったのですが、はからずも「シャッター通りをめぐる旅」となりました。ただ、それは人口減少だけが原因とは考えていません。....
『建築雑誌』(日本建築学会)※目次、特集の解説が読めます
http://jabs.aij.or.jp/
広井教授の『中央公論』11月号での論考が日経新聞「経済論壇から」で紹介されました
広井良典教授の『中央公論』11月号での論考が日本経済新聞(2017年10月28日付け)の「経済論壇から――衆院選の構図を読む」(執筆:土居丈朗慶応義塾大学教授)で紹介されました。
広井教授の『中央公論』での論考は、現在115兆円に及ぶ社会保障給付費のうち約7割は高齢者関係のもので、国際比較で見ても日本は教育を含めて子どもや若い世代への支援がきわめて手薄となっている現状を指摘し、その上で今回の衆議院選挙で安倍政権が掲げた「全世代型社会保障」という方向には賛意を示しつつも、1000兆円超の政府の借金を将来世代にツケ回しすることは最優先で縮減すべきであり、消費増税の使途変更に疑義を呈する内容となっています。
今回の日本経済新聞の記事は衆院選に関する広井教授らの論考を紹介するとともに、「若年世代の声を、政治にどう反映するか、重要な課題だ」とまとめています。
記事は日経新聞のウェブ版にも掲載されています。下記のリンク先にてお読みください(会員登録で全文閲覧可能)。
「経済論壇から――衆院選の構図を読む」 慶応義塾大学教授 土居丈朗
今月22日に投開票された衆議院総選挙。消費増税の使途変更と「全世代型社会保障」を解散の大義に掲げて安倍政権は圧勝した。
京都大学教授の広井良典氏(中央公論11月号)は、若年世代への支援が日本では極めて不足しており、日本の社会保障給付を高齢者中心のものから、子ども・若者や現役世代も重視したものにシフトしていく必要性があることには同意する。
しかし、政府の借金の削減よりも、現在の現役世代への給付拡大を前面に出すのは、ポピュリズム的な政治感覚とともに「成長がすべての問題を解決してくれる」という安倍晋三首相やその上の世代の典型的な思考が根底にあると見抜く。....
(記事より)
衆院選の構図を読む | 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2279246027102017MY5000/
広井教授のコラムが京都新聞「現代のことば」欄に掲載されました
広井良典教授のコラムが京都新聞夕刊(2017年9月29日付)の「現代のことば」欄に掲載されました。
タイトルは「創造的定常型社会」で、現在147万人の京都市の人口は、昭和43年(1968年)に140万人になって以降、この約50年の間にほとんど変化していないという事実を踏まえながら、"量的な拡大はなくとも文化や学術、芸能や工芸など質的な発展においてはきわめてクリエイティブ"であるという、「創造的定常型社会」の象徴的なモデルとしての意味を京都がもっていること等を論じる内容となっています。
現代のことば「創造的定常型社会」
広井良典(京都大こころの未来研究センター教授・公共政策)
京都市の人口は現在およそ147万人だが、先日関連の資料を見ていて、昭和43年(1968年)にすでに140万人に達しており、したがって京都市の人口はこの50年間ほとんど変化していないということを知り若干の感慨をもった。(中略)
私は以前から、これからの社会は「定常型社会」と呼ぶべき社会になっていくということを論じてきた。「定常化社会」とは、簡単に言えば人口やGDPが一定であっても、そこで十分な豊かさが実現していく社会をいう。ここで誤解してはならないのは、そうした定常型社会は決して"変化のない退屈な社会"ではないということだ。例えば音楽CDの売り上げ総量が一定であっても、ヒットチャートの中身はどんどん変わっていくように、量的に不変であることは質的な変化がないことを意味しない。むしろ定常型社会こそ、文化や学術、芸術や工芸等々においてクリエイティブな社会なのである。
ここまで記すと明らかなように、まあさに京都はそうしたこれからの時代の社会像としての「定常型社会」のモデルそのものである。....
(記事より)
◇関連する広井教授の著書
『定常型社会―新しい「豊かさ」の構想』 (岩波新書/2001年)※電子書籍もあり
熊谷准教授の編著書『ブータン 国民の幸せをめざす王国』の書評が毎日新聞、中外日報に掲載されました
熊谷誠慈准教授(上廣倫理財団寄付研究部門)が編著者の『ブータン 国民の幸せをめざす王国』(創元社/2017年7月)の書評が、2017年9月10日付の毎日新聞、9月1日付の中外日報に掲載されました。
■毎日新聞(2017.9.10付)
京都・読書之森『ブータン 国民の幸せをめざす王国』
書評より
「ヒマラヤの王国・ブータンといえば「幸福の国」のイメージが強い。しかし人口14億人の中国と、12億人のインドという大国に挟まれた70万人の小国が独立を維持していく苦労は誰もが想像できるだろう。最近でも3国国境が接する地域に中国軍が一方的に軍用道路の建設を始めたのをきっかけに、インドが国境付近に軍を展開、1960年代の中印紛争以来とされる緊張が走った。リアルなブータンは私たちがイメージしがちな「おとぎの国」では決してない。それでも「国民総幸福(GNH)」を掲げて国づくりを進める姿から学ぶべきことも多い。その実像を知るには打って付けの本である。....」
毎日新聞のウェブサイトで閲覧可能です(無料会員登録が必要)
https://mainichi.jp/articles/20170910/ddl/k26/070/306000c
■中外日報(2017.9.1付)
70万人の仏教国 その姿明らかに『ブータン 国民の幸せをめざす王国』
書評より
「ヒマラヤ山脈の南麓の王国、ブータン。秘境と呼ばれた人口約70万人の仏教国は、国王主唱のもとに「国民総幸福」を基本理念として国会の近代化を求めてきた。
本格的なブータン研究は、2012年1月に京都大こころの未来研究センターが王立ブータン研究所と研究協定を結び、「ブータン学研究室」を立ち上げてからスタートした。本書は同センターによる一般向けの「ブータン文化講座」で講演した研究者の論考を、ブータンの歴史、文化、社会、自然・環境の4部構成でまとめたものだ。....」
書籍の概要、目次などは、下記の記事に詳しくご紹介しています。
AI活用で政策提言。広井教授が日立京大ラボと行った共同研究の成果が公表されました
広井良典教授が、昨年6月に設置された日立京大ラボの研究チームと行った共同研究「AIの活用により、持続可能な日本の未来に向けた政策を提言」が公表され、2017年9月5日に記者発表が行われました(写真は記者発表風景)。
内容は、AIを活用しながら、これからの日本に関する社会構想と政策提言を行うもので、2050年の日本を視野に収めながら、現在のままでは日本社会は「破局シナリオ」に向かう可能性が大きいとの問題意識を踏まえ、①人口、②財政・社会保障、③地域、④環境・資源という4つの持続可能性に注目し、日本が持続可能であるための条件やそのためにとられるべき政策を提言する内容となっています。
具体的には、「都市集中シナリオ」と「地域分散シナリオ」という分岐が今後10年以内に起こり、持続可能性の観点からは後者の方向を早急に実現していくべきことを提言する内容になっており、「AIによる初の社会構想と政策提言」という意義をもった研究となっています。
今回の成果を踏まえ、モデルのさらなる精緻化や地方自治体等における活用、具体的な政策課題にそくした社会実験を今後進めていく予定となっています。
◇記者発表資料(PDF)
20170905京大_日立ニュースリリース.pdf
この成果は、日本経済新聞、日経テクノロジー、マイナビニュース、大学ジャーナルなどのメディアで報じられました。下記リンク先で閲覧可能です。
■「地方分散型」の政策選択を 京大と日立、AI活用し近未来提言(2017/9/6付 日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO20801390V00C17A9LKA000/
■日立と京大が開発のAI、2万の未来シナリオを作り23に分類(2017/09/06付 日経テクノロジー)
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/090509046/?P=1
■日立と京大、AIの活用で持続可能な日本の未来に向けた政策を提言(2017/09/07付 マイナビニュース)
http://news.mynavi.jp/news/2017/09/07/065/
■AIで予測した2万通りの未来シナリオをもとに、京都大学が政策提言(2017/09/10付 大学ジャーナル)
http://univ-journal.jp/15755/
センター創立10周年記念シンポジウムの記事が京都新聞に掲載されました
広井教授のインタビュー記事「若者の社会保障:揺らぐ働き方」が朝日新聞に掲載されました
広井良典教授のインタビュー記事が朝日新聞2017年8月4日付朝刊「オピニオン&フォーラム」欄に掲載されました。
今回の記事は、「若者の社会保障」をめぐる5回シリーズの一つで、「揺らぐ働き方」と題し若者の仕事ないし雇用をテーマとするものです。近年、日本では若い世代の失業率や貧困率が高い水準で推移し、また非正規雇用の割合がかつてに比べてかなり高い水準になっています。インタビュー記事ではこうした状況について、その背景、諸外国との比較等について分析するとともに、行われるべき政策的対応について幅広く論じる内容となっています。
朝日新聞デジタルに記事が掲載されています。
[ニッポンの宿題] 若者の社会保障4 揺らぐ働き方
■終身雇用、もう頼れないのに 広井良典さん(京都大学こころの未来研究センター教授)
高校や大学を出て会社に入り、その会社で終身雇用――。もう、そんな時代ではありません。しかし、政策も人々の意識も、変化のスピードに追いついていません。
結果として、若者に対する支援は手薄いままです。国内総生産(GDP)に占める失業・雇用関連の公的支出は、経済協力開発機構(OECD)平均の約5分の1に過ぎません。欧州と比べて失業率は低いけれども、貧困率が高い。非正規雇用が増え、若者の間に格差が広がっています。
高度経済成長期から1990年代くらいまで、若者の生活は会社が支えていました。会社が、いわば「見えない社会保障」として機能し、需要が増えて雇用も増える「拡大・成長モデル」もなんとか維持されていました。ですが、社会が成熟してモノが行き渡ると、需要はかつてのように増えない。すると、雇用も増えない。生産性の向上も、雇用を巡る競争を激化させる要因になりました。....続きを読む
(朝日新聞2017.8.3付朝刊)
[ニッポンの宿題] 若者の社会保障4 広井良典さん 工藤啓さん | 朝日新聞デジタル
http://digital.asahi.com/articles/DA3S13069075.html
(有料登録で全文閲覧可能)
内田准教授のコメントが京都新聞「誰かとつながる面白さ」(7月26日付)に掲載されました
2017年7月26日付の京都新聞の記事「誰かとつながる面白さ」に内田由紀子准教授のコメントが掲載されました。
住居を共有する「シェアハウス」、車に相乗りするサービス「シェアライド」など、暮らしの様々な物事を他人と共有するサービスや利用者が増えており、記事では現代人による「シェア」の実態をレポートしています。内田准教授は社会心理学社の視点から、若者を中心に「物の所有」から「経験やコミュニケーション」に価値を置く変化が進んでいること、日本古来からの「シェアする」文化について言及し、現代人が合理的にシェアを楽しんでいる現状についてコメントしています。
「誰かとつながる面白さ」
京大こころの未来研究センター 内田由紀子准教授に聞きました
さまざまな物や場所をシェアする仕組みが次々に生まれる背景には何があるのか。幸福度に詳しい京都大こころの未来研究センターの内田由紀子准教授(社会心理学) =写真= に聞きました。
◇
若者を中心に、物の所有よりも多様な経験やコミュニケーション能力に価値を置く人が増えたということがまず挙げられるでしょう。暮らしを他人とシェアすることは、一定の責任や役割を引き受けることになりますが、それでこそ得られる幸福感があるはず。(中略)
もともと日本人は、屋根続きの長屋に住んだり、机を並べて仕事したりと、シェアに慣れてきました。しかし地縁や血縁、上下関係から逃れられなかった昔と比べ、決定的に違うのは、人や物が流動的になったこと。....
(記事より)
広井教授のコラムが京都新聞夕刊(7月13日付)の「現代のことば」欄に掲載されました
広井良典教授のコラムが京都新聞夕刊(7月13日付)の「現代のことば」欄に掲載されました。
タイトルは「鎮守の森コミュニティプロジェクト」で、コンビニの数よりも多い"鎮守の森"のもつ意義に始まり、広井教授が進めているプロジェクトの内容(鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構想、鎮守の森セラピー、祭りと地域再生、鎮守の森ホスピスなど)や最近の展開を紹介する内容となっています(最後にセンター創立10周年シンポの案内も)。
現代のことば「鎮守の森コミュニティプロジェクト」 広井良典
最初に知った時に驚いたのだが、全国の神社・お寺の数はそれぞれ約8万数千で、あれほど多いと思われるコンビニの数約6万弱よりも多い。
加えて興味深いのは、日本の神社やお寺と「自然」との結びつきだろう。考えてみればキリスト教の教会は、尖塔が天を目指すように立っているなど、自然とのつながりは重要な要素ではない。ところが例えば神社の場合は、鎮守の森という言葉が示唆するように、森や木々の存在が不可欠なものとなっており、自然の中に「神々」あるいは有と無を超えた何かを見いだしてきた日本人の生命観・宇宙観をよく示している。....
(2017.7.13「京都新聞」夕刊)
◇関連ページ
鎮守の森コミュニティ研究所(広井教授が所長を務めています)
http://c-chinju.org/
京都大学こころの未来研究センター創立10周年記念シンポジウム
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/event2/2017/05/10-3.php
阿部准教授の研究が『NATIONAL GEOGRAPHIC』英語版・日本語版で紹介されました
阿部修士准教授の研究が『NATIONAL GEOGRAPHIC(ナショナル ジオグラフィック)』英語版・日本語版の2017年6月号の特集「なぜ人間は嘘をつくか」で紹介されました。
日常の小さな嘘から、学歴や身分の詐称、政治やビジネスの舞台でのでっちあげなど、嘘をつくことは人間の特徴であるとされ、研究対象になってきました。本誌では、なぜ人は嘘をつくのかをテーマに、古今東西、人間が嘘をついてきた様々な事例を挙げて、嘘と人間の根深い関係に切り込んでいます。記事の中で、阿部准教授が行ったfMRIを用いた「正直、不正直」に関する研究成果が取り上げられ、報酬に関わる脳の構造と嘘をつく行為の密接な関係について紹介されました。
嘘つきの脳をのぞく
京都大学の阿部修士とハーバード大学のジョシュア・グリーンという2人の心理学者は、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)で被験者の脳を調べ、不正直な人の脳では側坐核という小さな構造が活発に働くことを突き止めた。側坐核は前脳の基底部にあり、報酬に関わる情報処理に重要な役割を果たしている。「金を稼げる見込みがあるとわかって、脳の報酬系が興奮すればするほど、嘘をつく確率が高まります」とグリーンは言う。つまり、欲にかられると、嘘をつきやすくなるということだ。....
(記事より)
『NATIONAL GEOGRAPHIC(ナショナル ジオグラフィック)』
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/
河合教授の書評「『騎士団長殺し』における絵画の鎮魂とリアリティ」が『新潮』7月号に掲載されました
河合俊雄教授による村上春樹小説の最新作『騎士団長殺し』(新潮社/2017年)の書評、「『騎士団長殺し』における絵画の鎮魂とリアリティ」が、『新潮』2017年7月号に掲載されました。
河合教授は、ユング派分析家としての独自の視点で村上春樹小説を論じ、2011年には『村上春樹の「物語」―夢テキストとして読み解く―』を出版、その後も『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋/2013年)の書評や、海外に向けて村上作品を分析する英語の論考等を発表しています。今回の『騎士団長殺し』の書評では、「心理学的に見て、あるいは心理療法の立場から見て、自然なリアリティを持っている」とし、作品の中心に絵画があることを端緒として、関係のあり方、個人とそれを超える次元、主人公の変化のプロセスなど多角的に論を展開しています。
村上春樹の小説には、ストーリーとはもう一つ次元の異なる世界を示す小さな物語が含まれていることが多い。たとえば『1Q84』では、ふかえりという少女の書いた「空気さなぎ」という物語がそうであるし、『ねじまき鳥クロニクル』では、謎の女性ナツメグの息子であるシナモンがパソコンの中に残していた文章がそれにあたる。『スプートニクの恋人』では、疾走したすみれが残したフロッピーに、疾走の謎を解き明かすような2つの文書が保存されていた。村上春樹の作品それ自体が、既に不思議な世界を描き出しているかもしれないけれども、それらの言わば物語の中の物語は、物語からもう一段奥に入っていくことによって、さらに不思議な世界を垣間見せることに成功していると思われる。また奇妙だったり、恐ろしかったりする夢を見ても、それは夢であるので直接的にはわれわれの現実を脅かさないのと同じように、それらの不思議な物語は、作品を深めつつも、長編の中の短編整合性を狂わせない働きを持っている。
それに比べて『騎士団長殺し』には、それほどはっきりとした作中作に当たるような物語はない。....
(記事より)
上田助教らの研究成果が米科学振興協会(AAAS)のサイト「EurekAlert!」に掲載されました
『Cognitive Science』に論文が掲載された上田祥行助教、齋木潤人間・環境学研究科教授らの研究成果(2017年3月発表)が、アメリカの科学振興協会(AAAS)のサイト「EurekAlert!」で紹介されました。
科学・医療・テクノロジー分野を中心に最先端の研究成果を紹介している同サイトにおいて、京都大学からのパブリックリリース(英語版)が、ユニークなイメージイラストと共に掲載されています。
You don't see what I see? - Visual perception may depend on birthplace and environment
Perhaps we only see what we've learned to see.
In a recent multinational study in the journal Cognitive Science, a research team led by Kyoto University shows that an ability to perceive differences between similar images depends on the cultural background of the viewer.
Scientists have long recognized that the mental processes behind thinking and reasoning differ between people raised in Western and Eastern cultures. Those in the West tend to use 'analytical' processing -- analyzing objects independently of context -- while those in the East see situations and objects as a whole, which is known as 'holistic' processing.....
「EurekAlert!」/ 23-MAY-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-05/ku-yds052317.php
◇関連記事:国内のメディア掲載
上田助教らの研究成果が 京都新聞、中日新聞、日経新聞、マイナビニュースなどで取り上げられました
【論文情報】
Yoshiyuki Ueda, Lei Chen, Jonathon Kopecky, Emily S. Cramer, Ronald A. Rensink, David E. Meyer, Shinobu Kitayama, Jun Saiki. (2017). Cultural Differences in Visual Search for Geometric Figures. Cognitive Science.
DOI= https://doi.org/10.1111/cogs.12490 ※認証有り
上田助教らの研究成果が 京都新聞、中日新聞、日経新聞、マイナビニュースなどで取り上げられました
『Cognitive Science』に論文が掲載された上田祥行助教、齋木潤人間・環境学研究科教授らの研究成果(2017年3月発表)が、日経新聞、京都新聞、中日新聞、マイナビニュース、J-CASTニュースなど様々なメディアで取り上げられました。以下、各媒体の掲載内容の一部をご紹介します。
■「日本人とカナダ人、視覚認知に差異 京大解明、文化差影響か」
京都新聞(2017年3月26日付)
日本人とカナダ人では、瞬間的に物を見る時の着眼点が異なることが、京都大の上田祥行こころの未来研究センター助教や齋木潤人間・環境学研究科教授らのグループの研究で分かった。文化の違いが視覚認知に差をもたらしているのではないかという。(記事はこちら)
■「視覚の働きに文化影響?京大など研究 日本人とカナダ人 図形識別に差」
中日新聞(2017年3月26日付)
京都大の上田祥行(よしゆき)特定助教(認知科学)らとカナダなどの国際研究グループは、図形の相違点を瞬間的に見分ける視覚の働きが、日本人とカナダ人で異なることを突き止めた。視覚の基礎的な働きはこれまで「文化圏が違っても変わらない」と考えられてきたが、実際には文化の差が影響している可能性がある。(記事はこちら)
■「京大、日本の人と北米の人ではものの探し方が違うなど文化が視覚情報処理に与える影響を分析」
日本経済新聞(2017年3月27日)
京都大学からのプレスリリースを掲載(記事はこちら)
■「日本人と北米人の"物の探し方"は違う - 文化が視覚処理にも影響」
マイナビニュース(2017年3月27日)
上田祥行 京都大学 こころの未来研究センター特定助教、齋木潤 人間・環境学研究科教授、北山忍 ミシガン大学教授、Ronald Rensink ブリティッシュコロンビア大学教授らの国際共同研究チームは、視覚情報処理のみに焦点を当てたシンプルな課題を用いて、文化が視覚情報処理に与える影響を分析した。(記事はこちら)
■「日本人と北米人、視覚認知に差異 文化の違いが影響」
J-CASTニュース(2017年3月27日)
京都大学とカナダ・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)などの国際共同研究チームはこのほど、日本と北米で実験を行い、基礎的な視覚処理は、その人が属する文化により違いがあることが示されたと発表した。(記事はこちら)
※記事リンクは日数経過により各媒体にて無効となる場合があります。
【論文情報】
Yoshiyuki Ueda, Lei Chen, Jonathon Kopecky, Emily S. Cramer, Ronald A. Rensink, David E. Meyer, Shinobu Kitayama, Jun Saiki. (2017). Cultural Differences in Visual Search for Geometric Figures. Cognitive Science.
DOI= https://doi.org/10.1111/cogs.12490 ※認証有り
京大附置研・センターシンポジウムで吉岡教授が講演。読売新聞に掲載されました
2017年3月11日、京都大学附置研究所・センターシンポジウム「京都からの挑戦 -地球社会の調和ある共存に向けて」が金沢市の石川県文教会館で開催されました。
当日は7名の研究者らがそれぞれの研究成果を紹介。センターからは吉岡洋教授が「芸術とはどんな〈出来事〉なのか?」という演題で講演しました。また、山極壽一総長らが登壇したパネルディスカッションのコーディネーターを吉川左紀子センター長が務めました。
当日の模様は、3月31日付の読売新聞に大きく見開きで紹介されました。下記リンク先の京都大学のウェブサイトでも詳しい報告記事と写真をご覧いただけます。
第12回京都大学附置研究所・センターシンポジウム/京都大学金沢講演会を開催しました | 京都大学
京都からの挑戦 -地球社会の調和ある共存に向けて
人間活動の多くが作品 吉岡洋 こころの未来研究センター特定教授
「美学芸術学」という、少し聞き慣れない研究分野を通して、哲学的に芸術作品と向き合ってきた。
美学とは、人間が何かを直接感じる能力の研究だ。私たちの直感は、実際は知識や経験などの影響を大きく受けている。花壇で目にしたミミズに驚くのはその役割を理解していないからで、生物学的にミミズを学べば「かわいい」という直感が生まれるかもしれない。
本当の意味で物事を直感的に感じるには、既存の概念から解き放たれる必要がある。異なる時代や文化の価値観を学び、感じる能力を高めることが重要だ。
直感的な美によって見いだされる、何の役に立つか分からないものが芸術だ。私たちは多くの存在に意味を求めがちだが、そうした常識的とされていることが実は非常に不自由だということに触れさせるきっかけになるのが芸術だと思う。....
(2017.3.31 読売新聞朝刊)
内田准教授のインタビュー「富の再分配の時代へ 社会の幸福にどう貢献」が毎日新聞に掲載されました
内田由紀子准教授のインタビューが、毎日新聞の創刊145年特集「よりそうSPECIAL INTERVIEW」(2017年2月21日付)に掲載されました。
すべての人が助け合い寄り添い合える「共生社会」の実現をテーマとした特集で、内田准教授は、現代社会の閉塞的状況を打破するキーワードとして「ソーシャルキャピタル」(社会関係資本)を挙げ、社会・地域における人々の信頼関係やつながりの大切さを教える「ソーシャルキャピタル教育」の必要性や議論の場、メディアの存在意義について問いかけました。
記事の全文が毎日新聞のニュースサイトで閲覧可能です(無料会員登録が必要です)。下記リンク先のページをお読みください。
よりそうSPECIAL INTERVIEW 内田由紀子さん 富の再分配の時代へ 社会の幸福にどう貢献 | 毎日新聞
個人の幸福と、その個人を取り巻く社会や場、文化とのかかわりを研究しています。従来、幸福や意思決定はあくまで個人的なものと考えられていましたが、一方で自分の幸福は周囲の他者の幸福と結びついている。そうした幸福の「伝播」メカニズムを検証したいと考えています。この場合の他者は「家族」のような身近な存在だけでなく、「職場」「地域」あるいは面識がない人とも間接的につながっている可能性があります。
改めてこの約150年の近代産業の発展を振り返ると、個人の自由の拡大が個人の幸福と結びつき、さらに市場原理、個人主義、自由主義に基づく競争社会が繁栄をもたらしました。しかし....。
(2017.2.21 毎日新聞)
吉岡教授のインタビュー「芸術とはどんな〈出来事〉なのか?」が読売新聞に掲載されました
2017年2月21日付の読売新聞朝刊に吉岡洋教授のインタビュー記事が掲載されました。
石川県文教会館にて3月11日に開催される京都大学附置研究所・センターシンポジウム「京都からの挑戦 自由風格フリースタイル、京大」の登壇者を取り上げた連載記事で、吉岡教授は当日の講演テーマ「芸術とはどんな〈出来事〉なのか?」について、テーマに込めた意味や、芸術の意味の変遷について語っています。
自由風格:京大附置研シンポ
芸術とはどんな〈出来事〉なのか? ー 吉岡洋さん
模倣、破滅 変わる価値観
人間は古くから芸術とともにありました。たとえば縄文土器の文様は、煮炊きするだけなら必要ありません。芸術は人間の根源に関わるものだと考えています。
では、芸術とは何でしょうか。この問いに人間が向き合うようになったのは、実はここ100年のことです。古代ギリシャからルネサンス、19世紀の印象派に至るまで、芸術とは自然を「模倣」するものでした。しかし、20世紀に入り、それまで考えられなかったものが、芸術と呼ばれるようになりました。(中略)
スープの缶詰や洗剤の箱を絵画の題材にしたアメリカのアンディ・ウォーホルも60年代のアメリカで大きな批判にさらされました。しかし、いずれも今では世界中で芸術として評価されています。
こうした変化には文化人類学の発達が関係しています。....
(記事より)
京都大学附置研究所・センターシンポジウム・京都大学金沢講演会「京都からの挑戦―地球社会の調和ある共存に向けて」
(※シンポジウムの参加申込は定員に達したため受付終了しています)
内田准教授が岩手県で講演。岩手日報、岩手めんこいテレビで紹介されました
2017年2月2日、内田由紀子准教授が岩手県盛岡市で開催された、ブータンの生活を通して幸福について考える講演会で講演を行いました。講演会は、岩手県民会館で開催中のブータンの展覧会にあわせて県が開催し、約100人が参加しました。
当日のレポートは、地元紙の岩手日報に掲載され、岩手めんこいテレビのニュースで放映されました。FNNウェブサイトでニュース動画を視聴でき、講演内容をご覧いただけます。
ブータンを通し幸福について考える講演会「いま、幸福を考える」- FNN(岩手めんこいテレビ)
共生や充足感が幸福へのヒント
盛岡・ブータン展講演会
県は2日、盛岡市内丸の県民会館、講演会「いま、幸福を考える」〜「しあわせの国」」ブータンを通して見る日本〜を開き、京都市の京都大こころの未来研究センター准教授の内田由紀子さん(41)=社会心理学=が、健康や経済力など、それぞれの文化で幸福のために重視することが異なることを語った。
約100人が参加。内田さんは、経済力が必ずしも幸福度の高さに結びついていないことを指摘。ブータンを訪れた際の写真を紹介しながら、同国の人々は他者との共生や長期的視点で充足感を得られていることを紹介した。....
(2017.2.3付「岩手日報」より)
広井教授の連携プロジェクト「福祉と心理の総合化に関する研究」が読売新聞で紹介されました
広井良典教授の連携プロジェクト「福祉と心理の総合化に関する研究」が読売新聞2017年2月8日付夕刊「こころ」面で紹介されました。
同研究は、2015年4月に始まった生活困窮者自立支援法により設立された「生活自立・仕事支援センター稲毛」(千葉市)との共同研究で、現在の日本においては失業・雇用、貧困、住まいなどの「福祉」的課題と「心理」面でのケアが複合化しており、従来の縦割りを超えた包括的な対応が必要になっているとの問題意識のもと、同センターでの相談内容を多角的に分析し、今後求められる対応のあり方を吟味するという内容のものです。
記事の全文を読売新聞のウェブサイトで閲覧可能です。下記リンク先にアクセスしてお読みください。
福祉相談と心理的ケア...生活困窮、心の問題と連動 京都大などが共同研究 - YOMIURI ONLINE/yomi Dr.(ヨミドクター)
失業、貧困、引きこもりなどで、福祉の相談窓口を訪れる人の中には、心理面のケアが必要な人が少なくない――。そんな問題意識から、京都大学こころの未来研究センターと千葉市の自立相談支援機関が、生活困窮者の実態を調査し、その傾向を分析する共同研究に取り組んでいる。
「福祉の専門家と心理学・精神医療の専門家は従来、育成過程も相談窓口も別々だった。しかし、現代社会で生活に行き詰まる人の問題の多くは、両方の領域にまたがり、切り離しては対応できないと感じる」
研究代表者を務める京都大学教授の広井良典さん(前千葉大学教授)は、こう言う。
例えば、引きこもり問題。典型的なのは学生時代に不登校になり、そのまま中高年に至るケースだが、最近は、不況で就職先が見つけられず、大学を卒業してから、こもり始める例もあるという。いずれにしろ、親が高齢になって収入が減ったり、亡くなったりすると生活が成り立たない。
「少年期からの心の問題の要素にせよ、社会経済情勢の影響にせよ、複合的な要因が関わっており、心理的ケアや就労支援、住宅支援などを含む包括的な対応が必要になっている」と広井さん。....元の記事を読む
(2017.2.8「読売新聞」夕刊)
□関連ページ
【平成28年度 教員提案型連携研究プロジェクト】福祉と心理の総合化に関する研究 - 京都大学こころの未来研究センター
広井教授のインタビュー記事「成長神話のその先へ」が毎日新聞に掲載されました
広井良典教授のインタビュー記事が毎日新聞2017年1月11日付夕刊に掲載されました。同記事は「この国はどこへ行こうとしているのか2017」というシリーズの1回目で、「成長神話のその先へ」と題するものです。
トランプ現象やイギリスのEU離脱などに新たな解釈を行いつつ、著書『ポスト資本主義』での議論も踏まえながら、人口減少が本格化し、高度成長期とは異なる「ポスト成長」時代の新たな社会像や価値を見出していくポジションにある日本が実現していくべき方向や対応のありようを、「人生前半の社会保障」と若者支援、「地域への離陸(ローカライゼーション)」などの柱にそくして語る内容になっています。
毎日新聞のニュース・情報サイトに記事が公開されています。下記のリンク先にアクセスしてお読みください(無料会員登録で全文閲覧可能)。
この国はどこへ行こうとしているのか2017 京大教授・広井良典さん
「成長神話のその先へ」
これからは「ポスト資本主義」の道を探るべきだと主張している広井良典さんが、「拡大・成長」にひた走る社会への漠然とした違和感を自覚したのは、実に中学2年ごろにさかのぼる。時代は1970年代半ばだった。
♪恋人よ ぼくは旅立つ 東へと向かう列車で......
75年末に発売された、太田裕美さんが歌う「木綿のハンカチーフ」(松本隆さん作詞)。華やかな都会に向かって旅立つ恋人との別離の切なさが時代とシンクロし、爆発的にヒットした。だが、岡山県で暮らしていた広井さんは「全てが東京に向かう」社会の空気に同調しきれなかった。「偏差値」や「順位」ばかりが重んじられる、経済成長と表裏一体の教育の有りようにも反発心を覚えた。
振り返ると、70年代は現代と似ていると思っている。「拡大・成長をひたすら求める流れがある一方、国際的シンクタンク『ローマクラブ』が『成長の限界』というリポートを出し、石油ショックや公害が顕在化していて、経済成長だけで人間は豊かになるのか、という議論が盛んにあった」。それでも情報化、グローバル化などをテコに、80年代以降も社会の成長への渇望は止まらなかった。
あれから約40年。古都で研究を続ける広井さんは今が時代の転換期にあると感じている。「経済が人口も含めて『拡大・成長』を続けていた時代から、別の豊かさのあり方に方向転換していく岐路に立っています。2016年に起きた個々の事柄は、今後も限りない成長の追求を続けるか、別の豊かさを志向するのか、両者がせめぎ合う時代状況を示しています」(中略)
このような自身の考えを世に問うたのは、15年に出版した「ポスト資本主義」(岩波新書)。....
(2017.1.11 毎日新聞夕刊/記事より)
この国はどこへ行こうとしているのか2017 京大教授・広井良典さん | 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20170111/dde/012/040/002000c
《記事で紹介された書籍》
『ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 』(岩波書店/2015年)
内田准教授のコメントが東京新聞「3.11後を生きる」に掲載されました
内田由紀子准教授のコメントが2016年12月19日付の東京新聞に掲載されました。東日本大震災後の日本人の暮らしや価値観を問う連載企画「3.11後を生きる 分配のかたち」では、複数の幸福度調査の結果を取り上げ、人々の幸福の感じ方について考察。内田准教授は自身の幸福感研究の知見をもとに、国や地域の文化や環境によって幸福感が異なる点や、日本独自の幸福度指標作成への取り組みについてコメントしています。
3.11後を生きる 分配のかたち
幸せ高める前向き思考 各国比較調査から
国連開発計画による「人間開発指数」や、別の国連関連組織による「世界幸福度報告書」などでは、北欧諸国が上位に来る。これらの調査は、一人あたりのGDPや、平均寿命、所得の平等さなど、客観的に得られる指標を足し合わせている。
いずれの調査でも、日本の位置は「中の上」程度にすぎない。豊かなわりに不幸な国なのだろうか。
(中略)
経済的な豊かさを表す数値では分からないものを示し、しかも欧米的な価値観とも異なるーそんな日本的幸福感の指標を、内田さんたちは作りたいと考えていた。....
(2016.12.19 東京新聞/記事より)
広井教授の論考が『AERA(アエラ)』 の大特集「宗教と日本人」に掲載されました
広井良典教授の論考が『AERA』 (アエラ/発行:朝日新聞出版)2017年1月16日号の大特集「宗教と日本人」に掲載されました。同号の特集は「神さま 仏さまはどこにいる」と題して、現代の日本社会における宗教のありようと今後の展望を様々な角度から検討するものです。
広井教授の論考は、現在の若い世代の間で死生観や伝統的なものへの関心が高まっていることを手がかりとして、もっぱら物質的な富の拡大を追求する傾向の強かった高度成長期からの意識の変化を吟味するとともに、情報技術の展開の中で"現実とは脳が見る(共同の)夢"という世界観が浸透し始めており、それが高齢化の進展とも相まって「リアルとバーチャル」の連続化と呼ぶべき現象に至り、成長の時代には単一で確固たるものに見えた「現実」の多層化が生じていることを論じる内容となっています。
○オピニオン 日本人に宗教は必要か
宗教への関心強い若者 夢と現実の新たな地平
広井良典さん [55] 京都大学こころの未来研究センター教授
私は大学の講義やゼミで死生観をめぐる話題を毎年取り上げている。ここ10年ほど、そうしたテーマへの学生たちの "食いつき" はかなり強く、個人差はあるものの、死生観や宗教についての若い世代の関心の高さを痛感してきた。宗教と幸福、自殺予防との関係や、アニメの聖地などを卒論のテーマにする学生もいる。
全国に8万ヶ所以上存在する神社を自然エネルギーなどと結びつけ、地域コミュニティーの接点として再生していくーー。私はそんな「鎮守の森コミュニティ・プロジェクト」をささやかながら進めている。ちなみにお寺もほぼ同数で、いずれもコンビニの数(5万強)より多い。各地の神社などを訪れると、意外にも若者の姿を多く見かけることを印象深く思ってきた。
いわゆるパワースポットブームといったこととも関連するだろうが、現在の若い世代の間に、死生観や宗教を含めて従来は "非科学的" とされてきたような事柄への関心が高まっているのは確かなように思われる。
こうした状況は、時代の構造的な変化と深く関係している。....
(『AERA』 2017年1月16日号/記事より)
広井教授が参加した新春座談会記事が京都新聞の元旦特集に掲載されました
広井良典教授が参加した新春座談会の記事が京都新聞1月1日付朝刊の元旦特集に掲載されました。
座談会は「未来への希望 京滋から問う」と題するもので、広井教授のほか、井上安寿子氏(京舞井上流舞踏家)、竹田正俊氏(クロスエフェクト社長)、朝原宣治氏(北京五輪銅メダリスト)の計4名によってなされたものです(司会は永島宣彦・京都新聞社社長)。
「新たな年を迎えた。国内では急速な高齢化や人口減少が進み、世界は政治・経済とも激動が続く。私たちの暮らしの豊かさを守り育む地域社会の重要性は、ますます高まっている。新時代に向け京都、滋賀はどうあるべきか。人口減社会に希望を見出そうと政策提言をしている京都大学こころの未来研究センター教授の広井良典さん(55)、人間国宝の曾祖母、母から伝統芸を受け継ぐ京舞井上流の舞踏家井上安寿子さん(28)、京都の中小・ベンチャー企業の中堅リーダーとして活躍する試作品メーカー・クロスエフェクト社長の竹田正俊さん(43)、オリンピック銅メダリストで次世代育成や地域活性化にも取り組む朝原宣治さん(44)の4人に語り合ってもらった」とのリード文に始まり、座談会は京都の可能性と課題が縦横に論じられる内容となっています。
座談会 未来への希望 京滋から問う
京都大教授 広井良典さん
京舞井上流舞踏家 井上安寿子さん
クロスエフェクト社長 竹田正俊さん
北京五輪銅メダリスト 朝原宣治さん
司会 永島宣彦 京都新聞社社長 主筆
◆これまで私たちが常識と思っていた倫理や価値観が崩れ、世界は混迷の時代を迎えています。トランプ氏が勝利した昨年の米大統領選は象徴的でした。日本も先行きが見通しにくく、不安感や閉塞感が深まっています。新年にあたり、各界で新しい方向を模索している皆さんに、希望の持てる地域社会をつくるため、ご提言やヒントをいただければと思います。まず京都の可能性をどう感じておられますか。
広井 京都への訪問者数は過去最高を更新し、存在感がますます高まっている。日本はずっと拡大成長で来たが、数年前から人口減少社会に入り、高齢化も進んでいる。従来のような成長路線では立ちゆかない。成熟社会のモデルを考えるのが、これからの日本の中心的な課題だろう。
「成熟社会の豊かさ」という視点でみれば、京都がぴったりあてはまる。戦後の高度経済成長期は首都圏に人口が集まったが、京都の人口や経済規模はある程度コンスタントな上、伝統を重視しつつ、その中から新しいものを創造している。自治会や町内会などコミュニティーがしっかり根付いていることも、地域社会が重要になる中で大きな資産になる。企業は金融中心のバブルの方向ではなく、地域に根ざして持続可能性を重視しながら展開しているところが多い。豊かさという意味で魅力的だ。成熟社会の一つの姿であり、京都の強みだろう。
(2017.1.1 京都新聞 朝刊/記事より)
河合俊雄教授のインタビュー「心の深いところが描かれているファンタジー」が『月刊清流』に掲載されました
清流出版の発行するシニア層向けのライフスタイル誌『月刊清流』2017年2月号に河合俊雄教授のインタビュー「心の深いところが描かれているファンタジー」が掲載されました。
河合教授が編者をつとめた岩波現代文庫のシリーズ、河合隼雄〈子どもとファンタジー〉コレクションは、大人への児童文学のすすめと心理学的なその読み方の指南書のような本です。
このインタビュー記事では、河合隼雄がなぜこのような本をたくさん書いたのか、また、子どもの本なのにどうして大人が読むとよいのかといったことを、自身の読書体験を交えながら紹介しています。
また、ファンタジーであるからこそ現実が上手に描けることもある、ということにも触れています。(解説:畑中千紘助教・上廣こころ学研究部門)
心の深いところにあるものを描こうとすると、現実とは少し違う不思議な、別世界の物語になったりします。それをファンタジーと呼んでいますが、優れた物語は現実と無縁ではありません。むしろ現実を上手に描くために、ファンタジーとして物語るほうが伝わりやすいということがあります。つまり、物語に登場する子どもの心を通したほうが、現実社会に生きる人間の心がわかる、という側面があるのです。
大人にも子どもの本を読んでほしいと思うのは、何かの折に、子どもがふと示す深いもの、心の動きや言い分をキャッチする視点がもてるということです。大人にこそ、子どもの本は有用なのかもしれません。
(本文より)
河合隼雄財団のウェブサイトでは、より詳しい紹介記事が掲載されています。
「月刊誌『清流』に河合隼雄の〈子どもとファンタジー〉コレクションが紹介されました!」
http://www.kawaihayao.jp/ja/information/publication/information/publication-1472.html
吉岡教授がスロベニア芸術科学アカデミーでのシンポジウムに登壇。スロベニアのTVニュースで放映されました
吉岡洋教授が、2016年11月24日・25日、スロベニアの首都、リュブリャナのスロベニア芸術科学アカデミーで開催されたシンポジウム「Second International colloquium on contemporary theory, philosophy, esthetics, politics, society, new media technology and economics」に登壇しました。シンポジウムの模様は、スロベニアのテレビニュース「RTV KULTURA OB 22H」で放映されました。
(番組画像より)
番組では、吉岡教授のコメントや講演内容を扱ったレポートが紹介されました。下記リンク先のウェブサイトで公開されています(スロベニア語です)。
KULTURA OB 22H / RTV Slovenija
http://4d.rtvslo.si/arhiv/kultura/174439507
広井教授が「人と環境にやさしい交通をめざす全国大会」で基調講演を行い、福井新聞に掲載されました
広井良典教授が「第8回 人と環境にやさしい交通をめざす全国大会~つなげよう人と地域、めざそう夢のあるまちづくり」in 福井(2016年11月27日)で基調講演を行いました。
同全国大会は、2005年に宇都宮市で開催されたのを皮切りに、京都市、横浜市、東京都等においてこれまで7回開催されてきており、車に過度に依存した交通体系からの脱却、公共交通を柱とした交通体系への転換を基本的な方向にすえて市民、行政、研究者等が連携した幅広い活動を進めてきています。
広井教授の基調講演は、「人口減少社会を希望に――ローカル化時代のコミュニティとまちづくり」と題し、日本の都市が、アメリカの都市をモデルとして高度成長期を中心に圧倒的に「自動車中心」に作られてきたことを確認しつつ、"歩いて楽しめる街"は本来は高齢化とは無関係に「都市」本来のあり方として実現されていくべきものだが、日本の場合は、高齢化への対応が社会全体の重要課題として認識される中、高齢化をチャンスとして"コミュニティ空間という視点を重視した、歩行者中心の街"を実現していくべきという内容を、ドイツなどの動きに関する写真や動画を交えて報告する内容のものでした。
基調講演のあと、宇都宮浄人関西大学教授をコーディネーターに、原田昇東京大学教授や福井県庁、福祉市役所、福井鉄道、えちぜん鉄道、市民団体の代表によるパネルディスカッションが行われました。
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講演の内容が11月28日付の福井新聞、Yahoo!ニュースに掲載されました。下記リンク先の福井新聞のウェブサイトで全文をお読みいただけます。
「高齢化は脱車社会の好機と強調 福井で京都大学の広井良典教授」 (2016.11.28)| 福井新聞ONLINE
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/society/109883.html
広井教授のWEBRONZAでの論考「人工知能(AI)は死の夢を見るか?」が朝日新聞で紹介されました
広井良典教授のWEBRONZA(朝日新聞社のインターネット上のオピニオン媒体)での論考「人工知能(AI)は死の夢を見るか?」が朝日新聞11月8日付朝刊で紹介されました。
同論考は「「無」と「死」を考える時代」という連載の第1回分で(WEBRONZA10月26日掲載)、人工知能と死との関わりをめぐる問いから始め、「現実とは『脳が見る共同の夢』か」といった話題にそくして死や無をめぐるテーマに新たな視点からアプローチする内容となっています。
連載第2回「「無の科学」は可能か」、第3回「生と死のグラデーション」、最終回「ポスト成長時代と"夢人口"」はそれぞれ11月2日、同7日、同10日付のWEBRONZAに掲載されました。
人工知能は死の夢を見るか?
人工知能をめぐる様々な議論が連日のように展開されています。
「人工知能は死の夢を見るか?」(10月26日)で、京都大学こころの未来研究センター教授の広井良典氏=写真=は、原稿のタイトルに掲げたような問いを一つの手がかりとして、「『死』や『無』というテーマを新しい観点から深めていけないか」と問題提起します。
また、そうしたテーマに通底するものとして「私たちが生きているこの『現実』」とは一体どういう性格のものだろうかと問いかけます。
人工知能の考察のはずなのに哲学の議論? 広井さんはぐいと力業で論を前に進めます。‥‥
(松本一弥編集長/朝日新聞11月8日付朝刊より)
■連載 「無」と「死」を考える時代
広井良典 京都大学こころの未来研究センター教授(公共政策・科学哲学)
[1]人工知能は死の夢を見るか?
http://webronza.asahi.com/science/articles/2016101000002.html
[2]「無の科学」は可能か
http://webronza.asahi.com/science/articles/2016101900004.html
[3]生と死のグラデーション
http://webronza.asahi.com/science/articles/2016101900006.html
[4]ポスト成長時代と"夢人口"
http://webronza.asahi.com/science/articles/2016101900007.html
※WEBRONZAは有料コンテンツです。冒頭部分のみウェブで閲覧可能です。
広井教授のインタビューコメントが読売新聞に掲載されました
広井良典教授のインタビューコメントが読売新聞(2016年10月19日付朝刊)の社会保障世論調査記事に掲載されました。同調査は、読売新聞が全国の18歳以上の有権者3000人を対象に行ったもので、社会保障に関する現状や不安、今後のあり方、年金や保育、介護等について幅広くたずねる内容となっています。調査結果から、社会保障制度が今後維持できなくなるという不安を感じている人が全体の93%に及ぶこと等が明らかになる一方、その財源や負担に関する意識はなお希薄であることが浮かび上がり、広井教授のコメントはそうした状況が将来世代に多額の借金を先送りする結果に至っていることに警鐘を鳴らす内容となっています。
全世代で応分の負担を 京大教授(公共政策)広井良典氏
今回の調査では、日本の社会保障を巡る状況が、国民の意識の面でも、かなり危機的であることが浮かび上がったと思う。
日本の社会保障制度が維持できなくなるという不安を93%の人が感じる一方で、消費増税の見送りが社会保障制度に今後悪影響をもたらす不安の有無を尋ねたところ、4割が「感じない」と答えた。先行きに不安を感じながら、巨額の社会保障費をどうやってまかなっていくかという肝心な点については、どこかひと事と感じている人が少なくないようだ。
そもそも社会保障は、「家族を超えた支え合い」と言い換えることができる制度であり、みんなで税や保険料を納め、お互いを支え合うという仕組みだ。‥‥
(記事より)
◇関連書籍 ※広井教授の著書一覧は「スタッフページ:広井良典」の業績欄に掲載
『日本の社会保障(岩波新書)』(岩波書店/1999年)
内田准教授の論考が毎日新聞「メディア時評」に掲載されました
内田由紀子准教授の論考が、毎日新聞2016年10月15日付朝刊「メディア時評」に掲載されました。同紙紙面をもとに社会について論評する連載の第4回目で、今回が最終回です。ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典東京工業大学栄誉教授が記者会見で訴えた「基礎研究の危機」を巡っての報道に注目し、短期的成果重視の風潮から長いビジョンで基礎研究を育成する風土の形成を、と提言しています。
メディア時評:基礎研究育成する風土を 内田由紀子・京都大こころの未来研究センター准教授
大隅良典・東京工業大学栄誉教授のノーベル医学生理学賞受賞が決まった。その努力の過程に、心からの敬意を覚える。
大隅栄誉教授は記者会見で、日本の基礎研究の空洞化に対する危機感を語り、新聞各紙もこの問題を掘り下げた。毎日新聞4日朝刊「基礎研究 日本脚光/受賞ラッシュ 論文数は陰り」は、日本の論文の数や影響力が低下していることを指摘。朝日新聞5日朝刊「大隅氏、基礎研究の危機訴え」は、国がすぐに成果を見込める研究に「競争的資金」を重点的に配分し、一方で国立大学法人の運営費交付金が減少していることにも言及した。これらは、私が大学で日ごろから抱いている危機感と違わない。
大隅栄誉教授の「科学研究は役に立つべきだというとらえ方をされると、基礎的なサイエンスは死んでしまう」というコメントは切実である。‥‥
(記事より)
毎日新聞「メディア時評:基礎研究育成する風土を 内田由紀子・京都大こころの未来研究センター准教授」
http://mainichi.jp/articles/20161015/ddm/005/070/007000c
『ICC Kyoto 京都国際会館広報誌』に国際分析心理学会のレポートが掲載されました
国立京都国際会館が年に4回発行している広報誌『ICC Kyoto』2016秋号に、河合俊雄教授が副会長を務めるIAAP(国際分析心理学会)の第20回大会の開催レポートが掲載されました。IAAPでは3年に1度定期大会を開催しており、アジア初の大会となった今大会は実行委員長を河合教授が務めました。
■開催報告 国際分析心理学会第20回大会(IAAP 2016 Kyoto)
今大会のテーマは、「過渡期におけるアニマ・ムンディ:文化的、臨床的、専門的挑戦」。アニマ・ムンディは"世界の魂"と訳され、世界中の生きとし生けるもの全てのつながりを表現する言葉です。大会ではさまざまな領域から多角的なアプローチでアニマ・ムンディについて検討が行われ、午前中の全体講演や、午後に同時間帯で並列して開催された研究発表分科会・ポスターセッションなど、さまざまなプログラムが行われました。
また、期間中は日本の芸術や伝統文化を紹介するイベントも多数開催。プログラム委員長の河合教授がインタビュアーとなり、日本の世界的指揮者・佐渡裕氏にお話をうかがう「佐渡裕さんにきく河合隼雄の思い出 with スーパーキッズ・オーケストラ ミニコンサート」などが行われ、日本の文化発信地としての京都を大いにアピールする場ともなりました。
(記事より)
広報誌は全ページ公開されています。下記のリンク先にアクセスしてご覧ください。
国立京都国際会館広報誌『ICC Kyoto』2016秋号
http://www.icckyoto.or.jp/other/pdf/201610.pdf
※PDFが開きます
内田准教授の論考が毎日新聞「メディア時評」に掲載されました
内田由紀子准教授の論考が、毎日新聞2016年9月17日付朝刊「メディア時評」に掲載されました。同紙紙面をもとに社会について論評する連載を毎月1回、10月まで内田准教授が担当しています。第3回目は、保育所や学童保育の待機児童問題を取り上げ、社会全体が共通課題としてこの問題に取り組み、「子育てをしやすい社会の実現」を目指していく必要がある、と論じています。
メディア時評:待機児童は社会の共通課題 内田由紀子・京都大こころの未来研究センター准教授
保育所の待機児童問題がクローズアップされている。毎日新聞は2日夕刊と3日朝刊で、4月1日時点の待機児童が2年連続増の2万3553人だったという厚生労働省の発表について報じた。この問題は定員の面から論じられることが多いが、保育所は単なる「箱」ではなく、子どもたちが初めて社会に触れて心と体を成長させる場である。つまり、本来的には「人」にもっと焦点をあてた議論がされるべきなのだ。例えば、優れた保育のプロの育成と維持のためにはどうすべきか。現状とても良いとはいえない保育士の労働環境について踏み込んだ検討がなされてもよい。
しかし、こうした思いは自分自身が当事者になって得た視点でもある。現在小学1年の息子は1歳の時に待機児童になった。だが私は「預かってくれるなら何でも良い」とはとても思えなかった。その後、入所できた保育所は信頼できる保育士たちが真摯(しんし)に保育に取り組んでいた。そして私は、保育を巡る現状の厳しさについて初めて知ることになった。
なぜ当事者でなければ問題意識を持てないのか。‥‥
(記事より)
毎日新聞「メディア時評:待機児童は社会の共通課題 内田由紀子・京都大こころの未来研究センター准教授」
http://mainichi.jp/articles/20160917/ddm/005/070/011000c
広井教授のインタビュー記事「ポスト成長の時代」が日経新聞に掲載されました
広井良典教授のインタビュー記事「ポスト成長の時代」が、日本経済新聞2016年9月24日付夕刊の「シニア記者がつくるこころのページ」に掲載されました。
こころの未来研究センターの紹介に始まり、ポスト成長の時代という視点を軸に、歴史的に見るとそれが大きな創造の時代であること、多様な幸福の指標が各地域でつくられつつあること等が話されるとともに、日本人の死生観との関連を含めて鎮守の森コミュニティプロジェクトの趣旨や概要が紹介される内容となっています。
ポスト成長の時代 広井良典さんに聞く
「幸福を求め価値観探し 自然の力を再発見」
■ポスト成長の時代は、実は大きな想像の時代
成長から成熟へ転換が期待される日本社会。格差の広がりがいわれ、精神的なよりどころを失った多くの日本人は、こころの奥底で先が見えない不安を感じているかに見える。京都大学こころの未来研究センターは、そんなこころの問題を、脳の研究、心理学、宗教学、民俗学など多様な分野の研究者が集まって学際的に研究。同センター教授の広井良典さん(55)は、人のこころや幸福感、死生観はどう変化するかなどを探る。
「先の見えないときこそ、長期の時間軸でものを見ないと、未来が見えてきません。人類の歴史で見てみると、私が定常状態と見るポスト成長の時代は、実は大きな創造の時代なのです。人類の歴史は20万年前の狩猟採集の時代、1万年前の農耕の時代、この300〜400年の工業化の時代と、生産手段で見ると大きく3つの時期に分かれ、それぞれの時期の後半に、こころのあり方が大きく変わる出来事が起こっています」(中略)
■一つではなく、多様な指標で幸福度を考える
「そんな視点で世の中を改めて見直すと、新しいものが次々に生まれる兆しが見えます。たとえば・・・
(記事より)
日経新聞Web版(電子版会員のみ全文閲覧可能)
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO07543960T20C16A9NNP000/
なお、岩波書店から2016年3月に発行された書籍『〈こころ〉はどこから来て,どこへ行くのか』には、広井教授の講演録が収められており、本インタビューでふれている内容に関連する研究成果が講演で詳しく取り上げられています。
『〈こころ〉はどこから来て,どこへ行くのか』(岩波書店/2016年3月)
著者:河合 俊雄, 中沢 新一, 広井 良典, 下條 信輔, 山極 寿一
また、広井教授が所長を務める、鎮守の森と地域コミュニティの新たな形について考えるシンクタンク「鎮守の森コミュニティ研究所」のウェブサイトには、上記インタビューに関連する取り組みや研究活動が紹介されています。
鎮守の森コミュニティ研究所
http://c-chinju.org/
内田准教授の論考が毎日新聞「メディア時評」に掲載されました(連載第2回)
内田由紀子准教授の論考が毎日新聞2016年8月20日付朝刊「メディア時評」に掲載されました。7月から開始した連載の2回目となります。
大きな盛り上がりを見せたリオデジャネイロ五輪。内田准教授は、過去におこなった五輪の報道に関する日米比較研究の結果を紹介し、日米のスポーツ報道それぞれの特徴について解説すると共に、日本人の心理と報道スタイルとの関係性について考察しています。
なお、8月29日の毎日新聞では、山田道子紙面審査委員が本記事を引用したコラム「メダリストと家族との関係を考えさせられたリオ五輪」が掲載されました。いずれの記事も毎日新聞のニュースサイトで閲覧可能です。
メディア時評:丁寧な取材記事は「読ませる」内田由紀子・京都大こころの未来研究センター准教授
本欄を担当するにあたり、新聞の隅々まで目を通した率直な感想は、記者が意気込みを持ってしっかりと取材した記事はやはり「読ませる」ということである。
かつて米スタンフォード大学との共同研究で、2000年シドニー、04年アテネの五輪報道の日米比較を行った。日本では、選手の強さの分析だけでなく、背景や頭角を現す前の姿、挫折、家族や指導者との関わりなど「人間ドラマ」に焦点が当てられており、選手への親近感を覚えさせる。一方、アメリカでは身体的特徴やライバルとの競り合いを分析する内容が多く、勝利の要因は選手本人の強さであるとの観点から報じられていた。日本人は、さまざまな背景状況や他者との関係といった情報を総合して人の行動の善しあしを判断する傾向が強いとされており、この心理傾向と報道内容は合致していた。報道がこうした心の働きを促進しているともいえるし、また読者の心に寄り添う形で報道が作られているともいえる。....
(記事より)
毎日新聞「メディア時評:丁寧な取材記事は「読ませる」内田由紀子・京都大こころの未来研究センター准教授」
http://mainichi.jp/articles/20160820/ddm/005/070/004000c
毎日新聞「メディア万華鏡:メダリストと家族との関係を考えさせられたリオ五輪 山田道子・毎日新聞紙面審査委員」
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20160825/biz/00m/010/003000c
内田准教授の論考が毎日新聞「メディア時評」に掲載されました
内田由紀子准教授の論考が毎日新聞2016年7月23日付朝刊に掲載されました。
最近の新聞紙面を読み解き論評するシリーズを毎月1回、10月まで内田准教授が担当します。第1回目は、超高齢化社会となった日本の政策課題として、若者と高齢者それぞれの問題を個別に扱うのではなく、多世代共生についての深い議論と施策が必要だと論じています。
記事は、毎日新聞のニュースサイトで全文閲覧可能です。
メディア時評:多世代共生についての深い議論必要 内田由紀子・京都大こころの未来研究センター准教授
先日の参院選は、18歳選挙権が導入されたこともあり、「若者の社会保障」が焦点の一つとなった。若者が政治参加しないことにより、彼らをターゲットとした政策が提示されにくく、それゆえに政治から若者が遠ざかるという悪循環が指摘されて久しい。どうしたらこの状態を是正できるだろうか。
65歳以上が日本の全人口の4分の1を超えたという国勢調査速報が6月30日の各紙朝刊で報じられ、労働力の減少と社会保障の増大が危機的であるとされた。富を「平等に」配分するとは、単純な問題ではない。超高齢化社会で高齢者への一定の社会保障が必要であることは自明である。「長生きすると生活不安が増す」現実を描いた毎日新聞の連載「長寿リスク社会」(7月6〜8日朝刊)は胸に迫るものがあった。一方で、「若者か高齢者か」という世代間競争モデルで議論をしていてもらちがあかない。日本社会をどのように発展させていくべきかという点に踏み込んだ分析が必要ではないか。....
(記事より)
毎日新聞「メディア時評:多世代共生についての深い議論必要 内田由紀子・京都大こころの未来研究センター准教授」
http://mainichi.jp/articles/20160723/ddm/005/070/007000c
広井教授のインタビュー記事が朝日新聞2016年7月21日付朝刊に掲載されました
広井良典教授のインタビュー記事が朝日新聞2016年7月21日付朝刊に掲載されました。
今回の記事は、これからの日本の政策課題を検証するシリーズの一環で、日本社会に広がる格差や貧困をめぐるテーマを取り上げるものです。インタビューは、近年国際的にも議論が活発になっているベーシックインカム(基礎所得保障、BI)の日本での導入可能性や意義について、特に高齢者や若者の現状を中心に多様な視点から考える内容となっています。
朝日新聞のニュースサイトに記事が掲載されています。下記のリンク先をご覧ください。
(教えて!政策チェック:6)
ベーシックインカム 高齢者・若者に生活費給付、議論しては 広井良典さん
日本では高齢者を中心に生活保護の受給世帯が増え続け、若年層などで非正規労働者の割合も高止まりしています。安倍政権はアベノミクスの成果を強調しますが、むしろ貧困は広がっているようにみえます。
いまの生活保護制度は収入や資産の調査が厳しく、偏見の目でみられるのを懸念する人も少なくない。特に若者は「あなたは働けるでしょ」と門前払いされてしまいがちで、生活保護を受けずに、それ以下の所得水準で暮らす人も多い。
そこで貧困対策の一つとして、税財源から全国民に無条件で最低限の生活費を配る「ベーシックインカム」(BI)が考えられます。ただ、財源の確保が大きな課題になるので、現実的には、まず高齢者と10代後半~30代ぐらいの若年層へ優先的に給付することが望ましいと思います。BIなら選別はしないので、セーフティーネットから漏れる人がいなくなります。
制度設計は様々で、例えば基礎年金や生活保護、失業手当などを一本化して支給する方法があります。....
(朝日新聞2016年7月21日付朝刊/記事より)
朝日新聞デジタル「貧困対策にベーシックインカムの発想を 広井良典さん」
http://www.asahi.com/articles/ASJ7P2Q7FJ7PUBQU006.html
(※無料登録で全文閲覧可能)
広井教授のインタビュー記事がNHK「地域づくりアーカイブス」に掲載されました
広井良典教授のインタビュー記事「"定常型社会"の時代へ①②③」がNHKのウェブサイト「地域づくりアーカイブス」の「地域づくりブログ」欄に「BIGインタビュー・地域づくりへの提言」として掲載されました。
「地域づくりアーカイブス」は、これまでのNHKの番組から地域づくりの様々な先駆的事例を「農林水産・食」「環境・エネルギー」「共生経済・観光」「コミュニティ・商店街」「教育・子ども・若者」等のジャンルにそくしてまとめたサイトです。
今回のインタビューは、日本社会が本格的な人口減少時代を迎える中での人々の価値意識や行動、社会のありようの展望を、「定常型社会」というコンセプトを軸にしつつ定常経済論や各地の先駆的事例、社会保障や世代間配分のあるべき姿、鎮守の森など等の話題とともに述べた内容となっています。
地域づくりアーカイブス 地域づくりブログ
BIGインタビュー・地域づくりへの提言
"定常型社会"の時代へ①【京都大学こころの未来研究センター教授・広井良典さん】
広井良典さんは、公共政策・科学哲学を専攻されていますが、いまの社会が直面する様々な課題、例えば豊かさや富が多くの人に行き渡らずに偏在していることや、これまでのような拡大・成長を絶対的な目標とするあり方について、様々な角度から考察を行ってきました。そして、少し前の時代までは、私たちにとって当たり前に存在していた地域のコミュニティの中に、将来を切り拓くための手がかりが埋もれていると指摘します。
今回のインタビュー、広井さんはいったいどんな発見へと、私たちを導いてくれるのでしょうか。....
(記事前文より)
「"定常型社会"の時代へ①」 http://www.nhk.or.jp/chiiki-blog/900/245345.html
「"定常型社会"の時代へ②」 http://www.nhk.or.jp/chiiki-blog/900/245902.html
「"定常型社会"の時代へ③」 http://www.nhk.or.jp/chiiki-blog/900/246349.html
上記記事に関連する広井教授の著書は次の通りです。
『定常型社会―新しい「豊かさ」の構想 』(岩波書店/2001年)
『創造的福祉社会: 「成長」後の社会構想と人間・地域・価値 』(筑摩書房/2011年)
『人口減少社会という希望 コミュニティ経済の生成と地球倫理』(朝日新聞出版/2013年)
(著書一覧は「スタッフページ:広井良典」の業績欄に掲載)
広井教授の論説「経済と倫理 調和探る動き」が読売新聞5/18付朝刊に掲載されました
広井良典教授の論説「経済と倫理 調和探る動き」が読売新聞2016年5月18日付朝刊に掲載されました。
現在では対極に位置するように見える「経済」と「倫理」の関係性がどのように進化してきたかを歴史的な視点で概観し、今後両者が"再融合"していく可能性と背景について論じる内容となっています。
[論点]経済と倫理 調和探る動き 広井 良典氏
企業の不祥事が後を絶たなくなって久しい。個別の特殊事情もあろうが、そこには何か時代の構造的要因と呼ぶべきものが潜んでいるのではないか。こうしたことを「経済と倫理」という視点から考えてみたい。
「経済と倫理」というと、現在では対極にあるものを並置したような印象があるが、近代以前あるいは資本主義が勃興する以前の社会では両者はかなり重なり合っていた。近江商人の"三方よし"の家訓がすぐ思い出されるし、現代風に言えば、「地域再生コンサルタント」として江戸期に活躍した二宮尊徳は、経済と道徳の一致を強調していた。
黒船ショックをへて日本が急速に近代化の坂道を上り始めて以降も、こうした世界観はなお一定程度保たれていた。「日本資本主義の父」とされる渋沢栄一は『論語と算盤』を著し、経済と倫理が一致しなければ事業は永続しないと論じたし、この時代の事業家には、渋沢や倉敷紡績の大原孫三郎のように様々な「社会事業」ないし福祉活動を行う者も相当数いたのである。
戦後の高度成長期になると、状況は微妙に変化していったように見える。......
(読売新聞2016年5月18日付朝刊より)
上記記事に関連する広井教授の著書は次の通りです。
『ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 』(岩波書店/2015年)
『脱「成長」戦略 新しい福祉国家へ』(岩波書店/2013年)
『創造的福祉社会: 「成長」後の社会構想と人間・地域・価値』(筑摩書房/2011年)
(著書一覧は「スタッフページ:広井良典」の業績欄に掲載)
広井教授の論説「この3冊 ポスト成長」が毎日新聞に掲載されました
広井良典教授の論説「この3冊 ポスト成長」が、毎日新聞2016年5月15日付読書面に掲載されました。ジョン・スチュワート・ミル『経済学原理』、ローマ・クラブ『成長の限界』、佐伯啓思『さらば、資本主義』の3冊の書物を取り上げ、それらが書かれた時代背景と今後の展望を考察する内容となっています。
毎日新聞のニュースサイトで全文をお読みいただけます。下記リンク先にアクセスしてご覧ください。
<1>経済学原理全5冊(ジョン・スチュワート・ミル著、末永茂喜訳/岩波文庫/品切れ)
<2>成長の限界 ローマ・クラブ「人類の危機」レポート(デニス・メドウズほか著、大来佐武郎監訳/ダイヤモンド社/1728円)
<3>さらば、資本主義(佐伯啓思著/新潮新書/799円)
先般公表された国勢調査では、2015年の日本の総人口は前回(10年)から初めて減少に転じたことが示されていた。日本が本格的な人口減少社会に移行する中で、経済や人口が増加を続けるという従来の「拡大・成長」モデルとは異なる、新たな社会の構想が求められている。
実はこうした構想を明確な形で初めて提起したのは19世紀イギリスの思想家ジョン・スチュワート・ミルで、ミルは著書<1>(1848年)の中で、人間の経済はやがて「定常状態」に達すると論じた。ミルの議論の印象深い点は、彼が定常状態をポジティブなものとしてとらえていた点であり、そうした状態に達することで人間はむしろ真の豊かさや幸福を得るとミルは考えたのである。....(記事より)
記事全文(毎日新聞ニュースサイト)
http://mainichi.jp/articles/20160515/ddm/015/070/025000c
京大広報誌『紅萌』に熊谷准教授による山極総長へのインタビューが掲載されました
京都大学が発行する広報誌『紅萌(くれなゐもゆる)』29号に、熊谷誠慈准教授が聞き手となり山極壽一京大総長にインタビューをおこなった記事が掲載されました。「WINDOW構想ってなんですか」という巻頭特集で、熊谷准教授は座談会のホストを務め、ゲストに山極総長を迎え、大学の新構想であるWINDOW構想について様々な角度からインタビューし、率直に語り合いました。
『紅萌』はPDFが公開されており、全ての記事が閲覧可能です。下記リンク先よりダウンロードし、お読みください。
特集●「WINDOW構想」ってなんですか
「窓はいつでも開いている。吹き込む風を力に変えて、羽ばたこう」
ゲスト:山極壽一 京都大学総長
ホスト:熊谷誠慈 こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門
高木淳一 大学院情報学研究科 社会情報学専攻 生物圏情報学講座 博士後期課程1回生
金智華 工学部3回生
「大学を社会や世界に開く〈窓〉としよう」。山極壽一総長の掲げた「WINDOW構想」は、京都大学の強みや特性を再認識し、目標とする新たな将来像を打ちだすもの。「野性的で賢い学生を育てたい」という山極総長らしいメッセージに、学内外から視線が集まっている。「なぜ、窓なんですか」。率直な疑問から始まったインタビューでは、山極総長が待望する「タフな学生像」が鮮やかに浮かび上がってきた。
熊谷○ 総長に就任されてから「WINDOW構想」をすすめられています。大学を社会や世界に開く〈窓〉として位置づけようというものですが、なぜWINDOQ〈窓〉なんですか。
山極○ 日本の大学はこれまで「門」で語られることが多かったですね。「赤門」は東京大学の代名詞、大学に入るときも「狭き門」というでしょう。門は内と外とを分ける境界あるいは結果と考えられていて、「大学は社会とはちがう場」という意識で大学は運営されてきたと思うのです。そういう考えをやめて「窓」にしようと。
京都大学は24時間門を閉めることはありません。とくに北部構内は公道で、一般の方の出入りがある。窓を開ければ風が入るように人の往来を滑らかに、自由にしたい。
熊谷○ 総長になって発案されたのですか。
山極○ もちろんだよ。東京大学の濱田純一前総長の「FOREST」という行動目標に触発された(笑)。まず、ワイルドでワイズが頭に浮かんだ。これからは賢いだけではだめだ、タフで賢い学生を育てるべきだと。京都大学は学生中心の大学、その京都大学にふさわしい学生はワイルドでワイズであってほしい。
京都大学は、吉田山の麓にあって、東に少し歩めば西田幾多郎が歩いた哲学の道がある。北に向かえば今西錦司が思索を練った北山が連なる。西は鴨川がゆったりと流れる。...
(記事より)
『紅萌』29号(2016年3月発行) | 京都大学ウェブサイト
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/public/issue/kurenai
センター後援シンポジウムのレポートが機関誌『ひと・健康・未来』に掲載されました
公益財団法人ひと・健康・未来研究財団の機関誌『ひと・健康・未来』(2016年3月号)に、こころの未来研究センターの後援で開催したシンポジウム「第8回ひと・健康・未来シンポジウム2015京都 40代からの学び:社会と家庭のリーダーとして、自分たちのこころとからだを知る」(2015年9月20日開催/稲盛財団記念館3階大会議室)の講演録が掲載されました。
シンポジウムでは、吉川左紀子センター長が企画・司会進行・総合討論コーディネーターを務めました。女性医学、東洋医学、音楽療法、運動科学、ピラティスの専門家によるレクチャーをはじめ、参加者と共に身体を動かしての実践講義、総合討論など、働きざかりの男女社会人のための学びと実践の場となりました。
第8回ひと・健康・未来シンポジウム2015京都
- 40代からの学び- 社会と家庭のリーダーとして、自分たちのこころとからだを知る
「更年期、ちょっと立ち止まる大切なとき」
江川美保 京都大学医学部附属病院 産科婦人科 特定助教
「明日も元気にすこやか漢方」
谷川聖明 谷川醫院 院長
「子どもも高齢者も支える40代からの健康~音楽はこころとからだのサポータ~」
三宅聖子 渋谷区障害者福祉センター はあとぴあ原宿 施設長
「壮年期の運動機能を知り、そして高める戦略~ピラティスメソッド~」
青山朋樹 京都大学医学研究科人間健康科学系専攻 准教授)
石原美香 ピラティス ボディワークスタジオ ヴォール 主宰
総合討論
コーディネーター 吉川左紀子 京都大学こころの未来研究センター 教授 センター長
(『ひと・健康・未来』目次より)
吉川センター長のエッセイが京都新聞「キーワードきょうと」に掲載されました
吉川左紀子センター長のエッセイが、2016年4月1日付の京都新聞一日版に掲載されました。
京都新聞で毎月一日に発行される「一日版」のトップページでは、様々な分野で活動する執筆者が京都についてのエッセイを寄稿しています。吉川センター長は「時間を味方に魅力ある京都に」と題し、長い歴史のなかで伝統文化を培ってきた京都のよさと、自身がどのようにしてゆっくりと時間をかけて京都を好きになったかをソフトな語り口で紹介し、京都ファンの一人として「公共施設に和風の木造建築を取り入れては」と提言しています。
「時間を味方に 魅力ある京都に」吉川左紀子 京都大学こころの未来研究センター 教授、センター長
ゆっくり時間をかけて好きになる
京都の真ん中、中京区のマンションに住むようになって、16年になります。若い頃は、春は梅や桜、秋は紅葉のきれいなお気に入りのスポットがあって、その季節になると車でドライブに行っていましたが、今は毎日の通勤経路がお気に入り。通勤途中、鴨川にかかる丸太町通りの橋から北山の方角を眺めると、四季折々の鴨川の流れや川岸の緑、遠くに見える下鴨神社の森など全体の風景が里山のようで、見るたびに「いいなあ...」としみじみします。鴨川だけでなく、東山や北山、西山近くの風景もいいですよね。
人口150万の都会の中でこんな風景が毎日楽しめるのは、本当にすごいことだと思います。たとえば、一度でも「コンクリートで護岸工事をしよう!」と決めて実行してしまったとしたら、今のような鴨川はなかったはず。そう考えると、今、私たちが毎日目にしている風景は、ここに住んだ人たちが長い長い年月をかけて育ててきたものなんですね。こんなことを考えながら歩いていると、「この町はいいな」と思う度合いが、日々、アップしていくのを感じます。京都は長い歴史の中で作られてきた町ですから、ゆっくり時間をかけて好きになる、というのは正しい態度じゃないかと思っています。
(「一日版 キーワードきょうと」京都新聞 2016年4月1日付第1面 より)
人体科学会の機関誌『Mind-Body Science』に鎌田教授の論考が掲載されました
鎌田東二教授の論考が、人体科学会の機関誌『Mind-Body Science』No.26(2016年3月31日発行)に掲載されました。
「身心変容」と「身心変容技法」
鎌田東二 京都大学こころの未来研究センター 教授
祈りの儀式とバク転
わたしは毎日、比叡山に向って石笛・横笛・法螺貝などを含め、約三十種類ほどの民族学期を奉奏する。そして一週間に一度くらいは「東山修験道」と称して比叡山に登り、山頂付近の大変見晴らしのよいつつじヶ丘で般若心境と各種真言を唱えた後でバク転を三回する。その三回は、天地人の三才に捧げる祈りの儀式という意味を込めている。
バク転が祈りの儀式である、などと言うと、そんな体操競技のようなものが祈りの儀式になるわけはない、と多くの人は思うだろう。だが、石笛や横笛や法螺貝を奉奏することが祈りの儀式の中に入れられても違和感はもたらさないのに、なぜバク転がその中に入らないのか?一つは、それが体操競技のワザであるという常識に基づいた判断をしているからであろう。だがそれは、一つの見方であり、一つの設定の仕方にすぎない。
(論考より)
人体科学会ウェブサイト
http://www.smbs.gr.jp/
京都新聞の文化庁京都移転記事に河合教授のコメントが掲載されました
文化庁の京都移転決定に関する記事が、2016年3月30日付の京都新聞に掲載されました。移転の背景と今後の展望について書かれた記事に、河合俊雄教授のコメントが、山極寿一京都大学総長、山田啓二京都府知事、角川大作市長らのコメントと共に掲載されました。
「文化庁 京都移転決定 新しい文化発信、使命に」
2016.3.30付京都新聞
父・河合隼雄は、長官であったときに、文化庁が京都にあればよいなあ、とよく申していました。京都に文化庁の分室を設け、「関西元気文化圏」という試みをはじめたのも、今回の移転につながったのかなと思うと感無量です。きっと京都を囲む山々から応援していると思います。
河合俊雄
(記事より)
京都新聞に「くらしの学び庵」とシンポジウム「超高齢社会を心地よく生きるために〜」(3月27日開催)が取り上げられました
2016年3月24日付の京都新聞に、こころの未来研究センターが上京区の風伝館でおこなっている連続セミナー「孤立防止のための互助・自助強化プログラム開発研究 くらしの学び庵」の取り組みと、27日に開催する同プロジェクトのシンポジウム「超高齢社会を心地よく生きるために必要なこと」の紹介記事が、セミナーの写真や吉川左紀子センター長のコメントと共に掲載されました。
新聞記事はウェブでご覧いただけます。また、3月27日開催のシンポジウムは現在、参加申込を受付中です。いずれも下記リンク先をご参照ください。
京町家に高齢者集い悩み相談 京都、専門家が助言 (2016年3月24日付「京都新聞」)
高齢者が京町家に集い、悩みごとを相談する「くらしの学び庵」が3月末で開設2年目の講座を終え、27日に記念シンポジウムを左京区で開催する。学び庵の講座は、医師や心理学者、金融機関、福祉の専門家が、幸せに老後を過ごすアドバイスを行っており、2年間で受講者計90人が修了する。
(記事より 全文はこちら)
シンポジウム「超高齢社会を心地よく生きるために必要なこと」
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/.../.../manabian-symposium201603.php
※定員になり次第締め切ります
河合教授の論考が『imago 総特集〈こころ〉は復興したのか 3.11以後、それぞれの現場から(現代思想4月臨時増刊号)』に掲載されました
河合俊雄教授の論考が、『imago 総特集〈こころ〉は復興したのか 3.11以後、それぞれの現場から(現代思想4月臨時増刊号)』に掲載されました。
東日本大震災から5年を迎える2016年3月11日に合わせた震災特集において、河合教授は「震災後のこころのケア活動」と題し、これまでの震災後のこころのケア活動から、時間ということに焦点を当て、見えてきたものを論じています。
「震災後のこころのケア活動」 河合俊雄
私は、日本箱庭療法学会、日本ユング派分析家協会の合同震災対策ワーキンググループの委員長として、東日本大震災後のこころのケアに取り組んできた。そしてそれは今も継続中である。その中間報告については、学会誌の箱庭療法学研究の特別号(二〇一三年度)にも掲載されていて、事例に関するもの以外は、私のまとめをはじめダウンロードできる( https://www.jstage.jst.go.jp/browse/sandplay/26/Special_Issue/_contents/-char/ja/ )。学術誌でしか発表していなかったものを一般に伝えるという意味で、そこで述べた本質的なものには再びふれることになるけれども、ここでは特に時間の経過という視点を意識しつつ、震災後のケア活動から見えてきたものを論じたい。
1 被災者の主体性・時間・物語
メディアの発達した現代において、今回の震災はネットやテレビを通じて、被害をほぼリアルタイムで見聞きしてしまうという意味で、被災者だけでなくてまわりの人や他の人たちにとって従来にない特殊で衝撃的な震災になったと思われる。私の場合はヨーロッパでのセミナーの帰りに、早朝のベルリン空港のロビーで見た津波の衝撃の映像が最初の知らせになった。それは日本での第一報とほとんど時間的にずれていないと思われる。
時間的な同時性を基盤にしてか、震災後すぐに、救援隊のみでなくて、多くのこころのケアチームが動員され、また臨床心理士や精神科医のボランティアが被災地に入っていった。公的機関に務める関東の知り合いの臨床心理士で、職場を通じて割り当てられて、震災直後に寝袋を持って被災地に派遣されていった人もいる。これらの動きには、即刻でアクティヴな支援が問われているように思われた。後になって、心理療法関連での最大の組織である心理療法学会は東日本大震災心理支援センターを立ち上げ、また政府によるこころのケアのための様々な予算や事業も動き出した。
このような傾向の中で、私たちのグループのような小さな規模のもので可能な、しかも自己満足でない意味のある活動を考える必要があった。...
(論考より)
『imago 総特集〈こころ〉は復興したのか 3.11以後、それぞれの現場から(現代思想4月臨時増刊号)』 | Amazon.co.jp 本
箱庭療法学研究 Vol. 26(2013) No. Special_Issue:震災後のこころのケア
鎌田教授のコラム「二つの最終講義」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 39」(2016年3月1日付)に鎌田東二教授のコラム「二つの最終講義」が掲載されました。2016年3月末で京都大学を定年退職し、NPO法人東京自由大学理事長を退任する鎌田教授は、それぞれの場で記念講演をおこないました。コラムでは、講演で扱ったテーマである石牟礼道子作品、日本人の魂に寄り添う「歌」について「古今和歌集」から芭蕉、宮沢賢治までを紐解き、詩歌の持つ力と自身の思いを記しています。
「二つの最終講義 詩歌は希望見いだす 悲しみや怒り 浄化の力に」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
3月末にNPO法人東京自由大学理事長を退任し、京都大学こころの未来研究センター教授を定年退職する。そこで、二つの「最終講義」をすることになった。
2月13日に東京自由大学の「人類の知の遺産」講座の最終回として「石牟礼道子」を、21日に京都大学で「日本文化における身心変容のワザ」を話した。
私は17歳の時に自転車で四国を横断し、九州をほぼ一周する旅の途中に青島に立ち寄ったことがきっかけとなって「詩」を書くようになった。その時、神話・物語と場所(神社・聖地)と詩・文学が一体化し、それが現在の仕事に直結している。
二つの「最終講義」では、一つは石牟礼道子の作品に焦点を当てて、もう一つはスサノヲノミコトから始まる歌文化の系譜に焦点を当てた。(中略)
詩歌は飢えた子のおなかを満たすことはないと思われている。しかし、間違いなく、詩歌は心と魂を満たすことにより、「透き通った本当の食べ物」(宮沢賢治)になる力(言霊)を秘めている。詩人・山尾三省は、「詩人というのは、世界への、あるいは世界そのものの希望を見出すことを宿命とする人間の別名である」と言ったが、そのような「詩人」でありたいと思う。
(記事より)
河合教授の論考が『imago 総特集 猫!(現代思想3月臨時増刊号)』に掲載されました
河合俊雄教授の論考が、『imago 総特集 猫!(現代思想3月臨時増刊号)』に掲載されました。
『imago』(イマーゴ)は、詩と芸術の雑誌『ユリイカ』、思想と哲学の雑誌『現代思想』などで知られる青土社が発行するムックです。猫を総特集した本誌に、河合教授は「心理療法における猫」という論考を寄せています。
これは、猫というイメージを語りの中の猫、イメージとしての猫、分析家と猫、個別の猫の物語の4つの視点から深めていったものです。
猫は、精神性、動物性、女性性を凝縮したイメージといえますが、自由な動きをするものとして、人のすぐ近くで不思議な働きをすることが多くあります。そのような存在だからこそ、心理療法の場やさまざまな物語のなかで猫は大きな働きをするわけですが、個別の語りや物語をみていくと、猫の働きは実に多様なものです。
本稿では具体的なお話やエピソードからそれらを掘り下げ、猫という存在についていろいろな側面から考えを深めています。
「心理療法における猫」 河合俊雄
心理療法においては、クライエントは自分に興味があったり、大切であったりすることを自由に語るので、家族などの話に混じって、猫のこともしばしば話題として登場する。また筆者の行っているのはユング派の心理療法で、夢やイメージを重視するので、猫の夢が報告されたり、箱庭の中に猫が置かれたり、猫の絵が描かれたりすることがある。あるいはロールシャッハなどの心理テストで、猫のイメージが投影されたりする。その場合には、猫という存在やイメージの持つ象徴的な意味が大切となる。また現実における猫が話題になっているときにも、猫の象徴的な意味は同じように働いているとも言えよう。そのようなわけで、猫の象徴的意味を検討しつつ、心理療法における猫について考えてみたい。
1 語りの中の猫
猫は犬と並んで、代表的なペットである。それは猫が動物であるけれども、人間に近い存在であることを示している。人間に近いというのは、心理学的に見ると、動物的で本能的であるけれども意識に近いということである。また人間と関係と持ちやすい動物で、ある意味で家族の一員のようでもある。ただその関係の質は、一般的に見ていぬとの関係が信頼や忠実をテーマとしていて、確実なものであるのに対して、もっと情緒的なものであったり、謎に満ちたものであったりして、不確実なものである。そのように不確実で神秘的なところが、ある意味でたましいと言われるものにつながると思われる。
だいぶ以前に筆者が会っていたある不登校のクライエントの自宅では三匹の猫が飼われていた。...
(論考より)
『imago 猫!(現代思想 2016年3月臨時増刊号)』 | Amazon.co.jp 本
内田准教授のコメントがイギリスのテレグラフ紙に掲載されました
イギリスのテレグラフ紙(The Daily Telegraph)の記事に内田由紀子准教授のコメントが紹介されました。
テレグラフ紙は、イギリスで講読数一位の新聞です。2015年9月10日付の記事では、日本で広がっている「おひとりさま」「ぼっち」と呼ばれる孤独を好む若者向けのサービスを取り上げたレポートが掲載され、内田准教授は日本の若者をめぐる社会背景と孤独を選ぶ若者の心理についてコメントしています。
ウェブ版にて全文閲覧可能です。
"Silent cafes attract solo Japanese in search of peace" ー The Telegraph / 10 Sep. 2015
"Silent cafes attract solo Japanese in search of peace"
The nation, however, appears to be resolutely relationship-shy, with one in four unmarried Japanese men aged 30 and over revealed to be virgins according to statistics compiled by the National Institute of Population and Social Security Research.
Young Japanese were increasingly struggling with the pressures of intimate relationships, resulting in a quest for socially acceptable solitary activities, according to Yukiko Uchida, an associate professor in cultural and social psychology at Kyoto University's Kokoro Research Centre.
"It is difficult for them to behave in an independent way during social interaction, thus they seek socially approved independent situations," she said.
"Intimacy pressure is maybe derived from youth's lower motivation towards social achievement and due to low security in the labour market."
センターのワークショップに参加した滋賀県立水口東高校の取り組みが朝日新聞で紹介されました
こころの未来研究センターを訪問し、吉川センター長らによるワークショップに参加した滋賀県立水口東高校の取り組みが、2016年2月9日付の朝日新聞で紹介されました。
2015年8月、オーストラリアの高校訪問を前にセンターを訪問した生徒さんたちは、豊かさや幸福についてのレクチャーを受け、滞在先で調査をおこなうための質問紙の作成方法について学びました。(当時の報告記事はこちら)
新聞では、現地訪問で実施した調査とその後のまとめについて詳しく紹介されました。生徒さんらが現地の高校生と交流しながら、調査を通じて幸福や豊かさについて国際的な視野で考えた取り組みが、写真と共に詳しくレポートされました。
「豪州訪問 国際力磨く 幸せ感じ方比較 多様性理解」 県立水口東高校
幸せや豊かさとは何だろうー。1、2年生25人が昨年8月末、豪州・クイーンズランド州の高校を訪れ、豊かさについて日本人との感じ方の違いがあるかアンケートを実施した。
水口東は今年度、「スーパーグローバルハイスクール」のアソシエイト校に指定された。課題研究や国際交流を通じてコミュニケーション能力を身につけ、国際的な視野を持った「豊かな成熟社会を担う人材の育成」を学校の目標に掲げている。
生徒たちは夏休みに質問を考え、「まわりの人に認められていると感じる」「大きな悩みごとはない」「自分だけでなく、身近なまわりの人も楽しい気持ちでいると思う」など48の設問と自由記述回答の3問を用意した。昨年度から相互訪問を始めたヒルブルックアングリカン校の先生や生徒、ホームステイ先で74人に調査。帰国後、同級生や保護者ら約750人に同じアンケートを実施し、昨年12月までに日豪での幸せの感じ方の比較をまとめた。
(朝日新聞/大阪版2016年2月9日)
センターに滞在した Norasakkunkit 特別招へい准教授の記事が「GENIUS TABLE」に掲載されました
2015年夏にセンターに滞在した Vinai Norasakkunkit 特別招へい准教授(Assistant Professor/Gonzaga University)が滞在中にゲスト講師として参加したワークショップのレポートが「GENIUS TABLE」に掲載されました。
GENIUS TABLE は、京都市と京都大学の連携協定に基づき教育学研究科の地域連携教育研究推進ユニットの学生が運営するプロジェクトで、京都で活躍する様々な職種の人々と共にユニークな試みを実践しています。
内田由紀子准教授と共に連携研究等をおこなっている Norasakkunkit 特別招へい准教授は、滞在中の2015年6月27日にテーブルトークのゲスト講師として登壇し、文化心理学者の視点から日米の文化差を中心に参加者とディスカッションをおこないました。
Vol.7 京町家アトリエで心を解く Vinai Norasakkunkit ー2015.6.27 | GENIUS TABLE ウェブサイト
鎌田教授のコラム「翁童論と幼老包括ケア」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 38」(2016年2月1日付)に鎌田東二教授のコラム「翁童論と幼老包括ケア」が掲載されました。2015年11月、鎌田教授は東京で開催された日本未来学会において、旧知の仲である長谷川俊彦氏と共に「人類には未来はあるか」というセッションに参加し、「生死のエッジをどう捉えるか 〜翁童論からの提言あるいは老いの哲学を求めて」と題した発表をおこないました。コラムでは、長谷川氏の活動や鎌田教授が長年提唱してきた翁童論を紹介し、吉野川市で取り組みが始まっている地域包括ケア「幼老統合ケア」への共感と期待について綴っています。
「翁童論と幼老包括ケア 老人と子ども対関係 生死のエッジ生きる存在」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
私自身は40年近くも前から「翁童(おうどう)論」という、老人と子どもを対関係として捉える視点を提唱し、老幼一体化した「翁童施設」の建設と運営、「翁童遊び」という文化創造を説いてきた。
そんな私の『翁童論』(4部作、新曜社)に共感してくれた精神医学者の平井信義さんは、『子ども期と老年期』(太郎次郎社)の中で、児童・老年精神医学の観点から、「老年期にも発達がある。子ども期にいたずら・反抗・けんか・おどけ・ふざけの多かった子は自発性が発達し、意欲が育ち、死ぬまで生き生きとした生活をおくる。"老"のなかに"幼の心"があり、"幼"のなかに"老の心"がある」と指摘している。
私は『翁童論』で、神話と民族儀礼とライフ・サイクルを手掛かりとしつつ、老人と子どもとの共通性と逆対応性を指摘した。子どもと老人は誕生と死の両端にいる。つまり、生存のエッジを生きている存在である、と。(中略)
限界集落や地域消滅が叫ばれている中で「幼老包括ケア」はこれからの地域包括ケアの核心を占めることになると、その重要性とそれが必要とされる社会状況を痛感したのだった。ぜひこの「幼老統合ケア」の実践を徳島から日本全国へ、また世界へと発信してほしい。
(記事より)
清家助教の解説記事が『糖尿病ケア』に掲載されました
糖尿病治療に関わる医療スタッフのための専門誌『糖尿病ケア』2016年1月号(メディカ出版)に、清家理助教の解説記事が掲載されました。
糖尿病と認知症が特集テーマとなった本号の「不安を解決!認知症なんでもQ&A 医療スタッフの疑問編」において、清家助教は、認知症患者とその家族のためのこころのケアや社会的支援に関する質問に答えています。
「不安を解決!認知症なんでも Q&A 医療スタッフの疑問編」
京都大学 こころの未来研究センター 上廣こころ学研究部門 助教/
国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 外来研究員
清家 理(せいけ あや)
Q10 認知症の糖尿病患者さんの家族が介護疲れのようで心配です。どうすればよいでしょうか。
... 筆者たちは、包括的な学習と介護者との相互交流を通じて、介護者の人々の身体的、精神的つらさの緩和を目指す主旨で、「家族教室」というアクションリサーチ(社会還元型の実践的研究)を実施しています。その研究結果のうち、介護者には以下3点の学習ニーズが確認されました。(1)認知症の概論的理解(認知症のしくみ、進行過程と出現症状、治療方法など)、(2)薬剤に関する知識の習得(認知症治療に使う薬剤の効用、服薬拒否や飲み忘れへの対応方法)、(3)ケアに関する知識の習得(同じことを何度も言う、いきなり怒り出すことなどへの対応方法)。なかでももっとも高い割合を占めたニーズは、(1)認知症の概論的理解です。
Q11 認知症をもつ人のための、おもな社会的支援を教えてください。
... 社会的支援には、大きく2種類あります。それは、(1)フォーマルサポート(公的機関が行う制度に基づいた支援<例:介護保険制度による通所リハビリテーションなど>)、(2)インフォーマルサポート(家族やボランティアなどが互助的に無償で提供する、非専門的な支援<例:認知症カフェ、認知症当事者の会など>)です。認知症をもつ人が、人として尊重され、安心して生きていくためには、(1)と(2)の複合的活用が大切です。
(記事より)
日刊ゲンダイ「五木寛之 流されゆく日々」で鎌田教授の『現代神道論』が紹介されました
日刊ゲンダイで連載中の作家・五木寛之氏のコラム「流されゆく日々」(9837回/2016年1月7日)で鎌田東二教授の著書『現代神道論』が紹介されました。霊性と生態智をキーワードに東日本大震災後の日本社会と日本人の生き方を見つめた本書について感想を記すと共に、鎌田教授の多彩な活動にふれています。
「流されゆく日々 連載9837回 正月休みに読んだ本 <4>」(2016年1月7日)五木寛之
〈霊性と生態智の探究〉というサブタイトルが、ずっと気になっていた。正月にようやくページをめくることができたのだ。
鎌田さんの世界は、ひと言で説明できないくらい広く、深い。文系の学者だということはわかるが、宗教学者なのか、哲学者なのか、はたまた民俗学者なのか比較文明学者なのか、私には見当がつかない。(中略)
鎌田さんは、神道だけでなく、仏教の修行も通過した人だ。山伏のような荒行もやっている。そんな鎌田さんが、大きな衝撃を受けたのは、阪神淡路大震災と、オウム真理教事件、そして東日本大震災だった。それらの事件に際して「行動する学者」は少くなかった。しかし、その行動を思想にまで高めた例を、私はあまり知らない。この本の中では、第4章「祈り・東日本大震災の被災地を巡る旅」から、第5章にあたる終章、「『3・11』後の霊性と生態智の探究に向けて」という後半部分にさまざまな刺戟を受けた。
(記事より)
同紙のウェブ版「日刊ゲンダイDIGITAL」で記事をお読みいただけます(要登録)。
京都大学の外国向け冊子『Research Activities』にセンターの取り組みが紹介されました
京都大学が外国向けに発行している研究紹介冊子『Kyoto University Research Activities』(Vol.5 No.3 Dec 2015)に、こころの未来研究センターの取り組みやセンターの研究者の活動が紹介されました。
「Why Research Kokoro Now?」という巻頭特集では、2015年9月に開催した「第1回京都こころ会議シンポジウム」のレポートが詳細に掲載されています。また、冊子全体に渡ってセンターの研究者らが寄稿した記事や写真が多数掲載されています。
以下に各記事の簡単な紹介を記載しています。興味のある方はぜひご覧ください(記事は全て英文です)。
『Kyoto University Research Activities』(Vol.5 No.3 Dec 2015)
※↓英字の記事タイトルをクリックすると、PDFが開きます。
Front Cover(369KB)
... こころの未来研究センターのある稲盛財団記念館のスケッチ画。
Message From The President(338KB)
... 山極寿一総長が京大の心理学研究の歴史と現在について話しています。
Feature (844KB)
... 京都こころ会議の発足と第1回京都こころ会議シンポジウムの模様が特集されています。
History(787KB)
... 日本の臨床心理学のパイオニアである河合隼雄京大名誉教授の功績と生涯について、梅村高太郎研究員が寄稿しています。
Topics(811KB)
... こころに関する研究活動について、河合俊雄教授、内田由紀子准教授、熊谷誠慈准教授らの活動が紹介され、北山忍特任教授と阿部修士准教授が日本心理学会より国際賞を受賞したニュースも取り上げられています。また、上京区の京町家で開催している「くらしの学び庵」の取り組みが約2ページに渡り紹介されています。
International Joint Research(659KB)
... 世界各地の研究者と連携した取り組みとして、船橋新太郎教授、内田由紀子准教授らの活動が紹介されています。
Organization Activity(562KB)
... こころに関する研究をおこなう学際機関として、こころの未来研究センターの概要がスタッフの写真と共に詳しく紹介されています。
Research Frontiers (2.49MB)
... 最先端の研究を紹介するページにおいて、鎌田東二教授、船橋新太郎教授、阿部修士准教授、熊谷誠慈准教授、畑中千紘助教、上田祥行助教、清家理助教、センター滞在研究者のVinai Norasakkunkit 米国ミネソタ州立大学心理学部准教授らの研究紹介記事が掲載されています。
外国向け研究紹介冊子 Kyoto University Research Activities - 京都大学ウェブサイト
鎌田教授が登壇したシンポジウムの記事が韓国の東洋日報に掲載されました
鎌田東二教授が登壇した韓国でのシンポジウム「東洋フォーラム」の記事が、韓国の新聞「東洋日報(ドンヤン・イルボ)」(2016年1月11日発行)に掲載されました。
記事は、東洋日報のウェブサイトで閲覧可能です。(↓韓国語です)
http://www.dynews.co.kr/news/articleView.html?idxno=293825
鎌田教授のコラム「息絶えぬ原始の看取り」が月刊『MOKU』に掲載されました
鎌田東二教授のコラムが月刊『MOKU』2016年1月号(発行:MOKU出版)に掲載されました。
雑誌は「生きる意味を深耕する月刊誌」として、毎号、様々な角度から人間の生き方を考える特集を提供しています。本号の特集「戦後100年を生きるあなたへ」において、鎌田教授は、継続して調査研究をおこなっている東日本大震災被災地での現状や、巨大コンクリートの防潮堤が建設されつつある状況にふれ、人間の古くからの自然への畏怖・畏敬の念に基づく「生態智」を活かし生きる先にこそ持続可能な人類の未来がある、と提言しています。
■戦後100年を生きる人たちへ
「息絶えぬ原始の看取り」宗教哲学者・京都大学こころの未来研究センター教授 鎌田東二
東日本大震災が起きてそのしばらく後から、一年に二回、定期的に福島県浪江町か南相馬市から青森県八戸市までの太平洋岸の被災地を回って、その時々に生起している問題や「復興・復旧」の過程を定点観測している。これまでに十回、車で各回千キロほどを回っている。千年に一度と言われる規模の大地震による被害とその後の再建の過程で何が浮かび上がってくるのか、日本の現在と未来の縮図と予兆を見る思いでお遍路さんのように訪れている。
福島第一原発の六キロほどのところの被災地海岸線に慰霊碑と供養の卒塔婆が建てられていて、そこに「為大愚国策東電原発事故被災犠牲動物植物之霊位三菩提也」と書かれているのを見た時には深く鋭く胸を衝かれた。痛烈、痛切な思いに言葉を失った。
そのすぐ近くには、ごっそりと津波にさらわれた延喜式内社の苕野神社があった。苕野神社の祭神は、高龗神・闇龗神・五十猛神・大屋津姫神・抓津姫神であった。だが、この周りには今は一軒の家もない。
苕野神社の鈴木澄夫宮司さん夫妻は津波に呑み込まれて亡くなった。宮司さん夫妻を心配して迎えに来た禰宜の息子さん夫婦も津波に攫われて亡くなった。そこから海まではほんの二十メートルほど。真っ先に津波に襲われる位置にあった。
祭神の高龗神・闇龗神は、奈良県の丹生川上神社や京都市の貴船神社の祭神と同神で水の神様である。なんとも言葉にならない事実である。何度この地を訪れても整理することのできない感情が生起する。福島原発からだいぶ距離のある飯舘市を訪れた時にも言葉にならない整理できない感情が溢れ出る。どうしてこの静かで穏やかな山村が高放射能の汚染地になってしまったのか、と。
同時に、仙台市若林区霞目の浪分神社や宮城県沿岸部の熊野神社などの多くは津波被害を免れているのも見てきた。これもまた事実である。
(記事より)
鎌田教授のコラム「韓国儒学の道徳・生命・霊性・礼楽」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 37」(2016年1月4日付)に鎌田東二教授のコラム「韓国儒学の道徳・生命・霊性・礼楽」が掲載されました。2015年12月、韓国でおこなわれた「韓中日国際シンポジウム 生命と平和、治癒と霊性から見た退渓学」に基調発表者として参加した鎌田教授は、シンポジウムで儒学についての認識を新たにしたとし、現地で触れた思想を自身の研究知見と共に整理した上で、「『儒学は美学である』という主張が、これからの未来倫理となり得る」と考察しています。
「韓国儒学の道徳・生命・霊性・礼楽 連携に基づく「美学」 未来倫理となり得る思想」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
ほとんどの人が儒教を倫理道徳だと理解している。だが、最近、「儒学は道徳の学ではなく、美学である」という認識と意見を韓国で聞いて目を見開かされた。わたしたちは儒教についてずいぶん浅く一般的な理解しかしていないのではないかとも反省させられた。
一般には儒教とか儒学と言うと、古臭い硬直した封建道徳だとイメージしがちだ。確かに、江戸時代に朱子学が徳川幕府の体制擁護の御用学となり近世封建制度を支えたし、江戸時代末期の水戸学や、明治維新期の民族主義や国家主義の台頭の中で儒教的な観念や精神道徳が過剰に振りまかれたところがあるので、保守的で体制的で閉鎖的な旧弊の思想と思われている。
だが、昨年12月4日から6日までの3日間、「韓国儒学」の拠点である慶尚北道安東市の陶山ソンビ文化修練院で、嶺南退渓学研究院と陶山ソンビ文化修練院主催の韓中日国際シンポジウム「生命と平和、治癒と霊性から見た退渓学」に基調発表者として参加し、韓国儒学の伝統の奥深さや多様性に触れ、現代の諸問題や課題について学び考えることが多かった。また儒学の持つ可能性についてもいろいろと考えさせ、認識を新たにした。
(記事より)
鎌田教授の論考が『天河太々神楽講社通信』第14号(発行:天河大辨財天社)に掲載されました
奈良県天川村の天河大辨財天社が発行する会報『天河太々神楽講社通信』第14号(2016年1月)に、鎌田東二教授の論考が掲載されました。「『和の国』の原点と未来」と題し、鎌田教授は『日本書紀』における「憲法十七条」の内容と意味合いについて解説。「和の国」の構想が根底にある日本書紀の憲法十七条には、非常に深い示唆に富む洞察に基づく重要な精神原理や指針が示されているとし、天河大辨財天と秘神「天照日輪辨財天」は、このような「和国」文化と原理の象徴的な場所と事例になっている、と考察しています。
「『和の国』の原点と未来」京都大学こころの未来研究センター 鎌田東二/太々神楽講直講員
天河大辨財天社の秘神は「天照日輪辨財天」と呼ばれる。本来、弁財天の神が、インド最古の神典『リグ・ヴェーダ』の中に記載されたサラスヴァティという河の神であり水の神であることはよく知られているが、しかし、日本に弁財天信仰が入って来て、「吉野熊野中宮」とも「金胎不二の霊地・男女冥会の勝地」と称えられた天河の地で、六十年に一度御開帳される秘神「天照日輪辨財天」の信仰と神像を生み出したことは画期的な出来事であった。
そのことは、日本人にとって「和・環・輪」すなわち「不二」の思想がいかに重要であったかということを示している。天河の「天照日輪辨財天」の神像には、一見対立するものを融合調和する「不二」の思想が表現されているとわたしは思う。日と水、火と水、火山列島の日本と豊葦原の瑞穂の国の日本、この二つの対極が一つに結ばれている。それが「天照日輪辨財天」像であると。その底抜けに明るく、生命的輝きと微笑みに満ちた造形は地球上の全存在を祝福するオーラに包まれている。
『日本書紀』の推古天皇十二年(西暦六〇四年)の条には、聖徳太子が制定したとされる「憲法十七条」が記載されている。『古事記』は推古天皇の記録で終わっているが、仏教の記録も仏の記録もまったくない。『古事記』には意図的に仏と仏教の記録が消されている。だが、『日本書紀』は違う。仏教の伝来とそれが日本の社会にどのように導入されたかが詳しく生々しく記録されている。(中略)
戦後の「日本国憲法」もさることながら、『日本書紀』に記された「憲法十七条」もよくよく吟味されなければならないと思う。非常に深い示唆に富む洞察に基づく重要な精神原理や指針が示されていると思うからだ。ここに示された「和の国」の構想は『古事記』では「国譲り」などというあり得ないような「政権交代」を実現した国の文化と思想性を深く掘り下げ、問い直すところからわたしたちの未来を構想し、実践したい。
(論考より)
清家助教の講義レポートが『老健』に掲載されました
公益社団法人全国老人保健施設協会が発行する機関誌『老健』2015年12月号に、清家理助教が登壇した第2回老人保健施設管理医師研修会(2015年9月12日・13日/於:AP東京八重洲通り・東京都中央区)の報告記事が掲載されました。
全老健REPORT 第2回老人保健施設管理医師研修会(第Ⅱ期)
1日目最後の講義は、清家助教の「家族・介護者のケア〜家族をはじめとした介護者の負担を理解し、早期に適切な介入」。他人の心の状態を決めつけていないかと注意を促し、「ニーズや状況に合っていない専門家の支援は、家族や介護者にとって害やストレスになることもある。相手が何を求めているのか、言葉にならない態度などのメッセージもキャッチする。そこでどういう支援が必要なのかがみえてくる。介護している人のストレッサーをできるだけ軽減することが大切」と述べた。
(記事より)
鎌田教授のコラム「パリ同時多発テロ事件について思う」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 36」(2015年12月1日付)に鎌田東二教授のコラム「パリ同時多発テロ事件について思う」が掲載されました。2015年11月13日に起きたパリ同時多発テロによって、世界が危機的な事態に陥ったことを懸念する鎌田教授は、資本主義の資源獲得競争や政治的覇権争いに宗教、信仰が利用されている現状を指摘し、佐藤優氏と 橋爪大三郎氏の対談『あぶない一神教』(小学館新書)を引用しながら宗教の多様性を受容した上で議論することの重要性を説き、平和への道筋をたどる努力の必要性を訴えています。
「パリ同時多発テロ事件について思う 不気味な破局的事態 宗教の宗教の多様性排除が問題」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
11月13日の金曜日、パリで大きな変化が起きた。「13日の金曜日」という、フランスや英米などのキリスト教徒にとっては、不吉でいやな日に、パリ市内の6カ所で同時多発テロ事件が起こったのである。
元号が「平成」に変わった26年前から、「現代大中世論」という「スパイラル史観」を主張し、「乱世」に突入したという歴史観を折に触れて言ってきたので、未来に起こってくるだろうさまざまな破局的な事態はある程度想定してきたが、それが戦争という形を取るのか、地震や火山噴火や台風や豪雪や異常気象の形を取るのか、パンデミック(世界的大流行)をもたらすような疾病の流行という形を取るのか、それともそのどれもが起こるのか具体的には予想し難かった。
が、いざそれがこのような同時多発テロ事件という具体的な形で実現すると、あらためて暗澹たる気持ちになる。「平成」という元号になって世界が変わったように、このパリ同時多発テロ事件によって世界は変わったのである。(中略)
このような事態を散見するにつけ、資本主義の資源獲得競争や政治的覇権争いに、宗教的観念や信仰が利用されていると思わざるをえない。佐藤氏が注意を促しているように「一神教は偏狭であるが、多神教は寛容だ」とか、「キリスト教やイスラム教は偏狭で、戦いばかり起こすが、仏教や神道は寛容で、平和愛好的だ」という言説や決めつけが問題だ。キリスト教の中でも寛容な教派はあるし、爆弾闘争を展開している仏教徒もいるし、八百万の神を信仰する神道の中でも排他的で攻撃的な集団はいる。
(記事より)
『京大広報』に第1回京都こころ会議シンポジウム、京都大学東京フォーラムの模様が掲載されました
京都大学の広報誌『京大広報』の715号(2015年10月発行)に、第1回京都こころ会議シンポジウム(2015年9月13日開催/京都ホテルオークラ)の報告が掲載されました。また、同誌716号(2015年11月発行)に、吉川左紀子センター長が登壇した京都大学東京フォーラム(2015年10月20日開催/パレスホテル東京)の報告が掲載されました。
それぞれの記事は、京都大学ウェブサイトの『京大広報』のページよりPDFをダウンロードしてご覧いただけます。
第1回京都こころ会議シンポジウム「こころと歴史性」を開催
9月13日(日),京都ホテルオークラにて第1回京都こころ会議シンポジウム「こころと歴史性」を開催した。4月に発足した「京都こころ会議」の第1回シンポジウムとして,こころの歴史性に焦点をあて, 5人の講演者がそれぞれの専門分野から講演,討論をおこない,400名を超える参加者が来場した。
(記事より抜粋。『京大広報』715号 PDF:8.12MB)
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京都大学東京フォーラムを開催
本フォーラムでは,山極総長による挨拶の後,髙林純示生態学研究センター教授が「植物と昆虫の会話を解読する」と
題して,また阿形清和理学研究科教授が「切っても切ってもプラナリア─再生を科学する─」と題して講演を行った。続いて山極総長と髙林教授,阿形教授,吉川左紀子こころの未来研究センター教授の4名により,面白い研究とは何かについてのパネルディスカッションが行われた。
(記事より抜粋。『京大広報』716号 PDF:4.87MB)
鎌田教授の論考「命のメッセージつなぐ」が琉球新報に掲載されました
鎌田東二教授の論考「『久高オデッセイ第三部』完成 命のメッセージつなぐ」が2015年11月27日付の琉球新報に掲載されました。2015年7月に逝去した映画監督・大重潤一郎氏の人生を振り返り、遺作となった映画「久高オデッセイ」第三部に懸けた思いと作品にこめられた祈りとメッセージについて、大重監督に寄り添い作品製作に携わった伴走者からの視点で解説しています。
■論壇「『久高オデッセイ第三部』完成 命のメッセージつなぐ」鎌田東二 京都大学こころの未来研究センター教授
大重潤一郎は1970年代から沖縄に焦点を当てて映画制作に取り組んできた。それが具体的な作品として結実したのは新城島で撮影した「光りの島」(95年)と「風の島」(96年)が最初であったが、その完成は大重の自宅があった神戸が阪神淡路大震災で甚大な被害を受けた直後のことであった。彼は多くの命が失われた後に、命の帰趨(きすう)を、そのよりどころとなる基底を沖縄に求めた。(中略)
「神の島」としてニラーハラー信仰を伝えてきた久高島の12年間(イザイホーが行われる年に当たっていた02年から14年まで)を「比嘉康雄の魂」の導きを受けて撮り上げた三部作は、第一部では漁労祭祀の中心をなす男性神役ソールイガナシーの退任、第二部ではイザイホーで神女となった方々の退任が記録されている。そして第三部では新しい命の誕生と若い神女の登場が久高島の新たな息吹と「風」として、祈りと願いを込めつつ力強く表現されている。
(記事より)
鎌田教授のインタビューが『みずほプレミアムクラブだより』の特集に掲載されました
鎌田東二教授のインタビューが、みずほ銀行とジェティービーが編集・発行する会員向け広報誌『みずほプレミアムクラブだより 華』2015年冬号(第37号/2015年12月)に掲載されました。「特集/門 〜見える門、見えざる門〜」において、鎌田教授は、古来から日本文化と日本人の心に関わってきた神社と鳥居の持つ意味や成り立ちについて、宗教学、民俗学の視点から解説。京都の伏見稲荷大社や奈良の大神神社の鳥居の持つ役割や意味を例に挙げ、日本文化の特質に深く根ざした「門」について考察しています。
鳥居をくぐり、門をくぐる。門を通じて"奥"を感じる。
どうして日本人は門にこだわりを持ち、大切にしてきたのでしょうか。その形式や意匠に意味を感じて名前を付け、堀がないところに単独で建てて領域を示し、それをくぐることが重要な体験となるような門。こうして日本における門の特徴を整理すると、似ているものがあることに気づきました。それは鳥居です。(中略)
もしかしたら、鳥居に対して感じることが、日本人が門に対して感じていることの奥に潜んでいるのかもしれません。そこで、神道や民俗学にくわしい京都大学こころの未来研究センター教授の鎌田東二先生にお話を伺いました。
「門について、僕は門外漢なのですが...」と笑いながら、鎌田先生は門と鳥居について、次のようなお話をしてくれました。「門というものは、ある平面なり、空間なり、世界というものを切り取り、その奥を示していくための1つの仕掛け、装置ではないかと思います。次元が上がるたびに次の門、その次の門、そのまた次の門となっていくのです。それは、目に見える現実の門も見えない心の門も、どちらもその門を通過することで、内側の奥の方へと入っていく。そういう外と内、外と奥というものを仕分ける仕掛けが門なのです」(鎌田先生)。(中略)
「日本文化の特質として、すべてを見せることなく、奥を感じさせるということがあるように思います。見せないことによって、それを推し量らせるというやり方です。見えないようにすること、見させないことによって畏怖心を強める。門は日本文化のあり方と深く関わりがあるように思います。だから、海外の門と出入り口という機能は同じでも、日本の門は独特なのではないでしょうか。」
鎌田教授の共著『満月交遊』の書評が徳島新聞に掲載されました
鎌田東二教授と一条真也氏の往復書簡が収められた書籍『満月交遊 ムーンサルトレター(上・下)』(水曜社/2015年10月)の書評記事が、2015年11月27日付の徳島新聞に掲載されました。同紙の文化面の「とくしま出版録」において、徳島県立文学書道館の亀本美砂氏が「激動の時代をこぎゆく私たちの明日への羅針盤となるだろう」と、評しています。
■とくしま出版録「現代を生きる羅針盤」...「満月交遊」鎌田東二・一条真也著
阿南市出身の宗教哲学者・鎌田東二氏(京都大こころの未来研究センター教授)は、冠婚葬祭業大手の経営者であり作家の一条真也氏(2012年第2回孔子文学賞受賞)と、05年10月から満月の夜にウェブ上で文通を続けている。この文通は「ムーンサルトレター」と名付けられ、お互いの著書やプロジェクトをはじめ、閉塞した社会を乗り越えるための方策や知恵、直感と洞察が縦横無尽に語られる。(中略)
二人の合い言葉は「楽しい世直し・心直し」。震撼する命と社会の危機を踏み越えようとする不屈の覚悟が読む者の心を揺さぶり、無力感や絶望の闇をも吹き払ってくれるようだ。
(記事より)
内田准教授、荻原研究員らの研究成果が朝日新聞、日経新聞、毎日新聞、京都新聞などで取り上げられました
2015年10月、『Frontiers in Psychology』に論文が掲載された内田由紀子准教授、荻原研究員らの研究成果が朝日新聞、日経新聞、毎日新聞、京都新聞など様々なメディアで取り上げられました。掲載内容の一部をご紹介します。
■「悠真くん、どう読むの? 読み方で個性の傾向強まる」
朝日新聞(2015年10月22日付)
京大大学院教育学研究科の荻原祐二研究員らは、新生児の名前を調べているベネッセコーポレーションの名前データ(2005~13年分、年平均約4万件)を分析。上位10位の漢字の組み合わせや読み方が、全体に占める割合の推移を調べたところ、「大翔」や「悠真」など、漢字の組み合わせを選ぶ割合は変わらない一方、同じ読み方を選ぶ割合は減っていた。
さらに、明治安田生命保険の名前調査データ(04~13年、年平均約8千件)を調べると、上位10位の漢字の組み合わせのうち、「結菜」を「ゆいな」「ゆな」「ゆうな」と読ませるなど、複数の読み方がある割合が増えていた。(記事はこちら)
■「赤ちゃんの名前、読み方で個性競う? 京大調査 」
日本経済新聞(2015年10月22日付)
大手企業が発表している赤ちゃんの名前ランキングを約10年分調べた結果、人気のある漢字に一般的でない読みを与えることで、個性的な名前を付ける傾向が増えていることが分かったと、京都大チームが22日付の海外科学誌電子版に発表した。
チームの内田由紀子准教授(社会心理学)は「他人とは違う読みにすることで個性を出したいと考える親が増えているのではないか。個性をより重視する個人主義化が、日本文化の中で進んでいることを示唆している」と話した。(記事はこちら)
■「新生児の名前:人気の漢字で、読み方は個性的に」
毎日新聞(2015年10月24日付)
京都大大学院教育学研究科の荻原祐二研究員(文化心理学)らのグループは、最近の新生児の名前を分析したところ、使う漢字よりも、読み方で個性を出す傾向が強まっていることが分かったと発表した。日本が個人主義の文化に変容していることを示す研究結果としている。(記事はこちら)
■「個性派ネーム解析、読みで独自性 京大、個人主義化を示唆」
京都新聞(2015年10月22日付)
京大の荻原祐二教育学研究科研究員や内田由紀子こころの未来研究センター准教授らは、ベネッセコーポレーションと明治安田生命保険が公開している新生児の命名ランキングを用いて、人気のある漢字や読み方の動向を数値解析した。
その結果、「太」「翔」「大」など人気のある一部の漢字が使われる割合が増加の傾向にある一方で、一般的な読み方を付ける割合は減少した。また、「大翔」を「ひろと」や「はると」「つばさ」のように、多様な読み方がある名前がランキングの上位を占める割合が高まっていた。(記事はこちら)
■「名前に個性的読み増加、京大調査 個人主義化を示唆」
共同通信(2015年10月22日付)
大手企業が発表している赤ちゃんの名前ランキングを約10年分調べた結果、人気のある漢字に一般的でない読みを与えることで、個性的な名前を付ける傾向が増えていることが分かったと、京都大チームが22日付の海外科学誌電子版に発表した。
チームの内田由紀子准教授(社会心理学)は「他人とは違う読みにすることで個性を出したいと考える親が増えているのではないか。個性をより重視する個人主義化が、日本文化の中で進んでいることを示唆している」と話した。(記事はこちら)
内田准教授、萩原研究員らの論文が『Frontiers in Psychology』に掲載されました
[研究成果] 個性的な名前を与える傾向が増加している -日本文化の個人主義化を示唆- | 京都大学ウェブサイト
鎌田教授の解説が『ロスト マンチュリア サマン』映画パンフレットに掲載されました
日中共同プロジェクト合作記念作品『ロスト マンチュリア サマン』(2015年/制作:日本、中国/監督・音楽・構成:金大偉)の映画パンフレットに鎌田東二教授の解説と、アルタンジョラー連携研究員のコメントが掲載されました。
映画は、『回生〜鶴見和子の遺言』(2001年)、『原郷の詩』(2011)、『花の億土へ』(2013)など鶴見和子氏や石牟礼道子氏の世界を映像表現してきた金大偉監督の最新作です。鎌田教授は、本作において金大偉氏が満州シャーマン(「薩満(さまん)」)の文化の担い手にスポットをあて、シャーマニズムの本質を見出していくプロセスや見どころについて宗教・民俗学者のまなざしから解説しています。
解説「ロスト マンチュリア サマン」鎌田東二
「ロスト マンチュリア サマン」はこれまでの金大偉氏の映像作品とは大きく異なっている。たとえばこれまでの映像作品『回生〜鶴見和子の遺言』(2001年)『短歌百選〜回生から花道へ』(2004年)は鶴見和子氏の生きざまと歌の世界を、『しゅうりりえんえん』(2004年)『海霊の宮〜石牟礼道子の世界』(2006)『光凪』『原郷の詩』(ともに2011年)『花の億土へ』(2013年)は石牟礼道子氏の詩の世界を映像詩として表現したものだった。
それに対して、「ロスト マンチュリア サマン」(Lost Manchuria Shamans)は金大偉氏みずからのルーツに深く潜り込み、失われたあるいは失われつつある満州シャーマンの世界の光と影を描いた作品である。前者は他者の詩の表現世界を、後者は自己のルーツと詩の源泉を探り当てようとする。まさに「魂のロードムービー」と称する所以である。
シャーマンとは、超越の媒介者である。あの世とこの世、霊的世界と現実世界、見えないモノと見える物、相反し対立・分離するかに見える複数世界に接線や補助線を引いて交通可能な状態にし、両者をつなぎ、高次のバランスと秩序を確立しようとする存在だ。
金大偉氏は、この失われゆくユーラシア「薩満(サツマン)文化」の核をなすシャーマンの後継者たらんとしている。本作の最後の金大偉氏自身のナレーション「私は天空を見た。天空もまた私を見た」の語がその証明である。
(パンフレットより)
金大偉作品の上映スケジュール
http://www.geocities.jp/taiiproject/schedule.html
船橋教授のインタビュー記事が学術研究支援室のウェブサイト「K.U.RESEARCH」に掲載されました
船橋新太郎教授のインタビュー記事が、京都大学学術研究支援室が運営するウェブサイト「K.U.RESEARCH」に掲載されました。
京都大学の研究者による「未踏領域への挑戦」を紹介するドキュメンタリー記事のページで、「前頭連合野の機能解明 〜船橋研究室の船出秘話〜」と題し、船橋教授の研究人生のはじまりから現在の取り組みに至るまでを克明に追った読み応えのあるドキュメンタリーとなっています。
Behind Kyoto University's Research Vol.06 前頭連合野の機能解明 〜船橋研究室の船出秘話〜 | K.U.RESEARCH
Behind Kyoto University's Research Vol.06
前頭連合野の機能解明 〜船橋研究室の船出秘話〜
ヒトの額のあたりに大脳皮質前頭連合野がある。この部位は時々刻々と変化する周囲の状況に基づいて、最適な判断や意思決定する機能を担っている。この前頭連合野の機能に関する研究で国内外から高い評価を受けている脳研究者が、船橋新太郎教授だ。前頭連合野の機能の解明という夢を叶えるべくアメリカへ飛び立った若き日の船橋教授が、京都大学の吉田キャンパスで脳研究をスタートさせるに至る波瀾万丈のエピソードをご紹介する。
Dream ---- 脳の迷宮へ
いまや「脳科学」は教育系のテレビ番組だけでなく、娯楽番組や雑誌でも取り上げられ、一般の人々にも随分と身近な存在になった感がある。かつては医学系の研究者が行う研究分野だったが、今では、医学や工学のみならず、心理学、数学、物理学など、複数の異なる専門分野の研究者が参加する学際融合的な研究分野として、飛躍的に発展している。本ドキュメンタリーは、時代を四半世紀以上、さかのぼるところからはじまる。
船橋は、当初から脳の機能に興味をもっていたわけではなかった。もともと生物学に興味があり、大学では生物学に進もうと考えていた。大学受験を準備していた時に、たまたま『卵はどのようにして親になるか----発生と分化のしくみ』(岩波新書)を読み、1個の細胞が様々に分化して個体ができあがる仕組みに魅了され、その著者であった林雄次郎教授が在籍する東京教育大学(現在の筑波大学)理学部動物学科へ進学した。
ところが、である。....
(記事より 全文はこちら)
鎌田教授のコラム「大学と学問の未来」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 35」(2015年11月2日付)に鎌田東二教授のコラム「大学と学問の未来」が掲載されました。2015年10月、文部科学省は国立大学の第3期中期目標・中期計画の素案を公表しました。鎌田教授は一連の議論の流れやおもな大学が採った方針などをまとめて紹介した上で、自身が考える「学問」的探究として「1.道としての学問」「2.方法としての学問」「3.表現としての学問」という3つの要素について解説。学問への創造的取り組みの一環として間もなく刊行する編著『講座スピリチュアル学第5巻 スピリチュアリティと教育』(発行:BNP)を紹介し、こうした活動によって、これからの学問と教育の未来の検証と創造に向けて一石を投じたい、と思いを伝えています。
「大学と学問の未来 創造性の発現 喫緊の課題 論文以外の表現可能」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
私は常々「教育」と切り離すことのできない「学問」的探究に次の3種があると考えている。1.道としての学問ー人格形成・人間的涵養(かんよう)を目指す。2.方法としての学問ー知性錬磨・認識機能高進・新知見獲得を目指す。3.表現としての学問ー学問的問いを詩や物語や演劇で表現するワザを磨く。
第1の「道としての学問」とは、学問をする人間の志や動機や実存的意味や倫理に基づく人格形成・人間性の深化・涵養・錬磨を促す学問のあり方を示すものである。
第2の「方法としての学問」とは、科学や人文学を含めて、すべて学問には一定の方法論や領域があるが、そのような知に至る明晰な方法や領域の特定を通して、ものの見方の更新や概念のイノベーションや新知識の発見と獲得を目指すあり方を示すものである。
第3の「表現としての学問」とは、プラトンの対話編、アウグスティヌス「告白」、ニーチェの「ツァラトゥストラかく語りき」、空海の「三教指帰(さんごうしいき)」、中世の数学・数理問答テキストである法然の「選択本願念仏集」や吉田兼倶「唯一神道妙法要集」、宮沢賢治の「農民芸術概論網要」などを含め、問いと探究を新しい表現形式の中で探り深めていくあり方を示すものだ。(中略)
大学や学問のあり方についての議論が活発になってきている現在、私たちは間もなく「講座スピリチュアリティ学第5巻 スピリチュアリティと教育」(BNP)と題する論著を刊行する。「スピリチュアリティ(霊性)」という観点が「教育」や「人間形成」に不可欠と考えているからである。これにより「学問と教育の未来」の検証と創造に向けて一石を投じたい。
(記事より)
第1回京都こころ会議シンポジウムが毎日新聞、読売新聞、京都新聞などで取り上げられました
2015年9月13日、京都ホテルオークラで開催した第1回京都こころ会議シンポジウム「こころと歴史性」は、毎日新聞、読売新聞、京都新聞など様々なメディアで取り上げられました。掲載内容の一部をご紹介します。
■「こころで読み解く人類史 京都で会議、議論白熱8時間」
読売新聞(2015年10月15日付)
宗教対立や民族紛争など世界が直面する問題を人間の<こころ>の観点からとらえ直す「第1回京都こころ会議」(京大こころの未来研究センター主催)が、京都市内で開かれた。(中略)
臨床心理学者の河合俊雄・京大こころの未来研究センター教授は、こころの内外を巡る歴史性を語った。前近代では「こころ」は自然や異界とつながる「オープンシステム」で、病とは憑依や魂の喪失だった。西洋近代では「こころ」を個人の内部に閉じられたシステムとして把握し、病に対して心理療法が行われるように変化したのだが、前近代の世界観も「こころの古層」として息づいているという。
議論は白熱し、8時間近くに及んだ。現代のインターネット社会で、なお「こころ」の問題が絶えないのはなぜか。個人、共同体、あるいは人と自然が「つながる」には何が必要か。人類のさらなる進化の可能性はー。人を人たらしめる、「こころ」の可能性を実感した会議だった。(記事より)
■「こころの歴史性に焦点 第1回京都こころ会議シンポジウム開催」
京都大学新聞(2015年10月1日)
こころとその歴史性について考える第1回京都こころ会議シンポジウムが9月13日、京都ホテルオークラで開催され、これからの社会で「こころ」に求められるものについて分野の異なる5人の学者が発表した。
まず吉川左紀子・こころの未来研究センター長が「こころ」という日本語のもつ多面性と複雑性について説明した。(中略)
下條信輔・カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授は、個人史が年輪のように一つ所に蓄積された「来歴」という概念を提示し、色知覚や身体化した知性について来場者に体感させながら、「こころの発達に影響を及ぼす遺伝と環境の両要因は実に複雑に畳み込まれており、それゆえに来歴を振り返ることが重要」と主張した。(記事より)
■「人間 多角的に考える 多分野の学者ら分析 京都こころ会議」
毎日新聞(2015年9月28日)
「歴史性がテーマ」
会議では宗教学者の中沢新一・明治大野生の科学研究所長が「こころの構造と歴史」のテーマで講演。「どうすればモノとこころが統一的に理解できるかということに関心があった。現代はモノを理解する自然科学と、こころを理解する人文科学の方法論が分離している。だが神経科学的な情報伝達のあり方と、こおろの深層の構造とは同じ数学の言葉で表現できることが明らかになってきた。21世紀のサイエンスはモノとこころの統一が重要な要素になる。そのとき人文学が新しい生命をもって浮かび上がってくるだろう」などと期待を込めた。(記事より)
■「こころ」とは 多角的に議論 京大が初シンポ
京都新聞(2015年9月14日)
京都大が立ち上げた「京都こころ会議」の第1回シンポジウムが13日、京都市中京区のホテルであった。脳科学や臨床心理学など幅広い分野の専門家や市民ら約400人が参加し、人間の「こころの成り立ち」や理解の歴史について学識者が多角的に論じた。(記事より)
■第1回京都こころ会議シンポジウム「こころと歴史性」
朝日新聞(2015年7月16日)
9月13日午前9時半〜午後6時、京都市中京区河原町御池の京都ホテルオークラ。「こころ」という日本語に含まれる広がりや深いニュアンスを大切にしながら、豊かなこころが育まれる社会のあり方を議論する。吉川左紀子・京大こころの未来研究センター長の開会の言葉、稲盛和夫・稲盛財団理事長のあいさつなどの後、講演がある。(記事より)
第1回京都こころ会議シンポジウム「こころと歴史性」を開催しました
「京都こころ会議(Kokoro Initiative)」が発足し、調印式、記者発表がおこなわれました
鎌田教授のコメントが『中外日報』に掲載されました
宗教・文化専門紙の中外日報(2015年10月14日付)に、鎌田東二教授のコメントが掲載されました。鎌田教授が制作に携わった大重潤一郎監督作品『久高オデッセイ第3章 風章』の上映会が京都でおこなわれたことと、今後の上映会開催の呼びかけを紹介すると共に、映画に含まれるメッセージについて、鎌田教授がコメントしています。
「久高島の記録映画 上映会を呼びかけ」
1978年以来断絶している島の最大神事イザイホーが、本来開催されるはずの2015年1月(旧暦14年11月)に実施するのかに県内・関係者の注目が集まる中、約12年間にわたり、島の移りゆく姿を撮影。大重監督は脳出血で半身不随になりながらも06年に第1部、09年に第2部を公開。神事が行われなかったイザイホー当日の島内の様子をカメラに収め、完結した。大重監督は完成直後に急逝した。
制作者の鎌田東二京都大こころの未来研究センター教授は「都会では生活が様々に分断されているが、周囲8キロのこの島では世の中の全体をホリスティックに知ることができる。この作品は、これからの社会で必要になる。ローカルかつユニバーサルな感覚・世界観にあふれている」と話した。
(中外日報 2105.10.14付 記事より)
また、神戸新聞(2015年10月12日)では、神戸ゆかりの映画監督として大重監督の生涯と作品が紹介され、数多くのメディアで同作品に関する記事が掲載されています。
鎌田教授のコラム「平成は兵制か?」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 34」(2015年10月1日付)に鎌田東二教授のコラム「平成は兵制か?『乱世』に突入と直感 『平和に成る』道求め行動」が掲載されました。昭和から平成へと元号が変わった当時、平治の乱を想起したという鎌田教授は、「乱世にあってこそ楽しい世直しを」と独自の活動をおこなってきました。安保法案の可決など最近の日本の情勢から当時の直感に狂いはなかったと振り返る鎌田教授は、10度目の東日本大震災被災地調査で今なお震災の影響が残る現地の状況を報告すると共に、現世が真に「平和かつ平安に成る」道と方法を求め行動しなければならない、と強く思いを伝えています。
「平成は兵制か? 『乱世』に突入と直感 『平和に成る』道求め行動」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
「平成」からすぐに「平治」を想起するのは歴史的経緯や文脈無視の非論理的な飛躍と多くの人は言うだろう。そんなことは百も承知で私は「『平成』は兵制(兵政)になる」などと言って「オオカミ少年」のように思われた。が、そんなことはどうでもよかった。警告を発しなければならないという強烈な思いに駆られていたから。
そのような思いもあって、こんな「乱世」にあってこそ「楽しい世直し」が必要と、「神戸からの祈り」「おひらきまつり」「NPO法人東京自由大学」などの社会活動を進めてきたが、それも根底に「平成ー兵制」という危機感があったからだ。そしてそうした歴史認識を「古代と近代が類似する」という「スパイラル史観」と「現代大中世論(大乱世)」として主張してきた。少しでも今を生きる緊張感と危機感と覚悟が定まればよいと思っていたから。
このような中、さる9月19日に安全保障関連法案が参議院で可決された時、私の非科学的な予言と直感はいよいよ現実のものとなってきたと確信した。(中略)
私は安保法案が可決される前日の18日から23日まで、福島県飯舘村や南相馬市から青森県八戸市までの東北被災地沿岸部1026キロを走りながら、半年に一度の第10回目の追跡調査を行った。そして飯舘村の最重要の聖地で、山の神・大山津見神を祭る山津見神社と奥宮の鎮座する虎捕山を参拝し、この秀麗な神の山の放射線量が高いことの事態の深刻さと矛盾を目の当たりにした時、戦後日本の「民主主義政治」と「資本主義経済」の欺瞞的なあり方と問題点に強い憤りを感じた。そして「平成」の世が真に「平和かつ平安に成る」道と方法をいかにしてたどることができるのか、求め行動し続けなければならないとあらためて思ったのである。
(記事より)
【10/16(金)・10/23(金)放送】鎌田教授がKBS京都ラジオに出演します ※放送日を訂正しました
《お詫びと訂正》放送予定日に誤りがありました。お詫びとともに訂正いたします(2015.10.9)。
鎌田東二教授が出演するラジオトーク番組「Glow〜生きることが光になる〜」(KBS京都ラジオ)が、2015年10月16日(金)、10月23日(金)のそれぞれ21時半より放送されます。
番組は、障がいのある人たちをはじめ、自身の内から湧き上がる衝動のままに表現した芸術「アール・ブリュット」について語りながら、人の営みの深さや広がりについて、ゲストを交えて考えるトーク番組です(番組ウェブサイトより)。鎌田教授は、自身の研究テーマを紹介し、毎年大津で開催されている「アール・ブリュット」の展覧会や「アール・ブリュット」を含む障碍者アートの特色や可能性について、パーソナリティのアサダワタル氏と語り合いました。
□番組情報
番組名:「glow生きることが光になる」
テーマ:「アール・ブリュットをきっかけに人の営みを考える」
放送日:2015年10月16日(金)・23日(金)21:30~21:55
放送局:KBS京都ラジオ ※受信エリアはおもに近畿圏
ゲスト:鎌田東二 こころの未来研究センター教授
パーソナリティー:アサダワタル
現場リポーター:田端一恵
【提供】社会福祉法人グロー
http://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/glow/
鎌田教授のインタビュー「こころの風景」」が大分合同新聞、秋田魁新報に掲載されました
鎌田東二教授のインタビュー記事「こころの風景」が、共同通信社の配信により大分合同新聞(2015年9月14日付)と秋田魁新報(2015年9月25日付)に掲載されました。日本各地で火山活動が活発となるなか、自然とどのように接し生きるべきか。インタビューで鎌田教授は、日本人が抱いてきた自然への畏怖心と自然から学び生きる「生態智」を呼び戻すことが重要である、と答えています。
「『神』としての火山活動 荒ぶる自然をおそれる 生命観研究の鎌田東二さん」
「どの民族にも文化の古層には、自然への畏怖の念がある。日本の神道ではそれが、荒ぶる自然に対する『おそれつつしむ』という感覚です。火山を、ただ災害をもたらす存在ととらえるのは、人間が自然をコントロールできるという近代合理主義の感覚でしょう」
そう話すのは、京都大こころの未来研究センター教授の鎌田東二さんだ。神道を中心に人間の自然観や生命観を研究する鎌田さんは、自然が人間に「牙をむく」「襲いかかる」という慣用句に潜む「人間中心主義」に違和感を覚えるという。「人間がちはやぶる(荒々しい)自然の中で、つつましく位置して生きること、つまり『生態智』を呼び戻すことが、今後の人類にとって必要だと思うのです」
だが、アスファルトの上に立ち、コンクリートに囲まれながら、古代人の感覚を呼び戻すことなどできるのだろうか。実際に多くの「被害者」を生む災害に「神」を感じることはできるだろうかー。「ぜひ行ってみてください」と鎌田さんが言うのは、伊豆大島(東京都)の三原山。古来、人々は噴き上げるその火を「御神火」と呼んで信仰の対象にしてきたという。
(記事より)
鎌田教授の書評「井村マンダラの光彩」が紅書房の『紅通信』第七十三号に掲載されました
鎌田東二教授の書評が紅書房の出版社発通信物『紅通信』第七十三号(2015年9月3日発行)に掲載されました。
日本における「妖精学」の第一人者として知られる井村君江氏の『私の万華鏡ー文人たちとの一期一会』を取り上げた鎌田教授は、「井村マンダラの光彩」と題し、著者が国内外で出会った文人たちとの交友録を「それ自体が妖精の戯れかと思わせるほど軽やかにかつ濃密に『一期一会』を描いていく」と評し、本の登場人物であるカルメン・ブラッカー(民俗学者・日本研究者)と自身との邂逅について振り返っています。
著者はイギリスのケンブリッジ大学に三年間留学した際、毎週ブラッカー氏の研究室に招かれた。そのブラッカー氏からイギリス・フォークロア学会の会長で妖精研究の専門家であったキャサリン・ブリッグズ氏を紹介され、「妖精学」というフロンティアに参入していったのである。この偶然とも必然ともいえる"文縁"の綾なす曼荼羅模様は、「人事を尽くして天命を待つ」ではないが、「人事」を超えた「天命」の光彩を放っている。
わたしは一九九四年の秋にロンドン大学でブラッカー氏と会った。同大学SOASで日本とアイルランドの宗教文化を比較する発表を行なった時に聴きに来てくれ、その後の懇親会で紹介されたのだった。幼い頃からシャーマニズムに否応なく関心を持ってきたわたしにとって、この『あずさ弓ー日本におけるシャーマン的行為』(秋山さと子訳、岩波現代選書、一九七九年)の著者との「一期一会」のロンドン大学での出逢いは、井村君江氏や鶴岡真弓氏や龍村仁氏によって誘われたアイルランド詣でへのさらなる引力となって、翌一九九五年には国際交流基金から派遣されてダブリン大学に客員研究員として赴くきっかけとなった。
(「井村マンダラの光彩」鎌田東二 - 一部抜粋)
鎌田教授のコラム「誕生と死と再生」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 33」(2015年9月1日付)に鎌田東二教授のコラム「誕生と死と再生〜北海道旭岳と福島からのいのちの挑戦」が掲載されました。8月22、23日、鎌田教授は北海道の東川町でおこなわれた助産院バースカムイ開院記念第1回「自然といのち」シンポジウムと、福島市で開催された「ふくしま未来神楽〜神楽を巡って」シンポジウムに登壇しました。旭岳の麓に誕生した助産院の門出にあたり、いのちと自然の関わりについて意義深い対話をおこなったことを報告すると共に、福島で実現した新しい創作神楽誕生に自身が大きく関わったエピソードや、発起人の和合亮一氏らの未来に向けた大きな挑戦について紹介しています。
「新しい創作神楽誕生 誕生と死と再生〜北海道旭岳と福島からのいのちの挑戦 貴重な『祀り』心込め支援」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
市川さんは、「いのちの誕生」といういのちの根源を伝えるに最適な地域である東川町で、「いのち」の根源を幅広く捉え、創造的ないのちの生み出される場を作りたいと「神々の誕生」を意味する助産院「バースカムイ」を開院した。
そこで、東京大学医学研究科助教で循環器内かの稲葉敏郎さんが「いのち・医療の現場から」を、NPO法人大雪山自然学校代表の荒井一洋さんが「自分という自然に出会うー自然体験活動の実践現場から」を講演、私も「日本人の死生観ー古事記から遠藤周作まで」と題して問題提起した。
ここで、荒井さんが自然の中で生き抜いていくためには「DSR=どうにか(D)する(S)力(R)」が必須であると主張したことには大変共感した。生存にとって逆境に強い「臨機応変力」こそ最大最高に重要であると日々考えている私としては膝を打つ指摘だった。
翌23日、福島の詩人で高校教師の和合亮一さんが中心となって催された「未来の祀り・ふくしま」に参加した。(中略)
実は、この創作神楽「ふくしま未来神楽」の"誕生"に私も一役買っている。2013年2月11日に朝日カルチャーセンター新宿で和合さんと対談した折、「震災直後に東北被災地を回っている時に、この禊もできなくなった環境の中での未曾有の事態の中でささげられる新しい祈りの言葉が必要だと思った、それができるのは当事者である和合さんのような人たちだ、ぜひ新しい祝詞や神楽や能のようなものを作ってほしい」とお願いした。それから2年半後、実に力強く感動的に和合さんはその問い掛けを実現してくれた。
(記事より)
『仏教タイムス』『六大新報』に東日本大震災関連シンポジウムに関するニュースが掲載されました
第6回東日本大震災関連シンポジウム(開催:2015年7月9日/於:稲盛財団記念館3階大会議室)に関する記事が、宗教情報専門紙『仏教タイムス』ならびに真言宗の専門誌『六大新報』に掲載されました。いずれの紙面にも、当日の様子が写真と共にレポートされました。
■「京大こころの未来研究センターシンポ 5年目の被災地 "あっぱれ"と"哀しみ"と」
週刊仏教タイムス(2015.7/23.30合併号)
京都大学こころの未来研究センターは9日、6回目となる「東日本大震災関連プロジェクトーこころの再生に向けて」を京都市左京区の稲盛財団記念館で開いた。「5年目を迎えた被災地の『復興』と現実」をテーマに芥川賞作家の臨済宗妙心寺派僧侶、玄侑宗久氏や東北大大学院で臨床宗教師の養成に力を注ぐ鈴木岩弓教授ら4人が、「心の復興」への課題を探った。(記事より)
■「京都大学シンポ開催 被災地の復興と現実テーマ 井上高野山大教授の報告も」
六大新報(2015.8/15)
京都大学こころの未来研究センター(吉川左紀子センター長)が推進する東日本大震災関連プロジェクト(研究代表鎌田東二教授)では去る七月九日午後一時から、京都市左京区吉田の京都大学稲盛財団記念館で、第六回東日本大震災関連シンポジウムをテーマ「こころの再生に向けて〜五年目を迎えた被災地の『復興』と現実〜」で開催、五年目を迎える現地の実態を踏まえ今後の復興の在り方を討議した。(記事より)
鎌田教授が登壇した「神楽を巡って」シンポジウムの記事が『福島民友』に掲載されました
2015年8月23日に福島市で開催された「神楽を巡って」シンポジウムに鎌田東二教授が登壇しました。シンポジウムは「未来の祀りふくしま」最終日におこなわれた「ふくしま未来神楽」の奉納に合わせて開催されたもので、震災後の福島で新しい神楽を創ることの意義について意見交換がなされ、福島県の地方紙『福島民友』にレポートが掲載されました。
「新しい祈りの形模索 『未来の祀りふくしま』閉幕 『神楽を巡って』シンポ」
福島民友(2015.8.24)
県民俗学芸能学会調査団団長の懸田弘訓さん、福島稲荷神社宮司の丹治正博さん、伊勢大御神宮司・県立博物館専門学芸員の森幸彦さん、宗教学者の鎌田東二さんが出演。同イベント発起人で詩人の和合亮一さんが司会を務めた。
鎌田さんは、震災・原発事故後、既存の祝詞ではない新しい祈りの言葉を生み出す必要性を強く感じたことを紹介。和合さんに創作を提案したことで「未来の祀り」という新しい祈りの形につながったという。
(記事より)
(2015.10.6 追記)「福島民友新聞」9月16日付文化面にも同シンポジウムの記事が掲載されました
「『福島」の挑戦 意味探る シンポ「神楽を巡って」』
内田准教授の論考がエネルギー・文化研究所の発行する『CEL』Vol.110に掲載されました
内田由紀子准教授の論考が、大阪ガス株式会社エネルギー・文化研究所の発行する情報誌『CEL』Vol.110(2015年7月発行)に掲載されました。
特集『幸せな地域の暮らしをつくる』では、昨今、豊かさを計るための新たなものさしとして注目されている「幸福感」にフォーカスをあて、地域における取り組みや関連分野の研究者による知見を紹介しています。内田准教授は「未来への展望:問われる幸福の指標の活用」というタイトルで論考を寄稿。文化・社会心理学者としてこれまで進めてきた幸福感に関する研究や国内外での施策を紹介し、今後、人々の暮らしと地域のために幸福の指標をどう活用していくべきか考察・展望しています。
全文がウェブに公開されています。下記リンク先にて電子ブックまたはPDFをダウンロードしてお読みください。
「未来への展望: 問われる幸福の指標の活用」
内田由紀子
幸福を支える集合的要件
世界各国で「幸せ」を指標化する動きが盛んだ。日本の「幸せ」はどのような特徴があるのか、それをふまえ、どのように幸福度を測り、活用していけばよいのだろうか。地域での幸福度を向上させ、持続可能な地域づくりにつなげるための、幸福の指標の活用について考察する。
はじめに
21世紀に入ってから14年が経ち、経済成長の停滞、少子高齢化、地域の消失など、高度経済成長期には見られなかった問題が顕在化しているといわれている。 このような日本の現状に連動するように、特に先進国をはじめとする世界各国において、豊かな生き方の指針として「幸福」という概念が注目を集めている。社会科学をはじめとする学問分野の中でも「幸福感」研究が大きく取り上げられるようになり、その論文数も大きく増加、幸福というキーワードのもとに、幅広い研究フィールドの協働が進んでいる。
(論考より)
「未来への展望: 問われる幸福の指標の活用」内田由紀子 | CELウェブサイト
情報誌CEL Vol.110 目次/一括ダウンロード | CELウェブサイト
鎌田教授の対談記事が『未来共創新聞』に掲載されました
鎌田東二教授と哲学者・金泰昌氏の対談が、2015年6月22日付の『未来共創新聞』(発行:オフィス21)に掲載されました。日韓国交正常化50年を特集する企画において、山本恭司編集長による司会のもとで鎌田教授と金氏は、「韓人と日本人の霊性次元の対話・協働・開新」の可能性を探るべく、それぞれの研究の知見を提供し、対談をおこないました。
山本恭司(未来共創新聞編集長) 鎌田先生の『スピリチュアル学』(全7巻、ビイング・ネット・プレス発行)の第3巻「スピリチュアリティと平和」がこのほど上梓されました。そこでズバリお尋ねします。「スピリチュアリティ」とは何でしょうか。
鎌田東二(京都大学教授) 私は「スピリチュアリティ」と「霊性」という言葉を翻訳で繋ぎながら考えてみました。「スピリチュアリティ」=霊性には大きく四つの特性があると思っております。
一つは「根源性」です。自分自身を根源から成り立たせ、人間存在の一番根幹にあるものです。一番の核であり根っ子です。
二つ目は「全体性」。「全体性」を「トータリティ」とか「ホーリスティック」と言い換えてもかまいません。要するに、宇宙の部分ではなくて宇宙全体であり普遍性に関わるという意味です。
そして三つ目は変容性です。深化、成熟していくのです。変容とは、一皮も二皮も剥けて本質がどんどん露わになってくることです。例えば、3歳児が内蔵していた根源性と全体性は、歴史と経験が加味されて変容してゆき80歳になったときには深みを増しています。
四つ目は、スピリチュアリティとは、私を私たらしめている方向性です。私はそれを「いのちのコンパス」と言っています。
(記事より)
鎌田教授の講演報告が『兵庫・生と死を考える会 会報』第61号に掲載されました
鎌田東二教授の講演報告が『兵庫・生と死を考える会 会報』第61号(2015年7月16日発行)に掲載されました。鎌田教授は、同会の2月例会において「死生観の今と昔 〜いのち・自然・ものがたり」という演題で、日本文化における死生観の変遷について、古事記などの物語などを紐解きながら古代から現代まで順を追って紹介し、現在のスピリチュアルケアやグリーフケアのあり方について考察しました。
「死生観の今と昔 〜いのち・自然・ものがたり」 鎌田東二
さて、死生観の今と昔を振り返ってきて言えるのは、あらゆるいのちが自然の「中」にあることであり、そのいのちが活性化するためには死者儀礼やスピリチュアルケアや宗教的ケアを含め、こころやたましいに関わる物語と鎮魂のワザを持ち実践する必要があるということです。自然災害多発時代の今、いのちの源を自覚する物語や未来を生き抜いていくワザの開発と実践が求められています。
(報告より)
河合教授のコメントが読売新聞の戦後70年企画記事に掲載されました
戦後70年をテーマに様々な分野を取材した読売新聞の企画記事「戦後70年 ここから変わった [2]恋愛小説」に、河合俊雄教授のコメントが写真付きで紹介されました。
時代のうつりかわり、社会の変化と共に、文学作品が扱うテーマも変わり続けています。記事では、戦後以降にブームを呼んだ恋愛小説の変遷をたどり、人々が抱える心の問題が作品にも大きく映し出されていることに注目しています。河合教授は、社会的規範の薄れや生き方の多様化がむしろ人々に恋愛する難しさや価値の低下をもたらしていることを指摘しつつ、村上春樹作品の変化をとりあげて、現代人が「真に他者と出会い、愛せる」恋愛のあり方について考察しています。
「現代小説 必然的に複雑化」
京大教授・河合俊雄さん
現代における恋愛は、多様化し、恋愛の持つ絶対的な価値が薄れたとも言えます。男女を巡る社会的規範や道徳、性に関する禁忌は薄れました。年齢差がある結婚や離婚、同性愛の話もよく耳にするようになった。
でも、本当に恋愛関係は自由になり、可能性が広がったのか。制限が弱まって逆に、求めるものをつかみにくくなり、価値が少なくなった面もあるでしょう。(中略)
村上春樹さんは初期、誰ともつながれない人間などをよく描いていた。だが近作では、『1Q84』をはじめ、現実の恋愛の成就を描こうとしているように見えます。恋愛は「完全な世界」を実現させるものではない。その事実を受け入れれば、人間は真に他者と出会い、愛せるのだとー。
(記事より)
鎌田教授のコラム「秘められた声を聞く 未来を切り開くために」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 32」(2015年8月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。この夏、安保法案の採決によって平和と憲法に関する大きな議論が巻き起こるなか、7月22日に映画監督の大重潤一郎監督が多くの関係者に見守られ逝去しました。鎌田教授が製作を務めた大重監督作品「久高オデッセイ 第三部 風章」が完成し、7月5日の完成記念上映会でスクリーン越しに観衆の前に登場した姿が記憶に新しいなかでの旅立ちでした。記事にて鎌田教授は、大重監督の生涯を丹念に振り返り、監督の「いのちのメッセージ」を聴き取る感覚こそが未来を切り開く力になる、と伝えています。
「秘められた声を聞く 未来を切り開くために 安保法案強行採決の愚と神の島のいのちのメッセージ」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
6月1日付で、「基地の島と神の島」と題する記事を寄稿したが、その後「神の島」と呼ばれる「久高島」を12年間ドキュメントした「久高オデッセイ」三部作が完成し、7月5日に東京両国の劇場シアターXで初公開された。300席で満席のところ、立ち見が出る盛況で新作「久高オデッセイ第三部 風章」は絶賛され、大反響を巻き起こした。
だが、大重潤一郎監督はこの7月22日に死去した。(中略)
死去する前に「聖者の行進をする」と言って何度も立ち上がり歩こうとした大重は海のかなたのニライカナイに行進していった。今、その大重の映像詩を、日本を代表する詩人吉増剛造が自作詩に変換しようとしている。このきな臭い状況にあってこの2人の詩人の「いのちのメッセージ」を聴き取る感覚こそが未来を切り開く力になると信じている。
(記事より)
阿部准教授のインタビュー「嘘の研究 脳科学で挑む」が産経新聞に掲載されました
阿部修士准教授(上廣こころ学研究部門)のインタビュー「嘘の研究 脳科学で挑む」が、2015年7月6日付の産経新聞(京阪奈・京市内版)に掲載されました。「脳科学の観点から人間が嘘をつくメカニズムの解明に取り組む研究者」として、阿部准教授が現在の仕事を志すまでのいきさつや研究への思い、今後の豊富について語っています。
「嘘の研究 脳科学で挑む」京都大准教授 阿部修士さん(34)
良くないと分かっていながら、誰しも無縁でいられないのが「嘘」。脳科学の観点から人間が嘘をつくメカニズムの解明に取り組む研究者がいると聞いて、京都大こころの未来研究センターを訪ねた。
「嘘には、認知や記憶、感情など人間のあらゆる心の働きが含まれている。嘘について研究することで、人間の心のあり方を理解できるのではないか、と思っています」(中略)
嘘のメカニズムに脳科学からアプローチする研究はまだ少ないが、それを解明することで教育や法律といった社会制度の改善にも役立つと考えている。
これまでの経験から、研究においては学問分野をまたぐことに抵抗を感じる必要はないというのが持論。今後、環境や文化との関連、加齢による影響など、多角的に嘘の研究を進めていくという。
(記事より)
河合教授のインタビュー記事が朝日新聞の日曜版「GLOBE」に掲載されました
河合俊雄教授のインタビュー記事が、2015年7月5日付の朝日新聞日曜版「GLOBE」(毎月第一・第三日曜日発行)に掲載されました。
この日の特集「大人って何だろう?」では、世界の若者や企業、教育の現場を取材し、現代における「大人になる条件」「大人の定義」を探るべくレポートしています。この特集の囲み記事において、河合教授は「主体」をめぐる問題についてインタビューに応えています。主体が形成されにくい現代社会では、今後、主体のない「ポストモダンの意識」が主流になる、すなわち「大人にならなくてもよい」とされる時代がくるのか、あるいは今後も「主体の確立」が人々にとって課題であり続け、「大人になる」ための試行錯誤が続くのか、心理臨床の現場から考察、コメントしています。
「大人にならなくてもよい時代」は来るのか?
河合俊雄(京都大学教授)
近代社会が「大人になるための条件」として個人に求めてきたのが、他者や世界と向き合い、自律的に振る舞う主体を確立することでした。
だが、主体の確立には常に困難が伴う。その葛藤が様々な症状となり、人々を苦しめてきました。
かつての日本で多かったのが、「対人恐怖」という神経症です。対人恐怖の人は親密な人でも赤の他人でもなく、「顔見知り」程度の人に強い恐怖を抱く。それは日本人にとって、共同体から自立し、主体を確立することがいかに困難だったかを示しています。
一方、現在の日本で大きな問題となっているのが発達障害です。
発達障害は脳の機能障害とされていますが、それだけが原因ではない「発達障害的な心のありよう」も存在するのではないか。
それは「主体がそもそも存在しない」という状態です。
(記事より)
「大人って何だろう?」 ー 朝日新聞GLOBE (特集記事の一部が読めます)
鎌田教授のコラム「春日大社と国宝本殿特別公開」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 31」(2015年7月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。6月30日まで特別公開された奈良・春日大社の国宝本殿について、鎌田教授は、本殿裏側の第一殿と第二殿の間にある磐座(いわくら)を拝した際の驚きを振り返り、古事記に記録される「国譲り」の場面を紹介しながら、その神秘性と霊性について考察しています。
「春日大社と国宝本殿特別公開 白磐座が放つ神秘力 霊性考え直すきっかけに」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
さて今回の特別公開で私は初めて「本殿磐座」を拝することができたのだが、腰が抜けるほど仰天した。そこに春日大社の信仰とは何であるか根本から覆されるような事実の開示があったからだ。「後殿」に祭られている五殿(栗柄神社・海本神社・杉本神社・佐軍神社・八雷神社)も不思議だが、それ以上に建御雷神=武甕槌命(鹿島神宮祭神)を祭る第一殿と経津主神(香取神宮祭神)を祭る第二殿との間にある真っ白の漆喰に塗り固められた磐座群が神秘不可思議であった。(中略)
「白漆喰磐座」が第一殿と第二殿の「間」にあることは、建御雷神と経津主神の両武神の剣の霊力・威力を象徴し増幅させる。「古事記」には健御雷神は出雲の稲佐の浜で十握剣を抜いて波の上に逆さまに刺し立て、その剣の切先にあぐらをかいて座って大国主神に「国譲り」を迫った。春日大社第一殿には国譲り交渉で最高最大の力を発揮した大立役者の健御雷神が祭られているのだ。「古事記」の最大の見せ場はこの「国譲り」の場面であった。その主役の建御雷神が白漆喰=剣と波の上に乗ってこの国を絶対守護している姿をこの「白漆喰磐座」は象徴しているのではないか。「白漆喰磐座」の「白」はそのような国家守護の願いと霊力の象徴ではないかと感じ入ったのである。
(記事より)
鎌田教授が『「久高オデッセイ」第三部 風章』完成上映会に登壇し、映画の紹介記事が朝日新聞に掲載されました
2015年7月5日、東京両国のシアターX(カイ)にて鎌田東二教授が製作を務めた大重潤一郎監督作品『「久高オデッセイ」第三部 風章』の完成上映会がNPO法人東京自由大学の主催でおこなわれました。
当日は映画の三部作全編が上映され、鎌田教授が司会を務めるシンポジウムがおこなわれました。会場は300名を超える参加者で満席となりました。7月4日の朝日新聞には、映画の完成までを追ったレポートが掲載されました。(写真提供:高橋あい)
余命かけ銀幕に刻んだ「神の島」3部作完成
「神の島」と言われる沖縄県の久高島で1970年代に途絶えた秘祭「イザイホー」。その復活を目指す島を12年にわたり撮り続けた映画が完成し、都内でも上映される。がんで余命宣告された大重潤一郎監督(69)=那覇市=は言う。「人間はいかに生きるべきか。その手がかりが、この島にある」
沖縄本島の東に浮かぶ久高島。周囲約8キロ、島民約200人。12年に1度、島の女性が祭祀(さいし)集団に新たに加わるための秘祭が行われてきた。しかし、過疎化による後継者不足で78年を最後に途絶えていた。
(記事より)
記事は朝日新聞デジタルのウェブサイト(下記リンク先)でご覧いただけます。
余命かけ銀幕に刻んだ「神の島」3部作完成 ー 朝日新聞デジタル
『日本農業普及学会ニュースレター』に内田准教授の「学会奨励賞受賞の言葉」が掲載されました
日本農業普及学会が発行する『日本農業普及学会ニュースレター』47号(2015年6月)に内田由紀子准教授と竹村幸祐滋賀大学経済学部准教授(元センター特定研究員・現連携研究員)による「日本農業普及学会奨励賞受賞の言葉」が掲載されました。受賞の言葉の一部をご紹介します。
「平成26年度日本農業普及学会 奨励賞を受賞して」
内田由紀子京都大学こころの未来研究センター・准教授
竹村幸祐滋賀大学経済学部・准教授
この度は大変名誉ある賞を賜りましたこと、大変光栄に存じます。学会関係者ならびにお世話になりました普及事業関係者の皆様方にはこの場をお借りいたしまして、心より御礼申し上げます。
私たちが農業普及指導の研究を始めたのは2008年のことでした。
私たちの分野でも、合意形成や説得的コミュニケーションについての理論が存在していますが、多くは大学の実験室で行われる研究です。農業地域で実際に展開されるやり取りを知ることは、農村コミュニティにルーツをもつ日本社会全体の特性を知る上でも重要だと考えられます。また、日々の実践を重ねておられる普及指導員さんの活動やノウハウについて学ぶことは、社会心理学の理論を発展させていく上でも、極めて大切なことだと思われました。(中略)
今回の調査の経験は、私たちの視野を大きく広げてくれました。そして、私たちのチームが携わる様々な研究プロジェクトにも影響を及ぼしました。それは小さな積み重ねかもしれませんが、こうした取り組みは他の社会科学者の間にも広がっていくものと確信しております。社会心理学者が農業のこと、農業普及指導のことを当たり前に研究するようになる、それが真の「学際」のひとつの形であり、両分野にとって大きな実りになるものと考えております。この度の受賞は、そうした新たな潮流をこれから生み出していくことへの激励であると受け止めております。
授賞式の模様より
内田准教授が平成26年度日本農業普及学会奨励賞を受賞しました
『農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~』ー 創森社
鎌田教授を取材した記事「<晩夏の宛先 祈りと震災>歌ならきっと一つに」が河北新報に掲載されました
河北新報の連載<晩夏の宛先 祈りと震災 第50回>に、鎌田東二教授を取材した記事「歌ならきっと一つに」(2015年6月10日付)が掲載されました。
被災地で犠牲者と残された者の心を包み、癒しをもたらす「芸能」をテーマにした特集記事において、鎌田教授は、太古の昔から息づいている言葉を超えた歌の力について、自身が被災地で歌った際の経験談を含めて、宗教哲学者および神道ソングライターの視点からコメントしています。
<挽歌の宛先 祈りと震災>歌ならきっと一つに
「歌は聴き手の心や魂に直接触れる。歌でなければ伝わらない微妙な感情がある」
こう唱えるのは神職の資格を持つ京都大こころの未来研究センター教授(宗教哲学)の鎌田東二さん(64)。
自ら作った「日本人の精神の行方」などと題する曲を携え、「神道ソングライター」を名乗る音楽活動を1998年から続けている。
森羅万象に歌が宿り、宗教の底流に歌があると考える。曲に込めた精神性は神道にとどまらず、神仏が習合する。
震災翌年の2012年夏、被災地で一度だけ歌った。
被災地の調査で岩手県大槌町を訪れた際、「町にはもう夢がない」と言った老人がいた。慰めの言葉は相手の心に響かないような気がして、ぐっとのみ込んだ。
歌なら思いが届くかもしれない-。後に町内の仮設住宅を訪ね、ギターの弾き語りをした。
(記事より)
河北新報のウェブサイトにて、記事全文をお読みいただけます。下記リンクにアクセスしてご覧ください。
阿部准教授が解説した記事が『読売中高生新聞』に掲載されました
阿部修士准教授(上廣こころ学研究部門)が解説を寄せた記事が、『読売中高生新聞』2015年5月29日号の特集「文系、理系って何?」に掲載されました。
『読売中高生新聞』は、読売新聞が発行する中学生、高校生向けの新聞です。阿部准教授は、巻頭特集「文系、理系って何?」という記事において、「文系脳、理系脳はある?」「女子は数学が苦手?」というふたつの問いに対し、脳のメカニズムを紹介しながら答えています。文系脳と理系脳の違いについては、脳の左半球と右半球、それぞれに役割があるとしつつも、「論理的に考える人の左半球が発達しているかというと、そう単純ではない。(中略)勉強する時も両方の脳が働いている」など、具体例を挙げて脳の複雑さをわかりやすく解説しています。
鎌田教授のコラム「基地の島と神の島~『久高オデッセイ』三部作完成」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 30」(2015年6月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
鎌田教授が製作を担当する大重潤一郎監督作品「久高オデッセイ第三部風(ふう)章」がクランクアップし、7月5日に完成上映会が東京両国のシアターX(カイ)にておこなわれます。鎌田教授は、「神の島」と呼ばれる久高島の人々の暮らしや自然、神との共存を記録した映画の三部作制作の長い道のりを振り返り、基地問題で揺れる沖縄で本作品の完結編が完成した意義と意味について読者に問いかけています。
「基地の島と神の島~『久高オデッセイ』三部作完成」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
戦争後の政治と冷戦構造の下で「基地の島」となった沖縄本島には、古来東西に二つの「神の島」と呼ばれる島があった。東の南城市にある久高島と西の今帰仁村にある古宇利島である。この二つの「神の島」は、沖縄本島を対角線のように結ぶ東南と西北の位置にあって、冬至の朝日が昇り、没していく「太陽の穴(テガノアナ)」であり、沖縄の神観と自然信仰が集約された島だった。
その東の「神の島」の記録映画をこの12年撮り続けてきたのが大重潤一郎監督である。(中略)
映像を通して風や空気や気配を感じてほしいという「気配の魔術師」大重潤一郎の真骨頂がにじみ出ている入魂の作品「久高オデッセイ第三部」と三部作全編は、7月5日に東京両国のシアターX(カイ)で一挙上映される。
この「久高オデッセイ」と名付けられた稀有なる命の賛歌を歌う映像叙事詩をぜひ多くの方々に見ていただきたい。その映画の第三部の語りを女優の鶴田真由氏、音楽を新実徳英氏が担当している。その声と歌を体で心で魂で聴いていただきたい。そして「基地の島」に「神の島」や「竜宮の宮」があることの意味と未来をよくよく考えてほしいのである。
(記事より)
鎌田教授の編著『スピリチュアリティと平和』の書評が徳島新聞に掲載されました
鎌田東二教授が企画・編集をおこない、小林正弥千葉大学人文社会科学研究科教授、千葉眞国際基督教大学教授、内田樹神戸女学院大学名誉教授らと執筆した『講座スピリチュアル学 第3巻 スピリチュアリティと平和』の書評が、2015年5月27日付の徳島新聞・文化面「出版 話題」コーナーに掲載されました。記事は、鎌田教授のプロフィールと共に、「『公共』『友愛』『調和』など浮かび上がる数々のキーワード。単なる思考にとどまらず、実践や魂の在り方にまで論究していく」と本書を評しています。
平和に向けた可能性提起 『スピリチュアリティと平和』鎌田東二 企画・編
編者は平和を「単に戦争がない状態ではない。生存と自由が脅かされることなく、安心してその人らしい生き方が安全な環境の中で達成される状態」とする。そして「この地上に実現したためしがあったか」と問い掛ける。(中略)
現代の世相に激しく警鐘を鳴らすと同時に、特効薬ではないにせよ、具体的な方策を見いだそうとする主張には、各氏の熱意がうかがえる。一方で平和の実現へ、私たち自身の思考と実践が不可欠であることを突きつけられているようだ。(撫養佳孝)
『講座スピリチュアル学 第3巻 スピリチュアリティと平和』について詳しくは、下記の記事をご覧ください。
鎌田教授が企画・編集した『講座スピリチュアル学 第3巻 スピリチュアリティと平和』が出版されました | 15.04.01
鎌田教授の論考が『月刊京都』6月号に掲載されました
鎌田東二教授の論考が『月刊京都』6月号に掲載されました。「霊性の京都学 ー京都の生態智を求めてー」というタイトルで長く続いている連載の69回目は、「スサノヲの到来とその時代」というテーマです。
鎌田教授は北海道立函館美術館で開催されている「スサノヲの到来〜いのち・いかり・いのり」展が2014年美連協大賞をしたことを報告し、同展の魅力を古事記を紐解きながら解説。4月に出雲路を訪れて写真家・須田郡司氏や作家の田口ランディ氏らとおこなった「まないなイベントvol.5」において「『命主』と出雲と癒しのワザ」というテーマで講演をおこない、出雲神話について深く討論した当日の盛り上がりを紹介しました。これから、スサノヲのパワーが現代日本における日本的霊性の覚醒を促す起爆剤になるだろう、と強調しています。
わたしはその出雲的な神々の力とはたらきをスサノヲと大国主に見るが、今回の函館美術館での「スサノヲの時代」の講演では「スサノヲの時代」を次のように位置づけた。
(1)「いのち」の根源に立ち返っていく時代=<霊性の時代>
(2)スサノヲは大海原という地球のバイタリズムを象徴し体現する神であるから、スサノヲの時代とは地球的・惑星的意識が共有される時代=<惑星意識・銀河系意識・宇宙意識の時代>
(3)スサノヲが歌を八俣大蛇を退治し、歌を歌い、天詔琴を弾じたように、スサノヲの時代とは魔物・モンスターに立ち向かい、人々の身心変容をもたらすワザを開発・活用する時代=<感性・芸術の時代>
もちろん今現在そのような時代になっているかどうか、また今後そうなっていくかどうか不透明である。が、「スサノヲ力」の「爆発」によってそのような「スサノヲの時代」の「到来」を招来しなければならないと覚悟し、だからこそこの「スサノヲの到来展」を開催する意味と役割があるのだ。(中略)
今回展示されている縄文土偶の中に、北海道の函館付近で発掘された「中空土偶」と呼ばれている土偶がある。本展では、南茅部町尾札部(現札幌市尾札部町)で発掘されたこの「中空土偶」に込められた死と再生の祈りが、スサノヲの死と再生の神話と物語につながると数珠つなぎにされている。そのアクロバチックな数珠つなぎのさまは祈りとも呪術ともアートとも言えるような凄まじいキュレーションで革命的だ。この革命が日本を変える、日本的霊性の覚醒を促す起爆剤になると確信している。
(「鎌田東二の霊性の京都学69 『スサノヲの到来とその時代』」より)
朝日新聞のオピニオン記事「リスク社会を生きる<上>」に内田准教授のコメントが掲載されました
現代社会における「リスク」とは何か、またリスクとどう向き合っていくべきか。朝日新聞「未来への発想委員会」の委員とゲストが「リスク社会」をテーマに討論した記事が、5月8日付朝日新聞朝刊およびウェブ版に掲載されました。
内田由紀子准教授は、ゲストとして討論に参加。文化・社会心理学者の視点から、日本人のメンタリティーと西洋型リスク社会との関係について、自身の研究に基づく知見を紹介しながら考察・提言しました。
「主体性引き出す場、醸成を」
京都大准教授 内田由紀子(うちだゆきこ)さん
筆者は文化心理学という研究分野で、主に日米での心のあり方の違いを検討してきたが、「個人の主体性」に基づくリスク管理は、現状の日本的メンタリティーにはうまく適合していないように感じられる。
欧米では、個人が意思決定しなければならないという意識が強い。一方で日本では、個人が確固たる「内なる主体」に従うことよりも、「他者との調和」や「状況を読むこと」を重視してフレキシブルに意思決定を行うことが求められる。主体性は絶対的なものではなく、場面ごとに異なる形で立ち現れる。
こうした特性のルーツは、共同作業が必要な日本の農業にあるのかもしれない。(中略)
責任を引き受けられる主体を育てるために、日本においては、地域や職場のような「場」「共同体」の力をもう一度醸成する必要があるのではなかろうか。そこに「集合的な主体」ないし「個人の主体を引き出し、受け入れる枠組み」の役割を持たせることが必要ではないか。それには人と人をつなぎ、場の力を醸成するプロフェッショナルの育成に力を注ぐことも重要だろう。
(記事より)
記事は、朝日新聞デジタルでもお読みいただけます。下記リンク先をご覧ください(※無料会員登録が必要です)。
鎌田教授のコラム「天災の国日本と人災の国韓国」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 29」(2015年5月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
2015年4月、鎌田教授は韓国全羅南道の国立順天大学校で講演し、現地の研究者や学生らと交流しました。記事では、日本人と韓国人の気質の相違点について分析・考察しながら、「東アジア共同体」構想を紹介。現代の日韓における「冬の時代」を乗り越えるため、両国が適切な関係と政策を直ちに実行して良好な関係を取り戻し、日本・韓国・中国という「東アジア地域」の「地方創生」を目指すこと必須・喫緊の課題ではないか、と問題提起しています。
「天災の国日本と人災の国韓国 文化共同体の実現目指し 良好な関係構築必要」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
今年4月22日に旧百済の地、全羅南道の国立順天大学校で、「アジア共同体論〜アジア的思惟方式から考えるアジア共同体の未来」と題する講演を行った。順天市には、1597年の慶長の役で、小西行長や宇喜多秀家や藤堂高虎が築城した三重の天守を持つ順天倭城があった。その時、1万4千人もの日本軍が侵攻したとされる。
そのような土地で、長らく安倍政権と朴政権との緊張と対立が続いている中で「アジア共同体論」を講義しなければならないのだから大変因果で困難なことであった。
「東アジア共同体」構想は欧州連合(EU)に対して、中国・韓国・日本など東アジア地域を統合する地域連合を作ろうとする構想であったが、「領土問題」や「歴史認識問題」などにより対立点が際立ち進展不可能な状態にある。そんなさなかの3月、中国が「アジアインフラ投資銀行」を設立し、イギリス・韓国等創設メンバー国57カ国が参加し、日米など、それに慎重な対抗軸との対立もあらわになってきている。
そのようなところで、経済的・政治的に主導される「東アジア共同体」とは異なる地域連合がいったいどのように可能なのか?果たして「東アジア文化共同体」の構築は可能かを宗教と芸術・芸能を事例に挙げながら講演した。
(記事より)
鎌田教授が展覧会「スサノヲの到来」で講演し、同展が「美連協大賞」を受賞しました
2015年4月11日より北海道函館市の道立函館美術館にて展覧会「スサノヲの到来-いのち、いかり、いのり」(主催:足利市立美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会)が始まりました。鎌田東二教授は、昨年11月の足利市立美術館での講演に引き続き、本展覧会においても「スサノヲの時代」というタイトルにて開催初日の4月11日に講演をおこないました。また、本展覧会の展図録に解説記事「スサノヲという爆発ー放浪する翁童神のメッセージ」を寄稿しています。
「スサノヲの到来-いのち、いかり、いのり」展は、美術館連絡協議会が優れた企画を顕彰する「美連協大賞」において、2014年の大賞を受賞すると共に、展図録に寄稿された江尻潔氏による論文「スサノヲの到来」が、同賞の「美連協カタログ論文賞」に選ばれました。
「神話のスサノオ題材 多彩な芸術 道立函館美術館で特別展」
日本の神話に登場するスサノオに関する芸術作品を集めた特別展「スサノヲの到来―いのち、いかり、いのり―」が11日、函館市五稜郭町の道立函館美術館で開幕した。
同美術館など主催で、神話の中で八岐大蛇(やまたのおろち)を退治したとされるスサノオの姿を描いた絵画や、疫病を遠ざける神としてかたどられた彫刻など約220点を展示。民俗学者の研究史料、現代美術家の作品も紹介し、スサノオの持つ多面性を表現している。この日は「スサノヲの時代」と題した講演会も開かれ、京大こころの未来研究センターの鎌田東二教授(民俗学)が講演した。
函館美術館での展覧会は、5月24日までです。その後、6月には山形県の山寺芭蕉記念館で、8月には渋谷区立松濤美術館で開催されます。詳しくは下記のリンク先をご覧ください。
展覧会の案内ページ→ 特別展 Special Exhibitions | 北海道立函館美術館
2015年までの開催地→ 展覧会紹介 | 美術館連絡協議会
河合教授の論考が『そだちの科学』24号に掲載されました
河合俊雄教授の論考が、『そだちの科学』24号(日本評論社/2015年4月号)に掲載されました。精神発達、こころの形成と成長をテーマに扱った専門誌の特集「発達障害と発達論的理解」に、河合教授は「ユング派からみた発達障害」というタイトルで寄稿。これまでのこころの未来研究センターでの発達障害との取り組みで、主体という視点が大切なこと、発達障害の心理療法においてどのように主体が形成されてくるか、さらには文化的な側面を、ユング心理学に関連づけつつ論じたものです。
論考では、ユング心理学の理論を紹介しつつ、プレイセラピーや箱庭などのイメージを用いた心理療法のなかでの主体の立ち現れについて、具体的な事例を挙げて解説。河合隼雄(京大名誉教授)による日本の昔話研究についても言及し、現代の発達障害研究のヒントとなり日本文化の特徴にも関わるものだと考察しています。さらに現代の発達障害の増加は、日本人の特徴であった主体の弱さが現代の社会構造のあいまいさによって浮き彫りになったのではないか、と社会の変化に対してまなざしを向けています。
ユング派からみた発達障害
京都大学こころの未来研究センター 河合俊雄
<発達障害への心理療法>
発達障害、厳密に言うと広義での自閉症スペクトラム障害については、近年に認知科学や脳科学による研究が進み、生物学的な背景が明らかにされつつある。したがって発達障害は生育史に起因する問題ではなくて、脳中枢系の障害とされるに伴って、親子関係などに焦点を当てた心理療法よりも教育と訓練による支援が中心的な対処法になっている。ウィングは自閉症スペクトラムの三つの特徴として、相互的社会性の障害、コミュニケーションの障害と合わせて、想像力の障害を挙げている。ユング派の心理療法においては、箱庭や描画などのイメージが重視されるが、想像力の障害を特徴とする自閉症スペクトラムにおいて、そのようなアプローチは効果がないように思われるかもしれない。
しかしプレイセラピーや箱庭などのイメージを用いた心理療法による成功例も存在する。筆者たちは京都大学こころの未来研究センターにおけるプロジェクトにおいて発達障害の心理療法に関わりつつそれを分析する中で、発達障害の問題は「主体の欠如」や「主体の弱さ」であって、心理療法を通じて主体を確立していくことが可能なのを明らかにしてきた。ここではそれをユング派の理論にも関係づけつつ、解説したい。
(論考より)
そだちの科学 24号(2015年4月号) | 日本評論社
『発達障害への心理療法的アプローチ』河合俊雄編著/田中康裕、畑中千紘、竹中菜苗著 | 創元社
『日本人の心を解く:夢・神話・物語の深層へ』河合隼雄著 河合俊雄訳 | 岩波書店
阿部准教授の研究が産経新聞記事「もう一人のあなた 嘘の構図 4」で紹介されました
阿部修士准教授(上廣こころ学研究部門)の研究内容が、2015年4月5日付の産経新聞の連載記事「もう一人のあなた 嘘の構図 4」で紹介されました。
「嘘をつく」という人間ならではといわれる行為に焦点を当てた連載記事第4回は、チンパンジーの研究を通して人の心の進化を探究する京大霊長類研究所の松沢哲郎教授と、認知神経科学が専門でfMRI(機能的磁気共鳴画像装置)を用いた人の正直・不正直さの研究を進める阿部准教授それぞれの研究知見をコメントと共に紹介。阿部准教授が昨年発表した「脳の側坐核の働きが活発な人ほど嘘をつく傾向が大きい」という研究成果が詳しく取り上げられました。
チンパンジーは仲間をだましニヤッと笑った...
他者の心が分かる知性と表裏一体の「進化の副産物」
<嘘の個人差と脳との関係は...>
...人間の嘘にはどのようなメカニズムがあるのか。脳科学の観点から、そうした課題に迫る研究がある。京都大准教授の阿部修士(34)=認知神経科学=らは昨年8月、脳の特定領域の働きが活発な人ほど嘘をつく傾向が大きいとの研究成果を発表した。
阿部らは、約30人の参加者がコインを投げ、裏が出るか表が出るかを予想。当たりなら賞金がもらえるゲームを実施した。ただし、正解したかどうかは自己申告だ。
このとき、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で脳の働きを調べたところ、嘘をつくことによって賞金を得た人ほど、利益が得られることを期待する際に働く「側坐核(そくざかく)」という領域が活発なことが判明した。
嘘と脳の関係を調べる研究はまだ始まったばかりだが、阿部は「嘘をつく度合いの個人差と、脳の特定領域との相関関係が明らかになったのは、世界でも初めてではないか」と語る。
(記事より)
記事は産経新聞のウェブサイトに全文が掲載されています。下記リンクにアクセスしてお読みください。
【もう一人のあなた 嘘の構図(4)】 | 産経ニュース・産経WEST
内田准教授のたちばな賞受賞記事が『Kyoto University Research Activities』に掲載されました
京都大学学術研究支援室の発行する外国向け研究紹介冊子『Kyoto University Research Activities Vol.4 No.4』に、第7回京都大学たちばな賞の記事が掲載され、研究者部門を受賞した内田由紀子准教授の研究紹介や授賞式の模様がカラー写真と共に掲載されました。
Research Activitiesの誌面データは、京都大学の公式ウェブサイトにて近日公開される予定です(現在準備中)。下記ページよりダウンロードしてお読みください。
外国向け研究紹介冊子 Kyoto University Research Activities | 京都大学
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第7回京都大学たちばな賞 (優秀女性研究者賞)の受賞者決定および表彰式について
内田准教授がたちばな賞授賞式で研究発表をおこないました
内田准教授のインタビューが『一水』42号(大阪弁護士会会派・一水会発行)に掲載されました
内田由紀子准教授のインタビュー「それぞれの社会における『幸せのカタチ』〜若手心理学者が「こころ」に迫る」が、大阪弁護士会の会派・一水会の会誌『一水』42号(2015年3月発行)に掲載されました。
「幸せってなんだろう?」という特集において、内田准教授は社会心理学・文化心理学の研究者の道を選んだ経緯、「こころ」を学際的に研究するこころの未来研究センターの取り組み、幸福感や引きこもりといった研究を通して考える幸せな社会についてなど、10ページに渡るロングインタビューで数多くの質問に答えています。
それぞれの社会における「幸せのカタチ」
〜若手文化心理学者が「こころ」に迫る〜
内田由紀子氏
<幸せを感じやすい社会にするために>
ー日本社会を、幸せを感じやすい社会にするためには、どのようなことが必要だと思われますか。
内田 おそらく、高度経済成長期など、経済的にどんどん発展していくことが求められた時代というのは、目標を達成し獲得していくこと、競争に勝っていくことが幸福であるという前提に基づいて、社会のシステムが構築されていったと思います。
では、今の時代に何を幸福と感じるか。冒頭でお話しした地域の話とも関連すると思うのですが、人間には、やはり何かを成し得て競争に打ち勝って得られる幸福と、人から喜ばれたり人とつながったりして感じる幸福の、両論があると思うんですよね。あるいは、自然に触れることで感じる幸福もあるでしょう。そういった色々な幸福の感じ方のポテンシャルがある中で、これまで「関係性から得られる幸福感」のようなものを、ゆっくり感じられる社会のシステムになっていなかったとすれば、それをもう一度見直せるようなシステムにできないのかということを考えています。
地方回帰の話も同じで、人口が都市に一極集中してきたことで、人とのつながりや安心感みたいなものが失われていったときに、地方に移住する方がおられるじゃないですか。そういう人たちに移住の理由を聞くと、自然とのつながりや地域とのつながりに関する幸福を求めていきたいからという答えをされる。その受け皿が都市にはないけど、地方にならあるということなのかなと思うんですよね。東京に一極集中になっている現状の中で、地方が何をするのかという問題がありますが、東京では感じられない幸福を、地方では見出すことのできる人が多いのであれば、そこに何か答えがあるような気がします。
(記事より)
「京都こころ会議(Kokoro Initiative)」が発足し、調印式、記者発表がおこなわれました
この度、公益財団法人稲盛財団の支援を受け、「京都こころ会議(Kokoro Initiative)」を開催していくはこびとなりました。2015年4月14日、本会議の発足にあたって、京都大学百周年時計台記念館迎賓室にて調印式および記者発表がおこなわれました。
調印式では、吉川左紀子センター長による京都こころ会議の趣旨説明、山極寿一京都大学総長ならびに稲盛和夫稲盛財団理事長からの挨拶があり、寄付同意書への調印がおこなわれました。報道記者による質疑応答では、河合俊雄教授が本会議の具体的な計画について、記者からの質問に答えました。当日の模様は地元のテレビ局、KBS京都のニュースで報じられたほか、毎日新聞、京都新聞、日刊工業新聞など多数のメディアで取り上げられました。
以下、こころの未来研究センターより発表したプレスリリースを記載いたします。
京都こころ会議(Kokoro Initiative)
こころの未来研究センター 河合俊雄(臨床心理学)
1)事業目的
科学技術の進歩、グローバル化による大きな経済圏の出現、さらには近年の地球環境の変化が加わって、人々の生活や関係は大きく変わってきています。そしてそれらはおのずから人々の「こころ」のあり方に影響を及ぼし、時には「こころ」が変化についていけず、さまざまな問題を引き起こすこともあります。
こうした現状に対して科学技術を頼りに、あるいは環境を変えることにより解決をはかろうとするのではなく、それに直面している人々の「こころ」そのものに焦点を当てて、より本質的な問題の理解とその解決に到る道筋を、丹念にたどることが必要なのではないでしょうか。
人類がこれまでどのような「こころ」のあり方で世界と向き合い、「こころ」をどのように捉えてきたのかを踏まえつつ、「こころ」とは何かを探究し、さらにこれからの「こころ」に求められるあり方を明らかにすることが、今の私たちに求められていることではないかと考えます。
「京都こころ会議」は、古来の「こころ」を踏まえてその未来を問い、また日本語の「こころ」という言葉に含蓄されているような広くて深いニュアンスから、こころの新しい理解を Kokoro Initiative として世界に向けて発信しようとするものです。
2007年の設立以来、京都大学こころの未来研究センターの活動を通して蓄積されてきた、「こころ」についての学際的な研究とネットワークを生かしつつ、それをさらに広げ、深めていきたいと思います。
2)組織
・運営委員会:こころの未来研究センターを中心とした京都大学の全学的な委員会
・顧問・advisory board:稲盛和夫
・参加者:京都大学の研究者、国内外の招聘研究者、芸術家、企業家など。こころの未来研究センターが中心となってコアメンバーを形成し、研究会を重ねていく。
3)事業内容
1. 年に4回、「こころ研究会」をクローズドで開催する。その年度のテーマに沿って、研究者・芸術家・宗教家などを招聘して行う。
2. 「こころとは何か」を問う「京都こころ会議」、「国際京都こころ会議」を1年交代で行う。「こころ会議」には、稲盛和夫理事長と山極寿一総長の出席をお願いする。「こころ」が持つニュアンスの広がりを、「こころと歴史性」、「こころと共生」、「こころとグローバル社会」のように、様々な視点からこころのもつ多様性をクローズアップし、理解を深める。
3. 1と2の成果を、日本語、英語(Kokoro Initiative)でそれぞれ出版する。日本語の「こころ会議」についても英訳を行い京都大学のHP等を通じて発信する。
4) 事業計画
・2015年度
第1回京都こころ会議(1日間)「こころとは何か? - その歴史性」(仮)を9月13日(日)に京都で開催。講演者として中沢新一、山極寿一、広井良典ほか。稲盛和夫理事長も出席の予定。
こころ研究会を4回開催。
・2016年度
第1回国際京都こころ会議(2日間)
こころ研究会を4回開催。
・2017〜2020年度
第2〜3回「京都こころ会議」、「国際京都こころ会議」を開催。
□掲載媒体
KBS京都 京都新聞ニュース・天気予報(2015年4月15日 11:55〜放映)
「多分野の研究者『こころ』を議論 京大が『会議』設立へ」(京都新聞/2015年4月15日付朝刊23面)
「京都こころ会議 稲盛財団から活動支援寄付 京大」(日刊工業新聞/2015年4月15日19面)
「『こころ』の課題研究 9月に初会議 京大と稲盛財団」(毎日新聞/2015年4月16日22面)
「<京大・稲盛財団>「こころ」の課題、研究 9月に初会議 /京都」(gooニュース・毎日新聞/2015年4月16日)
京都大学のスペシャルサイト「探検!京都大学」に内田准教授が登場しています
2015年4月、京都大学の公式ホームページ内にスペシャルサイト 「探検!京都大学」が開設されました。中・高生や一般向けに京都大学の魅力を紹介するコンテンツで構成されており、そのなかで京大所属の研究者にスポットをあてたコーナー「京大先生図鑑」において、内田由紀子准教授が紹介されました。
サイトは、京都大学が大事にしてきた「フィールドワーク」をイメージしたページづくりになっており、カラフルなデザイン・写真やわかりやすい内容で、大学の歴史や学風、実際のキャンパスライフを楽しく伝えています。閲覧者は「惑星、京都大学」を探検しながら、大学の全体像、ユニークな研究内容や研究者を知ることができます。「京大先生図鑑」では5名の研究者が豊富な写真やイラストで紹介されています。
内田准教授は、社会・文化心理学者になったいきさつや、研究内容、京大での活動の様子、趣味や持ち物、好きな食べ物など、様々な質問に答えています。「もし京大の先生になっていなかったら」「自分を漢字一文字に例えると」など、ユニークなトピックもあって、なかなか見られない研究者の一面をのぞくことができます。ぜひご覧ください。
スペシャルサイト「探検!京都大学」 | 京都大学ホームページ
「京大先生図鑑 02 内田由紀子 UCHIDA YUKIKO」
鎌田教授のコラム「京都現代藝苑2015と北野天満宮『悲とアニマ展』」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 28」(2015年4月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
2015年3月7日から14日まで京都市上京区の北野天満宮において、鎌田東二教授が研究代表者を務める「モノ学・感覚価値研究会」が主催する「悲とアニマ ー モノ学・感覚価値研究会アート分科会展」が開催されました。記事にて鎌田教授は、現代アートの総合イベント「現代京都藝苑2015」のひとつに位置付けられた本展を企画した経緯を紹介し、北野天満宮を舞台に選んだ理由、鎮魂供養の思いと未来への生の活力を形にし、多くの来場者と話題を集めたイベントの全容を鮮やかに振り返りました。
「京都現代藝苑2015と北野天満宮『悲とアニマ展』 伝統の」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
「悲とアニマ展」は、直接的には東日本大震災を機にもたらされた「悲」(グリーフ)を生死を超えた永遠のいのちに接続することを悲願として開催された。「悲」を生きる力や霊性=アニマに転換する信仰こそが北野天満宮の本質だと捉え、この展覧会をぜひとも北野天満宮で開催したいと考えたのである。
昨今、東日本大震災、近畿大水害、各地の台風被害、御嶽山噴火、紛争やテロリズムや暴力など、国内外で天災も人災も多発している。このような現状の中で、芸術・芸能を通した鎮魂供養の試みとして、一宗一派も宗教の違いも超える「悲とアニマ」という広大無辺の大非・大慈への普遍的な祈りと鎮魂を実現し、死者への供養と生の活力としたいと考えたのだ。
(記事より)
内田准教授の講演録が『技術と普及』3月号に掲載されました
内田由紀子准教授の講演録が、一般社団法人全国農業改良普及支援協会の発行する機関誌『技術と普及』2015年3月号に掲載されました。2014年11月25日に開催された第2回農業普及活動高度化全国研究大会(於:日本消防会館/東京都港区)において、内田准教授は「農業者・農業普及指導員調査から見る人の心をつなぐ力へのアプローチ」という演題にて記念講演をおこないました。講演では、普及指導員を対象とした大規模な調査研究から得た知見を紹介し、普及指導員が農業者同士のつながりやグループの活性化、問題解決にいかに影響し、農業地域の維持、発展、再生を支える鍵を握っているか、社会心理学者の視点から考察、提言しました。
■特集『第2回農業普及活動高度化全国研究大会(後編)』
記念講演「農業者・農業普及指導員調査から見る人の心をつなぐ力へのアプローチ」京都大学こころの未来研究センター 准教授 内田由紀子
私は社会心理学・文化心理学と呼ばれる領域で、心理学のアプローチからさまざまな研究を行っています。特に、私たちの心と日本の社会・文化の関係について研究を行い、心の働きが社会の成り立ちとどのように関連しているか、調査や実験をし、解釈して意味を与える。それを社会へフィードバックすることを1つの研究の目標としています。そうした中で2008年頃から「普及はどういうものか」を研究してきました。
今日の講演では、まずつながりの重要性を、次に調査結果からみたつながりの効果を、最後に社会心理学的知見から事例の検証をします。
(記事より)
『技術と普及』2015年3月号 | 一般社団法人全国農業改良普及支援協会ウェブサイト
内田准教授が平成26年度日本農業普及学会奨励賞を受賞しました
鎌田教授が登壇した品川セミナー「神道と仏教から見た心のワザ学と日本文化」記事が読売新聞に掲載されました
2015年3月6日、京都大学東京オフィスで開催された「第58回品川セミナー」に鎌田東二教授が登壇しました。その模様が3月23日付の読売新聞朝刊科学面に写真付きで掲載されました。鎌田教授は、「神道と仏教から見た心のワザ学と日本文化」という演題にて講演。長年、取り組んでいる「身心変容技法の比較宗教学-心と体とモノをつなぐワザの総合的研究」を主軸に、『古事記』『日本書紀』『古今和歌集』『秘蔵宝鑰』(空海著)『秘密曼荼羅十住心論』などを紐解きながら、心のワザ学が日本文化における芸能、神事、仏道修行などといかに結びつき、日本人の精神性にどのように影響を及ぼしてきたかについて考察、解説しました。
「京都大学品川セミナー 神道と仏教から見た心のワザ学と日本文化 こころの未来研究センター 鎌田東二教授」
身心を切り替える「ワザ」に焦点をあてたい。平安時代の古今和歌集こそが、日本文化の原型であると考える。日本人は四季の自然風景や心の状態を和歌に詠み、悲しみや痛みなどの負の感情を切り替えてきた。つまり和歌は「心を直す」力を持っており、日本の伝統的、根本的な「心のワザ学」と言える。(中略)
心のワザ学は仏道修行にも結びついた。比叡山や吉野熊野などに入り、滝行や瞑想などを行う。また刀作りや染色、陶芸などの日本独自の工芸にも、祈りと祭りを伴う心のワザ学がある。
私は、現代は多極化し、戦国時代のような乱世の時代に突入したという「現代大中世論」を提唱している。阪神大震災や東日本大震災、集中豪雨などの自然災害が続く中、今一度、心の静けさをもたらす新たな日本文化が生まれてくるはずだ。
(記事より)
記事は、読売オンラインで公開されています。
河合教授による書籍紹介記事が『医道の日本』に掲載されました
鍼灸・手技療法の専門誌『医道の日本』2014年12月号に、河合俊雄教授による書籍紹介記事が掲載されました。巻頭特集「治療家に勧めたい本はコレだ!」という企画で河合教授は、一般向けと心理療法家向けのちょうど中間にあたるおすすめの一冊として、『河合隼雄のカウンセリング教室』(河合隼雄著、創元社、2009年)を紹介、解説しています。
記事と書籍について、詳しくは河合隼雄財団のウェブサイトで紹介されています。下記リンク先にアクセスしてお読みください。
河合教授出演のラジオ番組「Kyoto University Academic Talk」の音声と画像が公開されました
河合俊雄教授が出演したラジオ番組「Kyoto University Academic Talk」(α-STATION エフエム京都/2015年3月4日放送)の収録音声と画像が公開されました。
毎週、京大の研究者がゲストとなって「学び」をキーワードにトークするコーナーで、河合教授は「心理療法から見る古来・現代・未来のこころ」をテーマにお話しました。河合教授は、人のこころと向き合う研究者として日々どのような取り組みをおこなっているか、東日本大震災の被災地における活動でみつめた人々のこころの回復過程などについて、様々な具体例と共にソフトな語り口で紹介しました。
音声と画像は、下記リンクにある京都大学同窓会(京大アラムナイ)のFacebookページにて視聴できます。(注:ページを開くと再生されます)
(前半)『Kyoto University Academic Talk』(河合教授出演) | 京都大学同窓会(京大アラムナイ)Facebook
(後半)『Kyoto University Academic Talk』(河合教授出演) | 京都大学同窓会(京大アラムナイ)Facebook
鎌田教授のコラム「二宮尊徳に学ぶ」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 27」(2015年3月2日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
小学校の銅像で有名な二宮金次郎(尊徳)に関心を抱いた鎌田教授は、幕末の厳しい時代に苦労しながらも勉学に勤しみ小田原藩と幕府領復興に大きな功績を果たした尊徳の生涯をなぞりながら、彼の思想と実践を紹介し、未来へのヒントとメッセージを読み解いています。
「二宮尊徳に学ぶ 災害乗り越える知恵 自然と人の力を合わせ」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
尊徳は、「天道」と「人道」との区別を明確にした。人は自然のままがいいように考えているが、それは考え違いだ。「天道」のままにしておくと「荒地」になる。だから「人道」の手が入らなければならない。人造・人為が重要であると彼は強調する。尊徳は経済というリアルと倫理や生き方という理念を結びつけた。そして、「天理・天道」に任せるのではなく、「人道」を尽くし全うする。尊徳が力説したのは、人間社会に必要な「人道」の在り方である。
「二宮翁夜話」(福住正兄聞書)で、尊徳は、「政を立、教を立、刑法を定め、礼法を制し、やかましくうるさく、世話をやきて、漸く人道は立なり、然を天理自然の道と思ふは、大なる誤也、能思ふべし」と説いている。自然放置はだめだ。やかましくうるさく、世話をやくことでしか「人道」が立ちゆかない。それが「人の道」というものであると。
一農夫であった尊徳は、この世話の焼ける「人道」を「水車」に例えた。「水車」は、半分は水の流れに従うが、半分は水の流れに逆らう。つまり、半分自然で半分人口の存在、それが人間であり、「人道」である。単純な性善説でも性悪説でもない、「性善悪以前説」を説いた尊徳の教えと実践は、この災害多発時代を生き抜く知恵とアイデアと政策と活力に満ちている。大いに参考にすべきである。
(記事より)
鎌田教授のインタビュー「御嶽山 心の痛みに向き合うには」が朝日新聞に掲載されました
鎌田東二教授のインタビューが朝日新聞(2014年11月10日)に掲載されました。御嶽山で起こった噴火を通し、自然の脅威と共に生きてきた日本人の心をみつめた記事において、鎌田教授は宗教学者、民俗学者の視点から解説。古くから自然への畏怖と畏敬の念を持って暮らしを営んできた日本人の精神的な歴史を振り返り、現代社会に生きる我々も人間中心、文明中心ではなく自然への感謝や謹みの念を持ちながら災害や身近な人の死と向き合うことの大切さを語っています。
「御嶽山 心の痛みに向き合うには 京大こころの未来研究センター・鎌田東二教授に聞く」
日本人は自然の大いなる力を「千早振る神」として受け入れてきた。万葉集の枕詞ですね。ものすごいエネルギーで猛烈に早く振動する力。噴火や台風、地震は千早振る神の振る舞いと考えてきた。
一方、神には穏やかな「ムスヒ」という面もある。生成する力のことで、古事記や日本書紀にタカミムスビやカミムスビの神が出てくる。豊かな恵みや多様性をもたらすムスヒという生命力が日本人の神の考え方の根本にある。(中略)
明治維新による西洋化や戦後のアメリカナイズで日本人の伝統的な考え方が薄らいだ。百名山ブームのように近代登山はスポーツや自然体験、エンジョイやヘルシーという意識に変わった。山は恐れ、かしこみ、慎みを持って接する場という捉え方が弱まっている。その文化や歴史を踏まえて現代の自由の中で覚悟して山に登る必要がある。
近年、災害は深刻になり、起きるスパンが早まっている。古代から「草木言問う」といって、山も海も大地もメッセージを発している。どう受け止め、どう生きるか。人間は自然から生み出されているが、人間が自然を生み出せるわけではない。人間中心、文明中心ではなく、自然に対する畏怖や畏敬、感謝、謹みの心を忘れてはいけない。
(記事より)
ワザとこころシンポジウムのレポートが『観世 3月号』に掲載されました
京都府とこころの未来研究センターの共同企画で開催したシンポジウム「ワザとこころ 能の伝承 ~稽古と修行と教育」(2015年1月12日開催/於:京都観世会館)のレポートが、月刊誌『観世 3月号』(発行:檜書店)に掲載されました。写真と共に、シンポジウムの模様が詳しく紹介されています。
「ワザとこころ・能の伝承 ~稽古と修行と教育」
鎌田東二氏(同センター教授)の企画構成によるこの催しは、標記のテーマを能楽の伝承と修行や教育に照らして明らかにしていこうとの趣旨で進められた。
第一部では「能の伝承ー稽古について」をテーマに、宗家と三郎太さん(千歳)による<神歌>そして宗家の仕舞<高砂>の実演を交えながら、鎌田氏の司会で宗家父子とのトークがおこなわれた。第二部ではテーマについて、宗家父子に、西平直氏(同大学教授・教育人間学)、河合俊雄氏(同大学教授・臨床心理学)も加わり、同じく鎌田氏の司会で進行した。
(記事より)
大荒行シンポジウムのレポート記事が仏教タイムスに掲載されました
こころの未来研究センターで2014年11月に開催した「身心変容技法の比較宗教学 大荒行シンポジウム」のレポート記事が、週刊仏教タイムス(発行:佛教タイムス社/2014年12月4日付)に掲載されました。
「修験・回峰行・瀧行・水行... 指導者が精神を開陳 荒行シンポ」
身心変容技法研究会(鎌田東二代表)は11月20・21日の両日、京都市左京区の京都大学稲盛財団記念館で「大荒行シンポジウム」を開催した。2日目は研究者を対象に実施されたが、初日は一般に公開され、研究成果を踏まえて金峯山修験道、熊野修験道、羽黒修験道、そして法華修験道とも言える日蓮宗の大荒行の「4大荒行」の先達・指導者を招き、伝統に基づく修行の良さや危険性などが話し合われた。(中略)
鎌田氏は荒行指導者の4氏が発表したそれぞれの行の特色を整理した上で、上求菩提下化衆生と修理個成(つくりためなせ)の精神が共通しているとし、「神と仏がともにあって、それぞれの特色を失わずに、共同していけるような日本の文化の型というものを、我々の貴重な財産、文化遺産として見出し、実践していければ」と話した。
(記事より)
「学士会会報・U7 vol.60」に、吉川センター長の講演録が掲載されました
学士会会員向け情報誌「学士会会報・U7 vol.60」(2015年3月号、発行:学士会)に、吉川左紀子センター長の講演録が掲載されました。
2014年10月18日、吉川センター長は第十八回関西茶話会にて「こころの科学は何をめざしているのか」という演題にて講演をおこないました。講演録では自身の心理学との出会いから始まり、こころの未来研究センターの設立の経緯からセンターの活動を紹介すると共に、「こころ」をめぐる研究としてどのようなプロジェクトを遂行しているのか、各領域の目的や取り組みの様子を豊富な写真や具体例を紹介しながら説明しました。また今後の展望として、こころの学際研究が人間科学のあらゆる分野とつながりながら新しい研究課題に取り組んでゆくだろう、と話しました。
「こころの科学は何をめざしているのか」吉川左紀子 京都大学こころの未来研究センター センター長
「こころの未来研究センター」は、二〇〇七年に学内共同利用施設として設立されました。教授五名、准教授三名、助教三名、研究員が数名と、京大で一番規模の小さいセンターです。このセンター設立の直接のきっかけは、二〇〇三年から〇七年までの五年間、京都大学が京都府、京都市、稲盛財団とともに行ってきた「京都文化会議」です。(中略)
「こころの未来研究センター」は小規模ですが、心理学、脳科学、宗教学、倫理学など、多様な分野の研究者がおります。そこで最初は、柱になる研究テーマを決めて、全員そのテーマに沿って研究してはどうかなどとあれこれ試行錯誤しましたが、なかなかうまくいきません。そこで、一人一人がやりたい研究を学内外の研究者と一緒に自由に行う「連携研究プロジェクト」を多数立ち上げて、そうした共同研究を中心にすすめるという方針に変更しました。
最初は、おっかなびっくりといいますか、ちょっと腰が引けた気持ちで始めたのですが、この方針はなかなか具合がいいことが分かってきました。考えてみれば、「こころ」は人間にかかわること、人間が行っていることすべてに関係するキーワードです。センターの研究者が、学内外のさまざまな分野の研究者との共同研究に積極的に取り組むようになると、大学とか、研究者の世界だけでなく、例えば、胸部疾患の専門病院の看護師さんからの依頼で「マスクが患者とのコミュニケーションに及ぼす影響」について研究を行ったり、農業の普及指導員の方たちとともに「農業コミュニティにおいて普及指導員が果たす役割」の研究を行ったりといったように、センターで取り組む研究の幅が大きく広がっていきました。
(講演録より)
□関連ページ
「学士会会報・U7 vol.53」に、吉川センター長のインタビューが掲載されました(2013.12.31掲載)
鎌田教授が出演した『第15回地域伝統芸能まつり』がNHK Eテレで放映されます(3/14 午後2時〜)
NHKホールで2015年2月21・22日に開催された「第15回地域伝統芸能まつり」に鎌田東二教授が出演しました。イベントの模様が、3月14日(土)午後2時からNHK Eテレで放映されます。
日本各地の伝統芸能の担い手が一堂に集まり、それぞれが個性溢れる演目で披露した同イベントにおいて、鎌田教授は、岩手県から出演した紫波町の「山屋田植踊り」の解説をおこない、震災復興を祈念して締めくくりに法螺貝を吹きました。
日本各地の郷土芸能や伝統芸能が一堂に介し実演を披露する「地域伝統芸能まつり」。今回のテーマは『咲う(わらう)~まつりの輪に笑顔咲く~』。「江差餅つき囃子・北海道江差町」「山屋の田植踊・岩手県紫波町」「素盞雄神社の天王祭・東京都荒川区」「大脇の梯子獅子・愛知県豊明市」「明神ばやし・福井県越前町」「御嶽神楽・大分県豊後大野市」「京太郎・沖縄県読谷村」狂言「鬼瓦・山本東次郎」能「三笑・梅若玄祥」ほか
出演者 【司会】竹下景子、水谷彰宏
(NHK番組サイトより)
★番組情報
NHK Eテレ『まつりの響き~第15回地域伝統芸能まつり~』
2015年3月14日(土)午後2時〜4時
http://www2.nhk.or.jp/navi/detail/index.cgi?id=08_0378
★「第15回地域伝統芸能まつり~」のサイト
http://www.jafra.or.jp/matsuri/
3/4(水)15時台 河合教授がFM89.4「α-STATION エフエム京都」に出演します
河合俊雄教授が、京都のFM局「α-STATION エフエム京都」の番組「SUNNYSIDE BALCONY」毎週水曜日のコーナー「Kyoto University Academic Talk」に出演します。3月4日(水)の15時台に放送されます。
毎週、京大の研究者がゲストとなって、「学び」をキーワードにそれぞれに個性あふれる内容で人気を集めているこのコーナー。臨床心理学を専門とし、人のこころと向き合いながら研究活動をおこなっている河合教授のトークをぜひお聴きください。
なお、後日、京都大学同窓会(京大アラムナイ)のサイトおよびFacebookページにて音声が公開されます。あらためてご案内しますので、楽しみにお待ちください。
★河合教授出演の番組情報
FM89.4 α-STATION エフエム京都
『Kyoto University Academic Talk』
2015年3月4日(水)15時台
http://fm-kyoto.jp/
★京都大学同窓会(京大アラムナイ)のサイト
http://hp.alumni.kyoto-u.ac.jp/info/ku_academic.html
(後日、音声が公開されます)
2/26(木)20:00〜 鎌田教授がFM79.7「ラジオ・カフェ」に出演します(Webでもお聴きいただけます)
鎌田東二教授が、京都のローカルラジオ局「ラジオ・カフェ」(FM79.7)の「京都遊空間~遊プロジェクト京都の『おもしろ発見・まち・京都』」でトークした番組が、2月26日(木)20時から放送されます。
ナビゲーターは高嶋加代子さん。鎌田教授は、自身が会長を務める京都伝統文化の森推進協議会について、大西宏志京都造形芸大教授と共に紹介し、同協議会のキャラクター「くーりん」と「京だらぼっち」が登場する紙芝居のストーリーコンペに入選した吉田芽以さんも出演して、楽しいおしゃべりを繰り広げてきたそうです。写真は一緒に出演した大西先生のご提供です。楽しそうな雰囲気が伝わってきますね。
合わせて、鎌田教授が代表の「モノ学・感覚価値研究会」が、3月7日から14日まで北野天満宮で開催する「悲とアニマ ー モノ学・感覚価値研究会アート分科会展」のイベント紹介もおこないました。
番組はPCやスマートフォンからもお聴きいただけます。ぜひ26日木曜日の20時、下記リンク先からお楽しみください。
★鎌田教授出演の番組情報
京都遊空間~遊プロジェクト京都『おもしろ発見・まち・京都』
2015年2月26日(木)20:00~20:20
FM79.7京都三条ラジオカフェ
http://radiocafe.jp/
内田准教授のインタビューとセンターの紹介記事が日能研関西の『Nキューブ』に掲載されました
内田由紀子准教授のインタビューが日能研関西の発行する中学受験・進学情報誌『Nキューブ』vol.19に掲載されました。
これからの時代に求められる子どもたちの教育について考える巻頭特集で、内田准教授は「内田由紀子博士の未来教育論」というタイトルでカラー4ページに渡ってインタビューに応えています。自身が取り組む幸福感についての研究を紹介し、研究者人生を歩み出すまでの道のりを丁寧に振り返りながら、未来について考えるヒントを提供しています。また、特集ページではこころの未来研究センターの取り組みが、センターで活動する教員たちの写真と共に紹介されました。
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「京都大学こころの未来研究センター 内田由紀子博士の未来教育論」
「幸福」って、何だと思いますか?ー 未来を切り拓くための新しい学力観のもとで、教育が実践されている昨今。これからの時代に求められる子どもたちの教育を考える時、真っ先に思い浮かんだのは、「こころ」のあり方でした。特集を組むにあたり、まずは、幸福感や他者理解、対人関係など、幅広く文化心理学・社会心理学の観点から研究を進めてこられた内田由紀子先生に、これからを生きるヒントについてうかがってみました。
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私が大学で取り組んだ研究は「文化」と「こころ」の問題でした。文化心理学という分野になりますが、人のこころというものは必ず社会や文化の影響を受けているだろうという考えのもとに、国際比較などを行うというのが研究の基本スタンスです。大学院の博士課程の頃から、一つのフィールドとして「幸福感」に関する研究を始めました。幸福を望んだり、お金を得たいと思ったりすることは一般に普遍的だと思われていますが、実際にはそうではないこともあるのではないかという思いがありました。
ちょうどその頃あたりからでしょうか。心理学者以外にも経済学者や政治学者なども幸福感について論じるようになってきました。それまでというのは、たとえばGDP(国内総生産)のように、客観的に測れるもの以外には、人の心の豊かさや社会の豊かさなどは測れないという考えだったけれども、主観というものを測定することにも意味があるのではないのかという動きが出てきたんですね。
(記事より)
なお、本誌は書店などでの取り扱いはありませんが、日能研関西の各教室にて無料配布(在庫あるかぎり)されています。教室リストはこちら
ベッカー教授が監修・出演したTV番組が韓国教育テレビ(EBS)で放映されました
カール・ベッカー教授が、監修および出演したドキュメンタリー番組『Memento mori』が韓国教育テレビ(EBS)で2014年11月に放映されました。
番組は、「Death(死)」をテーマとした3本立の長編で、死をめぐる様々な問題や科学的知見を世界各国への取材を通して深く掘り下げたドキュメンタリーとなっています。ベッカー教授は、番組全体に対してアドバイザーとして協力したほか、第2作目「Vitam aeternam」にて死生観に関するインタビューに応えています。映像には、こころの未来研究センターの全景が映し出され、ベッカー研究室で撮影されたインタビューの様子が含まれています。
Youtubeにてオフィシャル映像をご覧いただけます。9分50秒頃よりベッカー教授が出演しています。下記リンク先よりご覧ください(※クリックすると動画がはじまります)。
EBS Vitam aeternam | Youtube
(9分50秒頃よりベッカー教授が出演)
韓国EBSの番組紹介ページ(韓国語)
http://www.ebs.co.kr/tv/show?prodId=348&lectId=10260696
『螢雪時代』に阿部准教授の研究成果が掲載されました
旺文社が発行する受験生向けの雑誌『螢雪時代』の「螢雪ジャーナル・キャンパスニュース」と、旺文社のウェブサイト「パスナビ」の情報欄に、阿部修士准教授が2014年8月に発表し、論文が『Journal of Neuroscience』に掲載された研究成果「どうして正直者と嘘つきがいるのか? ー脳活動からその原因を解明ー」が紹介されました。下記のリンク先で全文をご覧いただけます。
「なぜ正直者と嘘つきがいる? 脳活動からその原因を解明 京都大学」
京都大学こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門阿部修士准教授たちのグループは、機能的磁気共鳴画像法と呼ばれる脳活動を間接的に測定する方法と、嘘をつく割合を測定する心理学的な課題を使って、正直さ・不正直さの個人差に関係する脳の仕組みについて解明した。(中略)
阿部准教授は「今回の研究では、嘘をついてしまう人と正直な人とで脳の活動パターンに違いがある可能性を明らかにした。この結果は、人間の『道徳性』を科学的に理解するための重要なステップである」と語る。今後の研究の目標は「宇宙で最も複雑な存在」とも言われる脳の仕組みと、人間の心のメカニズムの関係性を明らかにすることという。
(『螢雪時代』2014年11月号 より)
鎌田教授のインタビューが『月刊シアターΧ批評通信』に掲載されました
鎌田東二教授のインタビューが、東京・両国の劇場シアターX(カイ)の発行する『月刊シアターΧ批評通信』51号(2014年12月号)の巻頭特集ページに掲載されました。
昨年、鎌田教授の著書『超訳古事記』(ミシマ社)を原作とする舞台が、東京ノーヴィ・レパートリーシアター(TNRT)によって上演され話題を集めました。ロシア出身の演出家、レオニード・アニシモフ氏を魅了した「古事記」の世界観について、鎌田教授は本誌インタビューで長年の知見と共にダイナミックに語っています。
鎌田東二教授が語る日本の神話『古事記』
敗残者の系譜をどうやって鎮めるのか
『古事記』はスピリチュアルケア、グリーフケア、鎮魂の書であるというのが私の結論です。何がスピリチュアルケアかと言えば、イザナミの死にまつわる悲しみやスサノオに現れてくる暴力性や荒魂(あらみたま)が出雲に伝承され、そういう出雲的な敗残者の系譜をどうやって鎮めるのかということになります。敗れた者、隠退していった者、スピリチュアルペインを受けた者たちが『古事記』の語りによって慰められ、鎮魂され、語りの中で蘇ってくるということです。そういう意味で『古事記』は語り物の『平家物語』や鎮魂の芸能である能と同じだというのが私の立場です。(略)
各地に『古事記』にまつわる不思議な伝承が残っていて、単なる国家神話とは言えない部分が間違いなくあるのです。『古事記』は語りの力を遺憾なく伝えていて、日本に残る神話の中でもっとも語りの力が強烈です。まずそのことを踏まえる必要があると思います。私は『古事記』以前にも語りの世界はあったと思うのです。『古事記』はいくつもの神話の中の一つでしかないのです。私達は『古事記』を通してアーカイックな宇宙伝承の世界を考えていく手がかりを得ることができます。それは非常に広い東アジア的な、ユーラシア的な、南方的な世界につながり得る伝承世界だと思います。
(『月刊シアターX批評通信』51号より)
2015年3月15日、東京・中野区の梅若能楽学院会館にて 「古事記~天と地といのちの架け橋~」(原作:鎌田東二『超訳古事記』)が上演されます。詳しくは下記リンク先をご覧ください。
吉川センター長のインタビューが『商工ジャーナル』に掲載されました
吉川左紀子センター長のインタビューが、商工中金経済研究所の発行する経営情報誌『商工ジャーナル』2015年2月号にカラー4ページで掲載されました。
中堅・中小企業向けにビジネス情報を発信している同誌の連載インタビューページ「今を語る(第145回)」で、吉川教授は、心理学という学問のなりたちや、それぞれの研究分野の特徴を分かりやすく紹介し、fMRIを用いた神経科学の進歩や、幸福感などを扱った文化心理学などの発展など、昨今の心理学研究の動向について幅広く紹介しています。また、様々な分野の研究者らが集まり学際研究を進めるこころの未来研究センターの取り組みについても紹介し、自身の今後の研究について展望を語っています。
今を語る ー 第145回「目に見えない心の働きを見定める」
吉川左紀子氏(京都大学こころの未来研究センター長・教授)/ 聞き手 商工研常務執行役員・大西知彦
―心理学とはどのような学問ですか?
吉川 心理学には、実験や調査で心の働きを調べる基礎科学と、悩みをかかえるひとをカウンセリングなどによって支える、実践的な学問という両面があります。基礎科学としての心理学では、人は周りの世界をどう見ているのか、成長し大人になる過程で心はどう変化するのか、人の判断は周りの人にどんな影響を受けるのかなど、いろいろな問いを立てて調べています。長年心理学をやっていても、人はいかに自分の心を知らないのかと実感することも多いですね。ある意味、思いこみの集積が人の心なのかもしれません。(中略)
―地球上の七十億人は、生まれも育ちも違いますが、どう研究するのですか?
吉川 心理学が誕生してから百五十年近くたち、多くの研究者が取り組んできた学問の歴史があるので、心を研究するいろいろな方法が考案されています。最近は脳科学の研究手法も進歩していますから、人間の心の働きについて、脳の神経活動パターンを分析して調べることもできるようになりました。チンパンジーやゴリラなど、他の霊長類と比較することで人の心の特徴を調べる心理学もあります。こうした研究は、京大の霊長類研究所をはじめ日本では特に盛んで、比較心理学といわれています。文化の違いが人間の心の働きにどんな影響を及ぼすかを調べる文化心理学の研究も注目されています。人間の心の働きは本当に複雑ですから、さまざまな研究手法を組み合わせて実験や観察を積み重ねていくという地道な作業が必要なんですね。
(記事より)
映画『花の億土へ』作品パンフレットに鎌田教授の解説が掲載されました
作家・詩人の石牟礼道子氏の世界を描いた映像作品であり、彼女の「最後のメッセージ」として制作された『花の億土へ』(監督:金大偉、制作:藤原書店、2013年)が各地で上映されています。その作品パンフレットの解説を鎌田東二教授が執筆しました。
水俣水銀中毒事件をモチーフとした名著『苦海浄土』を世に出し、「近代とは何か」というテーマを常に現代人に問い続けてきた石牟礼氏。鎌田教授は、石牟礼氏の発するメッセージと存在感覚が「すべての衆生に仏性を見出し礼拝する常不軽菩薩と通底する天台本覚思想」に通じ、また『日本書紀』において様々な神が存在し草木生類がみな言葉を発していたとされる世界をあらわした一節を想起させる、と述べ、本作品を「世界の息吹を取り戻そうとする、静かな、しかし激しい闘いと交響のメッセージなのである」と綴っています。
解説 鎌田東二
石牟礼道子さんの胸を衝く言葉の数々の中で、とりわけ目に触れるたびに峻厳にして哀切を感じるのが次の言葉である。「まぼろしの湖の上にひらくひとすじの道をあるいて/まだ息絶えぬ原始を看取りに/わたしは急ぐ」(「木樵り」)。
昭和三十年代、水俣病が顕在化する過程で発せられたこの詩の言葉が、石牟礼さんの生涯を貫き告げる声であるような気がしてならない。その言葉は、荒野を歩く予言者、岬の突端で常世に霊送りするシャーマン、深い森の中で蹲って草木虫の声々に耳を傾ける巫女山姥、大都市を雷神の如く駆け抜ける閃光馬を想い起こさせる。そして、観世音菩薩が三十三身に化身して衆生済度の業を果たすように、その様々なる声と振る舞いによって、「花の億土」への道が啓かれる。(中略)
「花の億土へ」は、「毒死列島」日本から、このような生きとし生けるものが呼び交し合う「草木ことごとくよく言語(ものい)う」世界の息吹きを取り戻そうとする、静かな、しかし激しい闘いと交響のメッセージなのである。
(かまた・とうじ/京都大学こころの未来研究センター教授)
なお、2015年度前半に刊行予定の当センター広報誌『こころの未来 14号』には、鎌田東二教授による石牟礼氏へのインタビューが掲載される予定です。どうぞ楽しみにお待ちください。
□関連情報
映画『花の億土へ』上映情報 | 藤原書店
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました(石牟礼道子さんについて紹介)
鎌田教授について書かれたエッセイが日経新聞「交遊抄」に掲載されました
日本経済新聞の朝刊文化面「交遊抄」(2015年1月17日付)に、鎌田東二教授について書かれたエッセイが掲載されました。書き手は、俳人・文筆家で幅広い活動で知られる堀本裕樹さん。國學院大学時代に俳句サークルで師事して以来、俳人として句集を出版し活躍するまで鎌田教授から受けた励まし、支えの数々を挙げ、心あたたまるエピソードを紹介しています。
「宇宙を詠める」堀本裕樹(ほりもと・ゆうき=俳人)
俳句を始めたばかりの私に、「俳句は宇宙を詠めるんだ」と先生は教えてくれた。俳句の奥深さに気づかされたひと言であった。
26歳の時、俳句総合誌から初めて原稿依頼があり作品が掲載された。それを読んでくださった先生から励ましの言葉と句集を編むようにと書かれた葉書が届いた。(中略)
鎌田先生と出会って20年を越えた。神仏や自然に純真に向き合い、思索とフィールドワークを重ねる先生の背中をこれからも追い続けたい。
(2015.1.17付 日本経済新聞「交遊抄」より)
内田准教授のインタビューが載った『しあわせ予報2015 女性たちから未来は生まれる』(ベルメゾン)が発刊されました
ベルメゾン生活スタイル研究所が発行する『しあわせ予報2015 女性たちから未来は生まれる』に内田由紀子准教授のインタビューが掲載されました。
『しあわせ予報2015 女性たちから未来は生まれる』は、女性向けの通販を中心とした事業を手がける株式会社千趣会が運営する同研究所が、日本のイノベーションの原動力となる5つの「女子力」に注目。それぞれの女子力を活かして成果を上げている10の企業や団体と10人のロールモデルの取材を通して「働く女性が生みだす未来」を考察したA5判100ページにおよぶ冊子です。内田准教授は、「ウーマノベーションから広がる新しいしあわせのかたちとは?」というページにおいて10の質問に答える形で、冊子全体のまとめと考察を担う形で女性が新しいスタイルで幸福感を得るための現状分析や文化・社会心理学者の視点からのアドバイスを提供しています。
「内田由紀子先生に10の質問 ウーマノベーションから広がる新しいしあわせのかたちとは?」
働く女性のパワーが起こす、社会のイノベーション。
それはきっと、未来の「しあわせ多様社会」への第一歩。
ご自身も子育てをしながら研究に取り組み、
「こころとしあわせの関係」を見つめている
京都大学の内田由紀子先生に聞きました。
「先生、新しいしあわせのあり方って、どんなものですか?」
○内田由紀子さん 京都大学「こころの未来研究センター」准教授(社会心理学・文化心理学)
2003年、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)にして、現在5歳児の母。アメリカミシガン大学やスタンフォード大学での客員研究員時代には、遠距離結婚生活を送る。2008年京都大学「こころの未来研究センター」に助教として着任、2011年より准教授。2010年から2013年まで内閣府「幸福度に関する研究会」委員。
冊子はウェブサイトで全文をお読みいただけます。下記リンク先にアクセスしてご覧ください。
しあわせ予報2015「女性たちから未来は生まれる。」- ベルメゾンデッセ
http://www.belle-desse.jp/cocoro/index.htm
阿部准教授が読売テレビ「ウェークアップ!ぷらす」に出演しました
2014年12月27日に放映された報道番組「ウェークアップ!ぷらす」(制作:読売テレビ」に阿部修士准教授(上廣こころ学研究部門)が出演しました。
番組では、「2014総決算!嘘つきはどろぼうのはじまり」というテーマで、昨年に世の中を賑わした事件や出来事を振り返り、それらにひそむ「嘘」をキーワードに、人がなぜ嘘をつくのか、嘘にちなんだ話題の数々が特集として取り上げられました。冒頭、阿部准教授が昨年に論文発表した「人の正直さ・不正直さの個人差に関係する脳の仕組み」を調べた研究内容が詳しく紹介され、阿部准教授のコメントと共に「側坐核(そくざかく)の活動が高い人ほど、嘘をつく割合が高い」といった結果が図説で紹介されました。
番組のホームページに詳しい内容が掲載されています。下記リンク先をご覧ください。
2014総決算!嘘つきはどろぼうのはじまり|ウェークアップ!ぷらす(ytv)
□関連情報:阿部准教授の論文の発表記事と概要はこちら
阿部准教授の共著論文が『Journal of Neuroscience』に掲載されました
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 25」(2015年1月3日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
阪神淡路大震災から20年となる今月、鎌田教授は震災からの20年の日本の変化を振り返り、超高齢化社会、自然環境の汚染と破壊の進行、政策との乖離など厳しい状況を迎えているとし、「スパイラル史観」という歴史の大局的な見方を提示。持続可能な社会を構築するためには世界、国家レベルの改革に委ねるのではなく、各個の身の周りの「中間領域」を変化させ活性させるための意識的な取り組みが大きな鍵となる、と提唱しています。
「阪神大震災から20年 持続可能な社会目指し 自分の周りから変える」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
正月早々、暗い話で恐縮だが、私は「スパイラル史観」という歴史の大局的な見方を提示し、現代は中世のような多極化した分裂的な「乱世=武者の世」に突入したという「現代大中世論」を主張してきた。それが正しいかどうかは別として、広範囲に進行する混乱と破壊を超えて、したたかにしなやかにたくましく生き抜き、創造していく力をどう体得・体現していくかが鍵であり、自助・共助の多様なかたちを模索する挑戦的な取り組みを展開していかなければならない。
私自身は、阪神大震災後、1998年に「神戸からの祈り」と「東京おひらきまつり」という創造性を結集し共助していく新しい「祭り」を起こす取り組みを始め、99年には「東京自由大学」というボランタリーで共助的な市民大学を友人たちと創った。世界とか国家とかの改革や変革だけでなく、自分たちの周りの「中間領域」をどう変え、活性化できる「中間者」となるか、それが「持続不可能性」の現実をも視野に入れた「持続可能な社会づくり」の最大の鍵であると思っている。
(記事より)
吉川センター長のエッセイが京都新聞の元日特集に掲載されました
吉川左紀子センター長のエッセイが2015年1月1日付の京都新聞元日特集に掲載されました。
「日本人の忘れもの知恵会議」という京都新聞がおこなっているキャンペーンの一環で、「こころ、ここに」というキャッチフレーズと共に、日本人が置き去りにした価値観を取り戻すための手掛かりをテーマに63人の文化人、企業経営者らがそれぞれの思いと言葉で綴っています。
吉川センター長は、「ブータンの生活の中に日本人の『幸せ感』につながるものが」というタイトルで寄稿しました。特集には山極寿一京大総長も「生きる知恵を与えてくれた何の目的もなく集まり過ごす時間」という題でエッセイを寄せています。他に尾池和夫元総長(現京都造形芸術大学長)、養老孟司京都国際マンガミュージアム館長、哲学者の梅原猛氏、千宗室裏千家家元など、多彩な執筆陣が名を連ねています。
「ブータンの生活の中に日本人の『幸せ感』につながるものが」
吉川左紀子 京都大学こころの未来研究センター教授・同センター長
2010年、京都大学とブータン王立大学との間でブータン友好プログラムという交流事業がスタートした。経済指標でみれば発展途上国ということになるのだろうが、ブータンを訪れその文化に触れた日本人は、老若男女と問わず、何とも言い難い「なつかしさ」を感じるという人が多い。私も、訪問団のメンバーとして初めてブータンを訪れて以後、ヒマラヤの中腹に位置するこの小国の持つ引力に引かれ、何度も出掛けては、その「なつかしさ」の正体を考え続けている。ブータンの人たちの毎日の生活の中に、日本人が感じる「幸せ感」につながる何かが、潜んでいるように思えるのだ。
(記事より)
鎌田教授が企画・編集・執筆する『講座スピリチュアル学』シリーズが河北新報で紹介されました
鎌田東二教授が企画・編集・執筆をおこない、全7巻のシリーズ書として刊行される『講座スピリチュアル学』(発行:ビイング・ネット・プレス)を紹介する記事が、2014年12月13日付の河北新報朝刊に掲載されました。書籍はすでに第2巻まで刊行されています。記事では、インタビュー風景写真と共に、本が作られた経緯、時代背景、スピリチュアル学の定義、本の構成などが丁寧に紹介されています。
「悲嘆と向き合う 京大教授『スピリチュアル学』刊行」
かけがえのない人を失った悲嘆など、自然科学的アプローチでは論じきれない魂の叫びとの向き合い方を考察しようと、京都大こころの未来研究センター教授の鎌田東二さん(63)=宗教哲学=が「講座スピリチュアル学」と題する7巻シリーズの本の刊行を始めた。東日本大震災を機に、死後の世界までを丸ごと見据えた医療などの必要性を感じ、本を通しての問題提起を思い立った。
スピリチュアルという言葉は「霊的」などと訳される。悲嘆へのケアは近年「スピリチュアルケア」とも呼ばれるが、どちらかといえば西欧発の概念で、日本では必ずしも浸透していない。
今回のシリーズで提唱するスピリチュアル学について、鎌田さんは「こころとからだとたましいの全体を丸ごととらえ、生き方など生の価値に絡めた考察」と説明する。
(記事より)続きはこちら
記事は河北新報のウェブサイトで全文をお読みいただけます。下記リンクをクリックしてご覧ください。
悲嘆と向き合う 京大教授「スピリチュアル学」刊行 | 河北新報 ONLINE NEWS
◇関連情報
『講座スピリチュアル学 第1巻 スピリチュアルケア』(企画・編/鎌田東二、執筆/カール・ベッカー、鎌田東二ほか)が出版されました
徳島新聞に『講座スピリチュアル学 第1巻 スピリチュアルケア』(企画・編/鎌田東二、執筆/カール・ベッカー、鎌田東二ほか)の書評記事が掲載されました
京都新聞の読書欄(2014年11月13日付)に、鎌田東二教授が企画・編集をおこない、カール・ベッカー教授、島薗進 東京大学名誉教授・上智大学グリーフケア研究所特任所長、井上ウィマラ 高野山大学教授らと執筆した『講座スピリチュアル学 第1巻 スピリチュアルケア』の書評記事が掲載されました。徳島県立文学書道館の亀本美砂事業課主査が評しています。
1995年に阪神大震災が起きたとき、「心的外傷後ストレス障害」のケアが注目され、「心のケア」が大きな社会問題となったが、2011年の東日本大震災においては「心のケア」という言葉や方法では対処しきれないほどの事態が引き起こされた。たくさんの行方不明者の捜索や確認作業に伴う深い悲嘆や絶望、また死者をどのように埋葬、鎮魂、供養すればよいのかという生存と生死の本質的な問題に直面して、「スピリチュアル(精神的・霊性的)」な次元にまで踏み込んだ対人援助が求められ、スピリチュアルケアや宗教ケアが必要とされたのだ。
本書はそういった世相の中で構想された「スピリチュアル学」全7巻シリーズの第1冊であり、医療と健康、平和、環境、教育、芸術・芸能、宗教などに先だち、急迫した問題として「スピリチュアルケア」の理論と実践が取り上げられている。医療、宗教の第一線で今日的課題に取り組んできた論者たちにより、グリーフケアや死生観ワークをはじめ、さまざまな現場で実践されている技法や事例などが豊富に紹介される。また終章では本書の企画・編者である鎌田東二氏により、日本の風土とスピリチュアルケアについての考察がなされている。
(記事より)
◇関連情報
『講座スピリチュアル学 第1巻 スピリチュアルケア』(企画・編/鎌田東二、執筆/カール・ベッカー、鎌田東二ほか)が出版されました
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 23」(2014年12月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
2014年秋より展覧会「スサノヲの到来-いのち、いかり、いのり」が開催されており、来年秋まで各地の美術館で開催されます。鎌田教授は、展覧会の展図録への解説記事「スサノヲという爆発ー放浪する翁童神のメッセージ」を寄稿し、11月には会場での講演もおこないました。記事では、古事記の中でダイナミックな存在感を放つ神スサノヲノミコトの魅力を紹介し、いまこの時期にスサノヲが注目され、展覧会が開催される意義を紹介しています。
「スサノヲの到来展 新しい世界を切りひらく 今の日本に必要な底力」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
10月18日から12月23日まで、栃木県足利市立美術館で「スサノヲの到来展」が開かれている。そこには縄文土偶から現代のアーティストの作品まで、時代を串刺しにする「スサノヲ的なるもの」が館内いっぱいに展示されている。(中略)
「スサノヲの到来展」で特筆すべきは、神道家、金井南龍の絵画である。「妣(はは)の国」「昇り龍 降り龍」「富士諏訪木曽御嶽のウケヒ」など9作が展示されているのを見、そこに描かれている富士山や浅間山や霧島、高千穂の峰や御嶽山がみな噴火しているのを確認した。
大地を揺るがし草木を枯らす荒ぶる荒ぶる啼きいさちる神。地震や台風や雷などの破壊的な自然災害とも結びつくが、同時にあらゆる「ケガレ(穢れ・気枯れ)」を禊祓(みそぎはら)い、新しい創造世界を切りひらく。破壊と創造、勇敢と繊細。この両義的相反する性格を持つスサノヲの到来こそ、今の日本に必要な底力の爆発ではないだろうか?
(記事より)
鎌田教授が展図録『スサノヲの到来-いのち、いかり、いのり』に解説を寄稿し、講演をおこないました
2014年10月18日より足利市立美術館にて展覧会「スサノヲの到来-いのち、いかり、いのり」(主催:足利市立美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会)が始まりました。足利では12月23日まで開催され、その後、2015年秋まで各地の美術館で開催されます。鎌田東二教授は、本展覧会の展図録に解説記事「スサノヲという爆発ー放浪する翁童神のメッセージ」を寄稿し、11月9日には、展覧会の開催地である足利市立美術館にて同タイトルの講演会で講師を務めました。
「スサノヲという爆発ー放浪する翁童神のメッセージ」鎌田東二
スサノヲは爆発である。泣き虫の爆発であり、きかん気の爆発であり、暴れん坊の爆発である。
また、スサノヲはスキャンダルである。アウトローであり、バガボンドであり、ヒッピーであり、ヒーローである。八頭八尾の八俣大蛇を退治することのできたスサノヲ自身が八頭八尾の怪物体である。異相の怪物神スサノヲ。
この多面多層体のスサノヲ神話は、確かに、折口信夫の言う貴種流離譚のプロトタイプである。
振り返ってわが人生を通観してみると、そのスサノヲとの遭遇の繰り返しであったと総括できる。まず、「オニ(鬼・大人)」を見ることから始まったわが人生で、初めて大きな社会発信をしたのが、一九七〇年五月、十九歳の時に、大阪の心斎橋で一ヶ月間『ロックンロール神話考』なるアングラ劇を作・演出したことにあった。(中略)
研究面だけではなく、私生活の方でもスサノヲに遭遇し続けた。
(解説より)
講演会の様子はこちら→ 鎌田東二さんによる講演会行われました | 足利市立美術館ブログ
展覧会の案内ページ→ スサノヲの到来 -いのち、いかり、いのり | 足利市立美術館
2015年までの開催地→ 展覧会紹介 | 美術館連絡協議会
学術研究支援室のウェブサイト「K.U.RESEARCH」に内田准教授のインタビューが掲載されました
京都大学学術研究支援室が企画・運営するウェブサイト「K.U.RESEARCH」の研究者紹介ページ『京大人間図鑑』に内田由紀子准教授のインタビューが掲載されました。
『京大人間図鑑 Vol.05 内田由紀子 こころの未来研究センター准教授』 | K.U.RESEARCH
自分に合う研究分野を探して回り道をした学部時代の思い出話から始まるインタビュー記事は、内田准教授が文化・社会心理学者として歩んできた道のりと研究者としての思い、ビジョンが丁寧に描かれています。内閣府の「幸福度に関する研究会」委員を務めて指標作成に携わったり、農村や漁村の地域コミュニティに生きる人たちの「つながり」に関する調査研究の経験談など、研究活動の軌跡が紹介されています。また、最近はビジネスの世界における人のこころに興味を広げ、企業理念や経営方針が働く人にもたらす幸福感、やりがい等について調査研究を進めている現状について爽やかに語っています。
京大人間図鑑 vol.5 こころの未来研究センター准教授 内田由紀子
近年、暮らしの豊かさを示す「幸福度」の指標作りが国内外で活発に行われています。他の国や地域との比較にとどまらず、固有の文化的特性の中で育まれる幸福感をどのように捉えるか。京都大学こころの未来研究センターの内田由紀子(うちだゆきこ)准教授は、文化・社会心理学の視点から、日本人の幸福感について研究しています。
――専門は、文化心理学・社会心理学とのことですが、研究を始められた経緯を教えてください。
内田准教授 高校生の頃、平家物語や今昔物語といった古典が好きで、文学部に入学しました。ところが何か違うなあと(笑)。しばらくして、自分が古文そのものを研究するのではなく、その物語から垣間見える登場人物の感情の動き、時代・文化の精神と「こころ」の関係性に興味があることに気付いたんです。それで三回生の時に教育学部に転部して臨床系の心理学を学ぶことにしました。(中略)
――文化心理学・社会心理学とは、どういったことを研究テーマとするのでしょうか。
内田准教授 文化や社会がどういった影響を心に及ぼすか、また、心がどのようにし文化や社会をつくりあげるか、その関係を解明することです。私はとりわけ、幸福を求めるルートが国や文化によって異なるという点に興味をもっており、認知・感情のしくみや対人関係の比較文化研究をテーマにしています。
(記事より。続きはこちら)
内田准教授が寄稿した『女性研究者とワークライフバランス』の書評が京都新聞に掲載されました
内田由紀子准教授が論考を寄稿した書籍『女性研究者とワークライフバランス: キャリアを積むこと、家族を持つこと』(新曜社)の書評が、2014年10月19日付の京都新聞読書欄に掲載されました。
○出版あれこれ○「ワークライフバランスへの助言」
仕事と妊娠・出産、遠距離結婚生活、主夫に支えられて、夫が育休を取った際の経済的デメリットーなど、ケースごとに体験を報告し課題を挙げている。内田由紀子・京都大こころの未来研究センター准教授や、夫の立場から郷式徹・龍谷大教授も執筆。体験を語りながら、遠距離結婚の章で内田准教授が「子育てはやはり文字通り『かけがえのない』幸せをもたらしてくれる」と書くなど、結婚や子育てを考える女性に励ましを送っている。
(京都新聞2014年10月19日付読書欄記事より)
□関連ページ
内田准教授が寄稿した『女性研究者とワークライフバランス: キャリアを積むこと、家族を持つこと』が出版されました
『女性研究者とワークライフバランス: キャリアを積むこと、家族を持つこと』:新曜社
内田准教授が西日本経済同友会合同懇談会で講演。高知新聞に掲載されました
2014年10月3日、西日本経済同友会会員合同懇談会が高知市で開催され、内田由紀子准教授が基調講演をおこないました。西日本に18ある経済同友会より400人が参加したイベントでは、土佐経済同友会が提唱している県民の幸福度の指標づくりがテーマとなりました。内田准教授は「日本の地域における幸福感」という演題で講演し、その後のパネルディスカッションでも発言をおこないました。
10月4日付の高知新聞経済面には、写真と共にイベントの開催が報じられ、内田准教授の講演内容が紹介されました。
「幸福度で地方発展を 高知市 西日本18同友会が懇談」
「日本の地域における幸福感」と題した基調講演では、京都大学こころの未来研究センターの内田由紀子准教授が、幸福の感じ方には国や文化で違いがあり、単純な比較はできないと指摘。指標づくりは「どんな地域をつくりたいか、ビジョンが大事」と話した。
(高知新聞/2014年10月4日付朝刊経済面記事より)
吉川教授の解説記事が『児童心理』12月号に掲載されました
吉川左紀子教授の解説記事が、『児童心理』2014年12月号(発行:金子書房)に掲載されました。子どもの心をテーマにした教育者と父兄のための冊子の今号の特集は「コミュニケーション力を育てる」です。吉川教授は、「笑顔・表情を大切にする」というタイトルで、長年の認知心理学の研究で得た知見をもとに、具体的な実験結果を例にあげながら、「笑顔」「表情」が人と人を結びつけるコミュニケーションのツールとして大きな役割を果たすことを、分かりやすく解説しています。
□コミュニケーション力アップのために
「笑顔・表情を大切にする」京都大学教授 吉川左紀子
わたしたちはふだん、人と話をするときに自分の顔がどんな表情を表出し、まわりの人たちにどんなメッセージ(気持ち)を伝えているのか、あまり気にせずに過ごしている。「顔(表情)は口よりもものを言う」とすれば、これは不思議なことである。口角や眉を上げ下げして「にっこり顔」や「むっつり顔」が作れることは、表情に対する自己効力感をもたらす。自分の表情に無頓着でいられるのは、「表情は、自分の思い通りに動いている」と感じているからかもしれない。しかし、自分がどんな表情で人と話をしているのか、知らないのは自分だけである。まわりの人たちには見えている自分の表情は自分には見えない。ときには、ここで紹介した実験手続きにならい、自分の表情をわざと誇張したり抑制したりして会話をしてみてはどうだろう。笑顔とコミュニケーションの深いつながりについて、気づくことがたくさんあるのではないかと考えている。
(記事より)
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 23」(2014年11月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
鎌田教授が代表を務めるNPO法人東京自由大学の「世直し講座」に講師としてやってきた塩見直紀さんは、暮らしにおいて農業を半分と、自分の才能を生かした仕事を半分おこなう「半農半X」の提唱者です。また、同じく新講師の矢野智徳さんは、「庭」環境から自然環境全体を再生させていこうとする「環境再生医」として活動中。鎌田教授は二人の取り組みを紹介し、自身が10年来提唱している「生態智」の考え方と重ね合わせながら、自然への畏怖畏敬を大切にしながら生きとし生けるものが助け合い柔軟に生き抜く知恵の実践が必要である、と強調しています。
「環境に即した知恵必要 半農半X人と環境再生医のメッセージ」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
今年の4月からNPO法人東京自由大学では新規に「世直し講座」を始めた。「世直し」を 1.鳥のように世界を俯瞰した視点から考える「鳥の目コース」 2.アリのように地域に根差し実践的な視点から考える「蟻の目コース」 3.第三の目で見えないモノを見る視点から考える「龍の目コース」という三つの「コース」から捉えてみることにした。(中略)
そしてこのたび、「土を耕し、心を耕す」と題して、塩見直紀(半農半X研究所代表)と矢野智徳(NPO法人杜の会副理事長)両氏の「世直し」論を聴き、議論した。(中略)
私はこの10年来、塩見さんや矢野さんがたどり提唱してきたような、多様性を認識し担保しつつ普遍的な臨床知に到る道と方法を「生態智」という概念とワザとして提唱している。「生態智」とは、「自然に対する深くつつましい畏怖・畏敬の念に基づく、暮しの中での鋭敏な観察と経験によって練り上げられた自然と人工との持続可能な創造的バランス維持システムの技法と知恵」である。経済成長よりも、大地に根差し地球環境に即した「生態智」に基づくケアサイクルの確立こそが21世紀の人類に最も必要な生き方であると確信している。
台風や地震や噴火の「理」をつかみつつ、その「理」を生み出している大いなる産出力を畏怖畏敬し、つつしみをもって柔軟に助け合いながら生き抜いていくほか道はないのである。
(記事より)
河合教授、畑中助教による『大人の発達障害の見立てと心理療法』の書評が『心理臨床学研究』に掲載されました
日本心理臨床学会が発行する学会誌『心理臨床学研究』vol.32 No.3 に、河合俊雄教授と田中康裕教育学研究科准教授が編著者を務め、畑中千紘助教(上廣こころ学研究部門)が二つの章を執筆した『大人の発達障害の見立てと心理療法』(創元社)の書評が掲載されました。評者は、滝川一廣学習院大学教授です。
『大人の発達障害の見立てと心理療法 』は、上廣こころ学研究部門における臨床心理学領域のプロジェクトの一つである「大人の発達障害への心理療法的アプローチ」の研究成果がまとまった一冊です。書評では、全体に流れるテーマである「主体」の立ち上がりや世界の捉え分けに着目しながら書籍の全体像と各章の概要を紹介し、「『発達障害』を、ひとつのこころのあり方という観点から捉えて、心理療法的なアプローチの必要性と可能性とを追究し」、「『発達障害』とはいかなる現象かを考える上で示唆に富む内容をもっている」と評しています。
書評1『大人の発達障害の見立てと心理療法 河合俊雄/田中康裕 編』 評者 滝川一廣 学習院大学文学部
本書の「発達障害」とは公汎性発達障害(自閉症スペクトラム)を指す。これを, 脳中枢神経系の障害という観点からではなく, ひとつのこころのあり方という観点から捉えて, 心理療法的なアプローチの必要性と可能性とを追究しているのが, 本書の大きな特色である。
もう一つの特色は, 「大人」の発達障害を対象としたことである。ここで大人とは, 単に「成人年齢者」の謂いではなく, アンバランスはあるにせよ, 発達の歩みに極端なおくれはなく(だから幼小児期には発達障害とは気づかれず), 基本的な発達水準は成人レベルに達した人たちを指す。たとえば成人言語によるコミュニケーションが可能で, その点でも心理療法的アプローチに開かれていると言える。裏返せば, そこまで精神発達を遂げながらもなお抱える困難さに, この人々固有の「こころのあり方」が見てとれる。それがどんなあり方なのか, 1章で河合俊雄, 2章で田中康裕が論じている。
河合は, そのこころのあり方の中核に「主体のなさ」を見る。そしてこれが本書所収の諸論文を貫く縦糸となっている。「主体」とはなにか。...
(書評より)
河合教授、畑中助教による『大人の発達障害の見立てと心理療法』が出版されました
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内田准教授が内閣府主催シンポジウム「選択する未来」に登壇。多数のメディアで紹介されました
2014年10月14日、内閣府主催のシンポジウム「選択する未来」が島根県松江市で開催され、内田由紀子准教授が登壇しました。深刻とされる人口減少、少子化、高齢化への対策について議論するシンポジウムには、溝口善兵衛島根県知事、増田寬也前岩手県知事(「選択する未来」委員会委員)、樋口美雄慶應大学教授をはじめとする多彩なメンバーが参加しました。
内田准教授の発言は、シンポジウムの開催を報じる多数のニュースで取り上げられました。山陰中央新報では、論説記事「人口減対策を提案」の冒頭から内田准教授の発言を引用し、「人々の価値観が人間関係の豊かさを求める方向に変わってきている」という流れに地域活性のヒントがある、と論じました(記事全文が閲覧可能です。こちら)。また、毎日新聞はシンポジウムで話題となった「働き方」について、企業や男性の働き方への価値観の変化を呼びかける内田准教授の提言を取り上げ、記事を締めくくっています。
◇掲載記事
・山陰中央新報 ー 「論説 : 人口減対策を提案/島根らしさをどう生かす」(2014.10.15)
・日本海新聞 ー 「人口減や高齢者社会考える 松江でシンポジウム」(2014.10.20)
・山陰中央新報「地方に人材、活力維持を 松江で政府主催シンポ 人口減歯止めへ議論」(一面ほか 2014.10.15)
・日本経済新聞「人口減社会巡り雇用や所得議論 内閣府主催、松江に330人」(2014.10.15)
・読売新聞「若者の県外流出防げ 内閣府シンポ」(地域・島根 2014.10.15)
・読売新聞「『選択する未来』シンポジウム in 東京・松江 夢持てる日本 共に」(特別面 2014.10.21)
・毎日新聞「未来の『働き方』論議 少子高齢化考えるシンポ 松江」(2014.10.16)
◇シンポジウム概要(内閣府のページ)
「選択する未来」シンポジウム 日本の未来像-人口急減・超高齢社会を乗り越える-
河合教授がエッセイを寄稿した『井筒俊彦全集 第七巻』<月報第7号>が刊行されました
思想家・井筒俊彦の著作をまとめた『井筒俊彦全集』(慶應義塾大学出版会)が、2013年秋より順次刊行されています。各巻には毎回、著名人が執筆する『月報』が添えられており、2014年9月に出版された第七巻『イスラーム文化 1981年-1983年』の<月報第7号>に河合俊雄教授のエッセイが掲載されました。
「経験と哲学、イメージとことば ー井筒俊彦からの学びー」河合俊雄(京都大学こころの未来研究センター教授)
井筒俊彦という思想家の名前を知ったのは、一九七八年一月の『思想』における今道友信との対談「東西の哲学」が最初であったと思う。そのころの私はまだ京都大学教育学部の二年生で、実験実習、臨床心理学概論など心理学の専門の授業が既にはじまっていて、これから本格的になっていこうとしていたところだった。
しかし私の関心はむしろ哲学の方に向いていく。幸いにきわめて自由というかルーズな大学であったので、文学部の辻村公一先生のハイデガー講読、上田閑照先生のマイスター・エックハルト講読などを潜って聴講していった。短いテキストを厳密に読んでいくことから深い思想が浮び上がってくることはまるで魔法のように思われたのである。そしてそれは私の経験に響くところがあった。
一方で臨床心理学やユング心理学という経験や実践に裏づけられた学、他方で哲学という文献を読むことに基づく学への平行した関心というのは、やがて私の中に葛藤を引き起こす。また同時に私の中で、この両方は対立するものではなくて、共通するものがあるのではないかという予感も生まれてきた。
その際に私をおおいに勇気づけてくれ、また参考になったのが井筒俊彦の著作である。
(『井筒俊彦全集 第七巻』<月報第7号>より)
『井筒俊彦全集』は、全12巻+別巻で構成され、2015年秋までに全巻が刊行される予定です。
なお、2014年11月8日には、井筒俊彦生誕100年記念トークセッションが慶應義塾三田キャンパスで開催され、河合教授が登壇します(参加無料/要申込)。興味のある方は、下記リンクをご覧ください。
『現代密教』誌に鎌田教授の講演録「日本の風土と神仏習合の過去と未来」が掲載されました
真言宗智山派の智山伝法院が発行する機関誌『現代密教』第25号(2014年3月発行)に鎌田東二教授の講演録が掲載されました。
2013年2月25日に別院真福寺でおこなわれた智山伝法院主催の公開シンポジウム「自然と人間〜震災を契機とした仏教的自然観〜」にて、鎌田教授は赤坂憲雄学習院大学教授らと共にシンポジウムに参加しました。「日本の風土と神仏習合の過去と未来ー東北被災地をめぐりながら考えること」というテーマで講演した鎌田教授は、多様で豊かな日本の自然と文化をバッグボーンとする神道と、それに共鳴しながら人々の暮しに寄り添ってきた仏教それぞれの関係と歴史を紐解き、東日本大震災で浮き彫りになった寺社と地域の生態智との深い関わり、被災者の暮しと心を支えた仏神と伝統芸能の力について、東北被災地を幾度も巡った経験と長年の研究知見をもとに考察しました。
「日本の風土と神仏習合の過去と未来ー東北被災地をめぐりながら考えること」京都大学こころの未来研究センター教授 鎌田東二先生
東日本大震災後、これまで私は四回にわたって福島県相馬市や名取、青森県八戸市までの四〇〇〜五〇〇キロ、一番長くは一〇〇〇キロ近くを巡りました。たくさんの神社、お寺、新宗教の施設や教会や仮設住宅を訪ね、そこで被災者の方々にお話を伺ってきました。その過程で、改めて思ったのは、日本に神社とお寺の両方があって、そして神道と仏教の伝統行事が町々や村々に、排他的でなく共存してくれていることを本当にありがたいと思いました。東北各地の被災地で、多くの神社やお寺が避難所となったり、地域の復興のよりどころになったり、そこで行われるさまざまな民俗芸能の姿が活力を与え、鎮魂、供養のしるしになっているのを見てきましたが、そのような思いを強く持った次第です。
神仏習合の歴史と民俗を持っている日本の過去から、聖徳太子やおじいさんに当たる欽明天皇の時代から仏教が入ってきたと言われています。神道と仏教、神社とお寺が、時には少し争うこともありましたけれども、全体としてみれば、仲良く共存し、地域住民の精神的な支えや共同社会の大事な基盤、インフラになってきたという過去と伝統があり、今なおそのかたちが残っている。それは、恐らく未来にわたって日本の重要な文化特徴もしくは文化資源として伝えられていくだろう。こういう、今に生きる歴史文化遺産をこれから先も大いに生かしていく。そういう必要があると強く思ったわけです。
(講演録より)
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 22」(2014年10月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
8月、鎌田教授は東北被災地を再び巡りました。浪江町では震災の傷跡がそのままの寺を訪問。復興が進まない被災地の現状と共に、旅先から戻った矢先に網膜剥離で緊急入院手術を受けた自身の過酷な体験について報告しています。入院期間中、作家・石牟礼道子氏による水俣病をテーマとした「苦海浄土」を妻から読み聞かせてもらった鎌田教授は、退院直後に実際に石牟礼氏に対面しておこなったインタビューの感想を記し、水俣、福島の経験をつなぎ合わせながら世に引き継いでいかねばならない、と語っています。
「痛ましさの中の希望 福島から水俣へ、そして『苦海浄土』の水俣から福島へ 祈りのような『福音』聴く」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
8月末、NPO法人東京自由大学の夏合宿で福島県の浪江町から岩手県まで400キロほど東北被災地を巡った。浪江町では特別許可をもらって、地元の真言宗のお寺の住職さんの案内で東日本大震災が起きた時の状態そのままになっているお寺を参拝した。一行で般若心経を唱え、法螺貝を奉奏した。(中略)
入院中は、23時間うつぶせ状態を維持し、「山伏」ならぬ「うつぶせ行」の修行のようだった。入院中の2週間の間に石牟礼道子氏(87)の「苦海浄土」第1部、第2部全部と第3部の一部を毎日妻に読んでもらった。こうして「石牟礼道子全集」の第2巻と第3巻のほぼ2巻分、1000ページ余を耳で読んだ。
そして実に悲しくも美しい作品であると思った。悲しみとは水俣病患者の痛みや苦しみと、その原因をなした企業や行政や国の対応の暴力的な無慈悲さ。美しさとは、病を得てもなお水俣の海とともに行きている人々の生活世界の、伝承世界とそれの感応する生の息吹の涸れることのない美しさ。つまりはタイトル通り、「苦海=苦界」と「浄土」とが共に鋭く深く美しく描かれ、ループしている奇跡のような作品であり、透明な祈りとやり場のない呪詛のこもった、実に深々と肺腑を抉り貫く作品だと感じ入った。
(記事より)
京都新聞に『講座スピリチュアル学 第1巻 スピリチュアルケア』(企画・編/鎌田東二、執筆/カール・ベッカー、鎌田東二ほか)の書評記事が掲載されました
京都新聞の読書欄(2014年9月28日付)で、鎌田東二教授が企画・編集をおこない、カール・ベッカー教授、島薗進 東京大学名誉教授・上智大学グリーフケア研究所特任所長、井上ウィマラ 高野山大学教授らと執筆した『講座スピリチュアル学 第1巻 スピリチュアルケア』が紹介されました。
○出版あれこれ 『スピリチュアル学 第1巻』
「はじめに」で鎌田教授は、スピリチュアル学を、心と身体、魂の全体を丸ごと捉え生きがいなど生の価値に絡めて考察する学問と定義づけ、多くの被災者が出た東日本大震災では、心理学的な「心のケア」では対応できない深い悲しみにさらされた人が多く、スピリチュアルケアが注目されるようになった、と書く。
(記事より)
◇関連情報
『講座スピリチュアル学 第1巻 スピリチュアルケア』(企画・編/鎌田東二、執筆/カール・ベッカー、鎌田東二ほか)が出版されました
鎌田教授の著書『超訳 古事記』を原作にした舞台が上演されます
鎌田東二教授の著書『超訳 古事記』(2009年 ミシマ社)と、セルゲイ・ズーバレフの戯曲『豊葦原の国にて』を原作にした舞台演劇『古事記〜天と地といのちの架け橋〜』が2014年10月7日から13日まで東京両国のシアターⅩ(カイ)にて全7公演でおこなわれます。
太古から、口づてに伝承された物語・古事記。
1300年の時を経て甦る遺伝子の記憶・・
この日本の心のエッセンスをつたえる神話を、現代の<儀式>として舞台化します。
神話的意識を取り戻し、
神話(=自然)の智恵をひらき、
"いま"へと伝承される美しく優しい古事記です。
舞台上の「儀式」を通して注がれる清らかなエネルギーが
現代人の心を癒す、奇跡の瞬間を体験してみませんか?
(『古事記〜天と地といのちの架け橋〜』ウェブサイトより)
東京ノーヴイ・レパートリーシアターは、演出家レオニード・アニシモフが中心となって2004年に結成された演劇集団です。「傷ついた現代人の心を深く癒し、魂の糧となる本物の演劇」を生み出すことを目標に、ロシアの演劇理論、スタニスラフスキー・システムによる俳優訓練と、日本では稀なレパートリーシステムという長期連続公演を実践することで、極めて繊細で質の高い作品を発表しています。
2009年にミシマ社より出版された鎌田教授の『超訳 古事記』は、『古事記』上巻の神話を鎌田教授が自身の記憶とイメージをもとに口語で語り切り、それをもとに一冊の本に仕上げた極めてユニークな書籍です。「天地開闢からスサノオ伝説まで、驚くほど平明でリズム感のよい語りは、神話本来の生命感を鮮明に伝えてくれる」(『週刊文春』09年11月19日号)と評価され、神話になじみのなかった若者にも受け入れられました。
鎌田教授の語った古事記が、鬼才・レオニード・アニシモフによって舞台芸術となり、現代人のこころに新たな体験として届けられます。興味のある方は、ぜひご覧ください。
『古事記〜天と地といのちの架け橋〜』
原作:鎌田東二「超訳古事記」 / セルゲイ・ズーバレフ 戯曲「豊葦原の国にて」
演出:レオニード・アニシモフ
翻訳:遠坂創三 / 上演台本:東京ノーヴイ・レパートリーシアター
衣装デザイン:時広真吾(リリック) / ヘアメイク:佐藤圭
音楽:町田育弥 、後藤浩明 / マイム指導:山本光洋
演出助手:アルチョム・アニシモフ / 芸術監督:レオニード・アニシモフ
主催・制作:東京ノーヴイ・レパートリーシアター
http://www.tokyo-novyi.com/japanese/kojiki.html
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 21」(9月22日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
7月22日、こころの未来研究センターで第5回東日本大震災関連シンポジウム「こころの再生に向けて〜震災後の自然と社会」がおこなわれました。研究プロジェクトの鎌田教授は司会進行役を務め、参加者らと討議しました。今回のコラムではシンポジウムでの各講演を振り返り、震災後の社会が抱える問題と未来への課題について考察・提言しています。
「『分断』どう向き合う 震災後の自然と社会 いのちの連環 再構築を」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
さる7月22日、京都大学で第5回東日本大震災関連シンポジウム「こころの再生に向けて〜震災後の自然と社会」を開催した。冒頭で法螺貝の奉奏と黙祷をささげた後、研究プロジェクトの代表者である私が今回の企画の趣旨説明を行い、第1部では、ゲストの田中克氏(京都大名誉教授、森里海連環学)による「震災後の自然環境の変化」と草島進一氏(山形県議、羽黒山伏、元神戸元気村副代表)による「震災後の社会と持続可能な未来」の基調講演を持った。また、第2部として、プロジェクトメンバーの島薗進氏(東京大名誉教授、上智大グリーフケア研究所所長)による「原発事故が問いかけるもの」の報告の後、総合討論を行った。
3者が共に指摘した問題点は、さまざまなところでさまざまな形で現れてくる「分断」にどう向き合うかということだった。その「分断」を超えて、地域性という空間軸においても、時代や歴史という時間軸においても、「いのち」の全体性やつながりを回復し再構築していく作業こそが未来を創るという至極当然の事実を、希望と光明を感じつつ確認した。
(記事より)
第5回東日本大震災関連シンポジウム「こころの再生に向けて~震災後の自然と社会」を開催しました - こころの未来研究センター
内田准教授のコメントが情報誌『シティリビング』に掲載されました
女性向け情報誌『シティリビング』8月29日号(発行:サンケイリビング新聞社)に、内田由紀子准教授のコメントが掲載されました。
シティリビングは、大阪・神戸を中心とするオフィスに無料配布されている発行部数約12万部の人気情報誌です。内田准教授は、今号の特集「読者白書 今の生活、満足している?」で、読者アンケートにもとづき発表された女性の暮らしの満足度調査について、交友関係や職場の雰囲気、経済面、恋愛・結婚などそれぞれの結果に基づき、文化・社会心理学者の視点からデータを読み解き、アドバイスしています。
オフィスで働く女性のための情報誌 シティリビング 2014.8.29
「読者白書 今の生活、満足している?」
日々仕事に精を出し、オフは思い思いにプライベートな時間を過ごしているシティ読者たち。今回はそんなみんなの、暮らしへの満足度をリサーチ。合わせて、「満足」「不満」と上手に付き合う方法をレクチャーします。
○この人に聞きました
内田由紀子さん
京都大学こころの未来研究センター准教授。専門は、幸福感・他者理解・対人関係についての文化心理学研究。2010年12月~2013年3月には、内閣府「幸福度に関する研究会」の委員を務めた。
(記事より)
記事はシティリビングのウェブサイトでお読みいただけます。下記リンク先をご覧ください。
熊谷准教授のインタビューが京都新聞「探求人」に掲載されました
熊谷誠慈准教授(上廣こころ学研究部門)のインタビューが、8月23日付京都新聞朝刊の教育面「探求人」に掲載されました。インタビューでは、研究室での様子を写したカラー写真と共に、熊谷准教授が研究人生へと踏み出したいきさつからブータン仏教と出逢ったきっかけ、現在、ブータン学研究室で取り組んでいる古文書の解読や現地に溶け込んでの活動など、独創性に満ちた研究生活がいきいきと語られています。
「探求人 『幸せの国』の仏教思想に迫る よりよい社会へのヒント ブータンと精神文化交流を」京都大こころの未来研究センター准教授 熊谷誠慈さん(34)仏教学
「GNHが生まれたルーツを探ることで、現代社会に応用できる知恵を見つけられないだろうか」。そんな思いから、12年に「ブータン学研究室」を京都大こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門に設け、国内やブータンの研究者とともにブータン仏教の研究を始めた。
対象とするのは他の研究者が手をつけていない領域だ。現地で探し出した古文書を日本に持ち帰って解読を進める一方、寺院や遺跡を訪ね、僧侶や土地の長老からその歴史を聞き取った。これまでの研究で、ブータン仏教の二大宗派であるドゥク派とニンマ派、少数宗派のサキャ派の思想や成り立ちの全体像がつかめてきた。
(記事より)
阿部准教授の論文が京都新聞や多数のテレビ番組で報道されました
『Journal of Neuroscience』に掲載された阿部修士准教授(上廣こころ学研究部門)の論文「Response to anticipated reward in the nucleus accumbens predicts behavior in an independent test of honesty」の内容が、京都新聞の「科学トピックス」や、全国放映のニュース番組やバラエティ番組などで多数報道されました。
8月23日付の京都新聞朝刊の教育面では、論文の内容が詳しく説明され「人間の行動予測に役立つ可能性がある研究成果」と紹介されました。また、下記リストにあるように、テレビでも多数報道され、うそと脳活動の関係への社会の関心の高さがうかがえました。
【新聞報道:追加】
・京都新聞「科学トピックス うそと脳活動に関係」(8月23日付朝刊/教育面)
【テレビ報道:追加】
・日本テレビ ヒルナンデス(2014年8月6日)
・日本テレビ 情報ライブ ミヤネ屋(2014年8月6日)
・朝日放送 キャスト(2014年8月6日)
・日本テレビ Oha!4 NEWS LIVE (2014年8月7日)
・日本テレビ スッキリ!!(2014年8月7日)
・日本テレビ ウェークアップ!ぷらす(2014年8月9日)
□論文の発表記事と概要はこちら
阿部准教授の共著論文が『Journal of Neuroscience』に掲載されました
『心理臨床の広場』(日本心理臨床学会広報誌)に河合教授の論考が掲載されました
日本心理臨床学会が発行する広報誌『心理臨床の広場』Vol.7 No.1(2014年8月30日)に、河合俊雄教授の論考が掲載されました。今号は「ことば」をテーマとした特集が組まれ、河合教授は「『赤の書』ーユングと言葉」というタイトルで寄稿しています。
極彩色の絵やカリグラフィーなどイメージ的要素が中心の『赤の書』において、言葉はどのような役割を果たし、どのような意味が持っているのか。河合教授は、イメージを描写する第一層の言葉、第一層を解釈する役割を持ちながらも既存の概念を超える試みがなされている第二層の言葉、さらにイメージから切り離されて一次的な文節としてのはたらきを見せる独立したテキストなど、本の各部分での言葉が持つ特徴と役割について解説しています。
「『赤の書』ーユングと言葉」 京都大学こころの未来研究センター 河合俊雄
「あなたがたに物語った、私が自分の内的なイメージを追求していた歳月は、私の生涯において最も重要な時期であった。ほかのことはすべてこの時期から導きだすことができる。この時期にすべてが始まったのだ」と八〇歳を過ぎたユングは、自分の『赤の書』を振り返って語っています。ユングは第一次世界大戦の前に精神的危機に陥り、ヨーロッパが洪水になる恐ろしいヴィジョンに何度も襲われます。後に自分の見た夢やヴィジョンだけでなく、それらに基づいて、積極的にイメージを喚起していったアクティヴ・イマジネーションの内容を『黒の書』という日記に書きつけます。そのイメージの記述部分に、さらに絵と解釈するテキストを加えたのが『赤の書』です。ここには、後のユングの心理学の元になったもの全てがあると言えるでしょう。(中略)
このように『赤の書』はイメージを中心としつつも、それを言葉で描写し、さらにそれを言葉で解釈したものです。また第三部の「試練」は深層が直接に言葉として分節されたものと考えられます。その意味で、このたび挿画を含まない、小判で廉価な『赤の書 テキスト版』(C.G.ユング/S.シャムダサーニ編/河合俊雄監訳、創元社、二〇一四年)が刊行されるのは、『赤の書』の言葉に焦点を当てるためにもよい機会になるのではと期待しています。
(記事より)
なお、論考にもあるように、この夏、日本では河合教授の監訳のもと、挿画を含まないテキストのみの『赤の書 テキスト版』が刊行されました。
阿部准教授の論文が日本経済新聞で報道されました
『Journal of Neuroscience』に掲載された阿部修士准教授(上廣こころ学研究部門)の論文「Response to anticipated reward in the nucleus accumbens predicts behavior in an independent test of honesty」の内容が、日本経済新聞(2014年8月6日夕刊14面)で報道されました。
「うそつき、脳で分かる?京大、活動領域で解明 学生ら30人を測定」
脳の活動領域から正直者とうそつきの違いが分かったと、京都大の阿部修士特定准教授らの研究グループが発表した。報酬を期待する際に働く「側坐核」という領域の活動が活発な人ほど、うそをつく割合が高かったという。論文は7日、米科学誌ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス(電子版)に掲載される。
(記事より)
□論文の発表記事はこちら
阿部准教授の共著論文が『Journal of Neuroscience』に掲載されました
阿部准教授の論文がKTVニュースなど多数のメディアで報道されました
『Journal of Neuroscience』に掲載された阿部修士准教授(上廣こころ学研究部門)の論文「Response to anticipated reward in the nucleus accumbens predicts behavior in an independent test of honesty」の内容が、KTV(関西テレビ)ニュース、読売テレビニュース、Yahoo!ニュース、マイナビニュース、ライブドアニュースなど、多数のメディアで報道されました。
関西圏で放映されたKTVニュース(8月6日、午後2時55分〜)では、阿部准教授が大学本部でおこなった記者会見の模様やfMRIを用いた実験の様子が映し出され、今回の論文で発表された「正直な人、嘘をつく人は脳の側坐核(そくざかく)の活動に違いがある」という内容が図表と共に分かりやすく紹介されました。
また、Yahoo!ニュースのトップなど、インターネット上のニュースメディア各社でも報道されました。以下、ウェブ上でご覧いただけるニュースのリンク(2014年8月7日現在)をご紹介します。
うそつき、脳で分かる? =活動領域で解明―京大 - Yahoo!ニュース
"ウソつき"は脳で分かる...京大研究G発表 - 日テレNEWS24
なぜ正直者と嘘つきがいるのか?-京大が脳活動から原因を解明 - マイナビニュース
"ウソつき"は脳で分かる...京大研究G発表 - ライブドアニュース
うそつき、脳で分かる?=活動領域で解明―京大 - ガジェット通信
"ウソつき"は脳で分かる...京大研究G発表(日本テレビ系(NNN)) - Y!ニュース
□論文の発表記事はこちら
阿部准教授の論文が『Journal of Neuroscience』に掲載されました
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 20」(8月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
7月5日、鎌田教授は新日本研究所の主催する「3.11と音楽」の催しで、福島の詩人・和合亮一氏と作曲家・新実徳英氏の対談のコーディネーター役を務めました。原発事故後の緊迫のなか、ツイッターで心の言葉を発信し続けた和合氏、それに音楽をつけて歌にした新実氏。反響を呼んだ二人の取り組みに対し、神道ソングライターとして『歌と宗教: 歌うこと。そして祈ること』(ポプラ新書)という著書を持つ鎌田教授は、あらためて「歌の力」を実感し、その思いを綴っています。
「すべて超える歌の力『和合して新しい実となったつぶてソング』魂を抱きしめたと確信」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
「つぶてソング」と呼ばれる歌がある。7月5日、その歌を鎌倉市大船にある鎌倉芸術館で聴いた。新日本研究所(代表・島薗進)主催の「3.11と音楽」の催しで。メーンは「つぶてソング」12曲を含む、松原混声合唱団による作詞和合亮一・作曲新実徳英の合唱曲全17曲のコーラス。
すばらしい合唱曲で、終了後のアンケートには、「感動した」「涙が止まらなかった」という感想が多く寄せられた。中には、「会場に光が満ち満ちていた」という感想もあった。
この音楽イベントの冒頭で、福島の詩人である和合さんと、作曲家の新実さんの対話を私がコーディネーターとなって行うことになった。(中略)
司会を進めながら、思わず私は言った。「演壇の机に貼られている和合さんと新実さんの姓を見ていると、『和合して新しい実となる』と読めますね!」と。歌うことが祈ることであり未来を切り拓くことであることを、その場にいた誰もがその恊働作業を通じて感じとった。
音楽の力と希望。それはすべてを超える。国境も民族も性別も年齢も宗教も超える。超えて超えて超えて、人の心と大地を貫いて天まで届き、死者の魂を抱きしめたと確信した。そんな「歌の力」をあらためて確信した一日だった。
(記事より)
鎌田教授の書評が『週刊読書人』7月25日号に掲載されました
『週刊読書人』2014年7月25日号の特集記事「44人へのアンケート特集 2014年上半期の収穫から 印象に残った本132冊」に鎌田東二教授の執筆した書評記事が掲載されました。鎌田教授は、松嶋健氏(日本学術振興会特別研究員・国立民族学博物館外来研究員)の著作『プシコ ナウティカ―イタリア精神医療の人類学』(世界思想社)を筆頭に、岡田浩樹他編『宇宙人類の挑戦―人類の未来を問う』(昭和堂)、小木曽由佳『ユングとジェームズ―個と普遍をめぐる探求』(創元社)を紹介しました。
『プシコ ナウティカ―イタリア精神医療の人類学』(世界思想社)。人類学に元気がなくなって久しい。その衰退は、フィールドの不在と方法論の行き詰まりとして指摘されている。だが、どっこい。人類学は生きている。その証拠に、「イタリアの精神医療の人類学」という副題を持つ472頁の大著が刊行されたのだから。著者はイタリア中部の都市の地域精神保健サービスの諸施設を7年がけでフィールドワークし、「精神医療」から「精神保健」の移行を緻密かつダイナミックに描き出す。
(記事より)
河合教授の寄稿文「脱『他者』時代へのコミットメント」が毎日新聞に掲載されました
7月7日付の毎日新聞夕刊文化面「パラダイムシフト――2100年への思考実験 第4部」の連載7回目に、河合俊雄教授の寄稿文「脱『他者』時代へのコミットメント」が掲載されました。
新たな「思考の枠組み」について考える同紙の「パラダイムシフト」シリーズの第4部は「転換期の人類に求められる倫理を問う」というテーマで様々な分野の識者が寄稿しています。河合教授は心理療法家の視点から、若者の心の葛藤の欠如や罪悪感の希薄化について、臨床現場での事例を挙げながら、現代社会における善悪の基準の揺らぎや他者の視点による倫理観の消滅傾向との関連性について考察しています。この先、偏った倫理観や人工的に規定された倫理を超えるためのヒントとして、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』(新潮社)のキーワードとなった「コミットメント」(関与)を取り上げながら、自身の内部から発生する新たな倫理を模索するための手がかりを提示しています。
「脱『他者』時代へのコミットメント」河合 俊雄(京大教授・臨床心理学)
心理療法は、「こうすべきだ」という基準から自由なことが大切である。たとえば、不登校の子どもに対しても、「学校に行くべきだ」という考えをすぐに押しつけない。それどころか親に暴力をふるったり、万引きをしたりする子どもに対しても、「暴力や万引きは悪いことだ」と教えない。そういう形でこころが求めざるをえないものは何かを考えていこうとする。たとえば万引きは、愛情など何か足りないものを求めているのかもしれない。
その意味で心理療法は外の世界での倫理を一度括弧に入れて、個々人の内面の成長に取り組んでいると言えよう。だから倫理の揺らぎや葛藤に直面しやすい。親に暴力をふるうのが悪いこととわかっていても、怒りと衝動に圧倒される、などのように。
■ ■
ところが、近年に葛藤や罪悪感をあまり感じないクライアント(心理療法を受ける人)が増えている。日本人の代表的な心理症状は、自意識の葛藤である対人恐怖であったのが、解離性症状や発達障害に代わってきていることにも関連しているようである。
(記事より)
河合教授の共編著『遠野物語 遭遇と鎮魂』の書評が中日新聞に掲載されました
2014年3月に出版された河合俊雄教授の共編著『遠野物語 遭遇と鎮魂』(岩波書店)の書評が、6月29日付の中日新聞に掲載されました。書籍の共編者は赤坂憲雄学習院大学文学部教授で、著者には京都大学からは河合教授のほか、田中康裕教育学研究科准教授が加わっています。新聞では「『遭遇』と『鎮魂』をテーマに、臨床心理学と民俗学の視座から柳田国男の『遠野物語』を分析した論集。(中略)大震災以後の状況を背景に、九人の研究者が多様性に富んだテキストの読解を試みる」と評されました。
□関連情報
河合教授の共編著『遠野物語 遭遇と鎮魂』が出版されました - こころの未来研究センター
出版社(岩波書店)の書籍紹介ページ
鎌田教授が登壇した『シンポジウム「土・水・火・空を問う」』講演録が刊行されました
新日本研究所(代表・島薗進上智大学教授、東京大学名誉教授)が2014年4月、綾部市にて開催したシンポジウム「土・水・火・空を問う」の講演録が刊行されました。鎌田東二教授は司会進行役を務め、「日本で初の世界連邦都市宣言をおこなった綾部市」でシンポジウムを開催した経緯やシンポジウムのテーマの意味とねらいについて説明し、島薗進代表、金子啓明興福寺国宝館館長、四方八洲男綾部市前市長、紀藤正樹弁護士らパネリストと共に、宗教、文化、自然、霊性、現代人の心などについて、東日本大震災をめぐる諸問題や綾部で起こった大本の弾圧の歴史、国家と個人をつなぐ中間者としての役割など様々な話題を織り交ぜながら、壮大なテーマのもと縦横無尽にディスカッションしました。フルカラーの講演録には、数多くの写真と共にシンポジウムの模様が鮮やかに記録されています。
テーマ「土・水・火・空を問う」について
【鎌田】何故このようなシンポジウムの標題にさせていただいたのか、そして私自身が綾部とどのような地縁を持っているかを最初にお話しさせていただきます。
皆様のお手元にパンフレットがあるかと存じますが、これを見てピンと来る人は少ないと思います。何故、このような抽象的と思えるようなタイトルを選んだのか、その主旨は何なのかと疑問に思う人もあると思います。
パンフレットの裏を見ていただくと、「一九四八年三月、世界連邦憲法 シカゴ草案の一節」があります。
「人類の存在に必要欠くべからざる四大要素、土地・水・空気・エネルギーは、人類の共同の財産である。」(中略)
日本で最初に世界連邦都市を宣言した綾部の地で、世界連邦の根幹となる精神は、自分達が生息している生存環境そのものであり、エネルギーは「火」と見ることができるので、四大元素というものをもう一度根底から問い返していこうと考えました。また、未来に向かって、とりわけ東日本大震災と私達の生存環境がどんどん劣化する状況の中で、もう一度この問題を考えていこうという主旨で、このタイトルが選ばれました。一番普遍的なところである人類の環境問題を取り上げたいと考えたわけです。
(講演録より)
鎌田教授、河合教授の論考が『井筒俊彦 言語の根源と哲学の発生』に掲載されました
今年は、世界的な思想家として知られる井筒俊彦の生誕100年にあたります。6月、河出書房新社より出版された『井筒俊彦 言語の根源と哲学の発生』に、鎌田東二教授と河合俊雄教授の論考が掲載されました。
同書では、井筒俊彦の思想、哲学を様々な識者が様々な角度から論じています。鎌田教授は「井筒俊彦と東洋哲学」の章において、「詩と宗教と哲学の間 言語と身心変容技法」という題にて、井筒俊彦を「詩と宗教と哲学の間をつなぐ思想家」と位置づけ、西脇順三郎と折口信夫が与えた影響や、身心変容技法研究の視点から見た井筒の神秘哲学について、詳細に要点をまとめ解説しています。河合教授は「井筒哲学の基層」という章において、「井筒俊彦とエラノス精神」という題で執筆。ユング心理学と大きな関わりを持ったエラノス会議に何度も赴いた井筒俊彦の思想と「エラノス精神」について、また、井筒のあとをうけてエラノス会議に参加した河合隼雄京大名誉教授のエラノス、井筒との関わりについて論じています。
「詩と宗教と哲学の間 言語と身心変容技法」 鎌田東二
井筒俊彦の仕事は実に広範に亘っているが、その全体を井筒自身がもくろみ多用した「共時的構造化」という観点を用いていえば、「詩と宗教と哲学の間」を探求したといえるだろう。その三者の間を往還しながら、自在かつ必然にその間を思索したといえるだろう。(中略)
折口信夫と西脇順三郎。この韜晦で独自の創造的詩的言語を駆使する詩人研究者に接した特異な青年井筒俊彦。それがどれほどの強力で過酷な教育と思想錬磨と思索深化の機会となりトレーニングとなったか。実にゴージャスで過酷な学生時代を過ごしたものである。凡庸な学生なら到底務まらず、音を上げていたにちがいない。井筒俊彦は、詩と宗教と哲学の間を西脇順三郎と折口信夫という稀代の二人の慶應義塾大学教授によって往還させられたのだ。それは特異な経験であり僥倖ともいえる「修行」であった。『意識と本質 - 精神的東洋を索めて』(岩波書店、一九八三年)を読んでいると、井筒の問いの基底に、いつもこの特異な二人の詩人学者の「檄薬」が仕組まれ、効いているような思いに捕われる。
「井筒俊彦とエラノス精神」 河合俊雄
井筒の論考は、常に現代に生きるこころを意識しており、「主体性、実存的な関わりのない、他人の思想の客観的な研究には始めから全然興味がない」とさえしている。だからこそ井筒の研究は、狭い意味の思想史研究や比較思想研究にとどまらずに、東洋思想を共時的に絡めて、現代における意義を問うものになったと思われる。主著の『意識と本質』はそれを端的に示しているであろう。
井筒は冒頭にも引用した「『エラノス叢書』発刊に際して」の中で、次のように述べている。「エラノス会議は終わっても、エラノス精神は終わらない。それは現に、今もなお生きているし、おそらく今後も生き続けてゆくだろう。(中略)存在の異次元、不可視の次元にたいして人々の胸に情熱が燃え続けるかぎり。実存の深層領域にたいする人々の探究心が働き続けるかぎり......」その意味で、井筒の言うエラノス精神を受け継ぐとは、現代の思想のコンテキストで、また現代のこころのあり方に関連して実存の深層領域を捉えることではなかろうか。
まさに河合隼雄が最晩年に華厳哲学と取り組もうとした試みも、このようなものとして理解できる。
畑中助教の研究紹介記事が『Kyoto University Research Activities』に掲載されました
京都大学の外国向け研究紹介冊子『Kyoto University Research Activities』(Vol.4 No.1 June 2014)に、畑中千紘助教(上廣こころ学研究部門)の研究紹介記事が、顔写真と共に掲載されました。女性研究者を特集した今号の「Cutting-Edge Research in Kyoto University」というコーナーにて、畑中助教は専門とする臨床心理学の研究において、災害のただ中と災害後における人々のこころの問題の表出と、それに向き合う心理学者の奮闘について英語で紹介しています。
" Do we need psychological problems? - Researching kokoro from the perspective of clinical psychology. " Chihiro Hatanaka, PhD / Uehiro Assistant Professor, Kokoro Research Center
During times of great disaster, the human psyche exhibits no psychological symptoms. The reality of the danger does not allow space for inner conflict. After the disaster, however, many psychological symptoms emerge. We found such phenomena in the care work for the Great East Japan earthquake. Even when peace is attained in the outer world, we need some inner struggles to work itself. Clinical psychologists research into the psychological problems and their transformation through the psychotherapy, which shows us the resilience and potential of our psyche.
冊子は、下記リンク先のページにて後日公開され、ダウンロードのうえご覧いただけます。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/issue/research_activities/index.htm
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 19」(7月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
7月1日、政府は集団的自衛権の行使を限定容認する憲法解釈の変更を決定しました。鎌田教授は、安倍政権の「速攻」的な政策と今回の閣議決定について、これまで米国の庇護下にあった日本の有様を「子ども」に例え、「大人」になろうとしている現在の国策の本質的問題を指摘し、疑問を呈しています。
「日本は『大人』なの? 守るべきものと少年」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
安倍政権は第1期から憲法改正に意欲を燃やす政権だった。それが途中で挫折して政権放棄し、政治家として再び頂点に立つことはできないと思っていたところ、諸般の政治力学や国際情勢、党内事情も絡み、再び自民党総裁となり、首相に返り咲いた。近年、希有な事例である。再選以降の安倍首相の活動は息もつかせぬ速攻だ。(中略)
集団的自衛権の行使の憲法解釈がその一例である。これは国論を二分している。だが、実態は、誰が見ても、米国のプレゼンスを高め補強する政策にしか見えないのではないか。それは果たして日本の国民を守るものなのか?「安全保障」や「防衛」を言い募りながら、国民を一層の危険にさらすものではないのか?
戦後、日本の国は国民を守る者になるのではなく、他国(米国)に守られる者になることでわが身の生育に一喜一憂してきた。米国の傘の下で安逸をむさぼってきたことは事実だ。その「12歳」の子どもが背伸びして「大人」になろうとしているのかもしれないが、それよりも、「永遠の少年」を国是として守り抜くような在り方を貫いてもいいのではないか。
(記事より)
河合教授の解説記事が『精神療法』増刊第1号に掲載されました
河合俊雄教授の解説記事「河合隼雄の三編」が、『精神療法』増刊第1号(原田誠一、精神療法編集部編)に掲載されました。
「先達から学ぶ精神療法の世界:著者との対話への招待」というテーマで編まれた本号では、精神療法の先達による名著の数々が紹介されています。各書籍に対する解説、識者らによるコメント、さらにコメントに対するコメントがまとまっており、様々な視点から本の特徴を知り、読み方のアドバイスを得ることができます。河合教授は、河合隼雄京大名誉教授が残した『ユング心理学入門』『昔話と日本人の心』『ユング心理学と仏教』について、「河合隼雄の心理療法を理解し、そこから何らかのインパクトを得られる」三編として紹介。岩宮恵子島根大学教育学部教授と山中康裕京都大学名誉教授が、それぞれの視点から三つの書に対するコメントを寄せ、それらに河合俊雄教授がリコメント記事を書いています。
河合隼雄財団のウェブサイト(下記リンク)に、より詳しく分かりやすい記事の紹介が掲載されていますので、ぜひそちらもお読みください。
河合教授による村上春樹最新作の論評記事「女のいない男たちのインターフェイスしない関係」が『新潮』に掲載されました
村上春樹の9年ぶりの短編小説集『女のいない男たち』を論評した河合俊雄教授の記事、「女のいない男たちのインターフェイスしない関係」が、『新潮』2014年7月号に掲載されました。
昨年出版されベストセラーとなった長編小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の論評、『色彩を持たない多崎つくるの現実への巡礼』(『新潮』2013年7月号掲載)が話題となった河合教授が、村上氏の一年ぶりの新作、9年ぶりの短編小説集の論評を手がけました。作品におさめられた6つの短編に共通して流れるテーマに光をあて、前作同様、心理学的な手法を用いながら作品の分析に挑んでいます。
「女のいない男たちのインターエフィスしない関係 村上春樹作品論」河合俊雄
『女のいない男たち』は短編集であるので、それを全体として一つの作品として扱ってよいのかどうかには疑問が残るかもしれない。しかしここでは、愛の対象が謎で、間接化されていて遠いという、一つの共通テーマから全体を読み解いてみたい。筆者はユング派の分析家なので、その視点を入れつつ考えたい。
(記事より抜粋)
河合教授のインタビューが東京新聞、中日新聞に掲載されました
河合俊雄教授のインタビューが、東京新聞、中日新聞の5月10日付「考える広場」に掲載されました。世間を騒がせている「STAP細胞問題」と「偽ベートーベン問題」について、人々を感動から失望へとおとしめた出来事に何があったのか。河合教授はコメンテーターとして、それぞれの事件の背後に横たわる現代社会の問題をみつめ、自分と他者、社会との境界のゆらぎを指摘し、「コミットメント」(関わり)をキーワードに未来への提言をおこなっています。
「虚と実のあいだ オリジナル難しい」 京都大こころの未来研究センター教授 河合俊雄さん
自分と他者、社会との境界がなくなってきたことは、とても心配。「これが自分だ」というものを守りたくなる反動が起きるからです。グローバル化によって原理主義が出てきたように、オウム真理教のようなものを信じたい、だまされたいというところまでいってしまいます。
個の確立が必要ですが、それは夏目漱石でさえ無理でした。私は、村上春樹さんが河合隼雄(臨床心理学者)との対談で提起した「コミットメント(関わり)」が必要だと考えています。何かや誰かに自分を懸けて関わっていく。自分を固定するのでも、時代に流されるのでもない。どこかで立ち上がり、動くことが求められていると思います。
(記事より抜粋)
鎌田教授の編著『究極 日本の聖地』が『週刊現代』で紹介されました
鎌田東二教授の編著『究極 日本の聖地』が、『週刊現代』で連載されている嵐山光三郎氏の「リレー読書日記」で紹介されました。嵐山光三郎氏は、「マニアックな専門書のなかにもキラリと光る名著る」をテーマに4冊の本を取り上げ、『究極 日本の聖地』の内容を詳しく紹介しています。
「リレー読書日記:日本の聖地、泉鏡花、平凡出版。マニアックな専門書のなかにもキラリと光る名著があります」嵐山光三郎
『究極 日本の聖地』の編著者、鎌田東二氏は神道ソングライターでフリーランス神主で京都大学こころの未来研究センターの教授である。『超訳 日本の古事記』(ミシマ社)が評判になった文学博士である。(略)
あとがきを新潟から鶴岡へむかう、いなほ八三号自由席の車輛で書くというライブ感覚もよく、出羽三山神社の修験道を体感する。鎌田氏のますますの活躍を祈ります。
(『週刊現代』第20号/2014.6.2発売 より)
内田准教授と阿部准教授のインタビューが『リビング京都』に掲載されました
内田由紀子准教授と阿部修士准教授(上廣こころ学研究部門)のインタビューが、5月31日発行の『リビング京都』(発行:京都リビング新聞社)の巻頭特集記事「日々の暮らしを〝ごきげん〟に」に掲載されました。
リビング京都は、京都市と近辺エリアの約49万世帯に配布されている総合生活情報紙です。毎週、暮らしのためになる知恵や専門家からのコメントをまとめた特集記事が好評で、今号は「ごきげん」という言葉にスポットをあて、ごきげんであることのメカニズムやメリットについて多方面からのアドバイスや経験談を取り上げています。内田准教授は、社会・文化心理学者の視点で「ごきげん」であることの心の状態を分析し、ごきげんになるための心の切り替え方についてアドバイスしています。また、阿部准教授は神経科学者の視点から「ごきげん」であることが脳に及ぼす影響などについて解説しています。
記事は紙面のほか、リビング京都のウェブサイトでも全文をお読みいただけます。下記リンクにアクセスしてご覧ください。
□リビング京都 2013年3月23日号
「日々の暮らしを〝ごきげん〟に」
http://www.kyotoliving.co.jp/article/140531/front/index.html (ウェブ版)
http://book.kyotoliving.co.jp/living/140531c/#page=1 (紙面版)
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 18」(6月2日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
5月24日、鎌田教授は東京ドイツ文化センターで開催された国際シンポジウム「老いと踊り」に参加し、「日本の神話と儀礼における翁童身体と舞踊」という演題で講演しました。鎌田教授は、シンポジウム全体での大きなテーマとして、西洋の舞踊世界における「老い」へのまなざしと扱い方について注目し、老いをタブー視する西洋と、それに反して老いと経験と年齢によって名人の境地へと達する非西洋社会における舞踊の世界との隔たりについて具体的な事例を取り上げました。また、現代の日本における「老いと踊り」の関係性が、今後、西洋の舞踊界のみならず、超少子高齢化が進む日本の一般的な社会にもどのように影響するか、「いかなる生存価値を新たに創り出すことができるか見極めていきたい」と綴っています。
「『老いと踊り』国際シンポジウム 西洋は若さが至上価値 日本では経験・年齢重要」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
この国際シンポジウムに招待されて、私は「日本の神話と儀礼における翁童身体と舞踊」と題して講演した。日本文化においては、古来、翁(オキナ)と媼(オバア)と童(ワラベ)が最も神に近い存在として、あるいは神の化身としてイメージされ尊重されてきたことを指摘し、脳の「翁」や、沖縄のノロやツカサなどのオバアの霊力について考察した。そしてそこにおいては、老人と子どもが変換可能で、相補的かつ相互侵入的であり、その「翁童身体」の原像が「古事記」に描かれた須佐之男命であることを示し、やなぎ氏の"老女マンダラ"の世界に対して"翁マンダラ"の世界を描いた。「7歳までは神の内」とか「60過ぎれば先祖に還る」などの伝承も、日本の「翁童文化」の一例である。
このような日本文化における「老いと踊り」が、若さを至上価値としてきた欧米の人間観やダンス哲学にどのようなインパクトを与え、世界最先端を行く日本の超少子高齢化社会のありようにいかなる生存価値を新たに創り出すことができるか見極めていきたい。
(記事より)
鎌田教授が寄稿文を執筆した『ミャンマー仏教を語る』が出版されました
鎌田東二教授が寄稿文を執筆した『ミャンマー仏教を語る : 世界平和パゴダの可能性』が、2014年5月、現代書林より出版されました。
本書は、2013年9月に北九州市門司区にある国内唯一の本格的ミャンマー寺院「世界平和パゴダ」の運営再開を記念して開催された「門司 世界平和パゴダ建立五五周年記念 仏教文化交流『仏教が世界を救う』」シンポジウムをまとめたものです。鎌田教授は、「日本列島と日本の宗教文化の土壌に、戦後新たに育ち始めたミャンマーのパゴダの霊性が、いよいよ時と人を得て、次のステージへと展開し始めた」と、パゴダの再開に期待をこめたメッセージを寄稿しています。
○書籍情報
著者:一条真也、八坂和子、天野和公、井上ウィマラ
出版社:現代書林
出版年月日:2014/05/14
判型・ページ数:4-6・108ページ
定価:本体1,000円+税
ISBN:9784774514680
○目次
世界平和パゴダに想う 住職 ウ・ウィマラ長老
ミャンマーと日本のかけ橋をめざして 日緬仏教文化交流協会会長 佐久間進
第1章 世界平和パゴダと日本
第2章 ミャンマー仏教の役割
パゴダ・プロジェクトに寄せて〜縁の行者からの応答 鎌田東二
WEBRONZA(ウェブロンザ)に下條特任教授の論考「ダライ・ラマとの対話」が掲載されました
朝日新聞社の言説サイト「WEBRONZA(ウェブロンザ)」に、下條信輔特任教授(カリフォルニア工科大学教授)の論考記事「ダライ・ラマとの対話~仏教科学と近代科学、そして聖性」が掲載されました。
2014年4月11日・12日にこころの未来研究センターとMind & Life Instituteが共同開催した国際会議Mapping the Mindに講演者として参加した下條教授は、会議でのダライ・ラマ法王の言葉を紹介しながら、法王が近代科学や教育に精通し、仏教的視点から科学を見つめ精力的に教育・研究事業に取り組んでいる背景について解説すると共に、登壇者それぞれの講演のエッセンスをまとめ、今回の会議の意義について考察しています。
内田准教授のインタビューが男女共同参画推進センターの冊子に掲載。京都新聞で紹介されました
男女共同参画推進センターが発行した冊子『未来に繋がる青いリボンのエトセトラ』に、内田由紀子准教授のインタビューが掲載されました。
『未来に繋がる青いリボンのエトセトラ』
発行:京都大学 研究国際部/男女共同参画推進本部(男女共同参画推進センター)/学術支援研究室(2014年4月)
○未来の研究者たちへ...京都大学の女性研究者から一言
p8「研究者という仕事は、女性に向いていると思います」 こころの未来研究センター 准教授 内田由紀子
この冊子は、「未来の女性研究者へ、京都大学の女性研究者からのメッセージ」というキャッチフレーズで、京大で活躍する女性研究者たちの活動や人となり、研究者となった動機などをカジュアルに紹介したPR誌です。内田准教授は、心理学の道を選んだ経緯や研究活動を紹介すると共に、現在、家事・育児とバランスをとりながら研究する自身のスタイルについて話しています。
■京都新聞一面で紹介されました
また、冊子が作られたことが4月30日付の京都新聞の一面コラム「洛中洛外」に載り、内田准教授のコメントが名前、所属センター名と共に紹介されました。
冊子は、京都大学男女共同参画推進センターのウェブサイトでPDFが公開されています。下記リンクにアクセスし、ダウンロードしてご覧ください。
京都大学男女共同参画推進センターウェブサイト - 冊子「未来に繋がる青いリボンのエトセトラ」
http://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/news/2014/04/20140423gba.php
内田准教授の座談会記事が京大広報誌『紅萠(くれなゐもゆる)』に掲載されました
京都大学の広報誌『紅萠(くれなゐもゆる)』25号(2014年3月発行)に、内田由紀子准教授が参加した座談会記事が掲載されました。
巻頭座談会「異文化のもとで学び、大きくて自由な世界を拓く」
○ゲスト:フォルカー・シュタンツェル 駐日ドイツ連邦共和国大使
○ホスト:赤松明彦 京都大学理事(学生・図書館担当)・副学長
清水展 京都大学東南アジア研究所長
○進行:内田由紀子 京都大学こころの未来研究センター准教授(『紅萠』編集専門部会)
座談会では、ゲストにフォルカー・シュタンツェル駐日ドイツ連邦共和国大使(※座談会当時)を迎え、赤松明彦副学長と清水展東南アジア研究所長がホスト役として参加し、京大広報委員会『紅萠』編集専門部会のメンバーである内田准教授が進行役を務めています。大使の京大留学時代のエピソードや異文化接触を重ねて得た知見の数々をはじめ、グローバル化時代における異文化交流のありかたなど、読み応えのある内容となっています。
『紅萠』は、京都大学のウェブサイトでPDFが公開されています。下記リンクにアクセスし、ダウンロードしてご覧ください。
京都大学ウェブサイト - 国内向け広報誌「紅萠(くれなゐもゆる)」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/issue/kurenai/
河合教授の論考が『三田文学』に掲載されました
慶應義塾大学にゆかりのある文芸誌で100年近い歴史を持つ『三田文学』No.117号(2014年春季号)に河合俊雄教授の論考「河合隼雄と井筒俊彦」が掲載されました。井筒俊彦生誕100年を記念して組まれた特集に、安藤礼二氏、山本芳久氏、鏡リュウジ氏、田口ランディ氏らと共に稿を寄せています。父、河合隼雄京大名誉教授に影響を与えた井筒俊彦とその思想について、両者の邂逅の目撃者として綴っています。
「河合隼雄と井筒俊彦」 河合俊雄
『三田文学』一九九三年春季号(三十三号)に、河合隼雄は「井筒俊彦先生の思い出」と題する追悼のことばを寄せている。「目の前にある山が一瞬にして消え失せる。井筒先生が亡くなられたのは、それと同じことだと感じる。あれだけの該博な知識、しかも、それが生き生きとして平明な言葉で表現されてくる仕組み。それが一瞬にしてなくなってしまうなどということが、あってよいのだろうか、と思う。惜しんでもあまりあることだ」。このように河合隼雄は述べ、その突然の死を悼んでいる。そこには深い敬愛と哀悼の気持ちが込められているように思う。その人にしかできない、まだまだこれからという創造的な営みが、一夜にしてなくなってしまうなどということがあってよいのだろうか。しかしその同じ気持ちを河合隼雄の親しかった人たちが何年か後に味わうことになるのを、本人はもちろんまだ知るよしもない。
(記事より抜粋)
三田文学のウェブサイトはこちら
http://www.mitabungaku.jp/quarterly0.html
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 17」(5月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
この春、鎌田教授は「宗教者災害支援連絡会」3周年記念シンポジウム「宗教と災害支援ー3.11以後と今後」、Mind&Life Instituteとこころの未来研究センターの共催による国際会議「Mapping the Mind」、新日本研究所主催のシンポジウム「土・水・火・空を問うー世界連邦都市綾部から」、韓国の東国大学校での講演会「アジア共同体の構築に向けた仏教と宗教の役割〜日本の宗教文化の視点から」など、様々な場に赴きました。鎌田教授は、これらの活動を報告すると共に、宗教学者の視点から現代社会における宗教の果たす役割や存在意義について考察しています。
「今を生きる宗教の意義と力 心の平安に大きな役割 被災者と地域を支える」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
4月となって新学期が始まり、一挙に慌ただしくなった。加えてシンポジウムなどイベントも重なった。(中略)
そして23日、韓国は慶州の仏教系(曹渓宗)大学の東国大学校で「アジア共同体の構築に向けた仏教と宗教の役割〜日本の宗教文化の視点から」と題して講演した。(中略)
心を鎮め浄化する鎮魂供養の力を持つ芸能・芸術のワザや政治や政府に頼らない人間的なつながり・ネットワーク、友愛や慈悲や誠を供給する共感共同体の形成、そしてそれを基盤に作り上げる理知的認識の共有とそれを支える理想・願・意志の志向性の深化を問いかけた。
世界は苦悩に満ちている、だが、そこから脱却する道があると仏教は教えるが、心の平安をもたらし共鳴・共存できる「アジア共同体」を作ることができなければ人類の未来が暗いことはいうまでもない。そこで宗教の役割はまだまだ大きなものがあると確信する。
(記事より)
鎌田教授がNHKラジオ第2「宗教の時間」に出演。5月11日(日)に再放送されます
鎌田東二教授が5月4日、NHKラジオ第2放送の番組「宗教の時間」に出演しました。30分間の番組で、鎌田教授は長年とりくんできた「聖地」研究について、その知見、聖地の持つ意味、私たち日本人の暮らしとの関わりについて、じっくりと話しています。
番組は、5月11日(日)午後6時半よりNHKラジオ第2放送にて再放送されます。ぜひお聴きください。
・番組名:NHKラジオ第2「宗教の時間」
・タイトル:「私の聖地発見」
・放送日時:2014年5月4日(日)午前8:30〜9:00
再放送:5月11日(日)午後6:30〜7:00
【番組紹介】宗教の時間「私の聖地発見」
鎌田さんは行動派。全国の霊山霊地を訪ね石笛・ほら貝・横笛を奏上し祈る。聖地はこの世とあの世、現代と神話の世界をつなぐ絆である。人間にとって聖地の持つ意味を聞く。
(NHK ONLINEより)
内田准教授の解説記事が『地上』に掲載されました
内田由紀子准教授の解説記事「社会心理学から見えてきた 農の『つながり』力」が、JAグループの出版・文化団体である家の光協会が発行する農と食の総合誌『地上』2014年5月号に掲載されました。
記事は、内田准教授が取り組んできた農業の普及指導員を対象とした大規模な調査研究をもとに、JAの営農指導員の啓発につながる具体的なアドバイスや事例紹介が盛り込まれています。普及員の仕事と農村でのつながりを研究するなかで、農の現場における「つながり」はなぜ大切なのか、どのような「つながり」方が効果を発揮するのか、上手につながりをつくる普及員はどのような活動をしているのか、内田准教授が自身の研究活動を通して見えてきたことを紹介しながら、若手の営農指導員が成長、活躍するためのアイデアを共に探る形で構成されています。
「社会心理学からみえてきた 農の『つながり』力」解説・内田由紀子
わたしたち心理学者は、つながりをつくりだす人の心の側面から「どうやったらよいつながりをつくれるのか」「つながりがなにを生み出しているのか」という問いを立て、研究してきました。
わたしが勤めている研究機関では「きずな形成」をキーワードに研究が行われています。農業の素人だったわたしたちが地方農政局の紹介で農業の普及指導員(以下、普及員)を対象とした研修会に参加、「つながり」について話をさせていただいたことがきっかけとなって、普及員の仕事と農村でのつながりづくりについて調査研究することになりました。(中略)
研究では、どういう行動をしている人が、普及員として指導の効果を上げているのか、うまくいっているのはどんな普及員なのかを調べてみました。すると、いろんな外部の組織とつながりを持っている普及員が、地域のつながりをうまくつくっていることがわかりました。
(記事より)
▽参考記事
『地上』2014年5月号雑誌紹介ページ(家の光協会)
『農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~』(内田由紀子・竹村幸祐 著)書籍紹介ページ(創森社)
鎌田教授が新日本研究所のシンポジウムに登壇。京都新聞、あやべ市新聞に掲載されました
鎌田東二教授が、4月19日に新日本研究所主催のシンポジウム「土・火・水・空(そら)を問う~世界連邦都市綾部から」にコーディネーターとして登壇しました。その模様が京都新聞(4月20日付)、あやべ市民新聞(4月23日付)に掲載されました。
シンポジウムは、日本で初めて世界連邦都市宣言をした綾部市の市民ホールを会場に、混迷する社会の問題を見つめ、現代社会における宗教の役割を考えることを目的に開催されました。会議全体をまとめる役割を担った鎌田教授は、島薗進東京大名誉教授らと共に宗教の歴史から現代の宗教をめぐる問題と課題、東日本大震災で宗教が果たした役割など、多岐に渡るテーマについて討論をおこないました。
○「宗教の枠超え協力を 綾部でシンポ 社会での役割考える」
宗教や哲学などの専門家でつくる「新日本研究所」(東京都港区)は19日、シンポジウム「土・火・水・空(そら)を問う~世界連邦都市綾部から」を綾部市並松町の市民センターで開き、社会における宗教の役割を考えた。(中略)
京都大こころの未来研究センターの鎌田東二教授をコーディネーターに、研究所代表で宗教学者の島薗進東京大名誉教授、興福寺国宝館の金子啓明館長、弁護士の紀藤正樹氏、綾部市の四方八洲男前市町が意見を交わした。(京都新聞・4月20日付/記事より抜粋)
○「宗教学の権威ら綾部に集結 宗教法人の社会貢献も促す」
混迷する日本社会の病巣を見つめ、新しいヒューマニズムを再構築しようーと日本を代表する宗教学者らが綾部に集結して19日、並前町の市民センターでシンポジウムを開いた。(中略)
神道の研究を始めた39年前に綾部を訪ね弾圧の跡地に立って国つ神の精神性を考え、誓いを立てたという鎌田さんは冒頭、パネリスト4人にシンポジウムの標題に沿って各自の活動紹介を求めた。(あやべ市民新聞・4月23日付/記事より抜粋)
鎌田教授のコメントが『中外日報』に掲載されました
宗教・文化専門紙の中外日報(4月18日付)に、鎌田東二教授のコメントが掲載されました。歌う宗教者の活動を取りあげた特集記事「時事展描 歌うことは祈ること 苦悩を浄化する力」で、みずから神道ソングライターとして研究活動と共に音楽活動に取り組む鎌田教授が、宗教者が歌うことの意味についてコメントしています。
「苦悩を浄化する力 京都大の鎌田教授」
鎌田教授は、「歌は物事を理性的に判断、知的に納得するだけではなく、身体も感情も全てを包み込み、鎮魂する力を持っている」と話す。悲しみが曲になる課程で、苦悩を乗り越え、浄化する浄水器のような役割を担っているという。
「人間は皆、苦しみ悲しみながら懸命に生きることで、既に歌っているといえます。これから先、自らの経験をもとに実際に歌う人がもっと増えてくれれば」ーー。
(記事より)
河合教授が第9回京都大学附置研究所・センターシンポジウム(仙台)で講演。読売新聞に掲載されました
京都大学の附置研究所・センターによる第9回シンポジウム「京都からの提言〜21世紀の日本を考える/社会と科学者」が3月15日に仙台市で開催され、その模様が、4月5日付の読売新聞朝刊特別面に掲載されました。
こころの未来研究センターからは、河合俊雄教授が講演し、iPS細胞研究所の山中伸弥教授ら4人の講演者と共に討論および質疑応答をおこないました。河合教授は、「発達障害と現代の意識」という演題で講演。近年増加する発達障害の特徴について、分離や自立が困難な現代社会を反映したものと考察し、主体性を築くための心理療法の取り組みと具体的な事例を紹介しました。
鎌田教授の論考「神道と音」が『怪』41号に掲載されました
鎌田東二教授の論考「神道と音」が、妖怪マガジン『怪』41号(角川書店/2014年4月2日発行)に掲載されました。
『怪』は年三回発行される妖怪専門ムック本です。「妖怪」をテーマに毎回、多彩な執筆陣が寄稿しています。鎌田教授は、第一特集「『音』異界の音をきく」において、神道と音の密接な関わりについて解説。神を扱った言葉の変遷や数々の『古事記』のエピソードと共に、神道と音と声と歌の結びつきについて考察しています。
特集「音」異界の音をきく 「神道と音」鎌田東二(神道ソングライター/京都大学こころの未来研究センター教授)
神道にとって「音」は決定的に重要である。というのも、「神」の顕現が「雷=神鳴り=神成り」のイメージ複合をもって考えられていたからである。
語源的に言えば、「雷」の古語は「稲妻」であるが、それは神が鳴らすものと考えられたために、「神鳴り=雷」と呼ばれるようになった。その「神鳴り」は、古代人にとって、何よりも、「ちはやぶる神」の神威の表象だったのである。「カミナリ」とは、そうしたちはやぶる神エネルギーの発現であり、発音であり、発生=発声であった。
(記事より抜粋)
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 16」(4月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。
揺れる国際情勢の中、日本では今年3月末に「ふるさとづくり有識者会議」の最終報告書がまとめられました。委員を務めた鎌田教授は、記事にて報告書の要点を紹介。日本の生態智や伝統が保たれ人々の絆や交流が築かれる場が「ふるさと」であると定義付け、ふるさとづくりの担い手や経済的基盤づくりについても議論がなされたことを報告し、今後のふるさとづくり推進のための取り組みとして、「ふるさと学」による誇りの回復、コーディネーターの育成、地域主導の後押し等が具体策として提示され、ガイドブックが全国に配布されたことを紹介しました。鎌田教授は、ふるさとづくりを「国づくり」へと連動させるためには様々な社会問題、地球問題への取り組みのグランドデザインが必要である、と提言しています。
「ふるさとづくり会議 生活の場活性化へ提言 国づくりとの連動が鍵」鎌田 東二 京大こころの未来研究センター教授
ウクライナ共和国のクリミア自治共和国の帰属をめぐり米欧とロシアの対立が顕在化し、国際関係が大きく揺れ動き、軋んでいる。加えて、台湾の学生による国会議事堂占拠、北朝鮮によるミサイルの発射など、同列に論じられないものの、東アジア情勢も不安定さと緊迫度を増している。そのような中、政府の「ふるさとづくり有識者会議」が3月末に最終報告書をまとめた。(中略)
こうした個別具体の「ふるさとづくり」が「国づくり」という大きな政策や方向性とどう連動し整合性を持つかが重要である。そしてその前提として、気象変動・地球環境問題、食糧問題、少子高齢化問題(人工構成問題)、基地・防衛問題、原発・エネルギー問題、TPP・貿易協定問題への取り組みのグランドデザインが必要だ。
ふるさとづくりが絵に描いた餅にならないためにも、国づくりの基盤と基本が明示され、合意されねばならないが、しかし動乱の様相を見せる流動的な状況下にある現在、先行きは実に不透明であると言わねばならない。
(記事より)
内田准教授のインタビューがウェブマガジン「greenz.jp(グリーンズジェーピー)」に掲載されました
内田由紀子准教授の研究と活動内容を紹介したロングインタビュー「"つながりの資本"から日本社会の幸福感を探求する『こころの未来研究センター』内田由紀子さんの仕事とは?」が、ウェブマガジン「greenz.jp(グリーンズジェーピー)」に掲載されました。
インタビューでは、内田准教授が2008年にこころの未来研究センターに着任してから現在に到るまでの研究活動の道のりが丁寧に紹介されています。農業普及指導員を対象におこなった調査研究、海外の研究者らとおこなったひきこもり研究、昨年、初めて開催したダイアログバーなど、社会への関心とつながりを活かしながら研究と活動を進める内田准教授の等身大の姿にふれていただける内容となっています。
"つながりの資本"から日本社会の幸福感を探求する「こころの未来研究センター」内田由紀子さんの仕事とは?
研究者にとって、社会課題とは新しい研究のヒントになりえるもの。「京都大学こころの未来研究センター」に勤務する内田由紀子さんもまた、基礎研究を元にしながらも、社会課題を心理学の手法で読み解くことによって自らの研究の幅を広げてきました。
社会課題に基礎研究をつなげる最初のきっかけとなったのは農業の普及指導員という「あまり知られていないけれど大切な仕事をする人たち」との出会い。心理学とはまったくかけはなれた農業の世界に飛びこんだことで、内田さんの世界は大きく変わることになりました。
心理学者から見る日本の農業の世界にはいったい何が起きていたのでしょうか?
(記事より)
続きはぜひ「greenz.jp」のページをお読みください。
"つながりの資本"から日本社会の幸福感を探求する「こころの未来研究センター」内田由紀子さんの仕事とは? | greenz.jp
船橋教授の共著論文の概要が京大ホームページに掲載されました
船橋新太郎教授と、オックスフォード大学の渡邉慶研究員(2012年2月までこころの未来研究センター研究員)の共著論文「Neural mechanisms of dual-task interference and cognitive capacity limitation in the prefrontal cortex」の概要「二つのことを同時にしようとすると、どちらも中途半端になる脳の仕組みを解明」が、京都大学の公式ホームページに掲載されました。
ページでは、研究者のコメント、研究概要、詳しい研究成果が記されたドキュメントファイル(PDF)、京都大学学術情報リポジトリへのアクセスURLをまとめて参照いただけます。下記リンクからご覧ください。
二つのことを同時にしようとすると、どちらも中途半端になる脳の仕組みを解明 | 京都大学:お知らせ(2014.3.3)
船橋教授の共著論文のレビューが『ライフサイエンス 新着論文レビュー』に掲載されました
船橋新太郎教授と、オックスフォード大学の渡邉慶研究員(2012年2月までこころの未来研究センター研究員)の共著論文「Neural mechanisms of dual-task interference and cognitive capacity limitation in the prefrontal cortex」の著者レビューが3月18日、『ライフサイエンス 新着論文レビュー』に掲載されました。
『ライフサイエンス 新着論文レビュー』は、「トップジャーナルに掲載された日本人を著者とする生命科学分野の論文について、論文の著者自身の執筆による日本語のレビューをだれでも自由に閲覧・利用できるよう、いち早く公開するサイト(サイト紹介文)」です。
論文の内容を日本語で詳しくお読みいただけます。下記のリンク先をご覧ください。
前頭連合野における神経活動の解析により二重課題干渉とこれにかかわる認知的な容量制限の神経機構を明らかにした/渡邉 慶・船橋新太郎|ライフサイエンス 新着論文レビュー
鎌田教授のコメントが毎日新聞に掲載されました
3月13日付の毎日新聞「聖地に怒り」記事に、鎌田東二教授のコメントが掲載されました。伊勢神宮や出雲大社をはじめとする各地の「パワースポット」で参拝者のマナー悪化が問題となっていることを報じた記事で、鎌田教授は長年の聖地巡礼・研究者の立場から、聖地に対して感謝の意を表することの大切さなどについてコメントしています。
「聖地に怒り 『パワースポット』参拝に誤解 宮津・真名井神社 柵設け『禁足』」
高校時代から50年近く聖地巡礼を続けている鎌田東二・京大こころの未来研究センター教授(宗教哲学)は「場合によっては参拝への規制も必要だろう」とする一方で「聖地に関心が高まるのはいいこと。パワーのもらいっぱなしではなく、感謝と返礼の意を表すことが大切では」と話している。
(記事より)
鎌田教授のインタビューが「たいまつ通信」72号に掲載されました
鎌田東二教授のインタビュー記事が、禅林舎の発行する「たいまつ通信」72号(3月10日発行)に掲載されました。1〜2面に渡るロングインタビューで、鎌田教授は最新刊『歌と宗教』について、本の完成に到るまでの背景や、歌との関わり、神話時代からの人々の生命の発露としての歌の起源と意味などについて語っています。
「存在の根底に歌がある いのちそのもの、「生成」と「消滅」は表裏一体 京都大学教授 鎌田東二先生をたずねて」
ー先生が歌に目覚めるきっかけは、一九九〇年代に日本を襲った阪神・淡路大震災、オウム事件、そして酒鬼薔薇事件という三つの大きな出来事だったとか。
私の場合は行動と生活と学問というものを切り離せず、実際に現場に出て、今ここで起こっている現実の出来事を、自分の生き方や研究といかに切り結んでいくかにつとめてきました。だけど、フィールドワーカーには目の前の事態をただ傍観者として観察するだけでいいのか、そういう問いが常に起こってきます。もちろん禁欲的に観察者に踏みとどまる立場もありますが、私は自分の性分や価値観として踏みとどまれずに、学問をひっくるめて参与できる関わり方を自分なりに探ってきました。そうして出てきた結果が、歌うことだったんです。
(記事より)
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 15」(3月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。ソチオリンピックで話題をさらい感動をもたらしたフィギュアスケートの浅田真央選手の演技と発言について、中世日本の仏教者の「絶対他力と絶対自力の統合」に重ね合わせ、「自己最小化と自己最大化を同時に達成する矛盾を両立」させたと考察。日本の剣豪宮本武蔵にも通じるとし、武蔵の武道哲学の神髄を浅田選手の活躍に見た、と高く評価しました。
「浅田真央と宮本武蔵 武道哲学の神髄を具現 相反する概念統合し闘う」鎌田 東二 京大こころの未来研究センター教授
ソチ冬期オリンピックで最も注目を集めたのは浅田真央選手の演技と発言であった。ショートプログラムでまさかの16位。が、フリーでは会心の自己ベスト。どちらもきわめてドラマチックで、見ている者の心をわしづかみにした。
その浅田選手の演技と発言を見ていろいろと考えさせられた。アスリートたちは一瞬一瞬自分を捨てて、しかも自分を最大化するワザを磨き続けているのだなと尊敬の思いを抱いた。
そこでは自己最小化と自己最大化を同時に達成する矛盾が両立しているように見える。そうでないと最高の演技はできないというのが極意のように思える。法然や親鸞など中世日本の仏教者の言葉を借りれば、絶対他力と絶対自力の統合である。
それを実現することは実に困難だが、いつもそれに向かって自己投企し続ける冒険心と身を捨てる献身力が要る。そんな身心変容技法に関わる秘技を見せられたように思う。
(記事より)
河合教授の論評記事が『新潮』3月号に掲載されました
河合俊雄教授が村上春樹作品を読み解いた論評記事「村上春樹におけるインターフェイスとしての夢」が、『新潮』3月号に掲載されました。
河合教授は同誌2013年7月号において、『色彩を持たない多崎つくるの現実への巡礼』という論評を発表し、村上作品の最新長編を「現代の意識とこころの課題に向き合った、新たな展開を遂げた作品」と位置づけています。今回は内容をさらに発展させ、作品で多く描かれる夢やイマジネーションが、近代意識に特有な「クローズドシステム」としてのこころにアプローチし、他者・身体・現実へとつながる「インターフェイス」の役割を果たしていると考察。数多くの事例を織り交ぜながら、心理療法との関連性やユング心理学との類似性について論じています。
「村上春樹におけるインターフェイスとしての夢」
「それからつくるはもう一度眠りに落ちたのだろう。やがて彼は夢の中に目を覚ました。いや、正確にはそれを夢と呼ぶことはできないかもしれない。そこにあるのは、すべての夢の特質を具えた現実だった。それは特殊な時刻に、特殊な場所に解き放たれた想像力だけが立ち上げることのできる、異なった現実の相だった。」
これは、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(以下『色彩を持たない......』)からの引用である。この作品は、これまでの村上春樹の長編小説とはかなり異なるものとなっている。特に、これまでの作品のような向こう側の世界や非現実の世界が描かれていないところが特徴的であろう。異世界への境界を簡単に超えていかないことに伴って、こころを閉じられた個人の内にあるものとする近代意識に特有な内面化が必然的に進み、他者との関係も現実的なものになっている。それを『ノルウェイの森』以来のリアリズムとか、ある種の平板化として捉える見方も存在するようである。しかしそのように異世界が消滅していったなかで、冒頭の引用でもふれられているような夢やイマジネーションの性質が特異である。それは必ずしも個人における内面的なものではないように思われ、いわばインターフェイスとして夢やイマジネーションが機能している場合が見られる。本論ではこの村上春樹の最新長編からインターフェイスとしてのイマジネーションや夢のはたらきについて取り上げ、それが実際の心理療法においてどのような位置を占めているかを示したい。
(記事より)
■関連情報
「河合教授による村上春樹最新作の論評記事『色彩を持たない多崎つくるの現実への巡礼』が『新潮』7月号に掲載されました」(2013.6.19)
河合教授のインタビューが京都新聞に掲載されました
河合俊雄教授のインタビュー記事が京都新聞3月1日付の「一日版 キーワードきょうと/私のキーワードKyoto」に掲載されました。河合教授はキーワードとしての京都を「魂の町」と表現しました。死者の魂と深く関わる京都の町を臨床心理学者、ユング派分析派のまなざしで見つめ、2016年に京都で開かれる国際分析心理学会に向けた想いを語っています。
「私のキーワードKyoto 『魂の町、京都』」 河合俊雄 臨床心理学者
心理療法、特にユング心理学に関わる者からすると、京都については「魂の町」というキーワードがぴったりとする。心理療法は人のこころや魂という目に見えないものを対象としている。その成立には、こころを個人の内のものにしていった西洋での「内面化」のプロセスが重要である。キリスト教による内面の重視、近代における個人の確立なくして心理療法は存在しないのかもしれない。
翻って京都のことを考えてみると、そこには独特の内面化が認められる。(略)
京都の町は、死者の魂の循環で成り立っていて、また町のたたずまいそのものが魂の町であることを示している。世界のユング派の分析家が3年に一度集う国際分析心理学会の大会が2016年8月に京都で開かれる。大会テーマは、「アニマ・ムンディ(世界の魂)の移り変わり」と決まった。これは新プラトン主義の概念で、ユング心理学にとっても大切な、世界全体を包摂するような魂である。けれども、京都の町の魂がいまだに息づいているかどうか、それとも移り変わっていくのか、問うていきたい。
(記事より)
徳島新聞に鎌田教授の著書『歌と宗教』の書評が掲載されました
2月18日付の徳島新聞・文化欄「とくしま出版録」に、鎌田東二教授の著書『歌と宗教 歌うこと。そして祈ること』(ポプラ社/2014年1月発行)の書評が掲載されました。亀本美砂徳島県立文学書道館事業課主査による書評には、神道ソングライターとして歌い祈ることをライフワークとする鎌田教授の素顔と歌い始めるまでの道のりが丹念に紹介され、「歌によって人々の魂を癒やし、世界のありようを切り替えていこうとする著者の覚悟と悲願に、読む者の心も奮い立ってこよう」と熱いコメントが寄せられています。
「とくしま出版録 鎌田東二『歌と宗教』森羅万象の響きに応え」
著者自身は、1995年に起きた阪神大震災とオウム真理教による地下鉄サリン事件、そして97年の酒鬼薔薇聖斗事件(神戸連続自動殺傷事件)から衝撃を受け、自分に何ができるのかを探し求めて、やがて歌うというアクションにつながっていったのだという。
「理性的に物事を頭で考えて判断したり認識したり知的に納得したりするだけでなく、体も感情もすべて含めてまるごと納得し鎮魂するような形式が必要なのだ。それが、芸能や芸術の力だ」。声明や読経において、たとえ唱えている言葉の意味がわからなくても祈りの響きにわれわれが包まれ、えもいわれぬ感動に打たれたりするように、歌や祈りの言葉は国境や宗教を超えて、人々の魂、身体に直接働きかけるダイナミックな力動性を宿している。だから歌は人間の心を切り替え、世界のありようの感受のしかたや人間の関係性をも切り替えることができるのだとする。(中略)
「無力であり、無常であるが...信じて、ただ、歌う」という彼の心に耳を澄まし「いのちの応答」の歌をともに歌いたいと思う。
(記事より)
内田准教授が講演したセミナーのレポートが『農林水産政策研究所レビュー』に掲載されました
農林水産省農林水産政策研究所が発行する広報誌『農林水産政策研究所レビュー No.57』に、内田由紀子准教授と竹村幸祐京大経営管理大学院助教が昨年11月に同所でおこなったセミナーのレポートが掲載されました。
セミナーは「農村コミュニティにおけるソーシャル・キャピタルとその構築:普及指導員調査からのアプローチ」という演題で開催されました。内田准教授と竹村助教が農業普及指導員を対象に実施した調査結果と、その成果をまとめた『農をつなぐ仕事~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~』(創森社/2012年11月発行)の内容を中心に、「人とのつながり」に着目した農業・農村の新たな機能・価値に関する講演と意見交換がおこなわれました。
セミナー概要紹介:農村コミュニティにおけるソーシャル・キャピタルとその構築:普及指導員調査からのアプローチ
食料・環境領域 主任研究官 林 岳
講演者/京都大学こころの未来研究センター 内田由紀子氏、京都大学経営管理大学院 竹村幸祐氏
日 時/平成25年11月20日(水)午後2時~4時30分
場 所/農林水産政策研究所セミナー室
農業・農村を対象とした社会科学系の研究では,社会学,経済学などの手法を用いた分析は数多く見られるものの,心理学の手法を用いて行った研究分析はあまり見られません。このような中,京都大学こころの未来研究センター内田由紀子准教授と京都大学経営管理大学院竹村幸祐助教のお二方は,社会心理学の手法を用いて農業普及指導員を対象とした研究分析を行い,その成果は『農をつなぐ仕事』(内田・竹村(2012))としてまとめられています。
このたび,内田先生,竹村先生にこのご著書の内容を詳しくご講演いただいたセミナーを開催しました。
(記事より抜粋)
記事全文は農林水産政策研究所のウェブサイトで公開されています。下記リンクよりダウンロードしてご覧ください。
鎌田教授の論考が『スピリチュアルケア第62号』に掲載されました
鎌田東二教授の論考「日本人のスピリチュアリティ」が、臨床パストラル教育研究センターの発行する機関誌『スピリチュアルケア第62号』(2014年1月20日号)に掲載されました。
日本人のスピリチュアリティ(霊性)について鎌田教授は、中世の禅と念仏においてその極に達したと結論づけた鈴木大拙に対し、「『日本的霊性』の根幹は、日本人の自然崇拝・自然信仰にある」とし、「当然のように、神道や密教や日蓮思想の中にも日本的霊性は顕視している」と述べています。また、本居信長の歌「敷島の大和心を人問はば 朝日に匂ふ山桜花」を取り上げ、その清らかで素朴で力強い生命感覚を感得する「心」こそが「もののあはれを知る」心であり、「日本人のスピリチュアリティ」の根源にあるものだと考察します。さらに現代の日本人の精神のありようにも言及し、東日本大震災後にあらためて「絆」「地域社会」「地域の自然」が注目され、被災地での現地調査で伝統芸能が人々の精神の復興に大きく寄与する様子を目の当たりにした経験を述べながら、日本人のスピリチュアリティの脈動の存在を伝えています。
「日本人のスピリチュアリティ」京都大学こころの未来研究センター教授 鎌田東二
東日本大震災直後から、わたしは半年に1度定期的に東北被災地の太平洋沿岸部を数百キロ追跡調査している。その中で、地域に伝わる神楽などの伝統芸能が地域と支援者を力強くつなぐ媒体になっていることをつぶさに目撃し、そのことを拙著『現代神道論――霊性と生態智の探究』(春秋社、2011 年)や『日本の聖地文化』(編著、創元社、2012年)、『日本の聖地』(編著、2014 年)で報告した。
神楽などの民俗芸能は、確かに東北各地で、「絆」とも「鎮魂供養」とも「地域活力」ともなっていた。そして、それを保持継承してきた人々の心と生活の中に、消えることのない、絶えることのない脈動があった。それぞれの土地の「ちから」とか「いのち」というほかないものが、神楽や神社や寺院などの具体的な無形・有形の「かたち」として生きつづけていた。そこにわたしは「日本人のスピリチュアリティ」と呼ぶことのできる時と場所を超えてはたらきつづけている「いのち」の脈動を聴いた。
今は、そのようにしか、「日本人のスピリチュアリティ」について語ることしかできない。
(記事より)
なお、記事全文が臨床パストラル教育研究センターで公開されています。下記のリンクよりアクセスのうえ、ダウンロードしてご覧ください。
河合教授のインタビューが読売新聞に掲載されました
河合俊雄教授のインタビュー記事「杜で語る未来 京大附置研シンポを前に」が、2月11日付の読売新聞に掲載されました。河合教授は、3月15日に宮城県仙台市で開催される「第9回 京都大学附置研究所・センターシンポジウム 京都大学仙台講演会 京都からの提言 21世紀の日本を考える『社会と科学者』」に登壇します。それに先立ち、インタビューでは講演テーマである「発達障害と現代の意識」にちなんだ話題として、近年の発達障害の増加の背景にある社会の様相や、東日本大震災後のこころのケアでのエピソードについて語っています。
「杜で語る未来 京大附置研シンポを前に こころの未来研究センター 河合俊雄教授」
心理療法では、心に問題を抱えたクライアント(患者)の話を聞き、解決していきますが、大切なのは本人が主体的に考えること。「何とかしたい」と思って相談に来る人に「こうしなさい」と押しつけても、何の解決になりません。
ところがネット社会では「あなたにお勧めの商品はこれです」という情報が送りつけられ、主体的な判断が難しくなっています。近年の発達障害の増加には、こうした環境も影響しているのでは、と思います。
一方で、心は本来、強い回復力を持っています。それを実感したのが、東日本大震災でした。
(記事より抜粋)
第9回 京都大学附置研究所・センターシンポジウム 京都大学仙台講演会 京都からの提言 21世紀の日本を考える「社会と科学者」イベント案内(募集は締切りました)
鎌田教授の解説記事が読売新聞に掲載されました
読売新聞の2月6日付夕刊2面「謎解き【京都】泉涌寺に天皇陵なぜ?」に、鎌田東二教授の解説記事が掲載されました。近世以降、泉涌寺は皇室の菩提所として四条天皇を皮切りに数々の天皇が葬られ、背後の月輪山には16の天皇陵があります。鎌田教授は、鎌倉時代から幕末まで泉涌寺が菩提所となったのは、都を守る東山三十六峰の独特の地形、永遠の生命のイメージを持つ月輪山が陵墓として役目を果たした背景がある、と説明。柳田国男の言葉を引用しながら、日本人の世界観の原点にもふれています。
「謎解き【京都】泉涌寺に天皇陵なぜ? 永遠の生命思わせる地形 ー 著書『聖地感覚』に京都東山を取り上げた宗教学者 鎌田東二さん」
東山三十六峰の一つ、月輪山に泉涌寺があります。
泉が湧いて泉涌寺に改められる前は、仙遊寺と書いたそうですね。仙人が遊ぶような土地という、想像力が働いたのでしょう。
そこは浮世離れした異界で、仙人ですから長寿、永遠の生命のイメージが維持されていた。月輪山の月も生命サイクルと長寿に結びつく。湧き続ける泉も永遠です。
死んだ後は永遠の生命に連なって子孫を守る。そういう祈りと願いを込めて天皇の陵墓がここに設けられます。
民俗学の柳田国男によれば、先祖代々の霊に見守られ、死んだら自分もそこへ溶け込む。これはわれわれにも重要な世界観なのです。
(記事より抜粋)
鎌田教授は、著書『聖地感覚』(角川学芸出版/2013年10月文庫出版)で、東山三十六峰を聖地の一つに位置づけ紹介しています。「生態学的身体知」を鍛え上げる場として「東山修験道」の歩行(ほぎょう)修行を実践。みずから聖地を歩く修行の日々を本書に収めています。
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 14」(2月4日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。今年は「四国霊場開創1200年」にあたるといわれています。鎌田教授は、昨年11月に香川大学でおこなわれたシンポジウム「四国遍路の現代的意味」を取り上げ、四国遍路という聖地巡礼が体と心と文化に影響を与える力を持つこと、空海の四国遍路との関わりや著作の重要性について解説しています。また、高野山大学が4月より大阪サテライトキャンペスで開設する「別科スピリチュアルコース」を紹介し、期待感を示しています。
「四国霊場開創1200年 遍路がもたらす変革 高野山大の別科に期待」鎌田 東二 京大こころの未来研究センター教授
四国遍路を含む「巡礼文化」や「聖地文化」に注目が集まることは悪いことではない。これまでに「聖地への旅」「聖地感覚」「日本の聖地文化」などの著書を出したことのある身としては、これを機に単なる「パワースポットブーム」では終わらない「聖地巡礼」の深まりを期待したい。
そこで取り上げたいのが、昨年11月30日に香川大学で行われた第23回人体科学会の「旅とスピリチュアリティ」の中の公開シンポジウム「四国遍路の現代的意味」である。伴義孝(関西大名誉教授・身体文化論)、黒木賢一(大阪経済大教授・臨床心理学)、黒木幹夫(愛媛大名誉教授・倫理学)の3氏が興味深い問題提起をした。(略)
それぞれに大変興味深い観点の提示と問題提起であった。とりわけ、四国遍路が体と心と文化の3層に直接関わり、変革をもたらす力を持っていることを再認識できたことは収穫だった。それらをすべて弘法大師が始めたわけではないとしても、空海の少年期以降の「歩行」や「修行」に四国遍路の淵源があることもあらためて確認できた。
(記事より抜粋)
鎌田教授のインタビュー記事が毎日新聞に掲載されました
鎌田東二教授のインタビュー記事「祈りと自然 おそれと感謝今に」が1月15日付の毎日新聞京都版に掲載されました。同紙の新年企画連載の最終回に登場し、「なぜ祈るのか」という根源的な問いにこたえる鎌田教授は、日本人が古来から自然や神への畏怖を抱き、神社や寺での祈りや奉仕をおこなってきたこと、東日本大震災で神社や寺が被災した人々にとって重要な役割を果たした例を紹介。現代社会で生きる人々の心に「聖地感覚」を呼びさますようアピールしています。
「祈りと自然 なぜ祈るのか おそれと感謝今に 鎌田東二・京大教授に聞く」
東日本大震災で津波が襲った岩手県野田村の愛宕神社では、小高い境内に多くの人が駆け上がって助かった。宮城県の仙台空港は被災したのに、近くの下増田神社は波がよけて無事だった。古い神社はそばに寺があり、お宝で避難生活ができた。現代の技術を駆使した防災設備よりも先祖が祈りを込めて大切にした場所がいかに役立つか、現地を歩いて実感しました。
府や市町が盛んに呼びかける「海の京都」ですが、経済効果が目的なのですか?それではまさに本末転倒。府北部の祈りの歴史は古い。まずは住む人の聖なる感覚を呼び覚ますことが、地域の活性化に不可欠ではないでしょうか。
(記事より抜粋)
鎌田教授の著書『歌と宗教』の書評が京都新聞に掲載されました
鎌田東二教授の著書『歌と宗教』(ポプラ社/2014年1月)の書評が、2月2日付の『京都新聞』朝刊・読書面「新刊の本棚」コーナーに掲載されました。鎌田教授のプロフィールと共に「歌うという行為そのものの本質を探る一冊」と評されています。
「新刊の本棚 『歌と宗教』 鎌田東二著」
著者は、京都大こころの未来研究センター教授で宗教学者。フィールドワークなどによる研究を重ねる一方で、神職の資格を持つ歌い手「神道ソングライター」として15年間活動を続ける。自身のユニークな足跡に触れながら、古来よりの祈りと歌との関わりをひもとく。(略)
心身に働きかける歌の力を、古事記や旧約聖書、般若心経、黒人霊歌などさまざまな例をあげて説く。
(2/2付『京都新聞』記事より)
『歌と宗教』について詳しくは下記の記事をご覧ください。
鎌田教授の著書『聖地感覚』の書評がデーリー東北に掲載されました
鎌田東二教授の著書『聖地感覚』(角川学芸出版/2013年10月)の書評が、青森・岩手を中心とする地域紙『デーリー東北』の1月24日付朝刊に掲載されました。
「注目の本 『聖地感覚』 鎌田東二著」
身一つで山に身を置くことで深まる自然への畏怖と畏敬。思想と感覚を連結させ、人類の今後の生存に関わる知恵の在り方を探っていく独特の思考は著書の真骨頂だ。
2008年に出た単行本に、思想家で武道家の内田樹氏の開設を入れてこのほど文庫化した。東日本大震災を経て、自然との付き合い方が問われる今、未来に向かって生きる力を後押ししてくれる。スピード感のある文章も心地よい。
(1/24付『デーリー東北』記事より)
『聖地感覚』について詳しくは下記の紹介記事をご覧ください。
鎌田教授が登壇したシンポジウムの記事が仏教タイムスに掲載されました
鎌田東二教授が登壇した東洋大学でのシンポジウム「共生思想としての神仏習合」(主催:東洋大学国際哲学研究センター/2013年12月22日開催)を紹介した記事が、宗教情報専門紙の仏教タイムス(1月9日・16日合併号)に掲載されました。神道、仏教、日本思想史等を専門領域とする研究者らが集まったシンポジウムでは、神仏習合をテーマに様々な議論がおこなわれ、鎌田教授は、東日本大震災の被災地で神社や寺が人々の避難場所や交流の場として機能した事例等を紹介。日本における神道と仏教の習合的文化の歴史と未来への可能性について話し、発言内容が詳しく紙面に取り上げられました。
「神道は固有宗教か 仏教以前から習合的 東洋大で神仏習合シンポ」
「共生思想としての神仏習合」をテーマにしたシンポジウムが12月22日、東京・白山の東洋大学で開かれ、日本文化の基底にある思想を探った。主催は東洋大学国際哲学研究センター。(略)
神道学者で密教にも詳しい鎌田東二教授(京都大学こころの未来研究センター)は、東日本大震災時の避難場所として寺院や神社があったことを報告し、「(神と仏)二つが手を強力に結ぶことが出来れば一つの方向性を持ちうるのではないか」と災害体験から切り出した。
神道史の視点から「日本は仏教伝来以前から習合的であった」とし、もともと神(カミ)は習合的存在であるとも話した。「そこに仏や菩薩が入り、結びついても不思議はない」と主張した。
(記事より抜粋)
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 13」(1月3日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。昨年10月に逝去した教育者、鳥山敏子氏を偲び、東京賢治シュタイナー学校の設立者として「いのちの授業」を実践し続けた彼女の功績を振り返ると共に、自身を「神道ソングライター」へと導いた「魂の姉」への思いを歌と本に託したエピソードを紹介しています。
「鳥山敏子を偲ぶ 「いのちの授業」実践 遺志継ぎ教育の羅針盤に」鎌田 東二 京大こころの未来研究センター教授
12月21日東京賢治シュタイナー学校で開かれた「鳥山敏子先生を偲ぶ会」で、私は鳥山との出会いと「神道ソングライター」となったいきさつを語り、遺影に向かって「この光を導くものは この光とともにある いつの日か輝き渡る いつか いつか いつの日か/あなたに逢って私は知った このいのちは旅人と 遠い星から伝えきた 歌を 歌を この歌を/導く者はいないこの今 助ける者もいないこの時 いのちの声に耳を傾け 生きて 生きて 生きていけ」とアカペラで歌い、感謝と別れの法螺貝を力いっぱい吹いた。
そして1月7日に発売される「歌と宗教 歌うこと。そして祈ること」(ポプラ新書)を鳥山にささげたことを告げ、魂の姉の遺志を受け継いでいくと誓ったのだった。この偉大な姉の功績が消えることはないだろう。
(記事より抜粋)
伝統文化に関する鎌田教授のコメントが京都新聞に掲載されました
京都新聞(1月5日付)の「新春くらし2014」欄で伝統文化を取り上げた記事に鎌田東二教授のコメントが紹介されました。丹波地域で長く受け継がれている「和知太鼓」に魅せられた若者の活動を追ったレポートに対する識者コメントとして、鎌田教授は、世界的に伝統文化やローカルなものへの関心が高まっている風潮にふれ、地域の伝統文化を次世代へ継承するための仕組みを作る必要性を訴えています。
「和知太鼓を継承 『京都も、地域も』の視点必要』」
財団法人「地域創造」の地域伝統芸能保存事業に携わる京都大こころの未来研究センターの鎌田東二教授(宗教学・民俗学)は「世界的には伝統文化やローカルなものへの関心が高まっており、『地域が面白い』という流れになっている」と話す。「京都は優れた文化を持つが故に、世界の流れからは遅れている」といい、「京都も、地域も」という視点の必要性を強調する。
グローバル化の時代に、担い手となる若者が地域を離れるのを食い止めるのは難しい。鎌田教授は「別の団体と交流したり、民俗学や歴史を勉強して地域の文化力を上げ、地域志向のUターンやIターンの人も巻き込んで次世代へ継承する構造が必要」と話し、地元住民だけで郷土文化を守る発想から離れることを提案している。
(記事より抜粋)
鎌田教授の書評が日本経済新聞に掲載されました
鎌田東二教授の書評記事が、2013年12月15日付の日本経済新聞書評欄に掲載されました。新谷尚紀國學院大學教授・国立歴史民俗博物館名誉教授(民俗学)の新著『伊勢神宮と三種の神器』(発行:講談社)を取り上げ、書籍は本年、式年遷宮がおこなわれた伊勢神宮を中心とする古代日本の祭祀と信仰の歴史を奥深く掘り下げながら、いくつもの新知見と仮説を提示している、と評しています。
「大和王権の象徴性と霊威力 『伊勢神宮と三種の神器 新谷尚紀著』」 京都大学こころの未来研究センター教授 鎌田東二
本年5月、出雲大社では60年ぶりの遷宮が、10月、伊勢神宮では20年毎の式年遷宮が執り行われ、多くの参拝者がかけつけ、たいへんな賑わいを見せた。数年前からのパワースポットや聖地霊場巡礼ブームも衰えてはおらず、総体として、日本の宗教と文化の根っこのところに何があるのかについて関心は高まっている。
そんな折、本書『伊勢神宮と三種の神器 古代日本の祭祀と天皇』が出版され、冒頭の第一章に、前著『伊勢神宮と出雲大社』を踏まえて、「伊勢神宮と出雲大社ーー大和王権の成立と伊勢出雲の二極構造」を再考しているのは時宜を得た構成といえる。
(記事より抜粋)
「学士会会報・U7 vol.53」に、吉川センター長のインタビューが掲載されました
学士会会員向け情報誌「学士会会報・U7 vol.53」(発行:学士会)に、吉川左紀子センター長のインタビューが掲載されました。
巻頭カラー特集に登場した吉川センター長は、12ページに及ぶインタビュー記事で、センター設立の経緯や「こころの未来研究センター」というネーミングにまつわるエピソード、現在のセンターの特徴である「多様性を生かし社会へつながる学際的研究の場」へと至るまでの奮闘の道のり、今後のセンターのビジョンについて語っています。
「こころのあり様を 多面的に掘り下け必要としている人に役立つように届けたい」京都大学こころの未来研究センター センター長 吉川左紀子
京都大学こころの未来研究センターは、文理を問わす大きな枠組みでこころをとらえ、科学の場にととどまりがちな専門研究の成果を一般の人か使えるかたちて広く社会に発信していくために誕生した。そこに集まったのは、心理学はもとより、神経科学、 宗教学、倫理学などの研究者。「こころの未来」という大学の研究拠点としては異質の名前を、周囲からの批判を受けながら冠したことでも、既存の学問にとらわれず、社会に広く開いた場になろうという強い意志がうかがえる。
二〇〇七年の設立時からこのユニークな研究者集団を率いるのは、吉川左紀子センター長。認知心理学、認知科学を専門とし、人間が顔の違いをどのように認識し、表情の変化をどのように理解するかを追究してきた。脳科学や他の心理学と連携し、コンピュータのテクノロジーを導入した共同研究を進めたのは、学問への「ミーハー的気質」だ。「もし学生時代に戻れるなら、いろいろな教科を学べた教養部の頃へ。大学院に進んだのも研究者になりたかったというよりは、大学に残っていれば、いろいろな分野の著名な先生方が開く集中講義なとが聞けるから」というから、そのミーハーぶりは徹底しているが、それでも人間、こころ、文化といったテーマへの関心は一貫していた。
(記事より抜粋)
鎌田教授の論考が『季刊SORA(そら)』に掲載されました
株式会社ウェザーニューズが発行する "世界初のお天気マガジン"『季刊SORA(そら)』2013冬号に、鎌田東二教授の論考「特別寄稿:日本の聖地文化と聖地感覚」が巻頭カラー掲載されました。東日本大震災を機にあらためて見直される寺社や祭などの「聖地文化」が持つ力と、日本人が古来から自然への畏怖・畏敬の精神をもとに発見し大切にしてきた「生態智(せいたいち)」の再活用の必要性について解説し、日本の聖地文化が自然災害の鎮めや防災、減災、地域の絆の深まりにいかに密接に結びついているかを、自身の聖地文化研究を紐解きながら明快に解説しています。
「特別寄稿:日本の聖地文化と聖地感覚」京都大学こころの未来研究センター教授(宗教哲学・民俗学専攻)鎌田東二
わたしは十七歳の時、「聖地」巡礼に目覚め、それからほぼ半世紀たった今もなお聖地巡礼に明け暮れているといっていいくらいだが、三年ほど前の「パワースポット」ブームの波には違和感があった。(中略)
だが一方で、その「パワースポット」体験から、「部品」に還元できない聖地文化や聖地感覚の広がりに参入していくこともできるはずだ、という期待感や、この「波」をポジティブに活用し、「日本列島文化」の活力や底力を汲み上げなければ日本も地球もダメになるのではないかという切実な思いもあった。そういう思いの中で、『聖地感覚』(角川学芸出版、2008年)、『京都「癒しの道」案内』(河合俊雄との共著、朝日新聞出版、2008年)を出していた。(中略)
日本の「聖地文化」とは、日本列島の地質・地形・風土の中から生まれた「生態智」(自然に対する深く慎ましい畏怖・畏敬の念に基づく、暮らしの中での鋭敏な観察と経験によって練り上げられた、自然と人工との持続可能な創造的バランス維持システムの知恵と技法)を深く宿しているということがよりはっきりと見えてきたのだ。そのような日本の「聖地文化」と「聖地感覚」の文化遺産を再認識するとともに、さらに力強く未来に再活用すべきである。
(記事より抜粋)
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 12」(12月2日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。同郷である徳島出身の小説家・詩人の富士正晴が生誕100年を迎えたことを取り上げ、彼の郷里である徳島県三好郡山城谷村(現三好市)を訪ねた記憶と印象を振り返り、「竹林の隠者」と評され俗世から距離を置き作家活動を続けた富士の「望見の感覚」こそが、現代社会にとって重要であると綴っています。
「富士正晴生誕100年『皆酔うとき一人醒め』望見の感覚で自他捉え」鎌田 東二 京大こころの未来研究センター教授
10月30日、作家富士正晴の生誕100年を迎えた。富士は三好郡山城谷村(現・三好市山城町)で生まれたが、3歳で小学校訓導をしていた母に連れられて平城(朝鮮)に移住したので、子どものころの故郷の記憶は一切ないと記している。
だが数年前、富士の故郷を訪ねて彼が住んでいた家の跡地に立った時、富士の文学を生み出すまなざしの原点を垣間見たような気がした。そこは谷合にへばりつくように身を寄せる集落を見下ろす天上界のような高さにあった。そこから見ると、まるで雲の上から超ロングスパンの遠近法によって世界を眺めているような「望見」の感覚があった。(中略)
直木賞候補作となった「帝国軍隊に於ける学習・序」に「国法はこわいのである。国法は守ってくれる気がしない。国法は罰を加えにくる」と記す富士のまなざしと感覚こそ、さしたる議論もないままに衆院を通過してしまった「秘密保護法案」が成立してしまいそうな今、必要なまなざしと感覚であると思う。
(記事より抜粋)
鎌田教授の論考が『季刊民俗学』に掲載されました
国立民族学博物館が会員向けに発行する機関誌『季刊民俗学』146号に、鎌田東二教授の論考「暮らしに息づく聖なるサイクル」が掲載されました。
巻頭特集「暮らしの節目と自然の節目」に寄せられた8編のうちトップで掲載された記事「暮らしに息づく聖なるサイクル」において鎌田教授は、古来から伝わる折々の神事や行事、季節の変化と自然の様相を言霊文学で表現した「俳諧」など日本人の暮らしのなかで受け継がれてきた「"節目"、"切れ目"、"孔"としての『暮らしに息づく聖なるサイクル』」について歴史的事例を紹介。自然への畏怖・畏敬の精神から人々が練り上げてきた「生態智」を再活用することが、現代という危機の時代を生き抜く重要なポイントであると論じています。
不測の事態のなかで、もう一度、問い直し、再発見・再評価したいのが、日常のなかでの聖なるサイクルとしての「年中行事」と、そうした年中行事を「季語」としてうまく四季折々の生活リズムや生活表現のなかに融けこませた「俳諧」というワザである。(中略)
「自然に対する深く慎ましい畏怖・畏敬の念に基づく、暮らしの中での鋭敏な観察と経験によって練り上げられた、自然と人工との持続可能な創造的バランス維持システムの技法と知恵」である「生態智」に基づいて生きていくよりほか、未来はないと思う。その「生態智」のワザが「年中行事」にも「季語」を持つ「俳諧」にも宿っている。わたしたちは、もう一度この「生態智」を再活用し、さらに深め、実践しなければならない。そうしたワザを暮らしのなか再措定しつつ、危機の時代の「臨機応変力」を磨いて生きていくほかないと思うのである。
(記事より抜粋)
鎌田教授が制作した『久高オデッセイ』上映会記事が中外日報に掲載されました
鎌田東二教授が制作をおこなったドキュメンタリー映画『久高オデッセイ 第2部生章』(大重潤一郎監督)の上映会が2013年11月19日(火)に京都大学人環・総人図書館環on(わおん)で開催され、その模様が11月26日付の中外日報に掲載されました。
「神の島の神事と日常描く 『久高オデッセイ』京大で上映会」
沖縄の祭祀を撮り続けた写真家の故比嘉康雄氏の遺志を受け継いだ大重監督が平成14年から取り掛かっている連作の第2弾。伝統的な信仰をつかさどる神人と呼ばれる巫女の最後の4人が70歳の引退の年を迎える平成17年縲鰀21年の島の神事、日常風景などを描いた。鎌田東二・京都大学こころの未来研究センター教授が制作を担当した。大重監督は撮影中に脳卒中で倒れ、半身不随となりながらも完成にこぎつけた。
上映会で鎌田教授は「一つの生活叙事詩のようなもの。日常の中の祈りを描いた」と紹介。同大学生や一般の参加者など約40人が鑑賞した。終了後、「神事を撮影していいのか」との質問に鎌田教授は「御嶽の中は入れない。ここまでならいいと言われた部分のみを撮影した」と答えた。
(記事より抜粋)
河合教授のエッセイが『桑楡(そうゆ)』に掲載されました
河合俊雄教授のエッセイが、京都の料亭・和久傅が発行する冊子『桑楡(そうゆ)』第十三号に掲載されました。
『桑楡(そうゆ)』は毎号、文学、経済、科学、芸能など各分野から一人ずつの執筆者が寄稿するエッセイ集で、2011年の刊行より多くの愛読者を集めています。河合教授は、今年七回忌を迎えた河合隼雄京都大学名誉教授の名を冠した河合隼雄財団の設立と河合隼雄物語賞・学芸賞授賞式の開催を振り返りながら、父の仕事と思想の根幹にある「物語」について想いをしたためると共に、授賞式の開催地を京都にした理由と、2016年の京都開催が決定した国際分析心理学会の招致活動に尽力したエピソードを紹介しています。
「京都という魂のトポス」臨床心理学者 河合俊雄
今年の七月十九日は、河合隼雄の七回忌であった。享年七十九歳であったことと合わせて、元数学専攻で数字の意味づけにも興味を抱いていた河合隼雄からすると、何か一つ足りない感じが醸し出されている数字かもしれない。それは無念さを表しているかもしれないし、ユング心理学の考え方に沿うなら、欠けていることこそ完成(perfection)への途上にある完成さ(completeness)を示しているのかもしれない。
まさにその成し遂げられなかったものを受け継ごうという意味で、昨年に遺族全員、それに河合隼雄が生前にお世話になった人たちがこころを合わせることで河合隼雄財団を立ち上げ、今年に河合隼雄物語賞と学芸賞の第一回の受賞作を発表した。(中略)
没後に、父河合隼雄の多くの著作を編集したり、新たなシリーズで刊行したりする作業のために著作を読み返すうちに、やはり「物語」というコンセプトが河合隼雄の仕事と思想の根幹にあるという思いを強くした。それはクライエントの物語に耳を傾けるという心理療法家としての営みを超えて、人々のこころを支える物語を生み出すことや研究することに関わっている。
(エッセイより抜粋)
『桑楡』(和久傅のウェブサイト)
http://www.wakuden.jp/culture/2.html
『サンデー毎日』に鎌田教授のコメントが掲載されました
『サンデー毎日』11月10日号に鎌田東二教授のコメントが紹介された記事が掲載されました。
記事は「『感謝、祈り、癒やし』を込めて 野辺の送りに鳴り響く鐘の音」というタイトルで、北九州市小倉北区にオープンした葬祭会館・霧ヶ丘紫雲閣)(運営・サンレー/佐久間庸和社長)が葬送時の「野辺の送り」としてクラクションに代わって新たに鐘を鳴らし始めたことを紹介しています。故人からの"感謝、祈り、癒やし"の三つの礼が鐘の音に込めたという同社の取り組みに対し、鎌田教授が鐘への移行を評価する旨のコメントを寄せています。
佐久間社長によると、クラクションには謂(いわ)れがなく、かつて野辺の送りの時に鳴らされた鐘の代わりに使われた慣習という。宗教哲学者で、京都大学こころの未来研究センターの鎌田東二教授は『葬儀にせよ、結婚式にせよ、時代の要請でスタイルは変わってきている。大事なことは死者を送る人たちの心がなぐさめられること。私もクラクションは気になっていた。神社仏閣の鐘を知っている人たちにとっては、鐘の響きは違和感がないのでは』と評価する。
(記事より抜粋)
詳しくは、サンレー社長・佐久間庸和氏のブログをご覧ください。こちら
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 11」(11月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。理事長を務めるNPO法人・東京自由大学が設立15周年を迎えたことを報告し、「みずから自由で豊かで深い知性と感性と愛をもつ心身に自己形成してゆくための機会を創りたい」という設立宣言と共に15年間の取り組みを紹介。10月におこなわれたアートフェスティバル「火を焚きなさい」を振り返りながら、「自由大学」のような場や活動が各地に生まれるよう呼びかけています。
「自己形成の機会創出 同様の場 各地に設立を」鎌田 東二 京大こころの未来研究センター教授
NPO法人・東京自由大学を設立して15年になる。
1998年11月25日、私は<21世紀の最大の課題は、いかにして一人一人の個人が深く豊かな知性と感性と愛をもつ心身を自己形成していくかにある。(中略)そこで私たちは、私たち自身を、みずから自由で豊かで深い知性と感性と愛をもつ心身に自己形成してゆくための機会を創りたいと思う。まったく任意の、自由な探求と創造の喜びに満ちた「自由大学」をその機会と場として提供したい>との設立宣言を起草した。
(記事より抜粋)
内田准教授の共著書『農をつなぐ仕事』の解説記事が『心理学ワールド』63号に掲載されました
日本心理学会が発行する心理学関連情報誌『心理学ワールド』63号の「自著を語る」欄に、内田由紀子准教授による解説記事が掲載されました。竹村幸祐京都大学経営管理大学院助教との共著書『農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~』(発行:創森社)が生まれた背景、四千名をこえる普及指導員への調査で得られた「つながり」に関する様々な知見、書籍化がもたらした効果と今後の展望など、著者ならではの視点で紹介されています。
自著を語る 『農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~』内田由紀子・竹村幸祐
他者との「つながり」は、社会における資本(ソーシャル・キャピタル:SC)として、幅広い注目を集めている。我々は農村において「技術指導と関係構築」のプロとして働く普及指導員の役割に注目し、社会心理学の観点から分析を行った。コミュニティにおけるSCはどのようにして作られ、どのような効果を持つのか?この問いに、本書は「農」を軸にした視点から挑んでいる。(中略)
普及指導員や農政局の方々によるコラムは、データに基づく考察に息吹を与えてくれた。今後も、つながりに関わる心の働きに対する普遍的な問いに迫っていきたい。
(記事より抜粋)
鎌田教授の論考が『地球人 No.18』に掲載されました
鎌田東二教授の論考「感覚遮断と感覚解放」が、"いのちを考えるヒーリング・マガジン"『地球人 No.18』(発行:ビイング・ネット・プレス)に掲載されました。
「こころの練り方・ワザ学探求」という連載コーナーにて、鎌田教授は身体修行やボディワークを実践する上でのキーワードとなる「感覚遮断と感覚解放」の二つについて解説しています。とりわけ、感覚遮断から発生する感覚解放を嗅覚からの例を挙げ、自身の断食、断酒と感覚回路の変化の過程を詳しく紹介。後半では「香り」「臭い」を主題に、「香禅道」という香りの瞑想法の経験、『古事記』におけるイザナミノミコトの物語、東洋医学における香りと病気の関係、本居宣長の「大和心」に寄せられた匂いをテーマにした歌などを紹介し、日本人と香りとの深い関係性について考察しています。
およそ身体修行ないしボディワークには二種類ある。感覚遮断と感覚解放の二種類が。無念無想を求める禅などは前者の道、絢爛豪華な曼荼羅を目の前に瞑想する密教の瞑想や阿字観や三密加持などは後者の道である。
だが、面白いことに、感覚遮断をすると、別の回路の感覚解放がある。たとえば、視覚を遮断すると聴覚や触覚が拡張されることは日常的に経験できるだろう。音楽を集中的に聴こうとすると、自然に目を閉じていたりする。肉体的な接触においても、閉目している方が触覚が鋭敏になることは間違いない。
香りの場合も同様であろう。いい香りを嗅ごうとしている人の多くは目を瞑っている。視覚情報を遮断することによって、他の感覚情報がより鮮明に感受され、意識化されることをわたしたちは経験的に知っており、日々の行動に繰り込んでいるのだ。わたしは生まれつき眼球を持たない猫と一七年九ヶ月共に生きてきたので、視覚機能に障害がある動物がどのようにして行動し、生きていくかを目の当たりにし、そこから多くを学んだ。そして、感覚遮断と感覚解放とのダイナミックな関係や補完性を考えさせられたのである。
(本文より抜粋)
ベッカー教授がテレビ朝日『ワイド!スクランブル』(9/18放送)に出演しました
カール・ベッカー教授が、テレビ朝日の報道番組『ワイド!スクランブル』(9月18日放映)の情報コーナー「山本晋也の人間一滴」に出演しました。ベッカー教授は長年研究テーマとして取り組んできた「臨死体験」の調査研究を紹介すると共に、日米の死生観の違いや日本人の古来からの「死との向き合い方」についてコメントしました。
JSPSサマープログラム2014版リーフレットに内田准教授とBowenさんが紹介されました
JSPS(日本学術振興会)の外国人特別研究員事業である「JSPSサマープログラム」2014版リーフレットに内田由紀子准教授とKimberly Bowenさん(ユタ大学心理学部大学院生)の写真が掲載されました。
Kimberly Bowenさんは本年夏、こころの未来研究センターにJSPSフェローとして約2ヶ月間滞在。受入研究者となった内田准教授のCulture Kokoro Network にて研究報告会を実施するなど、積極的に日本で研究活動をおこない帰国されました。研究発表会の報告はこちら
鎌田教授のコラム「スピリチュアルケア」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 10」(10月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。東北大学でおこなわれた日本スピリチュアルケア学会とアジア太平洋パストラルケア・カウンセリング学会との合同学術大会において「典礼長」を務めた鎌田教授。自身がコーディネートして招待した「雄勝法印神楽」が参加者に大きな感動を与えたその背景には、震災を乗り越えた事実と、神楽パフォーマンスの持つ身心変容技法的要素を持つ歴史的意義、スピリチュアルケアやグリーフケアとの繋がり等があることを考察し、今後、スピリチュアルケアが社会においてますます重要になるだろうと考察しています。
「スピリチュアルケア 負の感情を鎮め昇華 少子高齢化で増す重要性」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
雄勝町は、東日本大震災で大きな被害を受け、神社も神楽道具も流されたが、それを乗り越え、地元復興の核として神楽の復興を手がかりにいろいろと活発な活動をしている。その事実も力強い印象と感銘を与えた。
この「神楽パフォーマンス」を、修験道の身体修行に基づく「社会的・公共的身心変容技法」と捉えることができると同時に、合同学会のテーマとなった「スピリチュアルケア」や「グリーフ(悲嘆)ケア」の実践と捉えることもできる(中略)
日本では十数年前から、終末期医療や緩和ケア、スピリチュアルケアの問題と領域に注目が集まり始めた。阪神大震災後、PTSD(心的外傷)や「心のケア」が問題となったが、東日本大震災後はそれに加えて「スピリチュアルケア」と「グリーフケア」が大きな問題となっている。日本は世界一の少子高齢化社会なので、これらのケアは今後ますます大きな課題となり、スピリチュアルケア学会も重要な課題を担うことになるだろう。
(記事より抜粋)
内田准教授の共著書『農をつなぐ仕事』の書評が農業誌『地上』に掲載されました
内田由紀子准教授と竹村幸祐京都大学経営管理大学院助教(こころの未来研究センター連携研究員)の共著書「農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~」(発行:創森社)の書評記事が、農と食の総合誌『地上 May 2013』(発行:家の光協会)に掲載されました。
『農をつなぐ仕事』内田由紀子・竹村幸祐
農業コミュニティーにおけるつながりのメカニズムについてはまだ明らかではない。本書はこのような問題意識から、二人の心理学者が普及指導員と農業者とのつながりを論じたものだ。コミュニティーの実態から、普及指導員のスペシャリスト機能やコーディネート機能、ロールモデル、仕事のワザやコミュニケーション能力などについて考察しつつ、「つなぎ」力アップのための社会心理学的方法を探っていく。コミュニティーづくりやリーダーシップについても参考になることが多い。引用される指導員や農業の現場からの豊富な声が、本書を熱いものにしている。
(記事より抜粋)
□関連ページ
・内田准教授の共著書「農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~」が出版されました
鎌田教授のコラム「巨大防潮堤」が徳島新聞に掲載されました
徳島新聞文化面「こころの未来 9」に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。東日本大震災被災地で進行中の巨大防潮堤建設計画について鎌田教授はコラムで詳しく紹介。所属する地球システム・倫理学会が出した防潮堤計画への反対と見直しを求める緊急声明を引用・解説しながら、巨大防潮堤が海で暮らす人々の暮らしをどう変えるのか、将来的にどのような問題が考えられるのかを考察し、自然に対する畏怖と生態智に基づいて生きることの重要性を強調しています。
「巨大防潮堤 景観や生態系を破壊 末代まで禍根残す愚作」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
「東日本大震災の後、その復旧・復興過程で、被災地海岸線に最大16メートルの高さ(最大底80メートル)の防潮堤を造ることが計画され、すでに一部着工されています。この計画と実施が、地元住民の考えや生活形態、地域のあり方、将来構想などを充分に組み込み検討することなく進められていることに多くの関係者が疑問を抱いています」
地球システム・倫理学会(服部英二会長)が出した、巨大コンクリート防潮堤への反対と見直しを求める緊急声明だ。(中略)
「自然に対する深く慎ましい畏怖・畏敬の念に基づく、暮らしの中での鋭敏な観察と経験によって練り上げられた、自然と人工との持続可能な創造的バランス維持システムの技法と知恵」である「生態智」に基づいて生きていくよりほか、人類の未来はないのだ。
この誤った選択に転換を迫るべきである。地球システム・倫理学会の声明はNOとSTOPの民の声だ。
「緑の防潮堤」などの代案を真剣に検討・実施すべきである。
(記事より抜粋)
鎌田教授のコメントが読売新聞「『臨床宗教師』養成進む 東日本大震災」記事に掲載されました
8月26日付の読売新聞夕刊7面「心」のページに掲載された記事「『臨床宗教師』養成進む 東日本大震災 広がる霊的体験の悩み」に鎌田東二教授のコメントが紹介されました。
東日本大震災で喪失体験を抱えた被災者のなかで「幽霊を見た」といった悩みを話す人が増えているそうです。こうした人々に宗教的ケアをおこなう専門家「臨床宗教師」の養成が進んでいます。その養成プロジェクトの中心的役割にいるのが、本年7月9日にこころの未来研究センターでおこなわれた第4回震災関連シンポジウム「こころの再生に向けて」において講演をおこなった東北大学の鈴木岩弓教授です。記事では、鈴木教授による臨床宗教師育成の取り組みと共に、鎌田教授のコメントが顔写真と共に紹介されました。
「臨床宗教師」養成進む 東日本大震災 広がる霊的体験の悩み 東北大の鈴木教授ら 不可視の世界「話し相手に」
震災直後から被災地で聞き取り調査を続けている鎌田東二・京都大こころの未来研究センター教授(宗教哲学)も、臨床宗教師に関心を寄せる。
「臨床心理学が、学問的アプローチを生かして当事者が抱える個別の悩みに応えているように、個人の苦しみに応える実践的な宗教学があってもいい。東北大の人材育成は、その第一歩」と評価する。
1995年の阪神大震災ではなかった動きだが、「同年3月の地下鉄サリン事件で宗教への警戒心が高まっていたことや、神戸という大都市と、古くからの信仰が根付く東北という風土の違いが要因」とみる。
鎌田教授は被災地で、供養や祈りが悲しみや苦悩を和らげ、神楽などの民俗行事が地域の活力を取り戻す姿を見て、宗教的儀礼の重要性を実感した。「臨床宗教師は、それぞれの信仰に基づきながら、時代が求める宗教性に向き合っていく存在となる」と話している。
(記事より抜粋)
内田准教授のコメントが中日新聞の「参院選2013」記事に掲載されました
この夏、中日新聞が特集した参院選記事「<不安に踊る>(5)らしく生きなきゃ」(2013年7月20付)に、内田由紀子准教授のコメントが掲載されました。
定職に就かず学業に励むわけでもない「ニート」と呼ばれる若者が増加する日本。「自分らしさ」を追い求めながらも仕事を得られないニートの若者にスポットをあてた記事で、内田准教授は社会心理学の視点から、現代の若者のこころの問題についてコメントしています。
参院選2013 <不安に踊る>(5)らしく生きなきゃ
加藤さんが著作のタイトルに使った「ニート」。定職に就かず、学業に励むわけでもない若者で、総務省の労働力調査によると二〇一二年度は六十三万人。十五~三十四歳の人口に占める割合で過去最多の2・3%に達した。その中には入賞歴のある加藤さんとは違い、何の実績も無いのに「自分は特別」という意識だけが肥大した若者も近年増えているという。
京都大准教授(社会心理学)の内田由紀子さんは、公共職業安定所を訪れた若者が「担当者は僕の能力を分かってくれなかった」とぼやくだけで、職探しもせず帰ったという報告例をよく耳にするという。「頑張っても失敗すると『自己責任だ』と見捨てられる時代。いつも社会から拒絶されるのではないかという不安感が自己愛を肥大化させているのでは」と分析する。
(記事より抜粋)
なお、記事は中日新聞のウェブサイトで全文をお読みいただけます。こちら
センターの「東日本大震災関連プロジェクト~こころの再生に向けて~」が『教職員情報』(発行:京大生協)に掲載されました
京都大学生協が発行する『教職員情報』2013年8月20日号に、こころの未来研究センターの「東日本大震災関連プロジェクト~こころの再生に向けて~」が紹介されました。鎌田東二教授がインタビューにこたえています。
今回は、震災発生以降「こころの再生に向けて」をテーマに4回のシンポジウムを開催している、こころの未来研究センターの鎌田東二教授(宗教哲学)にお話をお伺いしました。
○震災を受けて始まった「こころの再生」へのアプローチ
東日本大震災が発生した後に、こころの未来研究センターとしてどういう取り組みができるのかを話し合いました。その結果として、「こころの再生」に向けた取り組みを進めようということになり、主に宗教学・民俗学・社会心理学・分か心理学のアプローチからの取り組みが進められています。とりわけ私は宗教学・民俗学からのアプローチの研究会を担当し、現在までに計4回のシンポジウムを開催してきました。
(記事より抜粋)
同誌が特集した「東日本大震災を忘れない No.7」という記事において、センターの震災関連の取組みが裏表紙1ページ全体に渡って紹介されました。鎌田教授は、センターが行ってきた震災関連シンポジウム等を紹介しながら、心のケアにおいて宗教が果たす役割や、宗教をキーにした「こころの再生」について理論的にまとめていく必要性を述べています。
河合教授と内田准教授の共編著『「ひきこもり」考』の書評が毎日新聞に掲載されました
河合俊雄教授と内田由紀子准教授による編著『「ひきこもり」考』の書評が2013年8月4日付の毎日新聞「活字を楽しむ 京都読書之森」に掲載されました。書評を担当した野宮珠里記者は、記事のなかで「多様なアプローチでひきこもりに迫った本書は、日本社会の病理をあぶりだし、ひきこもりへの新たな視座を与えてくれる」と評しています。
『「ひきこもり」考』は、臨床心理学者、社会・文化心理学者、ジャーナリストらが「ひきこもり」について多角的に考察した書です。ひきこもりという現象を通して、現代日本が抱える様々な問題や日本の文化的特異性、戦後の私たちが歩みつくりあげてきた日本社会と人々の「こころ」のありようについて考えさせられる一冊です。ぜひ興味のある方は、ご一読ください。
なお、記事は毎日jpのウェブサイトで全文をお読みいただけます。こちら
吉川教授のコラムが『稲和スカラーズソサエティ会報』に掲載されました
吉川左紀子教授のコラム「私の提言:学際研究者のすすめ」が、稲盛財団の運営する研究助成事業の会員組織むけ会報『稲和スカラーズソサエティ会報』17号に掲載されました。
稲和スカラーズソサエティは、稲盛財団より研究助成を受けた研究者・関係者の相互交流を図るために設立された会員組織です。多彩な研究者らがコラムを寄稿している会報で、吉川教授は「学際組織」として7年目を迎えたこころの未来研究センターの歩みと学際組織づくりの舞台裏を紹介。異なる専門領域を持つ研究者が、自らの研究を進めつつ相互横断的に連携する学際的研究の場を「長屋と井戸端」にたとえ、研究者同士のコミュニケーションから新たな研究へと発展する醍醐味や、企業・団体など外部からの訪問者との交流からプロジェクトが生まれ、社会貢献へと繋がる意義についてふれています。
私は、学際組織には、専門別の研究組織にはない、独自の役割や使命があると感じている。とくに、「こころ」のような複雑多様な対象に関わる研究は(「生命」や「社会」なども同様だと思うが)、本来、学際的な研究の場で、複数のアプローチを交錯させながら、時間をかけて研究を育ててゆくことが不可欠だと思う。そして、得られた研究成果や知識を、(論文発表や学会発表で終わらずに)そうした情報を必要とする現場の人たちに、直接届くよう発信するところまでが守備範囲になる。
(記事より抜粋)
鎌田教授の論考「臨死体験と脳科学」が『大法輪』9月号に掲載されました
鎌田東二教授の論考「臨死体験と脳科学」が『大法輪』2013年9月号(発行:大法輪閣)の特集「死んだらどうなる:第一部 死後の世界を考えるということ」に掲載されました。
かつて宗教学者ミルチア・エリアーデは『太陽と天空神ー宗教学概論1』の中で、「宗教現象の本質を、生理学、心理学、社会学、経済学、言語学、芸術学、あるいはその他の学問によって把握しようとするのは誤りである。それはまさに宗教現象にある唯一独自なもの、他に還元できないもの、つまり聖なるものという要素を逃してしまうからである」と述べていた。(中略)
わたしたちはこうした先達の仕事に敬意を払いながら、二〇一一年度より科研「身心変容技法の比較宗教学ー心と体とモノをつなぐワザの総合的研究」を始め、従来の比較宗教学的研究に加えて、fMRIを使った瞑想時の脳の状態を測定しようともしているので、改めて今日的な研究状況と観点から「脳とたましい(霊魂・霊性)」という両極を問題にしつつある。そうした流れの中で、編集部の求めに応じて「臨死体験と脳科学」という問題の概要を考えておきたい」
(記事より抜粋)
古くはプラトンの『国家』や『日本霊異記』『神道集』などに残されている臨死体験の記録。しかしその科学的研究は二〇世紀からと比較的新しく、昨今は臨死体験に対する見方が「死後世界の存在や霊魂の存在」とする立場と「心理学や神経科学的研究から"脳内イベント"」とする立場に分かれている、と鎌田教授は指摘。自らが代表研究者を務める「身心変容技法の比較宗教学」での研究内容を紹介し、瞑想や修験道などの伝統的修行から生まれた「身心変容技法」や「身体知」を整理・比較検討し、その整合性や再現性を探ることで、死生学や身心論と共に臨死体験や体外離脱体験の問題が再検討されていくであろう、という展望を示しています。
鎌田教授の論考「西行の旅と歌の言霊」が『怪』39号に掲載されました
鎌田東二教授の論考「西行の旅と歌の言霊」が、妖怪マガジン『怪』39号(角川書店/2013年7月30日発行)に掲載されました。
『怪』は年三回発行される妖怪専門ムック本です。「妖怪」をテーマに毎回、多彩な執筆陣が寄稿しています。鎌田教授は、旅で遭遇する「怪」を集めた第二特集で、乱世の国内を旅した大歌人・西行法師の生涯とその旅で見た戦乱の記録を追いながら、西行が残した鎮魂の歌を紹介しています。
わたしは自分の名前「東二」に「東」という方位を示す字が入っているためか「東に行く」傾向があるのだが、それに対して「西行」さんはどうなのか、意識し始めたわけである。滑稽だが、佐藤義清・西行に対して鎌田東二・東行という対抗心が芽生えたのである。
二つめは、長じて、西行こと佐藤義清が、平治の乱で源義朝とともに殺されたわたしの直接の先祖鎌田正清の同族で、正清の父通清のまた従兄弟(西行と通清の曾祖父はともに藤原公清)に当たっていて、正清とほぼ同時代人であったことがわかり、いよいよ西行への感心が深まった。(中略)
そこで見えてきたのが、西行の旅のすごさであった。それを支えたのが、高野聖にして真言僧であり、修験者としての西行であったこともわかった。
(記事より抜粋)
鎌田教授が「神社と遷宮の謎」に答えた記事が『歴史街道』8月号に掲載されました
鎌田東二教授が、「神社と遷宮の謎 Q&A」の謎解き役として登場した特集記事が、歴史雑誌『歴史街道』2013年8月号(PHP研究所)に掲載されました。
出雲大社の遷宮に続き、今年は伊勢神宮の遷宮のクライマックスにもあたる「遷宮イヤー」です。現代からの視点で日本や外国の歴史を取り上げている歴史雑誌『歴史街道』8月号には、神社の歴史、遷宮をする意味、日本人にとっての神社の価値、神社を訪れるためのノウハウなどを分かりやすく解説する特集記事が掲載されました。その「謎解き役」となった鎌田教授が数々の疑問に答え、知っているようで知らなかった神社の謎を解明しています。
「神社と遷宮の謎 Q&A」鎌田東二 京都大学こころの未来研究センター教授
Q. 神社では何をお願いすればいいのでしょうか?
神社にお参りする時に、色々なご利益をお願いする人も多いと思います。しかし一方、「神社とは神様に日頃の御礼を述べに行く場所であって、ご利益を願う場ではない」と言う人もいます。(中略)
しかしその時に、もう少し深い部分に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
日本人は、神が顕れる神社という「場」で、多種多様な叡智を伝承してきました。その場で「人としての正しい生き方=道」が受け継がれる。神様に捧げるための様々な供物や歌舞音曲などの「技」が磨かれる。神々の「物語」が紡がれる。「祭」が行なわれる。そして美しい山や海、森などに囲まれたその場で「エコロジカルな智恵」が伝承される...。そこには先祖代々の色々な願いがあり、歴史の積み重ねがあります。それらの結果として、いま自分が存在していることの意味を感じながら、お参りしてほしいと思います。
(記事より抜粋)
吉川教授と河合教授のインタビューが京都新聞に掲載されました
7月25日付京都新聞の医療ページ「 もっと知りたい!健康コラム 心の働きと社会」に吉川左紀子教授と河合俊雄教授のインタビューが掲載されました。
不安やストレスの多い現代社会において、「心の病気」が身近になってきました。新聞では、不眠症、認知症、統合失調症などの具体的な病気や対応法について専門の医師が解説するほか、コラム欄では吉川教授と河合教授が、こころの未来研究センターの取組みについてインタビューに答えています。多様な専門領域の研究者がこころについて研究する意義や、東日本大震災の被災地で心理カウンセラーのサポート活動に取り組んでいる事例などを紹介しています。
「もっと知りたい!健康コラム 心の働きと社会」京都大こころの未来研究センター教授 センター長 吉川 左紀子 氏 教授 河合 俊雄 氏
発達障害の子どもたちの学習やコミュニケーションの支援をしたり、ニートや引きこもりの文化比較研究をしたり、農家の支援を行う普及指導員の人たちが、どのように農業者を支えているのかを心理学の方法で分析したりと、センターで行っている取り組みは本当に多彩です。心のケアや支援というと、子どもや高齢者、病気を抱える人たちのことを考えますが、私たちは、今の社会に必要なのは、そうした弱い立場の人たちを支える仕事をしている、専門職の人たちを支える仕組みではないかと考えています。人や人の心について学んだり話し合ったりする場ですね。センターにそうした場を作りたいと考え、新しい教育事業を始めようとしています。
(記事より抜粋)
記事全文を京都新聞のウェブサイトでお読みいただけます。こちら
鎌田教授のコラム「時間は『直線的循環』」が徳島新聞に掲載されました
鎌田東二教授の連載コラムが8月5日付の徳島新聞文化面に掲載されました。今回は「時間は『直線的循環』繰り返す歴史」というテーマで、循環的時間と直線的時間という2種類の時間観念と、歴史上における時代の類似性、中世と似た現代から生ずる新たな創造的文化への期待について考察しています。
「時間は『直線的循環』 繰り返す歴史 混迷の時代に文化誕生」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
時間について、古く2種類の時間観念があるといわれてきた。一つは循環的時間。回帰する時間。繰り返す時間である。たとえば、平成25年=2013年は一度かぎりではあるが、しかし、正月や桃の節句や端午の節句やお盆や菊の節句や新嘗祭などは、毎年同じ季節の同じ日に繰り返し行う。(略)
一方で、「生老病死」もそうだが「行く河の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず」(鴨長明「方丈記」の冒頭の一節)であり「同じ川の流れに二度つかることはできない」(ヘラクレイトス)、つまり、時間は直線的に流れて二度と回帰することはない。今はもう永遠に戻ってくることはない。(略)
「繰り返す時間と歴史」を、私は「スパイラル史観」と呼んでいる。そして「現代神道論」(春秋社)などの幾つかの著作で、古代と近代、中世と現代がよく似ていると主張してきた。(略)
コロコロと目まぐるしく切り替わる不安定極まりない時代に、能やお花やお茶などの芸能や芸道など世界に誇る日本を代表する文化が生まれてきた。現代も、不安定極まりない時代であるが、そのような時代にこそ、未来に通じる文化創造が間歇遺伝(かんけついでん)のように噴出するのではないだろうか。歴史をそのように直線的循環として考え、未来を切り開く力としたい。
(記事より抜粋)
畑中助教のコメントが朝日新聞『京大学食「ぼっち席」人気』記事に掲載されました
7月29日付の朝日新聞・朝日新聞デジタルに『視線気にせずおひとりさま 京大学食「ぼっち席」人気』という記事が掲載され、学生の声などと共に、畑中千紘助教(上廣こころ学研究部門)のコメントが掲載されました。
最近、京大の食堂にできた、ついたてのある「おひとりさま」でも視線を気にせず食べやすい「ぼっち席」が人気だそうです。「大きなテーブルだと恥ずかしい」「急いでいるとき便利」という学生の声と共に、提供する生協側ではテーブルの回転効率が上がったということで、神戸大など他大学にも「ぼっち席」が広まりつつあるそうです。
記事の最後に登場した畑中助教は、「孤独を恐れる現代の若者らしさがみてとれる。60年代以降、日本の若者に多くみられた『対人恐怖』では、実際に見られていなくても他者の視線を過剰に意識する傾向があった。ついたてで自分の視界を遮れる『ぼっち席』には、対人意識のあり方の変化が表れているようだ」(記事より抜粋)というコメントを提供しています。
記事は朝日新聞デジタルでご覧いただけます。こちら
内田准教授の共著書『農をつなぐ仕事』の紹介記事が『タキイ最前線』秋号と『月刊NOSAI』5月号に掲載されました
内田由紀子准教授と竹村幸祐京都大学経営管理大学院助教(こころの未来研究センター連携研究員)の共著書「農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~」(発行:創森社)の紹介記事が、園芸情報誌『タキイ最前線』秋号(発行:タキイ種苗)と農業情報誌『月刊NOSAI』(発行:全国農業共済協会)に掲載されました。
二誌とも著者による執筆で、普及指導員との出会いから「農業の研究」を行うに至った経緯、調査結果で分かったことを丁寧に紹介すると共に、「つながり」から見えてくる社会と農業の課題について考察しています。
「<研究紹介>農の成り立ちを心理学から考える~指導員の活動を通して見る「つなぐ」ということ~」
農村社会のつながりはどのようにして作られるのだろう?2008年から京都大学こころの未来研究センターの調査チームでは、農村社会において、人と人とのつながりについての研究を行ってきました。中でも特に、普及指導員の役割に注目し、調査を実施しました。
「農業の研究」をなぜ心理学者の私たちが行うことになったのか、その経緯も実は一つの「つながり」から生まれました。ある時近畿農政局におられた職員の方が「農業社会をつないでいる普及指導員という仕事があります。心理学からみたらどう思われますか」と、こころの未来研究センターを訪ねてこられました。恥ずかしながら我々は普及事業については何も知らず、つまりまったくのゼロから研究をスタートしました。農業者の方や普及指導員さん、行政やJAの職員さんなどさまざまな方にお会いし、普及について勉強を重ね、ついには普及指導員を対象とする大規模な調査の実施に至ったのです。
(『タキイ最前線』記事より抜粋)
「自著自薦 『農をつなぐ仕事』普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ」
4千名をこえる普及指導員からの回答を得た調査からわかったことは、人と人を「つなぐ」普及活動の重要性である。農村の住民同士の連携を育み、外部の関連機関との連携調整を図る、そうした無形の財産ーつながりーを生み出す普及指導員の仕事が、農村コミュニティにおける生活を助けていることが示された。
日本の社会では、家族や地域・自然との「関係性」が幸福の源になっている。特に農耕では人と人との共同作業が欠かせない。これは一方で「縛り」をもたらす関係でもあるため、人々は農地を捨てて都会に出て行った。しかし「農」には、日本社会の中で育まれた「心の有り様」に働きかける要素が詰まっている。一方で、「農」が見直されるためには、経済活動としての「業」の運営についても今日的話題が数多くある。「農」と「業」のインターフェースをつくり、そこに様々な人々を巻き込んでつながりをつくっていく、その鍵は「農をつなぐ仕事」にあるのかもしれない。
(『月刊NOSAI』記事より抜粋)
『農をつなぐ仕事』は、こころの未来研究センターでの「きずな形成」プロジェクトの一環として、2009年より「農業者をつなぐ」普及指導員という職業にスポットをあて、心理学の視点と方法で「普及指導員が農村社会で構築するきずな」を調査・検証した結果をまとめた書です。全国で活動する数多くの普及指導員を対象にした大規模な調査を通してその役割を浮き彫りにすると共に、農村社会における社会的な「つながり」がどのように形成されているのかを明らかにし、地域社会や組織の根幹をなす「人と人をつなぐ」行為の重要性と"ワザ"について分析しています。
書籍について、さらに詳しくは下記リンク先の記事をご覧ください。
河合教授と内田准教授の共編著『「ひきこもり」考』の書評が『児童心理』2013年8月号に掲載されました
河合俊雄教授と内田由紀子准教授の共編著『「ひきこもり」考』の書評が、『児童心理』2013年8月号(発行:金子書房)の書評ページ「今月の本棚」に掲載されました
『「ひきこもり」考』評者 高石恭子 甲南大学教授
本書は、現代のわが国で社会現象として問題になっている若者の「ひきこもり」について、京都大学こころの未来研究センターが二〇〇八年に行ったワークショップを基に書かれた論考集である。前半は、アメリカのジャーナリストや日米の社会心理学社のマクロな視点から、後半は、個々人の内側に寄り添う臨床心理学者(ユング派分析家ならびに認知行動療法家)のミクロな視点から、ひきこもりへの多角的な理解が試みられ、最後にオーストラリアの社会心理学者によるコメントが寄せられている。(中略)
このテーマに関しては、すでに多数の書物が世に出ているが、本書の特徴は、特定の原因や支援方法を示すのではなく、一つの社会現象に対し、マクロとミクロの複眼的な接近を通して(いわば、外側と内側から同時に光を当てるような方法で)、理解をしようとしている点にある。そして、期せずして双方のアプローチから共通に浮かび上がってきたのは、ひきこもる人々の心性に存在する表層の個人主義的な(近代の欧米から取り入れた)意識と、深層の関係志向的な(日本文化に刷り込まれた)ありようとの矛盾と解離であった。
(掲載記事より抜粋)
『「ひきこもり」考』には、河合教授、内田准教授をはじめ、ジャーナリストのマイケル・ジーレンガー氏、北山忍ミシガン大学教授(こころの未来研究センター特任教授)、嘉志摩佳久メルボルン大学教授、境泉洋 徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部准教授、ビナイ・ノラサクンキット ゴンザガ大学助教らが論考を寄せています。
下記リンクの記事では、内田准教授による詳しい書籍の紹介をお読みいただけます。ぜひご覧ください。
『死を恐れなかった日本の文化』第36回品川セミナーベッカー教授の講演が読売新聞で紹介されました
2013年5月10日(金)に行なわれた京都大学第36回品川セミナーでのカール・ベッカー教授の講演が、5月20日付の読売新聞にて紹介されました。
私が来日した40年前、日本人の多くが在宅で亡くなった。家族が身内の往生を共有することで、老いや死という自然の摂理を受け入れてきた。死に直面しても、「あの世」で親や友人に再会できるという希望を抱き、死を恐れない文化であった。
だが、20年もたたないうちに病院で死ぬようになり、近親者の死をみとることがなくなってきた。死を知らなくなった結果、日本人は死を恐れる民族に転じた。
終末期にどのような医療を受けたいかなどを生前に決めておく習慣がないため、死に臨んで混乱が起きるのも気がかりだ。
生き、老い、病を得て死ぬことは、科学だけでは理解できない。そんな時には、日本人の経験と知恵に答えを見いだすことができるのではないか。
(読売新聞記事より抜粋)
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こころの未来研究センター報告記事
ヨミウリ・オンライン報告記事
鎌田教授の論考『神道と浄め』が『サンガジャパン Vol.14』に掲載されました
鎌田東二教授の論考『神道と浄め』が、仏教総合誌『サンガジャパン Vol.14』(発行:株式会社サンガ)に掲載されました。サンガジャパンは、仏教と人の道をあらゆる角度から考察する総合雑誌で、毎号、多彩な執筆陣による論考が掲載されています。仏教と神道がテーマとなった今号では、鎌田教授が特集記事のトップに『神道と浄め』というテーマの論考を寄稿しています。
明確な教義が存在し、体系的な論理や教理が大切にされている仏教に対して、教義がないとされる神道にも、神々の源泉から湧き出る歌や祭りなどの感覚的な「潜在教義」があるとする鎌田教授。その「表現(あらわれ)としての神道」を「場」「道」「美」「祭」「技」「詩」「生態智」の7つの特性から位置づけ、神道の根底にいきづく潜在教義について解説しています。さらに神道と仏教の比較を様々な視点から行った上で、仏教で定められた救済方法(=浄め)に対して神道の浄めがどのようなルーツで生まれ、どのように仏教と関係を持つに至ったのか、イザナミとイザナミ、スサノヲらの登場する『古事記』のストーリーで表される浄めと鎮め、『万葉集』での歌による浄め、加えて『日本書紀』から仏教の「止観」による浄めを説きながら、「神道的な歌による心の浄めと鎮め。そして仏教的な止観による心の浄めと鎮め。この二つのワザがしっかりとわが国に根づいた『心のワザ学』である」と考察しています。
「神道と浄め」鎌田東二 京都大学こころの未来研究センター教授
「神道」とは何かを明確に語ることは容易くない。その理由の第一は、神道には明確な教え・教義というものがないからである。そのために、「神道は教義なき宗教である」という言い方がなされる時がある。それはあながち間違いではないが、だからと言って、何もないわけではない。神社はあるし、祭りもある。『古事記』や『日本書紀』や『古語拾遺』や『先代旧事本紀』などの神話や家伝を記した古典もある。明確な教義こそないが、そこには何らかの「潜在教義」がある。そのように考えたのがわが恩師の一人、神道神学者の故・小野祖教(國學院大學教授)であった。
(中略)
神道は明確な教義はないが、しかしいろいろな形に表れている。その「表現(あらわれ)としての神道」を「神道の潜在教義」として、次の七つの特性から位置づけてみたい。
1. 「場」の宗教としての神道
2. 「道」の宗教としての神道
3. 「美」の宗教としての神道
4. 「祭」の宗教としての神道
5. 「技」の宗教としての神道
6. 「詩」の宗教としての神道
7. 「生態智」としての神道
以上の七つの特性である。
(記事より抜粋)
□関連情報
『サンガジャパン Vol.14』の雑誌案内ページ
鎌田教授のコラム「柳宗悦と岡本太郎」が徳島新聞に掲載されました
鎌田東二教授のコラム「柳宗悦と岡本太郎」が7月1日付の徳島新聞文化面に掲載されました。
「こころの未来」というコラムタイトルで毎月連載を続けている鎌田東二教授。7回目の今回は、「民藝運動の父」と呼ばれる思想家・柳宗悦と芸術家・岡本太郎の二人が持つ共通点に着目し、日本の伝統美を新たな視点で見出した彼らの生涯と活動を紹介しながら、今、ここで「日本発見」を捉え直す必要性について考察しています。
「柳宗悦と岡本太郎 日本の『伝統美』発見 民衆生活に根差す価値」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授
柳は無名の陶工たちが「無心」で作った焼き物などの工芸品の中に「用の美」を見いだした。それは自然の美をたたえた生活の美といえる民衆芸術の創造力と美の発見だった。彼は北海道から沖縄まで旅し、アイヌ文化や沖縄文化をはじめ、素朴ではあるが自然な美しさを深く宿した「手わざ・手仕事」を発掘していった。
それに対して岡本太郎は1930年、19歳で漫画家の父岡本一平と作家の母岡本かの子と共に渡仏し、その後、一人で10年間パリで暮らして当時最新の芸術運動であるシュールレアリスムや抽象画運動に参加し、「民族学」(エスノロジー)を学ぶ。帰国後、それまでほとんど顧みられることのなかった縄文土器に「美」を見いだし、やはり北海道から沖縄まで旅して「日本の伝統」「日本再発見」「神秘日本」「忘れられた日本ー沖縄文化論」などの著作を次々と著していった。
この2人の仕事は、日本の「伝統美」の「再発見」と「再評価」という点で共通している。いやむしろ、それまで見向きもされなかったものに新たに美を見いだしたのだから「再発見」というよりも「新発見」と言った方がよいかもしれない。伝統の表舞台には立っていなかったけれども、しっかりと民衆生活の中に根差して現われ出てきた「かたち」と「ちから」を彼らはしっかりと受け止め、評価して、世に送り出したのだ。(中略)
さて今、わたしたちの時代と文明はどこへ向かっているのか?「経済発展」とか「成長」とかが必然的に生み出してきた近代以降の負の遺産を経験したわれわれは、もう一度、柳宗悦や岡本太郎や山尾三省が見て取り問題提起した「日本発見」を捉え直し、練り直さなければならないのではないか。それは、自然ーいのちー生活に根を下ろした「美の霊性と呪力」の創造と解放である。
(記事より抜粋)
『死と向き合う。それは生き方を正すこと』カール・ベッカー教授のインタビューが読売新聞に掲載されました
カール・ベッカー教授のインタビュー記事が、6月15日付の読売新聞1面・17面の特集記事「Nippon 蘇れ 私の処方箋」に掲載されました。
超高齢社会となった日本で今後、求められる「望ましい生き方」や「人のための医療の形」とはどのようなものか。読売新聞の特集記事において、ベッカー教授は日本に古くからある「死者のお迎え」や「在宅での看取り」を紹介し、その歴史的背景にある日本人の豊かな精神文化を紹介。死から目をそむける現代社会の問題点を指摘しながら、在宅での看取りと日本的他界感を再評価する必要性を語っています。
「死と向き合う。それは生き方を正すこと 『お迎え』は日本の文化 在宅での看取り 増加に対処」カール・ベッカー 京都大こころの未来研究センター教授
死を視野に入れて生きるというのは自分の生き方を正すことでもある。私も死の研究者として、毎晩布団に入る時に、きょうの生き方は良かったのかと反省し、このまま死んだら悔いはないのかと自問自答している。
高齢者数に比べて病床数が限られる以上、今後は在宅での看取りが増えていくだろう。亡くなる人と家族が満ち足りた思いで死を迎えられるよう、在宅の看取りと日本的他界感を再評価すべき時がきている。
(記事より抜粋)
河合教授の書評『色彩を持たない多崎つくると、彼の瞑想・巡礼・祈り』が『小説トリッパー』に掲載されました
ベストセラー小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』(村上春樹・著)の河合俊雄教授による書評『色彩を持たない多崎つくると、彼の瞑想・巡礼・祈り』が、週刊朝日別冊『小説トリッパー』2013年夏季号(朝日新聞出版)に掲載されました。
村上春樹の作品は、現代の意識や世界を反映しているところが興味深いが、この作品では個人の内面が前面に出ており、またここでは紙数が限られていることもあって、主人公のこころの遍歴と癒しにしぼってみていきたい。そこに心理療法家としての視点も入れていければと思う。
タイトルに「巡礼」ということばが入っているが、中沢新一は宗教の方法として、瞑想、巡礼、祈りがあることを指摘している。実はこの作品にはその三つの要素がそれぞれに認められるので、それを手がかりに主人公の変容をみていきたい。
(記事より抜粋)
同書について、河合教授はすでに『新潮』7月号にて1万2千字に及ぶ論評を寄稿していますが、今回は、主人公・多崎つくるの「こころの遍歴と癒し」にフォーカスをあて、「1 瞑想」「2 巡礼」「3 祈り」という3つの要素に添って物語を読み解いています。
「1 瞑想」では、多崎つくるが経験する強烈な夢とイマジネーション体験を取り上げ、不思議な青年、灰田との交わりによって浮き上がった過去の女性たちとの関係性の表出について、ユングの『赤の書』でのアクティヴ・イマジネーションと対比させながら解説しています。続いて「2 巡礼」では、自分を裏切った友人たちを訪ねる主人公の旅の過程と最後に得られる気づきと癒しについて、「3 祈り」では、すべての巡礼を終えた多崎つくるの心の動きをみつめ、村上作品におけるコミットメントの変化について温かなまなざしで考察しています。
□関連情報
河合教授による村上春樹最新作の論評記事『色彩を持たない多崎つくるの現実への巡礼』が『新潮』7月号に掲載されました
ベストセラー小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上春樹/著)を論評した河合俊雄教授の記事、『色彩を持たない多崎つくるの現実への巡礼』が、『新潮』2013年7月号に掲載されました。
近年、ユング派分析家としての独自の視点で論じる村上春樹小説論が注目されている河合教授。2011年には『1Q84』を中心とする一連の作品を夢分析の手法から内在的に捉えた『村上春樹の「物語」夢テキストとして読み解く』(新潮社)が刊行されて話題となりました。本年10月にスイス・チューリッヒで開催される "The Zurich Lecture Series in Analytical Psychology" に講師として招かれており、村上作品と中世の物語をテーマにレクチャーし、その講義録(英文)が欧米で出版される予定です。
河合教授の村上春樹小説論の最新版となる今回の記事では、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が、過去の村上作品から新たな展開を遂げた重要な作品として紹介されています。
『色彩を持たない多崎つくるの現実への巡礼』河合俊雄
最新作の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』については、既によく指摘されているように、『ノルウェイの森』以来のリアリズムの小説で、主人公の個人的な関係に焦点を当てている印象がある。しかしこれは個人的な問題でありながら、現代の意識とこころの課題に向き合ったものと考えることができないであろうか。その意味でこれはこれまでの村上春樹の作品を受けつつ、新たな展開を示しており、現代を生きる人たちにとって重要な示唆をしているものと考えられるのである。
(記事より抜粋)
論評では、『1Q84』や同じリアリズム形式をとる1987年の作品『ノルウェイの森』などとの具体的な対比例の数々が興味深い内容で挙げられています。これまで代表的なパターンとして描かれていた「超越的な世界」が本作では二世界的にバラバラに存在せず、同じ内的世界の過去に設定されていること、『1Q84』における高速道路や『ねじまき鳥クロニクル』における井戸、『ダンス・ダンス・ダンス』におけるエレベーターなどの垂直的なメタファーがなく、現実的で水平的な移動や過去へと向かう時間的な移動のみであること、『1Q84』で語ることができたユング心理学からの「四位一体性の図式」が本作では当てはまらず、鍵となる数が「四」から「五」へと移行したことなど、これらの意味について鋭い考察と圧倒的な説得力で語られています。作品論を通して、現代における人々のこころの課題が浮き彫りになると共に、心理学者の視点で村上作品を読み解くことの面白さが実感できる論評です。
河合教授のコラムが『月刊FECニュース(民間外交推進協会)』に掲載されました
民間外交推進協会(FEC)が発行する広報紙「月刊FECニュース」6月号に、河合俊雄教授のコラムが掲載されました。
民間外交推進協会は、様々な国際事業を通じて民間レベルでの外交の推進を目的とした団体です。河合教授は6月号のコラム欄において、西洋で成立し日本に導入された心理療法が、日本独自の文化の影響を受けて変化と発展を遂げた歴史を紹介し、政治や経済においても歴史を見据えた長いスパンで見つめることの大切さについて述べています。
「日本古来のものと中世」河合俊雄(京都大学こころの未来研究センター教授)
最近の政治家などの言説を聞いていると、国際感覚の欠如した、イデオロギー的な保守主義に回帰したようなものが多いと感じるのは私だけであろうか。しかし日本古来のものを再評価するなら、戦前などよりもっと長い歴史で考える必要があるのではなかろうか。
専門外のことに口をはさむつもりはないので、自分の専門である心理療法を考えてみると、これは19世紀末にヨーロッパで成立したもので、西洋の意識の歴史性を前提としている。.....
(記事より抜粋)
ニュースは民間外交推進協会のウェブサイトにて公開されています。リンク先のPDFを開いてお読みください。右上の画像をクリックするとご覧いただけます(河合教授のコラムは7面です)。
鎌田教授のコラム『震災後の修験道』が徳島新聞に掲載されました
鎌田東二教授のコラムが徳島新聞文化面「こころの未来6」(2013年6月7日付)に掲載されました。鎌田教授は、東日本大震災後の取り組みを紹介しながら、福島原発事故が次世代に残した負債と向き合い、未来社会を構想する手がかりのひとつとして「修験道」に注目。日本列島の風土の中で神仏習合の独自文化を編み出した修験道の叡智を呼び戻すことが、原発事故後の日本における「震災解読・解毒」のワザのひとつとなり得る、と考察しています。
『震災後の修験道 神仏習合の叡智が鍵 自然に宿る「生態智」読解』鎌田東二 京大こころの未来研究センター
「3.11」後の日本列島は、ナウシカ的な文脈でいえば、放射能という「瘴気」を放つ「腐海」の森を抱え込んでいる。そしてそれは万年単位の消却年数を要する。将来世代のことを考えれば、気の遠くなるような負債を抱えた生活を余儀なくされる。
だからこそ、そうした事態を生み出した過去の原因や条件を探り、現実を受け止めつつ解決を図っていく未来社会の構想や方向性を探る責任がある。それが震災をどう読み解き、その「読解」に基づいてどのような方法で「解毒」することができるかを問いかけることとなる。(中略)
神仏分離とは対極にある、鵺(ぬえ)のような形態と生命力を持つ神仏習合の極みの修験道。それは前近代の「生態智」的なワザと知恵を一身に体現するものであったがゆえに、近代から排除された。だがその近代化が生み出してきた最大の負債である福島原発事故後、もう一度、「震災解読・解毒」のワザの一つとして、日本列島の風土の中で神仏習合の独自文化を編み出した修験道の叡智を呼び戻すことには大きな意味と必然があると思う。
(記事より抜粋)
『死を迎える前に』 ベッカー教授のインタビューが日経新聞に掲載されました
カール・ベッカー教授のインタビュー記事「死を迎える前に 一日を大事に反省こめて 来世とも向き合う カール・ベッカーさんに聞く」が、日本経済新聞(2013年5月25日付)に掲載されました。
日経新聞では毎週土曜日の夕刊で「シニア記者がつくる こころのページ」を連載しています。8段に及ぶ長い記事のなかでベッカー教授は、戦前の日本と現在の日本における死生観の違いを指摘し、死や生のリアリティーが希薄となった今、死が身近だった昔の人々の生き方を見習い、あらためて死生観教育をすることの大切さを語っています。また、日本の医療が日本人の伝統的な価値観や死生観と相反することに疑問を投げかけ、死を目前にした末期患者やその家族がいかに死と向き合うべきか、健康な状態であっても自分の来るべき死に備えてどう心構えを持つべきか、長年の研究人生を振り返りながらじっくりと語っています。
「死を迎える前に 一日を大事に反省こめて 来世とも向き合う カール・ベッカーさんに聞く」
○死をタブー視する社会を変える教育を
米国のハワイ大で住んでいたころに、日系人の末期患者が潔く死んでいく姿や、家族のみとりの様子に感銘を受けた。1975年に来日して京都大などで日本古来の死生観や宗教観を研究。死を迎える伝統的な知恵を明らかにし、時代の変化にも着目した。
「戦前までの日本は死を自然の摂理、次の世への出発であると受け入れ、死を怖がらない社会でした。しかし私が来日したころから死の迎え方が大きく変わります。それまでは8割が自宅、2割が病院で亡くなっていたのが、70-80年代に逆転し、今や病院死が8割以上。長寿にもなって、身近に死をみとる経験が減り、死が知らない怖いものになりました。死を覆い隠す社会が死への恐怖と無知を生み、残虐な殺人や自殺につながる面もあると思います」(中略)
○末期の過ごし方は素直に考えたい
患者の死生観を調べるため病院に出入りするうちに、テーマは生命・医療倫理や環境倫理に広がった。日本の医療が日本人の伝統的な価値観や死生観と相反するのに疑問を持ち、日本的な医療倫理の構築に取り組むとともに、末期患者や遺族のケアをするカウンセラーの育成に力を注ぐ。
(「シニア記者がつくるこころのページ」記事より抜粋)
テレビ番組『ガリレオX』にセンター連携MRI研究施設での実験風景が放映されました
BSフジで放映されているテレビ番組『ガリレオX』に、こころの未来研究センター連携MRI研究施設での実験風景が放映されました。
ガリレオXは、毎週日曜の朝、BSフジにて放映されている30分の科学ドキュメンタリー番組です。サイエンスやテクノロジーに関わる新しい動向や注目の研究を、本格的に分かりやすく紹介しています。
4月28日放映の番組では、「なぜ脳はだまされるのか?『錯覚』から見える脳の戦略」というテーマで、錯覚の現象の数々を紹介するとともに、錯覚にかかわる最新の研究をレポート。本来動いていない画像を見ても動いていると錯覚してしまう「錯視」の状況下で脳のどの部分が活発に反応しているのか、文学部の蘆田宏准教授(視覚科学)と、こころの未来研究センターの中井隆介研究員がfMRI装置で脳測定を行う様子や結果が紹介されました。
以下、番組映像からセンター連携MRI研究施設の部分をご紹介します。
センター連携MRI研究施設のfMRI装置で「錯視」時の脳活動を測定中。
隣りの操作室でモニター観察するこころの未来研究センターの中井研究員(写真右)と文学部の蘆田准教授(写真左)。
連携MRI研究施設内部。
研究施設名もテロップで紹介されました。
(ガリレオX「なぜ脳はだまされるのか?『錯覚』から見える脳の戦略」放映画面より)
□ガリレオX 番組サイト
http://web-wac.co.jp/program/galileo_x/gx130428-2
□こころの未来研究センター連携MRI研究施設のページ
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/MRI/index.php
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
鎌田東二教授のコラムが徳島新聞文化面「こころの未来5」(2013年5月1日付)に掲載されました。「風の谷のナウシカ」や「となりのトトロ」などのジブリ作品を宗教学者の視点から読み解きながら、宮崎駿監督による作品群が宗教学や民俗学、比較文明学の教材となり、自然と人間と文明社会のあり方を考えるにあたって公共哲学的な公共財となり得る、と解説しています。
「ジブリに見る神 宗教文化の変遷反映 原像衰退し「神殺し」へ」鎌田東二 京大こころの未来研究センター
私は、監督の宮崎駿氏は現代の予言者ではないかと思っている。最も好きなのは「風の谷のナウシカ」だ。(中略)
アニメ版「風の谷のナウシカ」が新約聖書だとすれば、漫画版「風の谷のナウシカ」は旧約聖書である。旧約の世界は罪と罰の中で救済を待ち望む深い苦悩が描かれるが、新約では救世主(キリスト)が登場して救いが実現する。アニメ版ナウシカは救世主的に見える。あえて宗教学的な観点から言うと、漫画版は哲学的思索の展開、アニメ版は神学的メッセージの発信を特色としているといえる。
これに対し「となりのトトロ」は誰でも楽しめる作品で、どこにも難しいところがない。だが、そこに仕掛けられているディテールは実に選び抜かれ、考え抜かれているように見える。(中略)
日本人の生活に溶け込んだ民間信仰をこれほど違和感なく描き切れる監督は宮崎氏を置いて他にいないと断言できる。
(記事より抜粋)
鎌田教授の講義録「1910年と南方熊楠と生態智」が『エコ・フィロソフィ研究 第7号 別冊』(東洋大学)に掲載されました
鎌田東二教授が2013年2月24日、東洋大学で特別講演を行った「円了×熊楠 近代日本のエコ・フィロソフィ/1910年と南方熊楠と生態智」の講演録が、『エコ・フィロソフィ研究 第7号 別冊』(発行:東洋大学「エコ・フィロソフィ」学際研究イニシアティブ(TIEPh)事務局)に掲載されました。
公開シンポジウム「円了×熊楠 近代日本のエコ・フィロソフィ」
▽日時:2013年2月24日(日)13:30縲鰀17:30
▽会場:東洋大学白山キャンパス
▽主催:東洋大学「エコ・フィロソフィ」学際研究イニシアティブ
特別講演 鎌田東二「1910年と南方熊楠と生態智」
南方熊楠を一九一〇年(明治四十三年)という時間軸で一コマショットのように切り取ってみよう。すると、その年に、彼がどんなアクションをしたかが、コマ撮りのように印象深く見えてくるだろう。
この年、南方熊楠は、強烈な神社合祀反対運動を展開して田辺警察署にぶちこまれた。政府の命じた神社合祀運動を積極的に進める和歌山県吏田村和夫に面会を求め、会場となっていた田辺中学校講堂に「家宅侵入」して揉み合いになり、取り押さえられ、十八日間も拘置所に入れられて拘留・訊問されたからである。その真剣ではあるが、いささか滑稽な南方熊楠像が鮮明に映し出されてくる。なぜ南方はそのようなエキセントリックな行為に及んだのだろうか?
唐突に思えるだろうが、わたしは、その彼の思い詰めた行動にはハレー彗星の影響が幾分かあったと考えるものである。
この年、一九一〇年五月十九日、地球にハレー彗星が最接近した。その時、世界中で地球滅亡が噂され、パニックとも珍現象ともいえる動きが起こった。(中略)
この一九一〇年の激震・激動を、わたしは「一九一〇年問題」とか「ハレー彗星インパクト」と呼んでいる。この時初めて、地球史的危機が世界的な希望で意識化されたと考えているので、この年を他の年とは異なった異様性を持った年として位置づけたいのである。その年との大きな違いもしくは特徴は、今日で言う「環境問題」の浮上であった。
この時、「エコロギー」なるイギリス仕込みの新学問を引っ提げて神社合祀反対運動を展開したのが南方熊楠であったが、その南方の思想と実践をその時代の思想と文化運動の文脈の中で捉え直し、今ここに突き刺さってくるメッセージとして読み解いてみたい。
鎌田教授は、3月に刊行された『モノ学 感覚価値研究 第7号』において、上記講演会での発表内容を含んだ南方熊楠に関する論考「南方熊楠の『心理学』を中心に」を発表しています。こちらは、全文をダウンロードしてお読みいただけます。興味のある方は下記リンク先にてダウンロードして、お読みください。
□モノ学 感覚価値研究(年報)PDFのページ(※第7号本文をダウンロードしてお読みください)
http://mono-gaku.la.coocan.jp/
「共鳴するそれぞれの『物語』 自己と他者つなぐ村上作品」京都新聞(5/10朝刊)に河合俊雄教授のコラムが掲載されました
■公開インタビューで村上春樹氏が話した『物語』とは何か。河合教授がみずからコラムで解説
京都新聞5月10日付朝刊に、河合俊雄教授が寄稿したコラムが掲載されました。5月6日に行われた「村上春樹公開インタビュー」でテーマとなった「物語」について、河合教授は当日のインタビューの村上氏の話を振り返ると共に、村上作品や河合隼雄先生の存命中の言葉に光をあてながら解説しています。
共鳴するそれぞれの『物語』 自己と他者つなぐ村上作品 京都大学教授、河合隼雄財団代表理事 河合 俊雄
「河合隼雄先生との間では何がではない、何を共有したかという物理的な実感があって、それが『物語』というコンセプトでした」
これは、河合隼雄物語賞・学芸賞の設立を記念して6日に京都大学で行われた公開インタビューでの、冒頭における村上春樹さんのスピーチから私がメモしたものである。(中略)
スピーチを聞いて、財団を設立するにあたって、河合隼雄のキーワードとして「物語」に焦点を当てて活動していこうとしたのにやはり間違いはなかったのだという確信を得た。けれども、その物語とはいったい何なのであろうか。(中略)
村上さんは、物語のつなぎ合わす力によって、魂のネットワークのようなものを作りたいと述べた。物語に呼応して感動することと、自分の物語を相対化することという、一見矛盾することが同時に指摘されていたのがとても印象的であり、腑に落ちた。つまり村上さんの書く物語は、もはや誰もが同一化できるようなイデオロギー的なものではない。時代の混迷が強まると、保守的で安っぽい物語に回帰しようという傾向が日本でも強まっているような危惧を覚えるが、そのような物語ではないであろう。それぞれの人が自分の物語を生きているなかで、村上さんの作品を読むことによって、自分の物語がそれに共鳴しつつ、またそれによって相対化されるのであろう。これは全体がある物語に染まるのではなくて、それぞれのミクロな物語が残りつつも、共振することなのであろう。
(京都新聞2013年5月10日付朝刊(文化)14面「フォーラム京」記事より抜粋)
【関連ページ】
□「河合教授が代表理事を務める河合隼雄財団が村上春樹公開インタビューを開催」(レポート)
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/news/2013/05/post_87.php
□河合隼雄財団ホームページ
http://www.kawaihayao.jp/
『国立大学の東日本大震災復興支援』にセンターの取り組みが掲載されました
一般社団法人 国立大学協会が発行した冊子『国立大学の東日本大震災復興支援』に、こころの未来研究センターの取り組みが掲載されました。本冊子は、震災直後から2012年10月末日までに全国の国立大学が東日本大震災被災地に対して行なった様々な活動を取りまとめて紹介しています。
第4章『国立大学の取組一覧』では、センターが行なった「東日本大震災関連プロジェクト-こころの再生に向けて」シンポジウム・研究会をはじめ、被災地調査訪問、スクールカウンセラー派遣事業、東日本大震災におけるメディア報道分析など、複数の取り組みが他大学の活動と共に一覧で紹介されています。
冊子は国立大学協会のウェブサイトよりPDFファイルをダウンロードして全ての内容を読むことができます。下記リンクからアクセスしてご覧ください。
『国立大学の東日本大震災復興支援』 PDFダウンロードはこちら
・2013年3月11日発行
・編集発行 一般社団法人国立大学協会
巻頭言 「国立大学の東日本大震災復興支援-震災復興のために、今、国立大学ができること-」
目次
国立大学の東日本大震災復興支援について
第1章 『震災発生直後からの被災地への緊急的な支援活動』
・医療支援活動、学生ボランティア活動、義援金、緊急物資支援、被災学生への対応等の紹介
第2章 『被災地復興のための中長期的な取組』
・医療・健康支援、メンタルヘルスケア、モニタリング、除染など原子力災害に関する活動、震災などの学術的調査に関する活動、農林水産業や地域の復興計画等の活動、教育支援・ボランティア、記録保存、地域コミュニティを元気づける活動の紹介
第3章 『未来に向けての取組』
・震災復興や地域防災にかかる恒常的な組織やプロジェクトを紹介
第4章 『国立大学の取組一覧』
・国立大学の復興支援の取組一連、シンポジウム・講演会の開催一覧等を紹介
第5章 『国立大学協会の活動』
・国立大学協会が各国立大学へ発出した通知などを紹介
□国立大学協会のホームページ
http://www.janu.jp/
□東日本大震災とこころの未来
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/eqmirai/index.html
河合教授のインタビューが『VERY』5月号に掲載されました
河合俊雄教授のインタビューが、『VERY』5月号(光文社)に掲載されました。
VERY(ヴェリィ)は、30代後半縲鰀40代前半の女性向けのファッション&ライフスタイル誌です。河合教授は、「『母性神話』にさよならを」という育児中の女性が直面する母性イメージとの葛藤をテーマにした記事に登場。ユング心理学における「母性原理」と「父性原理」の考え方などを紹介し、読者アンケート結果を読み解きながら現代社会の母子の歪んだ関係やそこに潜む見えざる問題について考察し、読者へのアドバイスを提供しています。
「母性=母親ではないのです」 河合俊雄先生インタビュー
ユングは男女問わず、すべての人の心の中に母性原理と父性原理が共存していると説きました。善悪や能力に応じて「選別し、切り離す」示す父性原理に対し、母性原理の肯定的な面は平等に生み育てるものであり、区別と分離のないことの否定的な面として「呑み込み、しがみつき、死に至らしめる」暗黒の深さを挙げています。
河合隼雄の理論によれば、子どもを見守り、よきにつけ悪しきにつけすべてを平等に「包み込む」という母性の原理は隣近所、親類、そして大きな意味で自然も含めた概念でした。しかし、父親・母親というポジションの意味が薄れ、コミュニティが失われると、母性のすべての役割、機能が母親ひとりに押しつけられる可能性が生じてきます。けれども本来、母性など人間がひとりで背負いきれるものではないのです。(中略)
大事なことは、「いま何が起きているか」に気づくこと。世の中の流れに合わせる必要はないですから世の中が求める母性と自分の母性のありようを区別し、選択していくこと。区別ができれば、役割や機能の分散ができ、ひとりで抱え込まなくてすみますから。
(『VERY』5月号 "「母性神話」にさよならを" 記事より抜粋)
ベッカー教授の記事が『グリーフケア』創刊号に掲載されました
上智大学グリーフケア研究所発行の『グリーフケア』創刊号(2013.3.18)に、カール・ベッカー教授が参加した座談会記事「グリーフケアの課題と未来」が、掲載されました。グリーフケア研究所は、日本で初めて「グリーフケア」を扱う研究所として2009年4月に聖トマス大学(兵庫県尼崎市)に開設され、2010年4月に上智大学に移管されました。ベッカー教授は、客員所員を務めています。
本誌には論文のほか、研究所員と識者による座談会記事などが掲載され、ベッカー教授は浅見昇吾グリーフケア研究所正所員、戸松義晴浄土宗総合研究所主任研究員と共に「グリーフケアの課題と未来」というテーマで座談会を行ない、グリーフケアの現状と直面する問題、そして今後の展望について話しています。
ー今後のグリーフケアー
浅見:つながりやコミュニティがなくなったら、今後のグリーフケアのメインターゲットとなる方々に対して、元のコミュニティ関係を取り戻させるのは難しいということですね。そうだとすると、私たちはグリーフを抱えている人たちに対して、どういうカウンセリングなり、ケアなりをしていくべきなのでしょうか?
ベッカー:声を大にして伝えたいのは、死を語れる空気をもっと増やしていかないといけないということです。我々は死に囲まれています。すぐそばの病院で他人が死にかけつつあるという意識で私はここに勤めています。(中略)生きたままこの地球を出られないなら、亡くなるまでをどう過ごすのか?そして、「おしまい」をどう迎えるのか?その危機感と真剣さを持って生きて初めて、友人が先に亡くなるか、あるいは自分が先に亡くなってしまう場合、自分と周囲がそれらに対応できる土壌ができあがるのです。その土壌ができていれば、グリーフケアのいくつかのステップを踏むことができます。しかし土壌がない限りは、グリーフケアを行うことは難問です。
(『グリーフケア』創刊号 「グリーフケアの課題と未来」座談会記事より抜粋)
□関連情報:上智大学グリーフケア研究所HP
http://www.sophia.ac.jp/jpn/admissions/griefcare
『農をつなぐ仕事』(内田由紀子、竹村幸祐 著)の書評が『地域農業と農協』に掲載されました
内田由紀子准教授と竹村幸祐連携研究員(京都大学経営管理大学院助教)の共著『農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~』(創森社)が、一般社団法人農業開発研究センターの発行する機関誌『地域農業と農協』(2013年42巻4号)に掲載されました。石川県農林水産部生産流通課の岡部恵氏が執筆しています。
BOOKレビュー:内田由紀子・竹村幸祐 著『農をつなぐ仕事 ~普及指導員とコミュニティへの社会心理学的アプローチ~』
普及指導員という職業について知っている人はどれだけいるだろうか。私は「都道府県の部署の中で、これほど集落や地域に入り込み、対象に働きかけている組織・人はない」と誇りに思っているが、残念ながら農業関係者以外に普及指導員という存在はあまり知られていない。(中略)
このような中、共同農業普及事業とは接点のない京都大学こころの未来研究センターの内田先生、竹村先生が普及指導員に注目し、数値で表しにくい普及指導員の仕事を社会心理学の分野から調査研究を行い、「つなぐ仕事」としてその必要性を検証・とりまとめたものが本書である。(中略)
著者は普及指導員にはコミュニケーション能力だけではなく、スペシャリスト機能である専門的な技術・知識についても集落・地域に入り農業者の信頼を得るためのスキルとして大切であると指摘している。更に、和解普及指導員が陥りやすい「予言の自己成就」や、普及指導員の職場の人間関係が良ければ担当地域の信頼関係が高くなることなど、興味深い知見が多く盛り込まれている。
(記事より抜粋)
パネルディスカッション「東日本大震災と宗教者・宗教学者」がデーリー東北、仏教タイムスで紹介されました
こころの未来研究センター東日本大震災関連プロジェクトが、東北大学大学院実践宗教学寄附講座、宗教者災害支援連絡会と共同主催したパネルディスカッション「東日本大震災と宗教者・宗教学者」(3月2日・東北大学)の関連記事が、3月22日付のデーリー東北と3月14日付の仏教タイムスに掲載されました。
デーリー東北では「震災機に変わる宗教学者」と題し、東日本大震災を機に宗教学者らが宗教者をバックアップし被災地支援に乗り出した変化をレポート。大震災を機に実践の場へ自らを投ずる宗教学者らの取り組みを紹介しました。パネルディスカッションの翌日に実施された被災地の旅で、鎌田東二教授が鎮魂の法螺貝を吹き、参加者らが共に祈りを捧げる様子が写真と共に掲載されました。
仏教タイムスでは、パネルディスカッションで宗教者や研究者らが語った被災地での実践的傾聴ケア活動の取り組みや神社の再建、宗教系大学生らのボランティア活動などを紹介すると共に、宗教者と宗教学者のさらなる協力を呼びかける声が報告されました。
「客観」から「共感」へ 震災機に変わる宗教学者 実践重視、社会に貢献
浮上したキーワードは実践。客観から共感への流れも加速した。東日本大震災を機に宗教学に大きな変化が訪れている。(中略)
「宗教学は『いかにあるか』を研究するのであって『いかにあるべきか』を目的とはしない。そう習ったし、学生にもそう言ってきた」。研究対象として距離を置いてきた「宗教学者」と「宗教」の関係は、震災で大きく変わることになった。
▽自覚的踏み込み
その変化を象徴するパネルディスカッションが2日、仙台市の東北大で開かれた。同大実践宗教学寄付講座などが主催した「東日本大震災と宗教者・宗教学者」だ。
翌日には被災地を巡る旅が組まれ、神主でもある鎌田東二京都大こころの未来研究センター教授が各地で鎮魂のほら貝を吹き、宗教者、宗教学者、市民参加者が全員で合掌、祈りをささげるシーンが見られた。
(デーリー東北記事より抜粋)
□「東日本大震災とこころの未来」
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/eqmirai/index.html
鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました
鎌田東二教授のコラムが徳島新聞文化面「こころの未来4」に掲載されました。最近訪問した東北被災地、沖縄・久高島、韓国・慶州での出来事を振り返り、伝統と現代の葛藤を見つめながら、文化を支え守りながら伝統文化と現代文明を結合させることが地域力へとつながると考察しています。
「地域の力:固有の様式を蓄積 伝統と現代 結合が課題」 鎌田東二 京大こころの未来研究センター
京都大学こころの未来研究センターに勤める前、京都造形芸術大学に5年間勤務していた。そこでは主に宗教学や民俗学を教えたのだが、それ以外に「地域文化演習」や「環境文化論」も担当した。両方とも国内のある地域に行って、実地にそこの文化や環境を学ぶという演習科目であった。
その際、複数の教員で「地域学への招待」という教科書をつくった。それをきっかけに「地域の力」とは何か、あれこれと考えるようになった。(中略)
私が考える「地域の力」は、突き詰めるとその「文化の力」ということになる。それは人々の生活が地域固有の魅力的な様式となって蓄積され、表現されているものだ。
一般に、政治や経済では政策の成否によって短期的な変化が起こり得る。だが文化というものはそのような短期的変化が起こりにくい。地域に何百年も何千年も続いてきた祭りや芸能などはその最たるものだ。それがいわゆる「伝統文化」であるが、地域の力において重要なのは「伝統文化」と「現代文明」との相互活性ということになる。(中略)
日本でも京都に代表されるように、伝統文化と現代文明との結合はそれほど簡単ではない。だが、歴史と文化、すなわち伝統を大切にできない地域は必ず衰退する。生活の潤いや豊かさを感じることのない地域に多くの人が長く生活し続けるのは難しいからだ。
(記事より抜粋)
こころを整えるフォーラム(2.17開催)の記事が「観世 4月号」に掲載されました
能楽・観世流の情報を伝える月刊誌『観世 4月号』(発行:檜書店)に、2月17日に開催された「こころを整えるフォーラム/観阿弥生誕680年世阿弥生誕650年記念―観阿弥と世阿弥の冒険―」の模様が、写真と共に掲載されました。
◇こころを整えるフォーラム 観阿弥生誕680年世阿弥生誕650年記念―観阿弥と世阿弥の冒険―
「能の世界と苦悩の表現」と題する基調講演が、観世清和宗家とナビゲーター鎌田東二氏(同センター教授)により行われ、続いて舞囃子〈敦盛〉を宗家が披露、松岡心平氏(東京大学教授)の講演「能の発生とその時代」、最後に右記の三氏による鼎談が行われた。
結崎座という中世の座の一員から、観阿弥が新たに観世座を創座して、観阿弥による歌謡の革命、世阿弥による舞の革命がなされていった様相が、三氏の具体的、かつ幅広い談話から浮かび上がり、内容豊かで、興味深い企画であった。
(記事より抜粋)
□月刊『観世』のページ(出版社のウェブサイト)はこちら
http://www.hinoki-shoten.co.jp/kanze/kanze_kongetsu.html