2018年4月 アーカイブ
fMRI解析セミナー「脳領域間結合解析2017」を開催しました
2018年3月29日・30日の2日間、fMRI解析セミナー「脳領域間結合解析2017」を稲盛財団記念館中会議室にて開催しました。講師には、河内山隆紀先生(株式会社ATR-Promotions、脳活動イメージングセンタ)をお迎えしました。
本セミナーは、2日間に渡る講義と実習を通じてfMRIにおける領域間解析のスキル獲得を目的に、阿部修士特定准教授が企画・進行をおこなっており、今回で5回目となります。理論と知識を講義で学び、実践的な解析について河内山先生からのアドバイスを受けながら実習で経験できる講義として毎回好評のセミナーです。今回のセミナーは、複数の脳領域間の結合状態を評価する手法であるPsycho-Physiological Interaction(PPI)や、Dynamic Causal Modeling(DCM)といった解析方法について、講義及び実際のデータを用いた実習を行いました。
○参加者の感想
・新しい解析手段を一流の研究者の先生から学ぶことができる非常に有意義なセミナーだった。
・数年前にも参加しましたが、相変わらずとても密度が濃くて大変ためになります。今回もこれでPPIとDCMができるようになりました。
・基礎の理論もソフト操作も学べてとても有用である。
・わかりやすく丁寧なご説明、膨大な資料をいただき、ありがとうございます。自己学習では解決できなかった、理解できなかった事項につきまして理解でき、非常にためになりました。
・Kochiyama Sensei gave us a lot of details and state-of-the-art methods for fMRI analysis. Although I am not a native speaker of Japanese, by following the introductions step-by-step, I gained a better understanding of PPI and DCM.
・講義と実習が交互に行われるスタイルは大変良いと感じました。講義資料の内容がとてもわかりやすかった。
[DATA]
fMRI解析セミナー「脳領域間結合解析2017」
▽日時:2018年3月29日(木)・30日(金)両日とも10:00 - 12:00、及び13:30 - 17:00
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階中会議室
▽講師:河内山隆紀(株式会社ATR-Promotions, 脳活動イメージングセンタ)、企画・進行:阿部修士
▽参加者数:17名
主催:京都大学こころの未来研究センター
吉岡洋特定教授がパリ第8大学で「ポップカルチャー美学」の特別講義を行いました
吉岡洋特定教授が、2018年3月7日パリ第8大学において「ポップカルチャー美学」の特別講義を2回行いました。
1回目は午後1時からでテーマは「思考のインフラとしての〈物語〉」。推論や論理とは別な仕方で思考を導く〈物語る力〉について、主にゲームやライトノベルの研究をしているフランス人学生にむけて講義しました。(写真下・左)
2回目は午後6時から「〈私〉は存在するのか?」と題して、自我や自己意識の自明性を美学=感性学(aesthetics)の立場から批判的に解きほぐすという議論で、パリ大学の学生のほかフランス在住の日本人アーティストも何人か聴講していました。(写真下・右)
いずれの講義も参加者はとても熱心で、講義後の議論も非常に活発で面白いものでした。
パリ第1大学(ソルボンヌ・パンテオン)においてオルガ・キッセレーヴァ教授との意見交換も行いました。
ソルボンヌはその起源が12世紀にまで遡る世界最古の大学のひとつですが、そこでロシア人メディアアーティストであるキッセレーヴァ教授による、アートと科学に関する最先端の講義が行われていることは、まさしく21世紀を感じさせます。写真(下・左)の背景はソルボンヌでも最も古い建物のひとつ、そして教授がいつも講義している階段教室の入り口には、「1906年11月5日、マリ・キュリー教授(キュリー夫人)が、ソルボンヌで最初の女性教授による講義を行った」ことを示すプレートがありました。(写真下・右)
オルガ・キッセレーヴァ教授と吉岡教授
『ミネルヴァ通信「究」』に河合俊雄教授の連載第21回が掲載されました
ミネルヴァ書房の発行する月刊誌『ミネルヴァ通信「究」(きわめる)』2018年5月号に河合俊雄教授の連載「こころの最前線と古層」が掲載されました。
今回のテーマは「憑依と解離性障害」です。
著者は、19世紀末から20世紀始めのフロイトやユングの時代に、頻繁に取り上げられた解離性障害が、一度はほぼ消失したにもかかわらず、1990年代に世界中で復活し、日本でも多く見られるようになったことに着目します。
近年に流行現象のように頻発したこの解離性障害は、憑依と似た現象ではあるけれども、その背景は全く異なっているのではないかと、著者は考えます。なぜなら、前近代の世界における憑依は、狐、死者の霊など、個人の外から憑依してきていたものであり、近年の解離性障害は、そうしたこころの古層から出てきたものではないからです。
ではなぜ、様々な形での解離性障害が1990年代に多発し、そしてまた下火になったのか、これについては次回に検討されます。
(解説:粉川尚枝 特定研究員)
こころの最前線と古層(二一)「憑依と解離性障害」河合俊雄
本連載でも心身症、発達障害などを取り上げてきたが、久しぶりに症状に焦点を当ててみたい。それは解離性障害で、現実感のなくなる離人症、一時期や全ての記憶が失われる解離性健忘、自分のなかに別の人格(多重人格)が存在して出現する解離性同一性障害などの様々な形のものが含まれ、ICD-10による分類では、ヒステリー(転換性障害)も含まれている。
一八九九年にクレペリンによって近代精神医学による診断分類が確立され、ほぼ同時期にフロイトによる精神分析がはじまって、近代の精神医学と心理療法の枠組みが決まった。・・・
(論考より)
出版社のページ(ここから『究』の講読が可能です)
https://www.minervashobo.co.jp/book/b358533.html
河合俊雄教授が共同編集を務めた『臨床家 河合隼雄』が、文庫本として復刊されました
河合俊雄教授が共同編集を務めた『臨床家 河合隼雄』が、文庫本として復刊されました。
本書『臨床家 河合隼雄』は、河合隼雄先生の没後二年の2009年に刊行されましたが、今回、先生の生誕九十年を記念する意味もあり、岩波現代文庫で復刊されることとなりました。
復刊に際し、『生きたことば、動くこころ(河合隼雄語録 カウンセリングの現場から)』(岩波現代文庫から復刊予定)に含まれるものと、専門的な論考が一つ割愛され、河合俊雄教授の講演「河合隼雄との三度の再会」が、新たに収録されました。
河合俊雄教授は、序論「臨床家・河合隼雄」で、河合隼雄先生の臨床について述べていますが、本書では、「臨床家としての河合隼雄の姿」を浮かび上がらせようと、事例への河合隼雄先生のコメント、河合隼雄先生に分析を受けた臨床家の体験などが集められています。また、谷川俊太郎さん、佐渡裕さんと、河合隼雄先生との出会いや交流も描かれています。河合隼雄先生の最初の分析家、シュピーゲルマン先生へのインタビューからは、「クライエント側に立った河合隼雄の姿を描き出す」との試みもされています。
「河合隼雄との三度の再会」で、河合俊雄教授は、自身の在学・留学時期の河合隼雄先生とのエピソードとともに、河合隼雄先生の没後、先生の著作の編集にたずさわる中での体験についても述べています。また、河合隼雄先生のいくつかの著作に触れ、特に、先生の思想の根幹である「物語」や「「じねん」に従う」ことにも、言及しています。
(解説:粉川尚枝 特定研究員)
谷川俊太郎・河合俊雄 (編) (2018). 臨床家 河合隼雄. 岩波現代文庫
-構成-
〔序論〕
臨床家・河合隼雄・・・河合俊雄
〔記録〕
家を背負うということ-無気力の裏に潜むもの・・・河合隼雄/岩宮恵子(事例提供・編)
〔河合隼雄の分析〕
臨床家 河合隼雄-私の受けた分析経験から・・・山中康裕
分析体験での箱庭・・・川戸圓
河合隼雄という臨床家・・・皆藤章
スーパーヴィジョンの体験から・・・角野善宏
〔河合隼雄という体験〕
対談 河合さんというひと・・・谷川俊太郎×山田馨
物語を生きる人間と「生と死」・・・柳田邦男
河合先生との対話・・・佐渡裕
私の「河合隼雄」・・・中鉢良治
河合隼雄との三度の再会・・・河合俊雄
〔インタビュー〕
ユング派河合隼雄の源流を遡る・・・J・M・シュピーゲルマン/河合俊雄(聞き手)
〔資料〕
河合隼雄年譜
岩波現代文庫『臨床家 河合隼雄』(谷川俊太郎・河合俊雄編)のページです https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b355587.html
阿部修士特定准教授、柳澤邦昭特定助教らの論文が『Experimental Brain Research』に掲載されました
上田竜平・オフィスアシスタント(文学研究科大学院生・日本学術振興会特別研究員)、柳澤邦昭特定助教、阿部修士特定准教授らの執筆した論文が、学術誌『Experimental Brain Research』Vol.236 に掲載されました。
本研究は「浮気」に対する興味関心の制御に関わる認知基盤に焦点を当てた研究です。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた実験から、交際関係にある男性がパートナー以外の女性に対する興味関心を制御するには、先行研究同様、前頭前野による行動制御の機構が必要であることが示されました。ただしこの関係性は、一般的にはパートナーへの愛着やコミットメントが薄れるとされる長期間の交際関係になってはじめて観察されることが示唆されました。
なお、本研究はこころの未来研究センター連携MRI研究施設のMRI装置を用いて行われました。
Ueda R, Yanagisawa K, Ashida H, Abe N (2018)
Executive control and faithfulness: only long-term romantic relationships require prefrontal control
Experimental Brain Research 236: 821-828
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00221-018-5181-y
○Abstract
Individuals in the early stages of a romantic relationship generally express intense passionate love toward their partners. This observation allows us to hypothesize that the regulation of interest in extra-pair relationships by executive control, which is supported by the function of the prefrontal cortex, is less required in individuals in the early stages of a relationship than it is in those who are in a long-term relationship. To test this hypothesis, we asked male participants in romantic relationships to perform a go/no-go task during functional magnetic resonance imaging (fMRI), which is a well-validated task that can measure right ventrolateral prefrontal cortex (VLPFC) activity implicated in executive control. Subsequently, the participants engaged in a date-rating task in which they rated how much they wanted to date unfamiliar females. We found that individuals with higher right VLPFC activity better regulated their interest in dates with unfamiliar females. Importantly, this relationship was found only in individuals with long-term partners, but not in those with short-term partners, indicating that the active regulation of interest in extra-pair relationships is required only in individuals in a long-term relationship. Our findings extend previous findings on executive control in the maintenance of monogamous relationships by highlighting the role of the VLPFC, which varies according to the stage of the romantic relationship.
Keywords : Monogamy fMRI Self-control Prefrontal cortex Romantic relationship
広井良典教授が特別区(東京23区)の新任職員を対象とする研修で記念講演を行いました
広井良典教授が特別区(東京23区)の新任職員を対象とする研修で記念講演を行いました。
同研修は、2018年4月10日、昭和女子大学・人見記念講堂にて、特別区(東京都23区)に採用された新人職員を対象に行われるもので、東京都各区から2,063名が参加して行われました。
広井教授の記念講演は「人口減少社会のデザイン――これからの日本社会と都市・地域・幸福」と題し、日本が2011年から本格的な人口減少社会となり、東京もまもなくそうした局面に入る中で、これまでの拡大・成長時代とは異なる、成熟時代の新たな豊かさや幸福をデザインしていく時代に入るという時代状況を指摘した上で、「コミュニティとまちづくり」、「若者支援とこれからの社会保障」、「自然と伝統文化の重要性――鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構想」、「どのような社会を目指すのか――『持続可能な福祉社会』の可能性」、「グローバル定常型社会の展望」という話題にそくして行われました。
広井良典教授 会場の様子
イギリス・ケント大学・香港中文大学のジョバンニ・タラバグリノ助教が内田由紀子准教授の研究室にて講演を行いました
イギリス・ケント大学・香港中文大学のジョバンニ・タラバグリノ助教が内田由紀子准教授研究室にて講演を行いました。
講演は南イタリア地域の犯罪組織における男性的な名誉の文化が果たす役割について、最新の研究結果が紹介されました。
強力な経済的、社会的、政治的勢力を持つ南イタリア地域のマフィア等の犯罪組織において、男性の暴力の正当化・規範化の傾向がより顕著であることを踏まえ、このように暴力を名誉と見なす慣習が若者の犯罪組織の認識、社会の犯罪組織の黙認にどのように影響を及ばしているのか、南イタリアに住む若者を対象とした調査結果から論じられました。
具体的には、地域の一員であるというアイデンティティー、社会変革に関する信念、犯罪組織のメンバーとの接触といった要因に着目し、暴力の名誉化を及ぼす心理的なメカニズムに関して論じられました。
講演終了後は内田准教授の研究室メンバーとの活発な質疑応答が行われました。
ジョバンニ・タラバグリノ助教 研究室のメンバーとの様子
河合俊雄教授の英語論考が科研研究年報誌『身心変容技法研究』第7号に掲載されました
鎌田東二先生(上智大学グリーフケア研究所特任教授・京都大学名誉教授/宗教哲学・民俗学)が研究代表を務める身心変容技法研究会の科研研究年報誌『身心変容技法研究』第7号に、河合俊雄教授の英語論考が掲載されました。
この論考では、エラノス会議での講義を参照しながら、東アジアの精神性について述べるため、大乗仏教の中でも、特に華厳経に焦点が当てられています。
華厳経の思想は、西インドで生まれたものですが、インドの人々の瞑想時の体験とともに、中央アジアの光の神秘主義からも、影響を受けています。
さらに、華厳経の思想は中国に渡ると、哲学としても体系化されます。華厳経の本質は、「相即相入(全てのものは互いに溶け合っている)」の考えであり、それは壮大な曼荼羅として表されます。こうした華厳経の哲学は、錬金術の「融合」「死と再生」のイメージとも重なり、ユング心理学の「象徴」「元型」「共時性」といった概念について考える上でも意味をもつことを、著者は指摘しています。
このように発展してきた華厳経ですが、それは日本に渡ると、自然や芸術とのつながりの中で展開していきました。日本独自の、全てのものに魂が宿るといったアニミズム思想や、神道の影響から、日本では、自然の景色を描いたものが曼荼羅となり、自然の中で巡礼を行うことも、修行として非常に重要な役割を占めていきます。
また、こうした自然を、より小さく、より美的なものにして、心の内に取り入れた形として、日本の庭造りや生け花、盆栽などが発展していきました。ユング心理学や箱庭が日本で受け入れられたことには、日本文化に浸透した華厳経の思想も、深く関連しているのではないかと言及されています。
(解説:粉川尚枝 特定研究員)
『身心変容技法研究』第7号
Toshio Kawai. (2018). Transformation of East Asian spirituality: with the reference to Eranos lectures. Investigation of Arts and Principles of Body-Mind Transformation, 7, 267-272.
〔構成〕
1. Hua Yen sutra between nothingness and fullness
2. India and meditation
3. Central Asia and Light
4. Chinese philosophy and pragmatism
5. Japan: nature and aesthetics
河合俊雄教授が『臨床心理学概論 (公認心理師の基礎と実践) 第3巻』に5章「分析心理学的アプローチ」を執筆しました
河合俊雄教授が公認心理師の教科書『臨床心理学概論 (公認心理師の基礎と実践) 第3巻』に5章「分析心理学的アプローチ」を執筆しました。
今年度から国家資格化された公認心理師の、カリキュラムがスタートしたことに伴って出版された教科書 『臨床心理学概論 (公認心理師の基礎と実践) 第3巻』に、河合俊雄教授が5章「分析心理学的アプローチ」を執筆しました。
本章では、臨床心理学におけるユング心理学の理論を、特に「自己関係」という視点から概説しています。
『臨床心理学概論 (公認心理師の基礎と実践) 第3巻』
河合俊雄. (2018). 5章 分析心理学的アプローチ. 野島一彦・岡村達也 (編). 臨床心理学概論(公認心理師の基礎と実践)第3巻. 遠見書房.
『ミネルヴァ通信「究」』に河合俊雄教授の連載第20回が掲載されました
ミネルヴァ書房の発行する月刊誌『ミネルヴァ通信「究」(きわめる)』2018年4月号に河合俊雄教授の連載「こころの最前線と古層」が掲載されました。
今回のテーマは「仏教と古層の論理」です。
著者は、心理療法や神話において、アリストテレス的な論理でない"こころの古層の論理"が現れてくることを指摘した上で、仏教はこの"こころの古層の論理"を自覚的に発展させてきた、と解説しています。
さらに、こうした仏教の論理は、"こころの古層"に属するだけでなく、現代の最先端の科学や、現代社会におけるこころのあり方にも、通じるところがあると考えています。そのため、こころを捉え直し、新しいこころの科学を構築する上でも、仏教の論理は意味を持つ可能性が言及されています。
(解説:粉川尚枝 特定研究員)
心理療法や神話において、アリストテレス的な論理でないこころの古層の論理が現れてくることを指摘したが、前回に親鸞の例を引いたように、これを自覚的に発展させたのが、仏教であると思われる。たとえば鈴木大拙は大乗仏教の本質として「即非の論理」を強調したが、これはまさに「Aは非Aであり、ゆえにAである」となって、アリストテレス的論理を超えている。その意味で日本に伝わってきた仏教は、これまでの日本のこころの古層を駆逐したり覆い隠したりというよりは、むしろそれにフィットする哲学や論理を提供したといえよう。
中沢新一は、大乗仏教における論理をロゴスに対立する「レンマの論理」や「レンマ学」として探求している。・・・
(論考より)
出版社のページ(ここから『究』の講読が可能です)
https://www.minervashobo.co.jp/book/b355911.html
広井良典教授のコラムが京都新聞4月10日付「現代のことば」欄に掲載されました
広井良典教授のエッセイが京都新聞夕刊(4月10日付)の「現代のことば」欄に掲載されました。
タイトルは「AIにできること・できないこと」で、最近のAI(人工知能)をめぐる議論が、時としてAIを過大評価ないし"神聖視"する傾向があることや、80年代の「第二次AIブーム」からの流れを踏まえつつ、原点に立ち返ってそもそも「AIにできること・できないこと」を根本から議論する必要があることを指摘し、脳の進化に関するマクリーンの3層構造説にも依拠しながら、AIの得意分野とその原理的な限界を論じる内容となっています。
現代のことば 「AIにできること・できないこと」
広井良典 京都大学こころの未来研究センター教授
「AI(人工知能)」という言葉が、あらゆる場面に登場している。しかし昨今の議論を聞いていると、いささかAIの能力が過大評価ないし〝神聖化″されているように思われることも多い。(中略)
ここで求められるのは、人間の脳との関係において、そもそも「AIには何かでき、何ができないのか」という基本論である。この話題については、脳に関する「マクリーンの3層構造説」と呼ばれる考えが手がかりになる。マクリーン(1913-2007)はアメリカの神経学者で、そもそも脳は、生物が生命進化の過程の中で発達させてきたもので、人間の脳はそうした進化のプロセスを反映するような三つの部分から成り立っていると論じた。‥‥
(2018年4月10日京都新聞 記事より)
内田由紀子准教授と佐伯啓思特任教授の対談記事が京都新聞に掲載されました
センターに滞在したMarisa Salanova教授が「ワークエンゲージメントを用いた健康的な組織づくり」に関して講演しました
ジャウメ一世大学(スペイン)のマリサ・サラノバ(Marisa Salanova)教授が、2018年3月18日から25日まで内田由紀子准教授研究室に滞在されました。サラノバ教授は同大学所属研究機関であるWANT - Psychosocial Prevention and Healthy Organizationsで研究監督者を務めており、ポジティブ組織心理学の第一人者として活躍されております。
また、22日には「ワークエンゲージメントを用いた健康的な組織づくり」に関して講演をされました。「ワークエンゲージメントとは仕事との心理的なつながりによって生み出される、活力、熱意、没頭といった仕事に関連する持続的でポジティブな心理状態」と説明され、職場での生産性との関係性やワークエンゲージメントを支える職場環境・心理的資源についてお話をされました。講演の後半では、個人単位とチーム単位でワークエンゲージメントを高める介入とその効果について、最新の知見を紹介されました。講演終了後は内田准教授ならびに滋賀大学竹村幸祐准教授から、研究発表がなされ、サラノバ教授とのディスカッションが行われました。
(報告:京都大学こころの未来研究センター 新谷茉奈)
マリサ・サラノバ(Marisa Salanova)教授 ディスカッションの様子
「認知科学セミナー」を開催しました
2018年3月13日、「京都大学こころの未来研究センター 認知科学セミナー」を稲盛財団記念館3階中会議室にて開催しました。講師に東北大学学際科学フロンティア研究所・助教の鈴木真介先生をお迎えし、阿部修士准教授の企画進行により行われました。
セミナーは、「価値の計算を支える脳神経メカニズム:その基礎と社会的伝染」という演題にて、意思決定のメカニズムを経済学と神経科学の手法を用いて研究されている鈴木先生により機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による「価値の計算」に関わる一連の研究が紹介されました。
京都大学の学生、研究者に加えて、広く一般からも参加者が集まり、講演後には活発な質疑応答がおこなわれました。
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[開催ポスター]
[DATA]
京都大学こころの未来研究センター 認知科学セミナー
講師:鈴木真介 (東北大学学際科学フロンティア研究所・助教)
演題:価値の計算を支える脳神経メカニズム:その基礎と社会的伝染
▽ 日時:2018年3月13日(火)16:30~18:00
▽ 場所:稲盛財団記念館3階中会議室
▽ 対象:研究者・学生、一般
▽ 参加者数: 約25名
平成30年4月1日付人事異動のお知らせ
「 医療および教育専門職のためのこころ塾2018」のテーマ、日程、講師が決まりました
2013年から毎年開催しています「 医療および教育専門職のためのこころ塾2018」のテーマ、日程、講師が決まりましたのでお知らせします。
こころ塾は、教育、医療関係の専門職の方たちを対象とした、こころの科学と実践に関する教育講座です。
2018年度こころ塾の全体テーマは「コミュニケーションと身体性」。
受講申し込みは6月からセンターウェブサイトで受け付けますので、今しばらくお待ちください。
受講資格は、医療専門職・教育専門職に3年以上従事した経験のある方です。
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「コミュニケーションと身体性:こころ塾2018」
会場:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室(京都市左京区吉田下阿達町46)
■第1回 10月6日(土)10:00-17:00
講師:乾敏郎(追手門学院大学心理学部・教授 / 京都大学こころの未来研究センター・特任教授 認知科学、認知神経科学)
岩宮恵子(島根大学人間科学部・教授 臨床心理学)
加藤寿宏(京都大学大学院医学研究科・准教授 作業療法士)
■第2回 10月20日(土)10:00-17:00
講師:乾敏郎(追手門学院大学心理学部・教授 / 京都大学こころの未来研究センター・特任教授 認知科学、認知神経科学)
村井俊哉(京都大学大学院医学研究科・教授 精神医学)
嶋谷和之(大阪市更生療育センター・作業療法士)
■第3回 11月10日(土)10:00-17:00
講師:乾敏郎(追手門学院大学心理学部・教授 / 京都大学こころの未来研究センター・特任教授 認知科学、認知神経科学)
森口祐介(京都大学大学院教育学研究科・准教授 発達心理学)
小松則登(愛知県心身障害者コロニー中央病院・作業療法士)
※各回の詳細は、当サイトのイベント欄に後日掲載します。
場所:稲盛財団記念館3階 大会議室
主催:京都大学こころの未来研究センター
共催:京都大学大学院医学研究科 脳機能リハビリテーション学分野 発達障害系研究室