2014年12月 アーカイブ

「大荒行シンポジウム(科研 身心変容技法の比較宗教学)」を開催しました

 鎌田東二教授が代表研究者を務める身心変容技法研究会(科研基盤研究A「身心変容技法の比較宗教学-心と体とモノをつなぐワザの総合的研究」)が、2014年11月20日、21日に「大荒行シンポジウム」を開催しました。20日は一般向けの公開シンポジウム、21日は研究者向けの研究会をおこない、日本各地で伝統を継承する荒行の先達による講演とディスカッションが繰り広げられました。


 初日の一般公開シンポジウムでは、鎌田東二教授が企画趣旨説明をおこないました。その後、田中利典師(大峯金峯山修験本宗宗務総長・金峯山寺執行長)が「吉野修験道の荒行(奥駈け)」について、星野尚文師(本名:文紘、羽黒修験道松聖・所司役)が「羽黒修験道の荒行(峰入り)」について、高木亮英師(西国三十三所一番札所那智山青岸渡寺副住職)が「熊野修験:那智四十八滝の荒行(青岸渡寺滝行)」について、戸田日晨師(日蓮宗大荒行堂遠壽院住職・傳師)が「日蓮宗遠壽院の100日荒行」について、それぞれ講演をおこないました。これらの講演の後、倉島哲関西学院大学教授(社会学)がコメントを提供し、鎌田教授の進行のもと総合討論の時間を持ちました。


 翌日・二日目は、「大荒行 身心変容技法研究会」と称し、研究者を対象により専門的な内容で研究会がおこなわれました。発表は、「1.吉野修験道の荒行の検討」(田中利典師、コメンテーター:町田宗鳳広島大学教授・僧侶、小西賢吾こころの未来研究センター研究員)、「2.羽黒修験道の荒行の検討」(星野尚文師、コメンテーター:棚次正和京都府立医科大学教授、奥井遼こころの未来研究センター上廣こころ学研究部門研究員)、「3.日蓮宗の荒行の検討」(戸田日晨師、コメンテーター:津城寛文筑波大学教授、アルタンジョラーこころの未来研究センターワザ学共同研究員)、「4.天台修験道の荒行(千日回峰行と十二年籠山行)と総合討論」(発題者:鎌田東二教授、コメンテーター:篠原資明京都大学教授、井上ウィマラ高野山大学教授、永澤哲京都文教大学准教授)の順で進められました。会の締めくくりに、鎌田教授の進行により総合・総括討論が行われ、盛況のまま終了しました。


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[開催ポスター]
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[DATA]
「大荒行シンポジウム」(一般公開、申込み不要)
▽日時:2014年11月20日(木)13:00~17:30
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室 アクセス

1.企画趣旨説明
 鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター教授・宗教哲学・民俗学)
2.吉野修験道の荒行(奥駈け)
 田中利典師(大峯金峯山修験本宗宗務総長・金峯山寺執行長)
3.羽黒修験道の荒行(峰入り)
 星野尚文師(本名:文紘、羽黒修験道松聖・所司役)
4.熊野修験:那智四十八滝の荒行(青岸渡寺滝行)
 高木亮英師(西国三十三所一番札所那智山青岸渡寺副住職)
5.日蓮宗遠壽院の100日荒行
 戸田日晨師(日蓮宗大荒行堂遠壽院住職・傳師)
6.コメント
 倉島哲(関西学院大学教授・社会学)
7.総合討論
 司会:鎌田東二


「大荒行」身心変容技法研究会(研究者対象、申込み不要)
▽日時:2014年11月21日(金)10:00~16:30
▽場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室 アクセス
1.吉野修験道の荒行の検討:田中利典
コメンテーター:町田宗鳳(広島大学教授【僧侶】)、小西賢吾(京都大学こころの未来研究センター研究員)
2.羽黒修験道の荒行の検討:星野尚文
コメンテーター:棚次正和(京都府立医科大学教授)、奥井遼(京都大学こころの未来研究センター 上廣こころ学研究部門特定研究員・教育学)
――――昼食――――
3.日蓮宗の荒行の検討:戸田日晨
コメンテーター:津城寛文(筑波大学教授)
アルタンジョラー(京都大学こころの未来研究センターワザ学共同研究員・人類学)
4.天台修験道の荒行(千日回峰行と十二年籠山行)と総合討論 発題:鎌田東二
コメンテーター:篠原資明(京都大学教授)、井上ウィマラ(高野山大学教授)、永澤哲(京都文教大学准教授)
――――休憩――――
5.総合・総括討論 司会:鎌田東二(京都大学こころの未来研究センター教授・宗教哲学・民俗学)

「第36回こころの未来セミナー Death and Dying East and West:東洋・西洋における死と臨終」を開催しました

 「第36回こころの未来セミナー Death and Dying East and West:東洋・西洋における死と臨終」を2014年11月17日、稲盛財団記念館3階大会議室にて開催しました。


 講師に Tony Walter先生(Ph.D / Professor & Director of the University of Bath Centre for Death & Society)をお迎えし、 東洋・西洋における死や葬儀、死別悲嘆などに対する関係要因の影響についてお話いただきました。セミナーは英語でおこなわれましたが、企画・司会進行役を務めたカール・ベッカー教授が要所要所を日本語訳し、日本人学生や海外からの研究者など幅広い参加者が熱心に聴講していました。


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[開催ポスター]
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[DATA]
▽ 日時:2014年11月17日(月)15:30~17:00 (受付開始15:00~)
▽ 場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽ 講師:Tony Walter先生(Ph.D / Professor & Director of the University of Bath Centre for Death & Society)
▽ 参加資格:特になし
▽ 参加費:無料 / 申込:不要
※本講演は、公益財団法人 上廣倫理財団 平成25年度研究助成により一部支援を受けています。
▽ 参加者数:約30名

「くらしの学び庵」(初級1期目)第3回・第4回レポート

1412manabian2.png 2014年10月より、上京区の風伝館にて一般向けの連続セミナー『くらしの学び庵』が始まりました。11月5日には第3回が、19日には第4回が開催されました。本セミナーの企画・運営・司会進行に携わる清家理助教によるレポートをお届けします。第1回・第2回のレポートはこちら


「くらしの学び庵」(初級1期目)
・第3回:11月5日(水)毎日できる栄養管理で病気知らず! 京都大学医学部附属病院 幣 憲一郎先生
・第4回:11月19日(水)健やかなこころで暮らす知恵  京都大学こころの未来研究センター 吉川左紀子先生


 第1回、第2回は、医学領域の講義でしたが、第3回は「栄養」、第4回は「こころ」と、より生活に即した講義内容でした。幣先生の講義では、いきなり血糖値の上下がないような食べ方など、帰宅してからすぐに取り組める具体的なお話がありました。参加者の皆さん、熱心に講義を聴かれていたためか、講義終了後の意見交換会で出されたお茶菓子に手をつけられず、じっと見つめ続けておられました。しかし、幣先生より、「ゆっくりよく噛んで、帰りは、ウオーキングで帰れば食べても大丈夫ですよ」と言う一声で一斉に食べ始める...そんなほほえましい場面もありました。


 吉川先生の講義では、見ているだけでもうっとりしてしまう「悠久の郷ブータン」の写真を用いながら、こころおだやかに、機嫌よく生活するためのコツのお話がありました。講義が終わるころには、本当に参加者の皆様の表情がよりおだやかになっておられたのが印象的でした。


 この日は、講義の後、「よろず相談会」が開催されました。医療領域は荒井先生、こころ領域は吉川先生、栄養学領域は幣先生、法律領域は小山先生が対応され、京都の茶菓子を片手に、ちゃぶ台を囲みながら、ワンストップサービス相談が繰り広げられました。普段の生活における疑問点から、講義で聴いたことを実践できています!のご報告まで、各ちゃぶ台ともに、白熱相談室でした。


 今回のくらしの学び庵では、受付やお茶の用意等を京都大学の学生が対応しています。回を重ねるごとに、参加者の方々と学生の会話も増えています。「お茶がおいしかったよ」と声をかけられ、嬉しそうにしている学生たちの笑顔も印象的です。世代を超えた交流が生まれつつあります。


<報告:清家理(上廣こころ学研究部門)>


【番外編】京都市生涯学習情報検索システム 京(みやこ)まなびネットのFacebookでご紹介いただきました


京都市教育委員会生涯学習部の竹内佐江様、山田勝彦様が見学に来られ、Facebookページにて、くらしの学び庵をご紹介くださいました。


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【「町のおせっかい役」を育てよう!~「くらしの学び庵」】


子育て,親の介護・・・。生活の中で悩みや苦しみが生じたとき,昔は「町のおせっかい役」たちによる,よろず相談や支え合いが自然な形で行われていました。しかし,高齢化・核家族化が進む現代,そうした「互助・自助」の力が弱体化しています。
 
 京都市社会教育委員の吉川左紀子先生がセンター長を務める,京都大学こころの未来研究センターでは,互助・自助の再生・強化を目指そうと,10月から全6回の市民講座「くらしの学び庵」を開講されています。「受講者の皆さんに『町のおせっかい役』になってもらいたい!」目を輝かせて語ってくださったのは,この講座の生みの親,清家理(せいけ あや)同センター特定助教。
 先日行われた第4回講座では,吉川先生の講義「健やかなこころで暮らす知恵」の後,医療・こころ・法律・栄養学に関する先生方が,ちゃぶ台を囲んで受講者の相談に応じる「よろず相談会」が開かれました。会場の「京町家~風伝館」のアットホームな雰囲気の中,皆さん熱心に聴き入るとともに,受講者同志のつながりも感じられていたようです。
 "等身大のこころ"の姿を視野の中心に置き,各分野の専門家が協働して研究を進めておられる同センターの取組には,今後も目が離せません!


★同センターのHPはこちら
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/index.php 


■○募集開始!【くらしの学び庵 初級コース2期目 参加者募集開始になりました】

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詳しい要項と参加申込方法は下記リンク先をご覧ください。
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/event2/2014/12/manabian-syokyu2.php

『講座スピリチュアル学 第2巻 スピリチュアリティと医療・健康』(企画・編/鎌田東二、執筆/鎌田東二ほか)が出版されました

1412kamata_spiritualgaku2.png 鎌田東二教授が企画・編集をおこない、やまだようこ京大名誉教授、大井玄東大名誉教授、黒木賢一大阪経済大学教授らと執筆した『講座スピリチュアル学 第2巻 スピリチュアリティと医療・健康』が、2014年12月、ビイング・ネット・プレスより出版されました。


 講座スピリチュアル学のシリーズ本は全7巻で、2016年8月までに刊行される予定です。第1巻「スピリチュアルケア」、第2巻「スピリチュアリティと医療・健康」、第3巻「スピリチュイアリティと平和」、第4巻「スピリチュアリティと環境」、第5巻「スピリチュアリティと教育」、第6巻「スピリチュアリティと芸術・芸能」、第7巻「スピリチュアリティと宗教」という構成で、「こころとからだとたましいをホリスティック(全体的)に捉え、生き方や生きがいなどの生の価値に絡めて考察しようとする学問的探求」という考え方のもと、様々な分野で活躍する第一人者らがそれぞれの専門からテーマについて論じていきます。


 第2巻において鎌田教授は、テーマを医療・健康にした経緯について、東日本大震災という大きな出来事を契機に、「震災後の社会を、一人ひとりがどう生きぬいていくかという喫緊の深刻な実存的問題にまず取り組むべき」と考えたことを述べ、現代の医療、日本人の古来からのこころ観、いのち観について多角的な視点から問いかけ考える一冊にまとめた旨を紹介しています。また、終章では本巻の締めくくりとして、「スピリチュアリティと日本人のいのち観」というテーマで、『古事記』『日本書紀』などの神話の時代から日本人がみつめてきた「いのち」のありよう、仏教者の「いのち観」「健康観」、鎌田教授自身が提唱する「スパイラル史観」などを取り上げながら、「医療」と「健康」と「生き方」に関わる視座を提示しています。


 「いのち」という「まるごと」の受け止めを要請する存在のあり方を日本の宗教文化の幾つかの局面から見てきた。「いのち」が「すこやかであること」、それがどのような事態であり、存在様態なのか。気の遠くなるような多様性を本領とする「いのち」を「まるごと」受け止めるためには、どのような心の構えや生き方が必要となるのか。本終章の「はじめに」で述べた東京大学で始まった死生学の探究はその作業工程であり、高野山大学のスピリチュアルケア学科や日本スピリチュアルケア学会の創設も同様である。
 スパイラル史観を提唱してきたわたしからすると、この様相は中世の「メメント・モリー(死を想え!)」を想起させ、いよいよ現代が中世的な時代に突入したことを感じさせる。終末論や末法思想が流行した中世社会が総体的にそうであったように、時代も事態も環境もますます悪化し劣化していく。人類社会が好転していく兆しも材料もない。そのような希望の途絶えたかに見える社会の中で、希望を、光を見つけて、生きる力にしていくためにはどのような視力と想像力が必要になるのか。それには歴史を串刺しにして先を見る視力と想像力が必要であろう。 (「おわりに」より)


『講座スピリチュアル学 第2巻 スピリチュアリティと医療・健康』
企画・編・著:鎌田東二
著:山本竜隆・帯津良一・上野圭一・浦尾弥須子・大井玄・長谷川敏彦・やまだようこ・黒木賢一・黒丸尊治・鎌田東二
出版社:ビイング・ネット・プレス
初版発行: 2014年12月
単行本: 285ページ
定価:1,800円+税
ISBN-10: 4908055025
ISBN-13: 978-4908055027


Amazon.co.jpの書籍ページ

鎌田教授が企画・編集・執筆する『講座スピリチュアル学』シリーズが河北新報で紹介されました

 鎌田東二教授が企画・編集・執筆をおこない、全7巻のシリーズ書として刊行される『講座スピリチュアル学』(発行:ビイング・ネット・プレス)を紹介する記事が、2014年12月13日付の河北新報朝刊に掲載されました。書籍はすでに第2巻まで刊行されています。記事では、インタビュー風景写真と共に、本が作られた経緯、時代背景、スピリチュアル学の定義、本の構成などが丁寧に紹介されています。


1412kamata_kahoku.png「悲嘆と向き合う 京大教授『スピリチュアル学』刊行」

 かけがえのない人を失った悲嘆など、自然科学的アプローチでは論じきれない魂の叫びとの向き合い方を考察しようと、京都大こころの未来研究センター教授の鎌田東二さん(63)=宗教哲学=が「講座スピリチュアル学」と題する7巻シリーズの本の刊行を始めた。東日本大震災を機に、死後の世界までを丸ごと見据えた医療などの必要性を感じ、本を通しての問題提起を思い立った。
 スピリチュアルという言葉は「霊的」などと訳される。悲嘆へのケアは近年「スピリチュアルケア」とも呼ばれるが、どちらかといえば西欧発の概念で、日本では必ずしも浸透していない。
 今回のシリーズで提唱するスピリチュアル学について、鎌田さんは「こころとからだとたましいの全体を丸ごととらえ、生き方など生の価値に絡めた考察」と説明する。


(記事より)続きはこちら


記事は河北新報のウェブサイトで全文をお読みいただけます。下記リンクをクリックしてご覧ください。


悲嘆と向き合う 京大教授「スピリチュアル学」刊行 | 河北新報 ONLINE NEWS


◇関連情報
『講座スピリチュアル学 第1巻 スピリチュアルケア』(企画・編/鎌田東二、執筆/カール・ベッカー、鎌田東二ほか)が出版されました

徳島新聞に『講座スピリチュアル学 第1巻 スピリチュアルケア』(企画・編/鎌田東二、執筆/カール・ベッカー、鎌田東二ほか)の書評記事が掲載されました

1412tokushima_spiritual.png 京都新聞の読書欄(2014年11月13日付)に、鎌田東二教授が企画・編集をおこない、カール・ベッカー教授、島薗進 東京大学名誉教授・上智大学グリーフケア研究所特任所長、井上ウィマラ 高野山大学教授らと執筆した『講座スピリチュアル学 第1巻 スピリチュアルケア』の書評記事が掲載されました。徳島県立文学書道館の亀本美砂事業課主査が評しています。


 1995年に阪神大震災が起きたとき、「心的外傷後ストレス障害」のケアが注目され、「心のケア」が大きな社会問題となったが、2011年の東日本大震災においては「心のケア」という言葉や方法では対処しきれないほどの事態が引き起こされた。たくさんの行方不明者の捜索や確認作業に伴う深い悲嘆や絶望、また死者をどのように埋葬、鎮魂、供養すればよいのかという生存と生死の本質的な問題に直面して、「スピリチュアル(精神的・霊性的)」な次元にまで踏み込んだ対人援助が求められ、スピリチュアルケアや宗教ケアが必要とされたのだ。
 本書はそういった世相の中で構想された「スピリチュアル学」全7巻シリーズの第1冊であり、医療と健康、平和、環境、教育、芸術・芸能、宗教などに先だち、急迫した問題として「スピリチュアルケア」の理論と実践が取り上げられている。医療、宗教の第一線で今日的課題に取り組んできた論者たちにより、グリーフケアや死生観ワークをはじめ、さまざまな現場で実践されている技法や事例などが豊富に紹介される。また終章では本書の企画・編者である鎌田東二氏により、日本の風土とスピリチュアルケアについての考察がなされている。


(記事より)


◇関連情報
『講座スピリチュアル学 第1巻 スピリチュアルケア』(企画・編/鎌田東二、執筆/カール・ベッカー、鎌田東二ほか)が出版されました

鎌田教授のコラムが徳島新聞に掲載されました

 徳島新聞文化面「こころの未来 23」(2014年12月1日付)に鎌田東二教授のコラムが掲載されました。


 2014年秋より展覧会「スサノヲの到来-いのち、いかり、いのり」が開催されており、来年秋まで各地の美術館で開催されます。鎌田教授は、展覧会の展図録への解説記事「スサノヲという爆発ー放浪する翁童神のメッセージ」を寄稿し、11月には会場での講演もおこないました。記事では、古事記の中でダイナミックな存在感を放つ神スサノヲノミコトの魅力を紹介し、いまこの時期にスサノヲが注目され、展覧会が開催される意義を紹介しています。


1412kamata_tokushima.png「スサノヲの到来展 新しい世界を切りひらく 今の日本に必要な底力」鎌田東二 京大こころの未来研究センター教授


 10月18日から12月23日まで、栃木県足利市立美術館で「スサノヲの到来展」が開かれている。そこには縄文土偶から現代のアーティストの作品まで、時代を串刺しにする「スサノヲ的なるもの」が館内いっぱいに展示されている。(中略)
 「スサノヲの到来展」で特筆すべきは、神道家、金井南龍の絵画である。「妣(はは)の国」「昇り龍 降り龍」「富士諏訪木曽御嶽のウケヒ」など9作が展示されているのを見、そこに描かれている富士山や浅間山や霧島、高千穂の峰や御嶽山がみな噴火しているのを確認した。
 大地を揺るがし草木を枯らす荒ぶる荒ぶる啼きいさちる神。地震や台風や雷などの破壊的な自然災害とも結びつくが、同時にあらゆる「ケガレ(穢れ・気枯れ)」を禊祓(みそぎはら)い、新しい創造世界を切りひらく。破壊と創造、勇敢と繊細。この両義的相反する性格を持つスサノヲの到来こそ、今の日本に必要な底力の爆発ではないだろうか?


(記事より)


□関連記事
鎌田教授が展図録『スサノヲの到来-いのち、いかり、いのり』に解説を寄稿し、講演をおこないました

鎌田教授が展図録『スサノヲの到来-いのち、いかり、いのり』に解説を寄稿し、講演をおこないました

1412kamata_susanow.png 2014年10月18日より足利市立美術館にて展覧会「スサノヲの到来-いのち、いかり、いのり」(主催:足利市立美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会)が始まりました。足利では12月23日まで開催され、その後、2015年秋まで各地の美術館で開催されます。鎌田東二教授は、本展覧会の展図録に解説記事「スサノヲという爆発ー放浪する翁童神のメッセージ」を寄稿し、11月9日には、展覧会の開催地である足利市立美術館にて同タイトルの講演会で講師を務めました。


「スサノヲという爆発ー放浪する翁童神のメッセージ」鎌田東二


 スサノヲは爆発である。泣き虫の爆発であり、きかん気の爆発であり、暴れん坊の爆発である。
 また、スサノヲはスキャンダルである。アウトローであり、バガボンドであり、ヒッピーであり、ヒーローである。八頭八尾の八俣大蛇を退治することのできたスサノヲ自身が八頭八尾の怪物体である。異相の怪物神スサノヲ。
 この多面多層体のスサノヲ神話は、確かに、折口信夫の言う貴種流離譚のプロトタイプである。
 振り返ってわが人生を通観してみると、そのスサノヲとの遭遇の繰り返しであったと総括できる。まず、「オニ(鬼・大人)」を見ることから始まったわが人生で、初めて大きな社会発信をしたのが、一九七〇年五月、十九歳の時に、大阪の心斎橋で一ヶ月間『ロックンロール神話考』なるアングラ劇を作・演出したことにあった。(中略)
 研究面だけではなく、私生活の方でもスサノヲに遭遇し続けた。


(解説より)


講演会の様子はこちら→ 鎌田東二さんによる講演会行われました | 足利市立美術館ブログ
展覧会の案内ページ→ スサノヲの到来 -いのち、いかり、いのり | 足利市立美術館
2015年までの開催地→ 展覧会紹介 | 美術館連絡協議会

「支える人の学びの場 医療専門職のためのこころ塾2014」(11/9、11/16、11/22、11/23)を開催しました

1411kokorojuku_iryo.png 「支える人の学びの場 医療専門職のためのこころ塾2014」が、2014年11月9日(日)、11月16日(日)、11月22日(土)、11月23日(日)の全4日間の日程で稲盛財団記念館3階大会議室にて開催されました。昨年に続く2年目の開催で、今年も作業療法士、理学療法士、臨床心理士、言語聴覚士などの仕事に携わる方々が参加し、多彩な講師陣によるレクチャーや情報交換会で学びと交流を深めました。


 4日間に渡る全日程の午前中は、昨年同様、乾敏郎京都大学大学院情報学研究科教授による講義がおこなわれました。乾教授は、最新の認知神経科学における研究知見と基礎的な知識を各回2時間分にまとめ、「1歳までの認知発達の神経基盤」(11/9)、「高次認知機能と身体性」(11/16)、「言語・非言語コミュニケーションの神経機構」(11/22)、「他者を知り、共鳴する脳と発達障害」(11/23)というテーマで、脳の構造、機能と認知発達、自閉症や発達障害との関係について多くの図説や研究事例をまじえながら紹介しました。


 ゲスト講師を招いた午後の講義には多彩な講師陣が登壇しました。明和政子京都大学大学院教育学研究科教授(11/9)、渡邊克巳東京大学先端科学技術研究センター准教授(11/16)、熊田孝恒京都大学大学院情報学研究科教授(11/22)、田中康裕教育学研究科准教授(11/23)らがそれぞれの専門分野から講義をおこないました(各講師のテーマは下記のDATAをご参照ください)。続く実践報告の時間では、京丹波町子育て支援課の石原詩子先生(11/9)、大阪市更生療育センターの嶋谷和之先生(11/16)、松島佳苗京都大学大学院医学研究科助教(11/22)、愛知県心身障害者コロニー中央病院の小松則登先生が、それぞれの現場からの事例を報告しました。


 講義と実践報告の終了後は、先生方を中心とした討論および参加者のみなさんによる情報交換の場がもたれ、講師や参加者それぞれによる自由な発話があり、盛り上がりました。また、最終日には修了証の授与と全員による記念撮影がおこなわれ、4日間に渡る密度の濃い講義を学び終えた皆さんの清々しい笑顔が見られました。


 本年度は「先生のためのこころ塾(Aコース、Bコース)」と「医療関係者のためのこころ塾」ふたつの種類、合計3コースがおこなわれ無事終了しました。全日程の司会進行は、吉川左紀子センター長が務めました。参加者アンケートでは、「脳科学、心理学、OTそれぞれの視点で発達障害を捉えられた」「とても勉強になり、遠くから参加した甲斐があった」「講義も事例報告もどれも勉強になった。特にディスカッションは講義と臨床をつなぐとてもよい場だった」「受講者のニーズ、理解度に応じて復習や追加資料を提供してもらえてありがたかった」など沢山の感想が寄せられました。


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「支える人の学びの場 医療専門職のためのこころ塾2014」
▽日時:2014年11月9日(日)、11月16日(日)、11月22日(土)、11月23日(日)※各日とも10時~17時まで(受付開始9時30分~)
▽会場:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
▽ プログラム:
10:00~12:00 講義と質疑/講師:乾敏郎(京都大学大学院情報学研究科)
12:00~13:30 昼食
13:30~15:00 講義と質疑/講師:ゲスト講師
15:20~16:00 事例報告
16:00~17:00 情報交換会
※各開催日によって時間変更がありました


第1回 11月9日(日)
○「1歳までの認知発達の神経基盤」乾敏郎
○「心の発達の定型・非定型を考える」明和政子(京都大学大学院教育学研究科)
○ 事例報告 石原詩子 (京丹波町子育て支援課) 
○ 参加者数:79名


第2回 11月16日(日)
○「高次認知機能と身体性」乾敏郎
○「認知科学からみた発達障害」渡邊克巳(東京大学先端科学技術研究センター) 
○ 事例報告 嶋谷和之 (大阪市更生療育センター) 
○ 参加者数:77名


第3回 11月22日(土)
○「言語・非言語コミュニケーションの神経機構」乾敏郎
○「注意と学習による自動化」熊田孝恒(京都大学大学院情報学研究科) 
○ 事例報告 松島佳苗 (京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻)
○ 参加者数:81名


第4回11月23日(日)
○「他者を知り、共鳴する脳と発達障害」乾敏郎
○「発達障害と「三つの誕生」」田中康裕(教育学研究科)
○ 事例報告 小松則登 (愛知県心身障害者コロニー中央病院)
○ 参加者数:69名


主催:京都大学こころの未来研究センター
共催:京都大学医学研究科 脳機能リハビリテーション学分野 発達障害系研究室

学術研究支援室のウェブサイト「K.U.RESEARCH」に内田准教授のインタビューが掲載されました

1412uchida_kyodaizukan.png 京都大学学術研究支援室が企画・運営するウェブサイト「K.U.RESEARCH」の研究者紹介ページ『京大人間図鑑』に内田由紀子准教授のインタビューが掲載されました。


『京大人間図鑑 Vol.05 内田由紀子 こころの未来研究センター准教授』 | K.U.RESEARCH


 自分に合う研究分野を探して回り道をした学部時代の思い出話から始まるインタビュー記事は、内田准教授が文化・社会心理学者として歩んできた道のりと研究者としての思い、ビジョンが丁寧に描かれています。内閣府の「幸福度に関する研究会」委員を務めて指標作成に携わったり、農村や漁村の地域コミュニティに生きる人たちの「つながり」に関する調査研究の経験談など、研究活動の軌跡が紹介されています。また、最近はビジネスの世界における人のこころに興味を広げ、企業理念や経営方針が働く人にもたらす幸福感、やりがい等について調査研究を進めている現状について爽やかに語っています。


京大人間図鑑 vol.5 こころの未来研究センター准教授 内田由紀子


近年、暮らしの豊かさを示す「幸福度」の指標作りが国内外で活発に行われています。他の国や地域との比較にとどまらず、固有の文化的特性の中で育まれる幸福感をどのように捉えるか。京都大学こころの未来研究センターの内田由紀子(うちだゆきこ)准教授は、文化・社会心理学の視点から、日本人の幸福感について研究しています。


――専門は、文化心理学・社会心理学とのことですが、研究を始められた経緯を教えてください。
内田准教授 高校生の頃、平家物語や今昔物語といった古典が好きで、文学部に入学しました。ところが何か違うなあと(笑)。しばらくして、自分が古文そのものを研究するのではなく、その物語から垣間見える登場人物の感情の動き、時代・文化の精神と「こころ」の関係性に興味があることに気付いたんです。それで三回生の時に教育学部に転部して臨床系の心理学を学ぶことにしました。(中略)


――文化心理学・社会心理学とは、どういったことを研究テーマとするのでしょうか。
内田准教授 文化や社会がどういった影響を心に及ぼすか、また、心がどのようにし文化や社会をつくりあげるか、その関係を解明することです。私はとりわけ、幸福を求めるルートが国や文化によって異なるという点に興味をもっており、認知・感情のしくみや対人関係の比較文化研究をテーマにしています。


(記事より。続きはこちら

内田准教授が寄稿した『女性研究者とワークライフバランス』の書評が京都新聞に掲載されました

 内田由紀子准教授が論考を寄稿した書籍『女性研究者とワークライフバランス: キャリアを積むこと、家族を持つこと』(新曜社)の書評が、2014年10月19日付の京都新聞読書欄に掲載されました。


写真 (60).jpg○出版あれこれ○「ワークライフバランスへの助言」


 仕事と妊娠・出産、遠距離結婚生活、主夫に支えられて、夫が育休を取った際の経済的デメリットーなど、ケースごとに体験を報告し課題を挙げている。内田由紀子・京都大こころの未来研究センター准教授や、夫の立場から郷式徹・龍谷大教授も執筆。体験を語りながら、遠距離結婚の章で内田准教授が「子育てはやはり文字通り『かけがえのない』幸せをもたらしてくれる」と書くなど、結婚や子育てを考える女性に励ましを送っている。


(京都新聞2014年10月19日付読書欄記事より)


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内田准教授が寄稿した『女性研究者とワークライフバランス: キャリアを積むこと、家族を持つこと』が出版されました
『女性研究者とワークライフバランス: キャリアを積むこと、家族を持つこと』:新曜社

内田准教授が西日本経済同友会合同懇談会で講演。高知新聞に掲載されました

 2014年10月3日、西日本経済同友会会員合同懇談会が高知市で開催され、内田由紀子准教授が基調講演をおこないました。西日本に18ある経済同友会より400人が参加したイベントでは、土佐経済同友会が提唱している県民の幸福度の指標づくりがテーマとなりました。内田准教授は「日本の地域における幸福感」という演題で講演し、その後のパネルディスカッションでも発言をおこないました。


 10月4日付の高知新聞経済面には、写真と共にイベントの開催が報じられ、内田准教授の講演内容が紹介されました。


写真.jpg「幸福度で地方発展を 高知市 西日本18同友会が懇談」


 「日本の地域における幸福感」と題した基調講演では、京都大学こころの未来研究センターの内田由紀子准教授が、幸福の感じ方には国や文化で違いがあり、単純な比較はできないと指摘。指標づくりは「どんな地域をつくりたいか、ビジョンが大事」と話した。


(高知新聞/2014年10月4日付朝刊経済面記事より)